こんにちは、里見です。

ヘルスケアサービスで、記録の機能を提供しているサービスがありますが、記録系のサービスだけでは、利用者の課題の解決には導くことはできません。

そこで、今回のメルマガでは、私の専門領域である「ヘルスコミュニケーション」「ヘルスコーチング」の視点から、記録することの価値について分解して解説してみたいと思います。

特集:ヘルスコーチングの視線編

ヘルスコーチングの可能性を探る:記録することの価値の提供

1、記録系のサービス、機能

ヘルスケアサービスにおいて、記録する機能を提供しているサービスは多く、なんらかの記録する機能は外せない要素の一つになっています。

記録系のサービス、機能としては以下のようなものが存在し、組み合わせて様々な記録を管理、見える化するサービスがあります。

・食事記録
・体重記録
・歩数記録
・運動記録
・睡眠記録
などなど

これらの記録する機能を提供しているサービスは、もともと課題や改善したいことに向けて、課題や改善に関連したデータや内容を記録するというのが一般的です。

この課題や改善に向けて記録を継続するという行動は、健康改善に向けた行動変容に効果が高いとされていて、多くの研究論文でも発表されています。

しかし、記録することは健康改善の行動変容に向けては効果が高いとされているのですが、記録を継続すること自体かなりハードルが高く、継続できれば効果は期待できますが、なかなか記録による効果を得るには、継続という部分で難しいという一面もあったりするのです。

今回、記録することの価値について以下で分解していきますが、記録サービス、機能の継続を促す視点とは別に、まずは、なぜ記録することが課題解決、健康改善の行動変容につながるのかという視点で解説させていただきます。

2、利用者任せになっている記録機能の価値

健康改善の行動変容に向けては効果が高いとされている記録の機能ですが、なぜなのでしょうか?

記録を過去から遡って確認できるからでしょうか?
それとも、グラフで視覚的に確認できるからでしょうか?

様々な記録の機能を提供しているサービスでは、記録の入力の仕方、記録方法の簡便性、そして記録の見え方やグラフの見せ方などなど、サービスを提供する上で様々な工夫を取り入れて、より良い機能を提供しています。

しかし、それらは使い勝手を良くする上では必要な要素なのですが、記録の使い勝手の良さを追求したとしても、記録の使い勝手の良さだけでは冒頭の私からの質問である記録の機能が、なぜ行動変容、健康課題の解決に作用するのかという部分の答えにはならないのです。

たしかに、使い勝手を良くすることで記録の継続につながるので、結果的に効果にもつながるとも言えるのですが、直接的な健康課題の解決にはつながってはいないのです。

実は、記録系の機能、サービスを提供している事業者は、記録の機能がなぜ行動変容、健康課題の解決に作用するのかという部分を利用者任せになっているところがほとんどです。

3、記録のタイミングによるPDCA

では、記録機能、サービスを利用して、行動変容、健康課題の解決を手に入れている人の実際の使い方はというと、記録をするタイミングで、小さなPDCAのサイクルを回しているのです。

例えば、ダイエットで食事記録のサービスを利用している人の場合では、記録のタイミングを使って、以下のような食事を含めた行動までつながったPDCAサイクルが回っているのです。

Check:食事結果の振り返り
Action:振り返りから改善点を見つける
Plan:次の食事、その日の食事のメニューを考える
Do:計画に沿って食事を選択、食べる

単純に記録だけの機能の側面だけみると、食事内容の記録の結果だけを確認することになりますが、実は食事記録のサービス、記録を活用してダイエットに成功している人の多くは、このような記録のタイミングはダイエットの取り組みの一部、一貫であって、記録を基点に実際の食事や行動が変化しているのです。

記録するだけでダイエットが成功するわけではないことは、全ての人が知っているはずなのですが、実際にサービスが提供されている現場では、知っているものとして扱われており、記録を通した活用方法、ダイエット方法をサービス提供者側からサポートしていないものなのです。

