HealthBizWatch Authorの大川耕平です。

とても基本的なことなのに、ヘルスケア&ウェルネスビジネスでその重要性を見失いがちなファクターの一つに関係づくりがあります。

特集: ヘルスビズウォッチ特集企画

第2回:「関係づくりから考えるヘルスケアビジネス」

目的達成率100%は存在しないヘルスケア&ウェルネスサービス

ヘルスケア事業プレイヤーにとっての目的は、顧客が望む健康成果を出すことです。
そして、そのためのサポートや健康に働きかける機能を持ったプロダクトの提供がビジネスとなります。


さて、いきなりですが顧客の目的達成率という視点で見るとどうでしょうか?


効果検証された機能やサービスの提供をして顧客は成果に辿りつけているでしょうか?
全てのヘルスケア&ウェルネスサービスでは、顧客の行動変容とその行動継続がアウトカムにつながります。

サービスをスタートする顧客100名に対して目標達成10名だとすると成功率は10%です。
我々が、このヘルスビズウォッチの企画編集・取材を始めた2000年初期のダイエットサービスの成功率は、高いもので5%強でした(平均では2%前後と言われており、失敗した98%はリピーター候補というマーケティングが成立していた時代がありました)。

2020年前後で平均成功率が12%を超えているのは、デジタル技術・環境の進化による顧客接点づくりの向上であると言われています(これはあくまでもダイエットサービスの数値であり他のサービスの成功率は異なります)。

つまり、デジタルにより強化された顧客接点の量と質が顧客との関係性及び顧客の行動継続に密接に関わっていると言えそうです。


本来、ヘルスケアやウェルネスの商品サービス開発は顧客成功率100%を目指して企画されているものですが、現実にはそうはなりません。

何か、健康づくりのためにみんなが考えそうな機能やサービス以外に重要なことがあって、我々はそれに気づいていないのではないか。
ここで、何か大前提を商品サービス企画やその周辺で間違っているのではないかという問題意識を持つ事業プレイヤーは稀です(笑)

こういった問題意識を我々ヘルスビズウォッチは絶えず持ちつつ国内外のヘルスケアビジネスモデル観察分析を続けてきました。

顧客との関係性への関心は?

自社プロダクト&サービスがどれだけ売れるかには関心が寄せられますが、これは当然です。
しかし、顧客との関係性がどうなっているかに関心を示す事業プレイヤーが国内にはまだ少ない。

新プロダクト&サービスが希少性やブームを背景に売れていても、ある時売れ行きが鈍り始める。
値段を下げ、販促費の増加傾向が続いている状態が続き、そこまで獲得した顧客資産も含めてバイアウトというケースをいくつか見てきました。
このケースが悪いと言いたいわけではありません。バイアウトもビジネスモデルです。

ヘルスケア&ウェルネス事業領域で売上(販売数)だけに戦略がフォーカスされることについて、多くのビジネスモデル事業推移のバリエーションを分析してきた我々ヘルスビズウォッチとして「ひと言」言いたいのです。


自社プロダクト&サービスを提供する顧客との関係性はどうなっているのでしょうか?


ヘルスケア&ウェルネスサービス事業のパフォーマンス改善の切り口は販促強化だけではありません。
北米圏先行ビジネスモデルの多くはここに気づき、顧客関係性から着手しているケースを我々は見てきました。


成功循環モデルをご存知でしょうか?
このビジネスコラムでも紹介したことがある、MITのダニエル・キム教授によるものです。

■成功循環モデル

1.関係の質
2.思考の質
3.行動の質
4.結果の質

この4つの要素が密接に絡み合い組織の活動全体(顧客も含む)の循環を良くも悪くもするという考え方です。

関係の質とは提供者とユーザーの関わり方のことです。
思考の質とは両者が何を考えているかが、行動の質に繋がり、それが結果の質に導く循環構造を持っています。

この4つの循環を成功に導くためには着手すべき順序があるというのが、この説の最重要コンセプトです。


成功循環はグッドサイクルと呼ばれ
関係の質→思考の質→行動の質→結果の質の順になります。

これに対してバッドサイクルと呼ばれるものが
結果の質→関係の質→思考の質→行動の質の順になります。

結果から入る場合、多くは悪い結果をどうするかを考え始め、それが関係の問題を指摘し、思考の質に影響し、結局良い結果に結びつかないというものです。

関係の質改善をどう考えるか?

