こんにちは。リサーチコンサルタントの脇本和洋です。

本編では、我々のリサーチ活動の中から海外の注目事例を毎月1回紹介しています。
本年1回目の今号では、あえて事例は紹介せず、「米国事例をヒントに発想する際の注意点」についてお伝えします。
この注意点を理解することで、これからあなたが米国事例をヒントにアイデアを出す時のアウトプットの質を高めてください。

特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編

米国事例をヒントに発想する際の3つの注意点

本編を読んでくださっている多くの方は、ヘルスケアビジネスの先端をいく米国事例からヒントを得て、日本での新サービス・新規事業に役立てたいと思っていることでしょう。

・米国事例って、そのまま日本で展開してうまくいくだろうか?
・日米文化の差ってあるのでは?
・日本特有の考え方や社会性があるのではないか?

私がクライアント企業のリサーチプロジェクトに入った場合、こうした議論によく発展します。

そこで、今回は

「米国事例をヒントに発想する際の注意点」として、特に押さえておきたいポイントの中から、代表的なものを3つに絞ってお話します。

<3つの注意点>

1)健康意識の差を考慮する
2)文化の違いを考慮する
3)地理的違いを考慮する

1)健康意識の差を考慮する

米国の医療保険制度は日本と違います。
米国では公的医療保険は一部の人に限られ、多くの人は民間の医療保険会社と契約します。
その違いもあり、米国の医療費は日本より高い傾向にあることは、ご存じの方も多いでしょう。

つまり米国では、

・病気になりたくない
・積極的に予防したい
・そのためにお金を使っても構わない

といった健康意識の高い人が多いということ。

一方、日本は、この真逆です。
全体的に日本の医療費は米国より低いこともあり、健康意識は米国ほど高くない。

このような日米の健康意識の差を考えると、どう米国事例を見ればよいでしょうか?

端的にいうと、「日本人の健康意識は米国より低いので、米国事例をそのまま日本で展開しても長続きしない」ということです。

米国で売れているサービスであっても、日本で展開するなら、「2倍3倍強力な継続支援サービスを追加する必要がある」。
それぐらいで覚えておいていただくとよいと思います。

2)文化の違いを考慮する

米国と日本では、文化も違います。
例えば、今日本でも話題となっている「瞑想」。

米国では、

・東洋の神秘的なもの
・あのスティーブジョブズ(Apple創業者)も行っていた
・googleが採用

といった、よいイメージがあります。

一方、日本で瞑想は「怪しいもの」と考える人もまだ多いのが現状ではないでしょうか。
瞑想文化ができている米国。瞑想文化がまだ十分できていない日本。

このような日米の文化の差を考え瞑想サービスを日本で展開するなら、例えば、瞑想という言葉をあえて使わず、瞑想の本質を捉え、そしてサービスを企画するといった工夫が必要になってくるでしょう。

あくまで一つの例として瞑想をとりあげましたが、米国でブームになっているサービスであっても、日本で展開するなら「文化の違いを考慮し、その本質を見極めてからサービス展開する必要がある」。
こうした冷静さが大切ということだと思います。

3)地理的違いを考慮する

米国と日本では、国土の広さも全く違います。

米国は、病院に行く、フィットネスクラブに行く、リハビリに行く、歯医者に行くといった場合、多くは車を利用し、ある一定距離を移動します。
日本のように自転車で行ける場合は少ないでしょう。

米国では、サービスを受けるためには、一定の距離を移動しないといけない。
つまり、自宅でのオンラインサービス、そのものに価値が高いのです。

例えば、米国ではオンラインリハビリという市場が注目されています。
腰痛などになった人が、在宅でリハビリ運動を教えてもらったり、コーチングしてもらったりするものです。
いちいち、車で移動してリハビリを受けなくてよいというものです。

では、オンラインリハビリは日本でもそのまま受け入れられるでしょうか。

そもそも、日本では近所に整骨院や整形外科がある場合も多く、オンラインリハビリというものが米国ほど必要とされにくい地理的環境があります。

こうした地理的違いを無視して、米国で流行っているオンラインサービスを日本にそのまま持ってきてもうまくいきにくいと思われます。

米国では地理的環境で、オンライン化にそもそも価値がある。
日本で展開するなら、「単にオンラインにしただけでは価値は弱いはず。例えば、リアルとオンラインを融合させるといった継続の工夫が日本では必要になるのではないか」。
こうした地理的環境の分析が大切になると思います。

米国事例を安易に真似ることは避けたい

今回は、「米国事例をヒントに発想する際の3つの注意点」を紹介しました。

本編でも今年、数多くの米国注目事例を紹介します。
また、読者の皆さんは、本編以外でもたくさんの米国事例に触れることと思います。

米国事例をみて、「これは、日本で展開するとおもしろいのでは!」

そう思った際には、いったん今回紹介した3つの注意点を思い出してください。

・健康意識の低い日本で通じるか?
・文化の違う日本で合うか?
・地理的な違いがある日本でも大丈夫か?

