こんにちは、渡辺武友です。
先日バルセロナで開催された世界最大級の携帯電話関連イベント「Mobile World Congress」で、大手企業が相次いでスマートリング参入を発表しました。
この動きはウェアラブルブームの再来となるのでしょうか?

特集:健康ビジネス・マーケティング&収益化編

スマートリングはウェアラブルブームの再来となるか?

Samsungをはじめ、大手企業の参入が発表されはじめた「スマートリング」。
2013年ごろに勃発したウェアラブル(フィットネストラッカー)ブームの再来となるのでしょうか?

今回は、ウェアラブルブームを振り返り、スマートリングの可能性について考えてみたいと思います。

ウェアラブルブームの到来

米国を中心にウェアラブルブームがやってきたきっかけはスマートフォンの浸透です。
当時(2010年ごろ)のAppleのiPhone、SamsungのGalaxyが牽引役となり、フィーチャーフォン(ガラケー)からスマートフォンへの乗り換えが進みました。

フィーチャーフォンではできなかった(限界があった)世界観の広がりとして、デバイス連携があります。
その一つが身に付ける端末「ウェアラブルデバイス」の登場です。
(ここではスマートフォンに連携できるウェアラブルデバイスと捉えてください)

中でも体の状態(主に活動量)を計測するものとして、NikeのFuelBandとJawboneのUPが注目を集め、購入困難なほどの売れ行きとなりました。
その後を追うようにFitbitなど複数の企業がスマートフォン対応ウェアラブル市場に参入し、一大ムーブメントまで発展しました。

現在ヘルステックが一般に普及したのは、このウェアラブルブームがあったからこそと言えるでしょう。

これらの端末の総称は「フィットネストラッカー(腕時計を腕に巻くタイプ)」が定着していますが、当時は「リストバンド」「ウェアラブルトラッカー」などと呼ばれていました。

ウェアラブルデバイスとしては、このブーム以前から歩数計(ペドメーター)や心拍計などがありましたが、例えば米国において歩数計は、疾患を持つ人が健康行動のために使うイメージが強かったようです。

そのような歩数計に対し、腕に巻くウェアラブルデバイスは、体の動き(活動量)を計測でき、見た目もブレスレットのようなおしゃれアイテムとして認知され、これこそがスマートに健康予防を行うためのものとして広がっていきました。

ウェアラブルブームの終焉

ウェアラブル(現フィットネストラッカー)ブームの頂点は2013年ごろです。
ベンチャー、大手含め、かなりの数の企業が参入しましたが、2013年ごろはFitbitの一人勝ち(米国の出荷数の7割がFitbitに)といった様相でした。

その後、スマートウォッチの登場によりガジェットマニアはそちらに移行し、一般コンシューマの中でのブームは落ち着き、ハイエンドモデルよりもXiaomiなどの低価格モデルの販売が伸びました。

また、市場が法人企業向けに移りだしたのもこの時期でした。

ウェアラブルブームのただ中では、表示がない、あってもLEDで達成度を点灯で知らせる程度に留めた、ファッション性が重視されたもの(JawboneやMisfitなど)も多くありましたが、現在のフィットネストラッカーは画面表示できるものが主流となっています。

現在のスマートウォッチとフィットネストラッカーでは、メインの機能(活動量、心拍など体に関するデータやメールやSNSなどのスマートフォンの通知連携)では重複するところもありますが、スマートウォッチの方が、より普段の生活に役立つ多種多様な機能に。フィットネストラッカーは、健康活動(フィットネス)のトラッキングをメインにする人が利用しているようです。

ウェアラブルブームのときには、表示のないファッション性の高いものが支持されていた時期がありましたが、フィットネストラッカーとして使う場合、現在のフィットネスの状況(ランニング中など)が、わざわざ連携するスマートフォンでアプリを開かないとわからないのでは不便なため、端末自体で画面表示できるものがより選ばれるようになりました。

スマートリングの市場ポジション

現在注目のスマートリングはどうでしょうか?
スマートリングにも、いくつかタイプがありますが、今回はヘルスケア機能をメインにしたモデルで見ていきましょう。

2013年ごろのフィットネストラッカーと比べると、測れる機能は格段に増えています。
しかし表示画面はなく、またメッセージなどの通知機能も基本的には備わっていません。

ここまでの話だけだと、
「画面のないフィットネストラッカーは淘汰されたのだから、あまり受け入れられないのでは?」
と思うかもしれませんが、スマートリングのポジションは少し違うようです。

体の状態の計測と「アプリによる洞察」が利用者にとってスマートリングによって得たいこととなります。

小さいながらも、複数のセンサーで取得したデータを使って、心拍変動や血中酸素濃度、体温などを活用することで、睡眠の質、ストレス度、生理周期など、日々の生活に役立つ洞察が行えるよう常に進化しています。

アプリでしっかりと自分の状態を振り返ることに価値を感じている、自分の健康状態に感度が高く腕に巻くようなデバイスを求めない人たちにとっては、理想的なデバイスなのではないでしょうか!?