実は、記録系のサービスで効果、成果を手に入れている利用者は、記録の機能を使ったPDCAの流れを実践しているのです。

4、PDCAをサポートすることが記録サービスには必要

このように、記録サービスにおいてはPDCAサイクルの流れを記録の機能の提供といっしょに最低限説明することが重要になります。

しかし、PDCAサイクルの流れのコンテンツ、説明だけ提供しても、このPDCAのサイクルを活用して健康行動の改善の取り組みには、なかなか活かせないものなのです。

そのため、記録して見える化するだけの機能提供だけではなく、記録、データの変化を捉えたレコメンドやアラートの提供などを組み合わせて、PDCAの視点を促す仕組みづくりだったり、利用者自身では気づかない記録のトレンドなどをシステムが捉えて、利用者に対して新たな気づきにつながる視点を提供するなどといったことが必要になるのです。

記録、データからPDCAのサイクルへの流れの中で、利用者への気づきを促すアプローチは、ヘルスコーチングのコミュニケーションによるアプローチ、要素を活かしてオンラインの中でも提供が可能です。

測定や記録のタイミングを基点にしたPDCAのサイクル、そしてPDCAのサイクルの中で健康行動の改善はもちろん、継続に向けたポイントを組み合わせてコンテンツや機能などを記録とデータの見える化と連動させることで、記録自体の価値、意味付けにつながり、利用者の本来の行動変容、健康課題の解決に向けたサービスとして機能するのです。

記録の機能を提供しているサービスにとって、ここまで考えた記録機能として提供することが、多くの記録サービスの中で本当に使われるサービス、利用されるサービスとして、今後必要になるポイントだと言えます。



今回は、記録系サービス、機能に必要な要素であるPDCAのサイクルについて解説しました。

記録系サービス、機能を提供して、利用者が継続して使ってくれさえすれば行動変容、健康課題の解決に自然に近づいてくれると利用者任せになっているサービス提供者が多く、今回解説したような記録系サービス、機能の本当の価値、意味付けまで提供しているサービスは少ないのが事実です。

行動変容、健康課題の解決に向けて記録系サービス、機能を提供する際には、記録すること、記録を見える化することが目的ではなく、やはり利用者の行動変容、健康課題の解決に向けてステップの一部として記録系サービス、機能が存在するのだという認識に立って、記録サービス、機能の価値を積極的に提供すべきだと考えます。

記録、データからPDCAのサイクルへの流れの中で、利用者へ気づきの行動変容を促すヘルスコーチングのコミュニケーションによるアプローチ、要素に関して、ご興味ある方、是非一度ご相談ください。


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健康ビジネスキーワード

「顧客とのタッチポイントづくりにICT活用は必須_3/8」

「ヘルスケアビジネス」力 8の3つ目になります。

ヘルスケアビジネスにとって顧客との関係の質にいかに関与していくかがビジネスそのもののデザインの心臓となります。

そして、デジタルデバイス(スマートフォン、スマートウォッチなど)によるコネクテッド環境の中で、いかにコミュニケーションをデザインしてインタラクティブに互恵関係に導くことができるかは、今後のヘルスケアビジネスのスケールできるか否かのポイントです。

その中で、顧客が好むタイミングでのタッチポイントを探索し、試し、改善していくことが重要になります。
顧客の特性は一様ではありませんが、比較的インタラクティブ活性度が高いところをwell timing(ウェルタイミング)と呼んでいます。
今、貴社はwell timingを創ることができていますか?

そして、タッチポイントの究極はテクノロジーを駆使した1to1のコミュニケーションデザインになっていくはずです。

今週の注目記事クリップ

[1]味の素、「睡眠と日中の活動、自分らしさに関する意識調査」(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000113.000059753.html
全国20-60代男女1,000名を対象に調査。ぐっすり睡眠実感者と非実感者を比較したところ、ぐっすりした睡眠の実感は「日中のパフォーマンス満足度」や「自分らしい生き方」に大きな影響を及ぼしていることが分かった。(2022/12/15)

+++★追加解説音声:90秒(編集主幹 大川)★+++
「ディープスリーパー」を目指しましょう。
https://youtu.be/gfG-o5JSY8w

[2]asken、あすけんダイエット「市販食品トレンド」大賞2022を発表
https://www.asken.inc/news/2022/12/15/2022
2022年の食事記録データを集計し、今年新規入会し、減量に成功したあすけんユーザーに特に支持されていた市販食品を、「主食」「主菜」「野菜・海藻」「果物」「ヨーグルト」「飲料」「間食」の7つのジャンルで調査。(2022/12/14)

