HealthBizWatch Authorの大川耕平です。
今回も、生活周りに普通に存在しているアイテムのウェルビーイングに関して考えてみます。

特集: ウェルビーイング・アイテム研究編

カスタマイズ・サプリメントとウェルビーイング

年初の本ビジネスコラムで社会トレンド×ウェルビーイングで創出されるビジネスジャンルのリストの中に“カスタマイズされたサプリメント”がありました。
今回はこれを取り上げます。


サプリメントは、実のところ明確な定義が存在していません。
「特定成分が濃縮されたカプセルや錠剤形態の製品」という表現が厚生労働省サイト内掲載資料での見解のようです。

目的に沿った栄養補助を助ける特定成分が濃縮された製品という理解で進めます。

国内サプリメントの市場規模は1兆678億円(2023年見込み:富士経済調べ)と、とても大きなマーケットであり、昔から、そして今後も激戦領域であり続けることは間違いありません。
それだけ現在社会における食事課題に強く、広く紐づいている関係にあります。

その中でウェルビーイング・アイテムとしてサプリメントを考えた場合、カスタマイズの持つ価値がどのようにビジネスに影響していくかを考えてみます。

カスタマイズへの期待

サプリメントの種類(目的・形状・提供方法)は幅広く、基本的に日常的な食事では補えない課題解決を期待して求めるものです。

例えば、がんや動脈硬化の予防としてビタミンCを摂るといった、消費する側に何らかの栄養バランス課題認識があります。
自分の栄養バランス課題解決を目的にサプリメントを選別し、購入する人が作るマーケットがすでに1兆円を軽く超えているということです。

自分のニーズに合った商品を選択できるというカスタマイズに期待する消費者が一定以上いるということでカスタマイズ・サプリメントは成立します。


消費者が自分の判断で商品バリエーションから選ぶというプロセスが、カスタマイズは少し複雑になります。
例えば、消費者が何らかのアセスメント(評価・分析)を受けて、自分に合った商品が特定され手に入るという流れになります。

カスタマイズの特徴は、対象者の望む成果に向けた成果に導く可能性のある成分の特定をするために評価分析するという工程の存在がそれです。

より自分にマッチしているという判断は、より効果があるという流れになリます。
では、カスタマイズ・サプリメントのユーザーは期待通りのベネフィットを得ているでしょうか?

カスタマイズ=ウェルビーイング効果は早合点

カスタマイズ・サプリメント提供側は理論的に効果があり(期待できる)それはウェルビーイングにもつながると考えているようです。

ここで問題提起です!
我々は、カスタマイズ・サプリメントは
「カスタマイズのプロセスデザインが未熟である」と考えています。

数多くのカスタマイズ・サプリメントを体験購入し比較分析してみました。
(今回、商品・サービス個別名は述べませんのでご了承ください)

多くのカスタマイズ・サプリメント提供プレイヤーは
「カスタマイズで顧客満足と商品価値がアップする」
という機能価値に注力しており、購入する側の情緒価値に目を向けていないように我々には見て取れました。

カスタマイズした商品・サービスを届けるまででケアが終わっているケースも散見されます。
サプリメントは継続利用によって効果を得ることのできるものなので、使い始めてからが本来的な価値創出アプローチ工程になるはずです。


例えば、
サプリメントをカスタマイズするために申込者の検体検査を行うサービスがあります。

  • 申し込み
  • 検体検査キットが届く
  • 検体を採取後、検査機関へ返送
  • 検体を検査機関で分析する
  • 検体検査結果とおすすめカスタマイズ商品が提案される
  • 購入する
  • 継続使用する
  • 成果を確認する
  • 継続する(止める)

大雑把に工程を表記しましたが、検体検査の場合、検体を送ってから結果まで2ヶ月間かかるものも珍しくありません。
ここをどう捉えるかです。


期待感の変化。
申し込み時10だった期待値は結果報告時にイコールでしょうか?
ここで確認したいのは申し込み時と結果報告時に申込者の期待値にギャップが生じるという現象です。

検体など期間を要する場合が特別なのではありません。
瞬時に結果を算出できるサービスであっても同様に結果を申込者と共有してからが本格的サービスであるという仕様になっているか?
相手の使用価値に働きかけるサービスデザインになっているか?

