こんにちは、渡辺武友です。
ヘルスケアにおけるビジネスモデルが変化してきています。
今回は米保険会社UnitedHealthcareを例に共有していきたいと思います。

特集:健康ビジネス・マーケティング&収益化編

米保険会社UnitedHealthcareに見る、制度活用と真の狙い

政府の方針や制度改定が、ヘルスケア領域ではビジネスモデルに大きな影響を与えることは日本に限らず、海外でも同様です。

昨年11月12月の2回に渡りランチタイムセミナーにて、米国政府の方針として、医療費支払い(保険)の仕組みがValue Based Health Careに移行が進み、それに合わせ保険会社や医療機関が提供するデジタルセラピューティクスに変化が出てきたことを紹介しました。

ヘルスビズウォッチの調べでも、主だった保険会社はValue Based Health Careに対応するため、“量から質への転換”を図ったサービス導入を強化しました。

このような動きが他のヘルスケアテーマでも起こりつつあります。

昨年8月に補聴器に関する制度が変わりました。ソニーをはじめ新規参入する企業も増えています。
中でも、保険会社のUnitedHealthcareのアプローチは興味深いものになりますので、共有していきたいと思います。

聴覚障害がもたらす課題

世界保健機関(WHO)は2018年に、世界の5%に当たる約4億6,600万人が聴覚障害で、2050年には2倍の9億人に達する可能性があることを発表しました。

聴覚障害を患う人は、各国で年々増加しています。
聴覚障害は加齢によるものが主な原因です。
つまり高齢化が大きな課題であるのです。

高齢者は耳が聞こえにくくなると、会話が成立しなくなることでコミュニケーションを避けるようになり、社会的孤立から鬱や、認知症を発症する原因とも言われています。

また、外出機会が減ることで、運動量も減って筋肉量が低下し、家に引きこもりやすくなったり、外出しても転倒リスクが高まるなど、負の連鎖に陥ってしまうため、聴覚障害の改善はとても重要と言えます。

アメリカの補聴器に関する保険制度

補聴器はとても高額で、今までは保険を適用するためには診断を行い、補聴器購入のためのフィッティングサービスを受ける必要があったため、総額で5,000ドル(約50万円)以上かかると言われ、簡単に試せるようなものではありませんでした。

高齢化社会が進むことで、前章のような課題が浮き彫りになってきました。
フレイルや認知症に限らず、高齢化すれば何かしらの疾患を患うのは当然のことです。
いくら予防を推奨しても、フレイルの症状が出てしまえば聞く耳を持つことも難しくなります。
少しでも予防につなげる取組みとして、聴覚障害の改善、補聴器をより購入しやすいよう、昨年8月より処方箋なし(OTC適用)で補聴器が購入できるようになりました。

この制度変更により、補聴器ビジネスへの参入企業が増加したことで、商品の選択肢も増えています。

とは言え、OTCが適用されても購入は2,000ドル(約20万円)を超えるため、低所得者や高齢者の中には手軽に購入できない方も多いのが実態です。

※1ドル=100円換算

UnitedHealthcareの取組み

保険会社であるUnitedHealthcareは、補聴器OTC適用における金銭的課題をクリアし、より多くの方々に聴覚障害改善の機会を与える取組みとして、699ドル(約7万円)から購入できるようになるプランを発表しました。
このプランには無料の聴覚テスト、フィッティングなど対面サポートもついています。

UnitedHealthcareが提供するのだから、保険加入が条件かと思われるかもしれませんが、そのような制約はありません。
アメリカ退職者協会(AARP)のメンバーに登録していれば、誰でも購入ができます(誰でもが低額で買えるのではなく、高齢者だけに提供する)。

現在の米保険会社は、冒頭でお伝えしたようにValue Based Health Careの導入(移行)により、より成果を求めるサービスにシフトしています。
またSDGs、ウェルビーイングを踏まえた取組みを意識していますので、より多くの国民にウェルビーイングを得る機会を提供しようとしています。
そのために各保険会社は、多くのヘルスケアサービスや商品をラインナップしてきています。

すでに「何かあったときの安心のための保険」だけではなくなってきていると言えます。

UnitedHealthcareは、699ドルで補聴器を売るだけでは利益的にはマイナスです。
最終的には保険契約をすることを考えているかもしれませんが、彼らの補聴器提供のケアでは、聴覚の健康をきっかけに、自身の総体的な健康に目を向けるよう促す仕組みとなっています。

