こんにちは。脇本和洋です。

[海外事例にみる継続支援アプローチ編]では、海外トレンドや注目事例を紹介するとともに、健康サービスの肝となる「継続支援アプローチ」を紹介しています。

今号のテーマは、「米国の法人向け健康サービス代表2社の動向」です。
代表企業として、Sharecare と Virgin Pulseを紹介します。

特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編

米国の法人向け健康サービス代表2社の動向

スポルツでは、米国の健康関連企業の決算発表に合わせ、毎年この時期に主要企業の動向をアップデートしています。

以前、Medifast と WeightWatchersというB-C向け代表企業の動向を紹介しました。
今回はB-B向けの代表企業である、Sharecare と Virgin Pulseの動向を紹介します。

事例1.Sharecareの動向

■企業名:Sharecare
https://www.sharecare.com/

設立:2010年

■企業概要
テレビ番組でも有名なオズ医師が手掛けたエイジングプログラムを法人向けに提供。
認知の高いエイジングプログラムを一つの切り口としつつも、糖尿病や心臓病予防のためのコーチングプログラムなど様々なプログラムを提供し収益をあげる。

■実績
・利用従業員数:1,000万人以上(2022年)
・売上:412億円(2021年)
※1ドル100円換算

■サービス概要(特長)

・生活習慣病、肥満といったテーマ以外に、不安マネジメント、メンタル強化、禁煙プログラム、育児支援、ファイナンシャルウェルネスといった様々なテーマでサービスを用意する。

・独自に開発したプログラム以外に、外部企業のプログラムと提携している。

<提携例>
ovia health(ファミリーウェルビーイングサービス)
smartdollar(ファイナンシャルウェルネスサービス)
fusionetics(筋骨格のトラブル予防サービス)

■2020年~2021年の主な動き

・2020年6月に、依存症のデジタル治療プログラム「MindSciences」を買収。
依存症という重要テーマに関するサービスのバリエーションを増やす。

・2021年1月に、ヘルスケア分野のAI開発を行う「doc.ai」を買収。
個人に合ったプログラムの強化と、Sharecareのサービスを導入した際の効果分析を強化することが狙いと予想される。

・2021年8月に、在宅ケアを行う介護士を探せるサービス「CareLinx」を買収。
在宅ケアの領域に入り、リアルサービスを増やす。従業員の家族に介護が必要になった時に、サービス提供するものと予想される。

■健康行動継続の工夫

・同社IR資料によると、「医療情報の詳細を一元管理でき、オンライン診療に手軽にアクセスできること」が特長として書かれている。さらに、予防・介護までのサービスを切れ目なく提供する点も健康行動を続ける工夫として考えられる。

・アドボケイトと言われる専門家が、健康づくり及び保険金支給のナビゲーションまでしてくれるという。個人(家族)ごとに、担当が付くということで健康行動を続けてもらうことを狙っていると考えられる。

事例2.Virgin Pulseの動向

■企業名:Virgin Pulse
https://www.virginpulse.com/

■設立:2004年

■企業概要
イギリスのヴァージングループの系列会社。2004年に設立され、コーポレートウェルネスプログラムを提供している。

■実績
・利用従業員数:1,400万人(2022年)
・推定売上:200億円(2021年)
※1ドル100円換算

■サービス概要(特長)

・長期的な行動変容を促すため、様々な健康プログラムを紹介。最近では、マインドフルネス、レジリエンス、栄養、運動、禁煙、ファイナンシャルウェルネス、ファミリーウェルビーイングなど幅広く用意する。

・独自に開発したプログラム以外に、外部企業のプログラムと提携している。

<提携例>
Kaia health(腰痛改善の遠隔支援サービス)
koa health(メンタルヘルスサービス)
wellbeats(オンラインフィットネスサービス)
ovia health (ファミリーウェルビーイングサービス)
enrich(ファイナンシャルウェルネスサービス)
ALAVIDA(アルコール依存症の人向けサービス)
dayzx(睡眠支援サービス)
headspace(マインドフルネスサービス)

■2020年~2021年の主な動き

・2020年6月に、糖尿病予防コーチングプログラムを提供する「Blue Mesa Health」を買収し、プログラムのバリエーションを増やす。

・2021年3月に、データ分析を専門に行う「Advance Plan for Health」を買収。
Virgin Pulseのヘルスケアサービスを導入した際の効果分析をさらに強化することが狙いと予想される。