カスタマイズを利用する消費者がどのようなプロセスでどうやって満足し、継続利用(リピート)につながっていくかのジャーニー(顧客経験)が描けていないカスタマイズ・サプリメント事業者がとても多いという印象を持っています。

カスタマイズ・ウェルビーイング・インデックス(仮称)を創れ!

カスタマイズ・サプリメントビジネスは、ヘルスケアビジネスの型で言うと「チェック&ソリューション」になります。

この型の成功パターンは効果的なソリューションを売るためにチェックをうまく組み合わせてサービス精度を上げていくスタイルになると言われています。

売るのはソリューション価値という考え方です。
そのためのカスタマイズという関係構造です。

どのようなカスタマイズが顧客ウェルビーイングや満足につながるかの指標を設定するのはいかがでしょうか?
それをカスタマイズ・ウェルビーイング・インデックスと呼びたいと思います。
まだ現時点で存在していないものです。

カスタマイズ・ウェルビーイング・インデックス設定にはフード・ウェルビーイング・インデックスの存在が参考モチーフになると考えます。


※Food wellbeing indexとは
食事に満足している人は、満足していない人と比べて「ウェルビーイング」を実感する可能性が1.62倍高い。
食は収入と同様にウェルビーイングを構成する重要な要素であることが明らかになり、「食」と「ウェルビーイング」の間には強い関係性があることが世界で初めて立証されました。

Food wellbeing index(食でウェルビーイングできているかの問い)
・食を楽しめているか?
・自身が食べたものは健康的だったと捉えているか?
・食事の種類に幅広い選択肢があると感じているか?

Food wellbeing indexは、ウェルビーイングを目指すあらゆる食ビジネスの必須条件になっていきます。

※解説動画
https://youtu.be/2C_J09mW4qg

 
今後もカスタマイズ・サプリメント領域への参入プレイヤーは増加していくはずです。
そして、その勝負の分かれ目は本コラムで指摘した「カスタマイズ=ウェルビーイング」ではないことに気づき、ウェルビーイング・インデックスなどの指標にて顧客情緒価値にアプローチできるか否かにかかっています。

引き続き我々は、カスタマイズ・ウェルビーイング・インデックスのあり方を研究していく予定です。


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健康ビジネスキーワード

「ドラッカーに学ぶ_001」

企業の目的:顧客の創造
企業の第一の機能:マーケティング
企業の第二の機能:イノベーション

我々はこのように実践できているであろうか?
時々振り返ることにしよう。

出典:「マネジメント」ピーター・ドラッカー著 1974年
※ドラッカーの名言紹介を何度かしましたが、とても反響があるのでシリーズ化しますが連続ではなくて時々登場します。

今週の注目記事クリップ

+++★注目ニュース解説動画(解説:脇本和洋)★+++

【今回の注目】

ピノス、「6割以上の方が回答した、運動を習慣化するための秘訣は〇〇!」過去に運動を習慣化しようとした30~50代333人を対象に意識調査を実施(2024/03/19)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000137708.html

→解説はコチラ
ピノス、運動の習慣化に対する意識調査を発表(6分49秒)

https://youtu.be/q3IglVg-JIw



+++★注目記事クリップ★+++

[1]エムティーアイ、『ルナルナ』小学生・中学生専用モード「ジュニアモード」が誕生!
https://www.mti.co.jp/?p=34609
ジュニアモードでは、初潮の目安の予測や初潮後の生理日・生理周期の管理、初めての生理や体調管理の大切さなどが学べるコラム配信など、初潮前から生理周期が安定するまでの小学生・中学生を対象にサポート。(2024/03/21)

[2]ノボ ノルディスク ファーマ、「Cities Changing Diabetes (都市に蔓延する糖尿病の克服)」プログラムの日本で最初のプロジェクトとなる「郡山市における糖尿病対策についての共同研究」の第三弾 成果論文を発表【PDF】
https://www.novonordisk.co.jp/content/dam/nncorp/jp/ja/news/media/2024/03/24-10.pdf
https://www.novonordisk.co.jp/
産官学連携プロジェクトを円滑に進めるためのポイントについて、「質的心理学研究」誌(第23号<2024年>pp.5-24)に論文掲載。産官学連携事業の成立プロセス分析により、連携を円滑に進めるためのモデルが提示された。(2024/03/21)