補聴器提供をきっかけに、保険に限らず、対象者に合わせたヘルスケアを提供し、顧客満足度を高める流れを設計していることになります。

課題を持った方々に、単なる改善策ではない、ウェルビーイングを得られる機会を提供することが、今後のヘルスケアビジネスにおいて大きな意味を持つことになります。

UnitedHealthcareの高齢者に対する聴覚へのアプローチは、その一端にしか過ぎないものと言えるでしょう。

デジタルヘルスに関わる制度変化を掴む

2022年11月24日に制度変化に関するセミナーを開催しました。
今回お届けした内容にも通ずるものとなりますので、当日見逃した方、再度見直したい方など、この機会にご覧ください。
配信は1月30日までとなります。

デジタルヘルスをめぐる環境変化を知る「成果重視の流れ(その1)」

<詳細・お申込みはコチラ>
https://healthbizwatch.com/seminar/archive003



健康ビジネスキーワード

「顧客啓発プロセスデザインと仕組みづくりが必要_5/8」

「ヘルスケアビジネス」力 8 の5つ目になります。

前回は健康消費者がどういった指向性を持ちポジショニングしているか。
そのポジショニングによってサービサーからのアプローチが異なるという話をしました。

ポジショニングごとに次に必要になるのが顧客啓発です。
ある程度の興味を示している顧客に対する啓発プロセスと言い換えてもいいと思いますが、これを多くの健康サービス事業者は理解をしていないことから、顧客の継続率の低さや離脱の多さに悩んでいるのです。

このプロセスにいる相手は、ある程度の期待と意欲を持ち自分が選択したサービスやプロダクトを手にしている状態です。
行動変容理論でいうと行動期にいる人たちです。
そこで、その顧客行動が変容していくステップを理解し、それを促進していくアプローチが重要になります。
さらに、提供プロダクトやサービスに対してのロイヤルティを醸成していくエンゲージメント意識がここから必要になります。

ここで重要な役割を果たすメソッドがオンボーディングです。

我々が考えるオンボーディングのプロセスデザインのポイント説明メモを用意しました。
貴社の顧客啓発プロセス強化のヒントにしてください。

https://healthbizwatch.com/member/hbw2301-2
期間:2023年1月27日(金)まで

今週の注目記事クリップ

[1]カーブス、第16回「カーブス フードドライブ」実施のお知らせ【PDF】
https://www.curves.co.jp/press/pdf/pr20230105fd.pdf
https://www.curves.co.jp/
全国1,947の店舗において、家庭にある常温で保存できる未開封の食品を募り、児童養護施設や母子生活支援施設といった女性や子どものいらっしゃる福祉施設・団体等に寄付をする活動。実施期間は1月16日-2月15日。(2023/01/05)

+++★追加解説音声:100秒(編集主幹 大川耕平)★+++
カーブスの素晴らしい社会活動の紹介です!
https://youtu.be/0bjvruZCvBM

[2]asken、プレミアムサービス「新年スタート応援セール」を開始
https://www.asken.inc/news/2023/1/4
「あすけんプレミアムサービス」は毎食ごとのアドバイス、食事画像解析機能、目的別の食事アドバイスコース選択などが利用できる有料サービス。お得な年間プランで今年1年の健康をサポート。(2023/01/04)

[3]群馬大学、低糖質・高タンパク質食生活で作業記憶能が低下-海馬の健康と食生活の関係を示唆-
https://www.gunma-u.ac.jp/information/145098
健康な状態での慢性的な低糖質・高タンパク質食(LC-HP食)摂取が、認知機能に及ぼす影響は不明でした。今回、4週間のLC-HP食摂取で作業記憶が低下することを新たに見出しました。(2023/01/04)

[4]オムロン ヘルスケア、CES2023で、脳・心血管疾患発症ゼロに向けた新たな取り組みを発表
https://www.healthcare.omron.co.jp/corp/news/2023/0105.html
2023年に英国で提供開始する遠隔診療サービス“Viso”を世界初公開したほか、リスクの高い不整脈「心房細動」の早期発見に向けた取り組みについて、プレスカンファレンスやブースで紹介。(2023/01/05)