「意識」「文化」「地理」

この3つで、事例をチェックし、日本版アレンジのポイントを探っていってください。
この3つの注意点は、今年私が紹介する米国事例の中でも触れていきます。
本年もよろしくお願いします。 【脇本和洋】

参考>本編「海外事例にみる継続支援アプローチ編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー

健康ビジネスキーワード

「健康サービスビジネスの事業単位は大きくない_6/8」

「ヘルスケアビジネス」力 8 の6つ目になります。

健康サービス事業領域は多岐にわたり、全体としてのマーケットはとてつもなく大きいのですが、個別性が強くマスマーケティングに馴染まないという特性を持っています。

全体的な規模は大きくてもビジネスの単位がさほど大きくないということで、これは外食産業に似ています。

外食産業は全体では約25兆7,000億円という巨大マーケットですが1千億円を超える企業は現在13社しか存在しておらず約90%が中小零細個人商店で成立しています。

食なくして人間は生きていけませんし、1日3食を多くの生活者が摂っていますのでマーケットも大きい。
しかし、個人の好みがあるのでメニューはそれぞれの選択となり、種類は多いけど1カ所で全ての種類に対応はできず個別性ある店舗がいっぱいある状態で、それぞれはさほど大きな規模を持つことが効率的ではないということです。

広義な健康ビジネス市場規模 約26兆円を構成するビジネス現場の単位も外食と同様です。
ごく限られたプレイヤーしかマスマーケティングは展開していません。

健康サービス事業の特性として、健康効果は一瞬にして得られるものではないので、顧客との関係性を続けながら成果に導くことがビジネスの成功となります。
LTV志向のアプローチが望ましいことが分かってきています。

LTV志向アプローチのアイデアメモ(PDF)を用意しました。
貴社のマーケティングのヒントにしてください。

https://healthbizwatch.com/member/hbw2301-3
期間:2023年2月3日(金)まで

今週の注目記事クリップ

[1]パナソニック、冬の睡眠時「エアコンを使用していない」が7割…5人に1人が間違った快眠対策を実践~パナソニックが教える冬の睡眠時のエアコン活用術~
https://panasonic.jp/topics/2023/01/000000726.html
20代-60代の男女550名に冬の睡眠について調査を実施。睡眠実態調査とともに、冬の睡眠時のエアコン活用術&最新エアコン機能をパナソニックの睡眠改善インストラクターが紹介。(2023/01/13)

+++★追加解説音声:110秒(編集主幹 大川耕平)★+++
冬の睡眠対策間違っていませんか?
https://youtu.be/SvXkRUSACBM

[2]フジッコ、蒸し大豆の継続摂取は、運動不足気味の健常人に対して筋量および筋力を向上させることを証明【PDF】
https://www.fujicco.co.jp/corp/upload/pr_230111.pdf
https://www.fujicco.co.jp/
本臨床試験では、健康な男性タクシードライバーを対象に、蒸し大豆の摂取が筋量、筋力、および筋パフォーマンスに有益な影響を及ぼすかどうかを検討。(2023/01/11)

[3]Smart相談室、オンラインカウンセリングサービス「Smart相談室」の登録カウンセラーが100名を突破!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000089158.html
カウンセラー100名突破を記念し、導入支援に向けたキャンペーンを実施。対象期間中に新規でご契約いただいたお客様を対象に、初期導入費用を0円で提供。(2023/01/11)

[4]ウェアラブルデバイスを使った臨床研究はどれくらい広がっているか?(Heathtech DBより)
https://healthtech-db.com/articles/wearable_device_research
本記事ではウェアラブルデバイスの中でも腕時計型に焦点を当て、それを利用した臨床研究について実際の事例を見つつ今後の発展可能性について議論したいと思う。(2023/01/11)

[5]cotree、オンラインカウンセリングのcotreeが「自己肯定感を育むオンライングループワークショップ」を開催!
https://cotree.co/posts/cotree-self-esteem
公認心理師の長村明子先生をお迎えして、これまで自分がどんな人生を生きてきたか、そしてこれからどうやって生きていくのかをゆっくりと考えながら、自分の中にある自己肯定感を見つけて育むオンライングループワークショップ。(2023/01/11)

[6]マガジンハウス、Tarzanが運営する有料サービス「TEAM Tarzan」がリニューアル!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000269.000030125.html
TEAM Tarzanは、雑誌『ターザン』編集部が提供する「フィットネスの習慣化」を目的としたサブスクリプションサービス。バージョンアップして、より使いやすく、しかもお得にリニューアル。(2023/01/11)

[7]矢野経済研究所、デジタルセラピューティクス(DTx)の普及動向調査を実施(2022年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3160
国内のデジタルセラピューティクス(DTx)は、2026年以降にDTx上市が本格化し、2030年頃には普及が本格化すると予測。DTxパイプラインの拡大が本格化、様々なタイプのDTx開発が進む。(2023/01/12)