[3]味の素、炊飯器専用調理料「白米どうぞ(R)」新発売
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/presscenter/press/detail/2024_03_21.html
糖の吸収が穏やかなご飯が炊ける、日本初の革新的な製品開発に成功!本製品を炊飯時に加えて軽くかき混ぜ炊くだけで、いつもの美味しさや食感はそのままに低GI値の白米が炊き上がる。(2024/03/21)

[4]ヴァカボ、食の資格者が集まるコミュニティ『食オタ』リリース(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000138922.html
栄養士や野菜ソムリエなどの“食のオタク”的な主婦の活躍場所をサポート。『食オタ』リリース記念イベントとして2024年4月19日“食育の日”に汐留にて、様々な食の資格者が集まる「食育祭」を開催いたします。(2024/03/21)

[5]笹川スポーツ財団など、厚労省「身体活動量の新基準」での達成率は49.5%(速報)【PDF】
https://www.ssf.or.jp/files/SSF_Release_20240322f.pdf
https://www.ssf.or.jp/
国民の身体活動量の実態把握の第一歩として、三大都市圏で無作為抽出された20歳以上80歳未満の男女を対象に活動量計を用いた調査を初めて実施。結果、厚労省の推奨身体活動量を満たしているのは全体の49.5%。特に若年・中年者で達成率が低いことが明らかとなった。(2024/03/22)

[6]Google、ヘルスケア分野でAIを強化~海外のヘルスケアニュース15選~(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/news-women-240322-1
編集部が今月のリサーチで気になった、海外のヘルスケアニュースをピックアップ。視点は、国内のヘルスケアビジネスに影響するニュース、ヘルスケアマーケティングの参考になる企業事例、テクノロジー。(2024/03/22)

[7]FiNC Technologies、健康経営優良法人 令和5年度傾向と6年度の調査票方針まとめ
https://company.finc.com/news/16359
健康経営の今後の方向性について。目指すべき姿として昨年の第9回健康投資WGから資料化されていますが「1.健康経営の可視化と質の向上」「2.新たなマーケットの創出」「3.健康経営の社会への浸透・定着」が挙げられています。(2024/03/25)

[8]CureApp、日本初「減酒治療アプリ」の製造販売承認申請~減酒治療による健康増進をより身近に届け、厚労省も推進するアルコール健康障害対策への貢献を目指す~
https://cureapp.blogspot.com/2024/03/cureapp_088105462.html
この度、製造販売承認申請を行いましたのでご報告致します。なお、治験結果の詳細につきましては、今後改めて国内外の学会、学術誌にて発表する予定です。(2024/03/25)

[9]ミラーフィット、「MIRROR FIT.」と「Dr.stretch」がコラボレーションした「ストレッチウェル体操」に次ぐ待望の第二弾を配信スタート(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000076951.html
春の新生活に向けてストレッチで健康に!鏡を見ながら毎日のストレッチ習慣で心も身体も健やかな状態へ。待望のDr.stretch第二弾コンテンツは「ペアストレッチ」「ゴルフストレッチ」「ツールストレッチ」。(2024/03/25)

[10]ピクシーダストテクノロジーズ、予防医学のアンファーと共同開発の超音波ヘアケアデバイス「SonoRepro(TM)」前回2,416%達成のMakuakeプロジェクト第2弾を開始
https://pixiedusttech.com/news/news_20240325/
今回のMakuakeプロジェクトでは、産後ママをはじめ髪にお悩みの方をサポートするトータルスカルプケアセットをご用意。そして女性でも手に取りやすいネイビーカラーのデバイスを新たに開発しました。(2024/03/25)

[11]森永乳業、『ビフィズス菌BB536/M-16V/M-63』3菌株の組合せがブラジル「ANVISA」より使用承認を取得
https://www.morinagamilk.co.jp/release/newsentry-4372.html
今回の承認により使用できる菌株とヘルスクレームが追加されたことを受け、急成長するブラジルのプロバイオティックサプリメント市場において更なる菌体事業の強化を図り、当国における健康・栄養に貢献することを目指します。(2024/03/25)