・2021年10月に、同業であるWelltokを買収。利用者数が一挙に増えた。

■健康行動継続の工夫

・同社サイトの紹介文によると、「データ分析と機械学習によって、一人ひとりの健康に対する行動継続を支援している」と記載されている。

・プログラムの種類が豊富であるため、個人の好みに合い、興味のあるテーマからサービスを利用できるようにしている。

2社のサービスの共通点

Sharecare と Virgin Pulseの、近年のサービス強化の共通点としては、何があるでしょうか。
今回は2つの共通点をあげてみます。

●共通点1:データ分析の強化

Sharecareは、ヘルスケア分野のAI開発を行いデータ分析を行う「doc.ai」を買収。Virgin Pulseは、データ分析を専門に行う「Advance Plan for Health」を買収しています。

法人向け健康サービスでは、導入の「効果」をどう見せるかがポイントになります。そのためのデータ分析は必須です。データ分析強化の傾向は、以前からあったのですが、さらに強まったとみています。

●共通点2:従業員の特性に合わせたプログラムの強化

Sharecareは、生活習慣病だけでなく、禁煙プログラム、育児支援、腰痛プログラム、ファイナンシャルウェルネスといった切り口で、サービスを拡充させています。

また、Virgin Pulseは、マインドフルネス、レジリエンス、ファイナンシャルウェルネス、ファミリーウェルビーイングといった切り口でサービスを拡充させています。

従業員が望む健康テーマは様々です。
SharecareもVirgin Pulseも、ただやみくもにサービスを拡充するのではなく、導入企業の「特性」に合わせて、サービスを拡充していると思われます。

企業向け健康サービスで成果を上げるには、企業ごとに違う経営戦略や、人財課題を分析し、特性に合ったプログラムを提案し、成果をデータ分析するところまでが必要となります。

Sharecare も Virgin Pulseも、この一連の流れを重視した取り組みをしていると見るのがよいと思います。 【脇本和洋】

参考>本編「海外事例にみる継続支援アプローチ編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー

健康ビジネスキーワード

「失敗のコスト」

主人公ごとに「解」も変わる時代です。
試行錯誤を重ねて自分達のベターを探して磨いて精度を上げていく時代です。
失敗が日常になります。
失敗を恐れ、嫌い、避けて、見ないフリをすることで失敗のコストはとてつもなく高くなっていきます。

幼子が、転んでまた立ち上がる。
まさに全員が意識せず経験してきたこと。
失敗のコストを上げてはいけません!

今週の注目記事クリップ

[1]カゴメ、<全国の男女4,680人に調査>お盆・夏休みは野菜好きになる絶好のチャンス。3人に2人は夏休み期間に野菜との触れ合いを体験【PDF】
https://www.kagome.co.jp/library/company/news/2022/img/2022080501.pdf
https://www.kagome.co.jp/
野菜摂取の実態と野菜不足になる要因を調査分析する「カゴメ野菜調査隊」による「野菜定点調査 2022」を実施。自由研究で野菜をテーマにしたことがある人の半数が意識的に野菜を摂取している結果に。(2022/08/05)

+++★追加解説音声:100秒★+++
https://youtu.be/6_gvELvAikQ

[2]伊藤園とMCBI、抹茶の継続摂取による睡眠の質の向上と社会的認知機能の改善を確認
https://mcbi.co.jp/news/784/
ヒトを対象とした研究で抹茶の長期摂取効果を総合的に解析する世界初の臨床試験。8月2日(火)、アルツハイマー病協会国際会議2022(AAIC2022)にて発表。(2022/08/03)

[3]東北大学、緑内障の早期発見に寄与できるスマートフォン用のゲームアプリを開発、特許取得のお知らせ
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/08/press20220803-03-meteor.html
日本人の中途失明原因第1位の緑内障を早期発見する目的で、短時間かつゲーム感覚で視野の状態を確認することができる新しいアプリケーション(METEOR BLASTER)を開発。(2022/08/03)