では、次の課題として市場性です。

健康感度の高い人向けになると、利用者は限られるのではないか?
との懸念が湧きます。

一昔前であれば、一部の健康マニアだけで終わったかもしれませんが、Z世代などは、現在の40代50代が若いころより健康意識が高いことがわかっています。
以前の経験だけでは捉えられないターゲット層がすでに存在しているのです。

とは言え、現時点では10年前に起きたウェアラブルブームのような状態となる兆しは見えていないのが率直な感想です。

単に、フィットネストラッカーやスマートウォッチの代わりとなるようなポジションではなく、スマートリングならではの価値を磨き、そしてそのようなライフスタイルが憧れとなるレベルにまで引き上げる必要があると思うのです。

スマートリングはまだはじまったばかりです。
今ならブームを牽引する立場にもなり得ます。
新たなブームを引き起こすために何が必要であるかを考えるなら、今がそのときではないでしょうか。

ウェアラブルを活用してビジネスを拡大するために

どのようなウェアラブルであれ、使うか使わないかをユーザー任せにすると、成果に繋がりにくいのがヘルスケア市場です。

もちろんウェアラブルを使いこなし、健康効果を出す人もいます。
ですが、これらの方は全体の一部なのです。

多くの方には、ウェアラブルでチェックしたデータを活かす形に変換して届けることが必要です。

ただし、欲しいのは「正しい答え」ではなく、「ユーザーが行動できる情報」です。

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今週の注目記事クリップ

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【今回の注目】

日本総合研究所、「高齢者の生きがい等意識調査2024」を発表(2024/03/26)
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=107510

→解説はコチラ
生きがいを含めたやりたいこと、達成したいことなどの自己実現の欲求と健康との関係について(6分6秒)
https://youtu.be/6u-3PL_UhvI



+++★注目記事クリップ★+++

[1]ロッテ、シュガーフリーハイカカオチョコレート摂取後の血糖値上昇は砂糖入りと比べて小さいことを確認しました【PDF】
https://www.lotte.co.jp/info/news/pdf/20240328110748.pdf
https://www.lotte.co.jp/
本研究では、シュガーフリーハイカカオチョコレートまたは砂糖入りハイカカオチョコレートを摂取した際の血糖値上昇を比較しました。また、インスリンへの影響についても比較しました。(2024/03/27)

[2]ソニーネットワークコミュニケーションズ、AI予測分析ツール「Prediction One」、メディカル・データ・ビジョンの疾患発症リスク予測に技術協力
https://www.sonynetwork.co.jp/corporation/release/2024/pr20240327_0118.html
従来の「疾患リスクレポート」では、健康診断の結果から非AIロジックによって、6種類の疾患発症リスクが予測されていましたが、このたび「Prediction One」が技術協力することで機能が強化され、2024年9月末までに疾患リスク予測の対象を合計22種類に拡大します。(2024/03/27)

[3]TRULY、男性社員のホルモン値を計測し、健康意識の変化を調査
https://www.truly-japan.co.jp/news/20240327_press-release
KDDIとPoCを実施。髪の毛で検査できる男性ホルモン検査キット「MENOPO CHECK FOR MEN」を活用し、KDDI事業創造本部社員の意識変容を調査。男性の健康ケア促進やソリューションビジネスの可能性を探る。(2024/03/27)

[4]カルビー、朝食に関する意識調査を実施!朝に噛んで食べることは、脳の目覚めをよくする傾向に(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001292.000030525.html
朝食を噛んで食べている人は起床後1時間未満で脳が働き始める自覚があり、仕事やアルバイトで設定している目標を達成できている傾向があることがわかりました。(2024/03/27)

[5]メドレー、患者向け総合医療アプリ「CLINICS」で処方薬の当日配達を開始
https://www.medley.jp/release/20240328.html
Uber Eatsとの連携で、オンライン服薬指導を受けた患者に向け、オンライン服薬指導後、約30分を目安に処方薬をお届けする当日配達機能の提供を開始する。(2024/03/28)

[6]インサイツ、健診を良い状態で迎えるための事前対策「健診前チャレンジ(R)」によって 前回健診時体重と比べて5割が1kg減、3割が2kg減を達成
https://insights.jp/news/20240328
兵庫県建築健康保険組合から受託した「令和4年度厚生労働省成果連動型民間委託契約方式保健事業」において実施した「健診前チャレンジ」による成果をご報告いたします。(2024/03/28)

[7]アボット、糖尿病管理のための持続グルコース測定器「FreeStyleリブレ(R)2」を新発売
https://www.abbott.co.jp/media-center/press-releases/03-28-2024.html
FreeStyleリブレ2はアボットが2017年に発売したFreeStyleリブレの次世代製品で、一分毎にグルコース値をリアルタイムに測定でき、選択式アラート機能を備えている。(2024/03/28)

[8]ニッセイ基礎研究所、健康無関心層へのアプローチ
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=78078?site=nli
本稿では、健康への関心を「自分の健康状態を把握している」かどうかで評価し、健康状態を把握している人の特徴を捉えたうえで健康無関心層に対するアプローチを検討したい。(2024/03/28)