[3]MTG、ランナーがより速く走るためのメソッド「SIXPAD RUNNING METHOD」日本ランニング協会と共同開発
https://www.mtg.gr.jp/news/detail/2022/12/article_2101.html
このメソッドは、SIXPAD独自のEMSを搭載した「SIXPAD Powersuit Core Belt」を着用しランニングする「ハイブリッドランニング」をベースに開発。EMSで腹筋、脇腹、背筋を同時に刺激しながら走ることで効率的に体幹を鍛えることができる。(2022/12/14)

[4]エムティーアイ、コンディショニングノート『Atleta』初!インターンシップを実施し、高校生が企画した技能向上、チーム力強化を目指す機能を採用!
https://www.mti.co.jp/?p=32249
スポーツチームをサポートするコンディショニングノート『Atleta(アトレータ)』は、チームメイトの振り返り記録を閲覧することでコンディションや考えを知ることができる「チーム機能」を追加。(2022/12/14)

[5]トップアナリストに聞く「2030年のヘルスケアビジネス」:エーザイ「レカネマブ」は認知症を止められるか?(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00019/120800032/
レカネマブの注目点は何か?上市はいつか?死角はないか?医薬品業界アナリスト・伊藤勝彦氏に聞く、2023年の注目新薬。(2022/12/15)

[6]花王、製造業から「UX創造企業」への変革をめざして 生活者と直接つながる双方向デジタルプラットフォーム『My Kao』スタート
https://www.kao.com/jp/corporate/news/products/2022/20221215-001/
『My Kao』には、「知る」「体験する」「買う」「創る」という4つの機能を実装。また、One-IDでお客さまとつながり、お客さまを深く理解することで、さまざまなUX(顧客体験)を提供していく。(2022/12/15)

[7]オムロン ヘルスケア、世界最大の家電ショーCES2023に出展
https://www.healthcare.omron.co.jp/corp/news/2022/1215.html
今年は現地にてブース出展し、心電計付き上腕式血圧計などの健康機器や遠隔診療サービスの最新情報など、「脳・心血管疾患の発症ゼロ」実現に向けた取り組みを紹介します。(2022/12/15)

[8]パソナ・パナソニック ビジネスサービス、「最新の事例から学ぶ、生産性とワーク・エンゲージメントを向上するオフィスのあり方」開催
https://www.pasonagroup.co.jp/news/index112.html?itemid=4549&dispmid=798
NTTコミュニケーションズとの共催ウェビナー。開催日は1月18日(水)。従業員の生産性やワーク・エンゲージメントの向上を目指したオフィスの在り方について解説。(2022/12/15)

[9]電通、「第16回ウェルネス1万人調査」を実施
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2022/1215-010571.html
電通ヘルスケアチームは、全国20-60代の男女計1万人を対象に調査を実施。「ウェルビーイング」の認知・理解度は約2割にとどまる一方、約6割はその概念に共感、など。(2022/12/15)

[10]デロイト トーマツ グループ、調査:オンライン診療・オンライン服薬指導 利用経験のない人も5割以上は「使いたい」
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20221216.html
オンラインサービスの利用経験者の再利用意向は8割程度と、引き続き一度経験をしたら今後も利用したいと考えている割合が高く、特にオンラインサービスの利便性が評価されている、など。(2022/12/16)

[11]ライフログテクノロジー、アスリートも活用できる!「カロミルPFC Proレポート」開始
https://www.calomeal.com/pressrelease/20221216.html
指導者向け食事指導ツール「カロミルアドバイス」を活用したレポートサービス。バズーカ岡田氏がデータドリブンな食事指導を解説する指導者向け無料セミナーを2023年1月20日(金)開催。(2022/12/16)

[12]dely、「クラシル」が2022年の食トレンド分析結果を発表(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000299.000019382.html
食品値上げで節約志向が高まり、食材代用レシピの再生数が伸長。コロナ禍で定着した自炊、2022年は“ちょい足し”で健康を意識する傾向に。(2022/12/16)

[13]Muscle Deli、朝から1日の終わりを考えるための朝食パン「ZZZ BREAD」プロジェクトをMakuakeで開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000025162.html
この度、「最高の睡眠で、最幸の人生を」をミッションに掲げるブレインスリープがMakuakeで行なっている「睡眠共創」プロジェクトに共感し、朝食パン「ZZZ BREAD(ジー ブレッド)」を開発。(2022/12/16)