[8]筑波大学、運動は一人よりも仲間と行う方が認知機能の低下予防に効果的
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20230112141500.html
本研究では、高齢者4,358名を対象に「一人で行う運動や仲間と行う運動は、どの程度実践されているのか」および「どちらの運動が認知機能障害の抑制効果があるのか」について、4年間にわたる追跡調査により検証。(2023/01/12)

[9]サプリム、心臓リハビリテーション指導士による在宅での運動支援サービス「リカバル」を提供開始【PDF】
https://www.sapplym.com/assets/img/SapplyM_Press_Release_20230112.pdf
https://www.sapplym.com/
「リカバル」は、スマートウォッチと独自のウェブシステムで、遠隔で運動実施状況を可視化しながら、心臓リハビリテーション指導士の指導の下、在宅での運動を支援するプログラム。(2023/01/12)

[10]カラダノート、[1,200人のママが回答]新型コロナウイルス流行前と比べ約6割のママが「子どもの健康管理に変化あり」
https://corp.karadanote.jp/archives/5595
カラダノートとAuBは、ヘルスケア事業において業務提携を行いました。連携第一弾として共同で「子どもの健康管理に関する意識調査」を実施。(2023/01/16)

[11]女性ヘルスケアマーケティングの設計に役立つ、白書一覧(2023年版)(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/news-20170522-3
政府公表の白書の中から、女性ヘルスケアマーケティングに活用できるものをピックアップ(2023年1月時点)。消費動向、身体・健康状況、消費動向、働き方、社会課題など、女性たちの「今」がわかる!(2023/01/16)

[12]ネクイノ、女性アスリートの健康課題の解決へ向け、新たに「スマルナ for Sports」提供開始!適切なタイミングで婦人科受診が可能に
https://nextinnovation-inc.co.jp/news/48O83bGc8F6zEn4mOBpLFx
このたび予防医療の領域から健康課題に対し総合的にサポートすることを目的とし、女性アスリートの健康課題と業界の活性化に向けた「スマルナ for Sports」をスタート。(2023/01/16)

[13]味の素、「100年健脳手帳(R)」の認知機能キープスコアと将来の認知機能低下の関連性を解明
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/presscenter/press/detail/2023_01_16.html
国立長寿医療研究センターとの共同研究の結果、認知機能キープスコアと将来の認知機能の低下に関連性があることが認められ、研究成果の詳細が第26回日本病態栄養学会年次学術集会において発表されました。(2023/01/16)

[14]東芝データなど7社、スマートフォンアプリサービスによる食生活改善と食品ロス削減の実証実験について~インセンティブのある提案が消費者に与える効果を検証~
https://www.global.toshiba/jp/news/data-corp/2023/01/20230117.html
本実証実験では、参加するモニターの苦手食材データのほか、日々の食品の購入履歴データや食生活データなどを基に、食生活の改善を促す行動をスマートフォンアプリが提案し、モニターとその家族の食生活の改善に対する効果を検証。(2023/01/17)

[15]カリフォルニア・アーモンド協会、アーモンドの摂取がフィットネスに貢献することを示唆する新しい研究結果を発表(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000053148.html
今回の新しい研究では、アーモンドをスナック(間食)として摂取することで、運動後の疲労感や緊張感が和らぎ、回復時の足腰の強度が高まり、回復初日の筋肉損傷が軽減されることが明らかになりました。(2023/01/17)

[16]研究:電気で傷を治す「電子バンソウコウ」。回復具合の監視機能も
https://mhealthwatch.jp/global/news20230111
「電子バンソウコウ」は、電気刺激による治癒と治り具合を監視するセンシングの2つの役割を果たす。厚さは100ミクロンと薄く、直接皮膚に貼り付ける。(2023/01/11)

[17]数あるメンタルヘルスアプリから、どのように最良のものを選ぶか?
https://mhealthwatch.jp/global/news20230112
近年、メンタルヘルスアプリの人気が急上昇し、消費者に便利で手頃な方法でのサポートを提供している。多くの選択肢の中から自分のメンタルヘルスに適したものを見つけるにはどうしたらよいのであろうか?(2023/01/12)

[18]CES2023:時計部分のない健康志向のスマートウォッチ『Nowatch』
https://mhealthwatch.jp/global/news20230117-2
このデバイスには、皮膚コンダクタンスを介して汗腺活動の変化を測定するPhilipsのEDA(皮膚電気活動)バイオセンシング技術が含まれている。(2023/01/17)

[19]『mHealth Watch』注目ニュース:セイコーエプソン、集中度を可視化し、ウェルネステレワークの効果を実証
https://mhealthwatch.jp/japan/news20230123-2
今回注目するのは、セイコーエプソンが実施したウエアラブルデバイスとバイタルデータ分析アルゴリズムを用いて集中度や睡眠を可視化して、テレワークプログラムの効果を科学的に実証したというニュースです。(2023/01/23)