[9]issin、国内初のモチベーションに依存しない「生活習慣改善サービス」を個人向けに提供開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000103350.html
「Smart Daily」では、管理栄養士・保健師等の資格を持つ専属コーチとAIが協力し個々のライフスタイルを分析、FOGGの行動変容モデルに基づき、実行可能な「タイニールーティン」を提案、生活習慣の定着までサポートし、フォローアップし続けます。(2024/03/28)

[10]京王電鉄とヒトカラメディア、運動が習慣化する街を目指し「からだの保健室」「グループパーソナル」を活用した実証実験を開始します【PDF】
https://www.keio.co.jp/news/update/news_release/news_release2023/nr20240329_stadiums.pdf
https://www.keio.co.jp/
「からだの保健室」「グループパーソナル」を新たに下北沢エリアで展開することで、下北沢に関わる様々な人に運動を習慣化してもらい、コミュニティを軸とした健康な街(WELLNESS CITY)の創造を目指します。(2024/03/29)

[11]イオンリテール、健康維持に必要な習慣や行動に“健康ポイント”の付与開始【PDF】
https://www.aeonretail.jp/pdf/240329R_1.pdf
https://www.aeonretail.jp/
貯まった健康ポイントは100ポイントから値引きクーポンとして、健康食品や衛生用品などの購入時に利用できる。(2024/03/29)

[12]大塚製薬、会社経営者に聞いた自社社員に対する健康管理への意識調査(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000137054.html
4月からの労働基準法改正への認知は73.5%。しかし、65.5%の企業が「従業員の働き方や健康づくり」に関する対策を実施できていないという結果に。(2024/03/29)

[13]アンファー、花粉に関する全国一斉調査(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000474.000013377.html
花粉症罹患率が高い都道府県は同率1位で「福井県」「群馬県」という結果に。花粉症を罹患している人は昨年より約110%増加しており、花粉症に対して罹患不安がある人に関しても調査した結果、昨年から約120%増加する結果となった。(2024/03/29)

[14]エミナルクリニック、「肥満に対する意識」に関する調査を実施(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000118.000053998.html
今回の調査で、肥満への危機感は持っていても、なかなか肥満の解消に向けた行動をできない方が多いことが明らかになりました。(2024/03/29)

[15]アルピコ交通、アルピコタクシーとトヨタ・コニック・アルファ、バス・タクシードライバーの健康増進・習慣化によるヒヤリハットの低減に向けた共創サービスの実証実験を開始
https://toyotaconiq-alpha.co.jp/news/295/
特急・路線バス、タクシーのドライバーを対象に運転データと健康データを収集して分析・可視(スコア)化し、ヒヤリハットと相関のある「健康指標」をドライバー毎に判定する。(2024/04/01)

[16]ERISA、加齢による脳の構造変化をAIが数値化する『脳年齢検査』提供開始
https://www.erisa.co.jp/information/20240401/
MRIで撮像した脳画像を使用し、加齢による脳の体積変化をAIが数値化して脳の年齢を算出するサービス。脳の疾患がなく、認知機能が正常な方の脳の構造を基準として学習したAIによって、受検者の脳の年齢を算出する。(2024/04/01)

[17]オムロン ヘルスケア、朝と晩の体重変化量を自動算出し、無理のない減量をサポート!
https://www.healthcare.omron.co.jp/corp/news/2024/0402.html
スマートフォン健康管理アプリ「OMRON connect」に、朝晩の体重変化を目標体重以内に抑える生活習慣を繰り返すことで健康的に無理なく減量できる「かんたん朝晩ダイエット」機能を新たに追加。(2024/04/02)

[18]大塚製薬とジョリーグッド、FACEDUO「感情認知トレーニングVR」の提供を開始
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2024/20240402_2.html
「感情認知トレーニングVR」は、「社会認知および対人関係トレーニング(SCIT)」の理論をもとに構築された“良好な人間関係を築く能力を育てる”ことを目的とした感情を学ぶ世界初のVRトレーニングプログラム(専門医監修)。(2024/04/02)

[19]ソニーグループとエムスリー、エンタテインメントロボット“aibo”(アイボ)の医療・ヘルスケア領域における貢献や活用に関する調査結果を公開
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/News/Press/202404/24-0402/
公募により選ばれた全国100施設の医療機関に対して、3年間にわたりaiboの提供およびフォローアップを行い、定期的にインタビュー調査を実施。その結果、aiboの「医療・ヘルスケア領域における貢献や活用の可能性」について、90%がポジティブに感じたという調査結果が得られた。(2024/04/02)

[20]『mHealth Watch』注目ニュース:エムティーアイ、『ルナルナ』小学生・中学生専用モード「ジュニアモード」が誕生!
https://mhealthwatch.jp/japan/news20240408
今回サービス提供を開始した小学生・中学生専用モード「ジュニアモード」は、まさに『ルナルナ』との最初の接点になる機能だと思います。(2024/04/08)