[14]スポーツセンシング、からだ評価スタジオ「BPAT Studio」を開設(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000097198.html
「バランス」「筋出力」「心肺機能」「姿勢」「体組成」「反応速度」「アジリティ」「有酸素性持久力」など、一般的な体力測定からプロスポーツ選手のフィジカルチェックまで実施可能。(2022/12/16)

[15]ヘルスケア市場は本当に魅力的?異業種からの新規参入意向は7割も実際は2.5割、なぜ?(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/market-221219-1
本稿は市場参入を検討している異業種の企業に向けたものだが、すでに参入済みの企業も、3C分析、PEST分析、SWOT分析などの際に役立ててほしい。(2022/12/19)

[16][月刊NEXTコラボ記事]アフターコロナでも成長するクラブに学ぶ ライフタイムフィットネス(Fitness Businessより)
https://business.fitnessclub.jp/articles/-/1389
アフターコロナでも、アメリカのニューヨークで出店を続けるクラブがある。ライフタイムフィットネスだ。「Deliver whole healty way of life」をコンセプトに、自分の居場所となるクラブを作っている。(2022/12/19)

[17]ポーラ、エイジングをポジティブに捉える人は、幸福度が高い
https://www.pola.co.jp/company/news/po20221219_2/
ポーラ幸せ研究所が20代-70代までの女性を対象にエイジングと美容・幸せに関する調査を実施。今回、エイジングに対して特にポジティブに捉えている人の特長の中から、幸せに暮らす5つのヒントを見出しました。(2022/12/19)

[18]チームラボ、3D人体解剖学アプリ「teamLabBody Pro」を開発
https://www.team-lab.com/news/teamlabbody221200/
「teamLabBody Pro」は、筋肉・臓器・神経・血管・骨の動きなど、人体に関するあらゆる要素を網羅し、人体の構造の全てがわかる解剖学アプリ。(2022/12/20)

[19]メドピアとエモーションテック、「製薬業界 NPS(R)調査レポート2022」を公開
https://medpeer.co.jp/press/10510.html
医師専用コミュニティサイト「MedPeer」会員のうち処方による治療を行っている医師3,542人に、国内外の製薬企業や薬剤に対する調査を実施。オンコロジー/スペシャリティシフトが加速する製薬業界において、製品領域に応じた医師の情報収集特性が明らかに。(2022/12/20)

[20]スクラムスタジオ、グローバル・オープンイノベーション・プログラム『Well-BeingX』一年目の成果として大企業及びスタートアップの事業共創案件を発表(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000050.000015315.html
ウェルビーイングに資する教育、可視化、在宅ワーカー向けのサービス等の領域で事業共創を開始。(2022/12/20)

[21]シード・プランニング、新刊案内「人的資本開示」に向けたHR SaaS市場の新しい潮流ーHRテクノロジーの現状と将来展望2023年版ー
https://www.seedplanning.co.jp/news/news2022122001/
2020年より発刊を続けている「HRテクノロジーの現状と将来展望」の改訂版。2020年8月に米国で始まった米国証券取引所(SEC)上場企業における人的資本に関する情報開示の流れは、今後我が国においても加速していくことが予想されます。(2022/12/20)

[22]グローバルニュートリショングループ、総研レポートonlineにて事後レポートが公開されました
https://global-nutrition.co.jp/information/2022-12-21/
11月開催の「2023トレンド予測セミナー」にて「NNB10キートレンド2023」の著者でNew Nutrition BusinessのJulian Mallentin氏が来日し講演。その時の内容をウェルネス総合研究所が運営するウェルネス総研レポートonlineにて公開中。(2022/12/21)

[23]調査:Apple Watch、22年7~9月は高性能スマートウォッチ市場でシェア50.6%
https://mhealthwatch.jp/global/news20221221
Appleは9月に発売された「Apple Watch Series 8」が好調で、「Apple Watch」の出荷台数が前年同期比で48%増となった。(2022/12/21)

[24]『mHealth Watch』注目ニュース:インスリン投与を自動化する機械学習システム
https://mhealthwatch.jp/global/news20221226
今回紹介したインスリン自動投与用の機械学習ツールは、少しでも病気による生活の妨げをなくすことができると期待されています。(2022/12/26)