[12]理化学研究所と東京慈恵会医科大学、トウモロコシ由来化合物で肥満や脂肪肝を改善
https://www.riken.jp/press/2024/20240325_1/
コーンオリゴペプチドの肥満、脂肪性肝炎抑制効果を発見。本研究成果は、生活習慣病に関連する肥満や脂肪肝を予防・改善する機能性食品の開発に貢献すると期待できます。(2024/03/25)

[13]大阪産業局、2025年大阪・関西万博 大阪ヘルスケアパビリオン「展示・出展ゾーン」における出展企業377社を公表
https://www.obda.or.jp/press-release/20240325.html
「展示・出展ゾーン」では、万博に向けて新技術開発などに取り組む、大阪の中小企業・スタートアップの技術力や魅力を、26の「リボーンチャレンジ」を通じて、国内外へ広く発信していきます。(2024/03/25)

[14]経済産業省、「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を公表
https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240326003/20240326003.html
本ガイドラインは、企業における仕事と介護の両立支援を先導していくことが期待される経営層を対象にしたものであり、企業が取り組むべき事項をステップとして具体的に示しています。(2024/03/26)

[15]日本総合研究所、「高齢者の生きがい等意識調査2024」を発表
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=107510
コロナ前後における高齢者の行動や価値観、生きがいの変化を1,600人に調査。コロナ禍の影響によって変容した生活スタイルや日々感じている生きがい、そしておひとりさまが抱える将来不安などが明らかになりました。(2024/03/26)

[16]アイリス、AI搭載の咽頭内視鏡システムnodoca(R)を使用したインフルエンザ検査を受けた累計患者が5万人に到達(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000049.000035813.html
nodocaは日本で初めて「新医療機器」として承認されたAI医療機器として2022年12月23日に発売を開始。痛みが少なく、数秒~十数秒と判定結果もスピーディに得られる事から様々な医療現場で導入と利用が進んできました。(2024/03/26)

[17]RX Japan、第4回 健康経営 EXPO[春]
https://www.office-expo.jp/tokyo/ja-jp/about/hel.html
開催期間は5月8日(水)-10日(金)。健康管理、メンタルヘルスケア、運動支援など健康経営の最新トレンドが集まる展示会。同時開催「働き方改革EXPO」など。

[18]Headspace、若者向けマインドフルネスアプリ『Headspace XR』リリース
https://mhealthwatch.jp/global/news20240321
複合現実と仮想現実を利用して、ユーザーが動きや呼吸法を通じて心身のつながりを強化できるようにする新しい仮想現実アプリ。気分を高揚させるゲーム、ワン・トゥ・ワンのガイド付き瞑想などが含まれている。(2024/03/21)

[19]Dexcom、店頭販売グルコースバイオセンサー『Stelo』がFDAの認可獲得
https://mhealthwatch.jp/global/news20240322-2
『Stelo』は処方箋なしで購入できるウェアラブルバイオセンサー。最長2週間のバッテリー寿命を誇り、パッチを上腕の裏側に貼り付けて使用する。正常血糖および低血糖または高血糖のグルコースレベルの検出に役立てることができる。(2024/03/22)

[20]『mHealth Watch』注目ニュース:シンガポールで糖尿病とフットケア意識を高めるサービスを提供
https://mhealthwatch.jp/global/news20240401
ここ1、2年でアジア圏でのデジタルヘルス活用が増加し、しかも、ただデジタルを使っただけでなく、先行する米国での課題解決への取り組みとして活用しているレベルのデジタルヘルスが登場してきていると言えます。(2024/04/01)



+++★デジタルヘルス解説動画(解説:渡辺武友)★+++

【デジタルヘルス・ビジネスの疑問解消!】
デジタルヘルスのビジネスに関わる人に役立つ情報をお届けします。

第43回 職場におけるダイエット、デジタルヘルスだからできること(7分36秒)
https://youtu.be/NoYeUNoRBT4