[5]ベネッセホールディングス、ウェルビーイングの在り方を社会と共創する「ベネッセ ウェルビーイングLab」を設立【PDF】
https://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/news/20230105release.pdf
https://www.benesse-hd.co.jp/ja/
幸福学の専門家・前野隆司氏、ウェルビーイングの研究者・石川善樹氏もフェローとして参加。一人ひとりの多様な価値観の交流、ウェルビーイングへの理解を深める機会を創出。(2023/01/05)

[6]ブレインスリープ、“枕を変えるだけで睡眠は変わる”枕と睡眠の関連性を検証ーすっきり・ぐっすり感などの満足度向上に加えて、睡眠効率も改善傾向にー
https://brain-sleep.com/news/7062/
本検証では、ブレインスリープ ピローを使用することで、睡眠に関する主観的な評価の改善に加えて、「黄金の90分」における深睡眠割合の増加などが確認され、枕を変えることが睡眠の質向上につながる可能性が示唆されました。(2023/01/05)

[7]バイドゥ、[Simejiランキング]Z世代が選ぶ!!「ダイエットあるあるTOP10」
https://www.baidu.jp/info/2152/
1位「結局やらない」、2位「三日坊主」、3位「部分痩せが難しい」、4位「友達からの“別に太ってないじゃん”はあてにならない」。美意識の高いZ世代の苦悩とは!?(2023/01/05)

[8]ONE COMPATH、「歩行の社会的価値」を定量化
https://onecompath.com/news/release/12613/
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社の協力のもと、SROI分析を用いて歩行の社会的価値を評価する枠組みを構築し、2月に開催するウォーキングイベント「1day3000ウォーキングチャレンジ」をモデルケースとして定量化することを決定。(2023/01/06)

[9]CES 2023:検温も聴診も撮影も「これ1台」で、遠隔診療を支援する小型・軽量な医療機器(日経デジタルヘルスより)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02316/010600017/?ST=ch_digitalhealth
米MedWand Solutionsは、2023年1月5日(米国時間)にテクノロジー見本市「CES 2023」でメディア向け説明会を開催し、自宅で生体データを取得できる小型の医療機器「MedWand」を紹介した。(2023/01/10)

[10]世界初!入会時に退会リスクがわかるアプリ!(Fitness Businessより)
https://business.fitnessclub.jp/articles/-/1402
コンビニフィットネス(R)の運営・フランチャイズ展開や、フィットネス会員の定着率のコンサルを手掛ける株式会社プロフィットジャパンが開発した退会予測アプリが注目を集めている。(2023/01/10)

[11]ユナイテッドアローズ、「MOTHER Bracelet(TM)」×ユナイテッドアローズ 24時間365日充電不要の活動量計でヒトと地球を健康に(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000151.000003197.html
ファッションを楽しみながら健康を叶えたい人に向けた限定モデルが登場。「Live healthy for someone.」をテーマに、健康をファッションの一部と捉え、自分の健康を世の中にシェアするライフスタイルを提案。(2023/01/10)

[12]ラントリップ、ランナー向けアプリ「Runtrip」、走ればマイルが貯まる「Runtripマイレージプログラム」を提供開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000016697.html
本機能では、毎週貯まったマイルに応じて、カフェチケットやランニングアイテムなどお得な特典を獲得できる抽選チケットを得られたり、ステータスが上がることでさらにランニングを楽しめる機会を得られます。(2023/01/10)

[13]エーテンラボ、『しずおかナッジで運動チャレンジ』実証事業に参画
https://a10lab.com/news-20230110/
静岡県内企業の社員を対象にナッジを用いた身体活動目標達成度や歩数の増加度、ヘルスリテラシー向上の度合いを測定し、そのデータを統計解析し、今後の県の健康増進事業に活用します。(2023/01/10)

[14]ベースフード、2022年日経優秀製品・サービス賞「最優秀賞」受賞のお知らせ
https://basefood.co.jp/news/1311
完全栄養食「BASE BREAD(R)ミニ食パン・プレーン」が、日本経済新聞社が主催する「2022年日経優秀製品・サービス賞」にて「最優秀賞」を受賞。(2023/01/11)

[15]『mHealth Watch』注目ニュース:Hydreight、「看護師向けUber」更新されたアプリをリリース
https://mhealthwatch.jp/global/news20230116
ヘルスケア業界における働き方が大きく変わろうとしています。今回紹介する『Hydreight』は記事にあるように、看護師がまるでUberのように自由に働けるというものです。(2023/01/16)