[4]スクラムスタジオ、グローバル・オープンイノベーション・プログラム「Well-BeingX」新たにスタートアップ26社を採択し、世界5の国と地域から37社のスタートアップが大企業との事業共創を開始
https://scrum.vc/ja/2022/08/03/press-release-2022-08-04/
今後、37社の採択されたスタートアップと共に、9月中旬に開催予定のキックオフイベントに向けて「Well-BeingX」に参加するパートナー企業やサポーター企業、オブザーバー自治体との協議を進める。(2022/08/04)

[5]保健同人社、データドリブンなWell-Being経営による、持続的な企業価値向上を支援
https://www.hokendohjin.co.jp/ja/news/news-20220804-01.html
保健同人社とアビームコンサルティングは、企業のWell-Being経営の推進支援において、協業を開始。(2022/08/04)

[6]香港から世界へ、話題の「デジタル・ウェルネス・ジャーニー」を体験してみた(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/column/00011/080200022/
香港、世界最長寿の秘密を探る。第21回、香港のビジネスマンの間でスパ・トリートメントが人気のワケ。(2022/08/04)

[7]KEYWORD:ニューロダイバーシティ(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/keyword/19/00175/
発達障害のある人材に対し一定の配慮や支援をしつつも、いわゆる「障害者枠」ではなく、その人の特性を生かして戦力化しようとする企業や社会の取り組みが、いまイノベーションを起こそうとする新たな成長戦略として注目されている。(2022/08/04)

[8]fermata、「Femtech Fes! 2022」開催決定
https://hellofermata.com/blogs/fes2022/open
開催日は10月14日(金)-16日(日)。昨年の2倍の会場規模・海外フェムテック起業家も来日決定。テーマは「あなたのタブーをワクワクに変える“フェムテック交差点”」。(2022/08/04)

[9]おやつカンパニー、「食と健康アワード2022」優秀賞を受賞!タンパク質20gがおやつ感覚で摂れる「BODY STAR プロテインスナック」(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000301.000021119.html
高タンパク大豆スナック菓子「BODY STAR プロテインスナック」は、一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)主催「食と健康アワード2022」の健康食品・一般食品部門において、優秀賞を受賞。(2022/08/05)

[10]アサヒ飲料、「アミールW」新発売
https://www.asahiinryo.co.jp/company/newsrelease/2022/pick_0808.html
飲料初の「ラクトトリペプチドの働きで高めの血圧を低下させ、年齢と共に低下する血管のしなやかさの維持を助ける」機能性表示食品。(2022/08/08)

[11]ライオン、法人向けウェルビーイングサポートサービス「おくちプラスユー」開始【PDF】
https://lion-corp.s3.amazonaws.com/uploads/tmg_block_page_image/file/8253/20220808c.pdf
https://www.lion.co.jp/ja/
法人のウェルビーイング経営を支援するサービスとして3月からスタートしているオーラルケア情報提供サービスに、「唾液検査」や「オーラルケアサポートコンテンツ(e-learning 等)」を加え、お口から従業員の健康増進を支援する。(2022/08/08)

[12]asken、妊娠・授乳期の女性向け食事アドバイスを提供する「妊娠・授乳期に!あすママコース」の利用者が延べ7,000人を突破
https://www.asken.inc/news/2022/8/8/7000
赤ちゃんや母体の健康のために、適切な栄養・体重管理をサポートするサービス。2022年6月8日の本コース提供開始から約2カ月で延べ7,000人を超えた。(2022/08/09)

[13]クロス・マーケティング、身体の悩みに関する調査(2022年)女性編
https://www.cross-m.co.jp/news/release/20220809/
全国20-69歳の女性1,250名を対象に調査を実施。今回は女性編として、現在や将来的な悩み、フェムテック・メノテック認知状況や職場においての意識などを分析。(2022/08/09)

[14]クックパッド、生鮮食品EC「クックパッドマート」が提供する「定期便」利用者数が半年で50倍以上に(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000261.000027849.html
この度、より多様な生活者のニーズに応えるために商品のラインナップを拡充した「選べる!おいしい食卓応援定期便」を開始。(2022/08/09)

[15]メドレー、かかりつけ薬局支援システム「Pharms」が導入1万店舗を突破
https://www.medley.jp/release/20220810.html
Pharmsは、処方箋のネット受付やオンライン服薬指導機能、服薬フォローアップ機能、処方医や地域医療との連携強化に利用可能なオンライン診療などの提供を通じて「門前薬局」から「かかりつけ薬局」への転換を支援。(2022/08/10)

[16]エーテンラボとカゴメ、習慣化アプリ「みんチャレ」野菜摂取でSDGsに貢献できる仕組みを構築。健康への関心度が低い若手層の行動変容に寄与するか実証
https://a10lab.com/news-20220810/
豊橋市と「健幸なまちづくりパートナーシップ」を締結し、豊橋市に事業所を有する企業従業員を対象として、本プログラムの実証実験を実施する。(2022/08/10)

[17]ジィ・シィ企画、「アバターを利用したヘルスケアシステム」特許取得(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000091233.html
今年1月にリリースした健康経営サポートサービスNUCADOCOについて、アバターを利用したヘルスケアシステムとして2022年8月9日に特許証を受領。(2022/08/15)

[18]矢野経済研究所、従業員エンゲージメント市場に関する調査を実施(2022年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3039
2021年の国内従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウド市場規模は、事業者売上高ベースで前年比123.6%の47億2,000万円と推計。(2022/08/15)

[19]キリンホールディングス、「日常生活の変化と認知機能に関する意識調査」について~家族以外との会話時間の減少が、認知機能の低下に影響か?~
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2022/0816_02.html
9月の「世界アルツハイマー月間」に合わせて、全国20歳以上の男女3,175人に対して調査を実施。現在行っている生活習慣で今後も続けたいことを尋ねたところ、1位は「睡眠を十分とるように心がける(54.1%)」。(2022/08/16)

[20]Beyond Healthレポート:「暖かい家」は健康寿命延伸に加え、女性の健康にも効果?慶應義塾大学の伊香賀教授が研究報告(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00004/080500374/
暖かい家は健康寿命を延ばす――。2022年7月25日、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授の伊香賀俊治氏が数々の実証をもとにした研究報告を行なった。(2022/08/16)

[21]Keep up、「スポーツヘルスケアoneデイ2022 vol 2」BIZSPOオフィスにて開催決定!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000000491.html
開催日は、2022年9月21日(水)。スポーツヘルスケア分野に特化した展示会。ヘルスケア新規事業をテーマにしたビジネスマッチングイベント第五弾。(2022/08/16)

[22]高血圧治療用アプリが保険適用へ、「準用技術料」から見えるものとは?次回改定ではアウトカム評価導入の可能性も(Beyond Healthより)
https://nkbp.jp/3TafD7F
医療系スタートアップのCureAppが開発した「CureApp HT高血圧治療補助アプリ」が9月1日付で保険収載される見通しとなった。厚生労働省の中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関、中医協)が8月3日、保険適用を了承した。治療用アプリの保険収載は2例目となる。(2022/08/19)

[23]EUの健康データ再利用計画には修正が必要と個人情報保護監督当局が指摘
https://mhealthwatch.jp/global/news20220808
2015年以降、EUの最高裁判所が個人情報保護に関する重大な判決を下したことで、第三国への個人データ転送に法的不確実性が生じたことを考えると、これは賢明な判断といえる。(2022/08/08)

[24]Apple、「健康促進にApple WatchとiPhoneが役立っている」とレポートで報告
https://mhealthwatch.jp/global/news20220810
Appleは、同社の製品が健康管理に役立ち、健康と安全をインテリジェントに見守る機能を果たしていることについて、概要を報告するレポートを公開。(2022/08/10)

[25]『mHealth Watch』注目ニュース:Calm、従業員の20%を解雇
https://mhealthwatch.jp/global/news20220822-3
The Wall Street Journalは、Calm社が約90人の従業員を解雇し、約400人を雇用したと報じた。(2022/08/22)

[26]The Rock Weekly 今週の注目記事より(英文)
・Femtechでの新たな動きを紹介
https://rockhealth.com/rock-weekly/summertime-radness/
Lisa Healthは、更年期管理のためのアプリの開発でメイヨークリニックとのパートナーシップを発表。FemTec Healthは、妊活ウェアラブルのAvaと、食事記録アプリのNutrimedyを買収。

Lisa Health
https://midday.health/
FemTec Health
https://www.femtechealth.com/
Ava
https://www.avawomen.com/
Nutrimedy
https://www.nutrimedy.com/