プロダクト&サービスサポートサイトが存在し、顧客の個別ページが用意されているモデルを前提にチェックポイントをリストアップします。

1   パーソナライゼーションの強化
1-1  個別化されたサービス提供
1-2  行動変容のサポート

2   信頼性の確保
2-1  データプライバシーの保護(安心基盤の確立)
2-2  透明なコミュニケーション

3   エンゲージメントの強化
3-1  定期的なコミュニケーション
3-2  顧客参加型イベント

4   長期的な関係の構築
4-1  ロイヤルティプログラム
4-2  継続的なサポートと教育

各テーマの実施状況と顧客からの反応を分析し、どこに課題があるかを探り、優先順位を設定し、改善施策を愚直に展開します。


ここでヘルスビズウォッチとしてもうひと言お伝えしたいのは、「関係づくりはヘルスケア&ウェルネスビジネスを運営展開していく上での基本OSである」ということです。


自社で運用中のモデルをチェックしたい方はサポートしますのでお声がけくださいね。


●大川へのお声掛け、問い合わせや質問などがあればこちらへ(直接届きます)。
ディスカッションも大歓迎です!
https://healthbizwatch.com/consultation?athr=12
 

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今週の注目記事クリップ

[1]AI搭載の電動歯ブラシ、音声ナビで磨き残しなし。海外で快進撃の中国オーラルテック「Oclean」(36Kr Japanより)
https://36kr.jp/298027/
今年発売した新製品「Oclean X Ultra」は、骨伝導技術を利用して歯磨き時間やブラッシングの圧力などを検知し、音声で歯磨きガイドをしてくれる。(2024/07/24)

[2]「Ouraリング」、健康データについてAIコーチと会話できる「Oura Advisor」提供へ
https://mhealthwatch.jp/global/news20240725
Ouraによると、ユーザーは「Oura Advisor」にチャットで質問したり、これまでの習慣に基づいてパーソナライズされたレコメンデーションを得たりできる。(2024/07/25)

[3]投資ファンドOpenAI Startup FundとThrive Global、新会社「Thrive AI Health」を設立
https://mhealthwatch.jp/global/news20240725-2
Thrive AI Healthは、つながり、睡眠、フィットネス、ストレス管理、食事の5つの領域で行動の変化を拡大するのに役立つ、AI対応のパーソナライズされたヘルスコーチングを提供する。(2024/07/25)

[4]Samsung、指輪型ウェアラブル『Galaxy Ring』発表
https://mhealthwatch.jp/global/news20240726
Samsungのセンサー技術を搭載し、睡眠などを計測し、健康理解に役立つインサイトを提供。毎日のヘルスモニタリングに対応する。(2024/07/26)

[5]PST、音声バイオマーカー技術を活用した新プラットフォーム「VOISLOG(R)」を企業向けにリリース~健康リスクの早期発見を支援~
https://www.medical-pst.com/news/products/2024/07/24/2996/
「VOISLOG(R)」は、音声から様々な健康リスクを可視化する技術で、その技術を利用可能な複数のアプリケーションやシステム連携を可能とするWebAPIから構成される、クラウドベースのプラットフォームサービスです。(2024/07/24)

[6]エーザイとエコナビスタ、認知症エコシステムの構築をめざす業務提携契約の締結と協業を開始
https://www.eisai.co.jp/news/2024/news202454.html
このたび、日本の超高齢社会において喫緊の課題である認知症領域でのエコシステムの構築をめざして、業務提携契約を締結するとともに、協業を開始したことをお知らせします。(2024/07/24)

[7]コミューン、Communeを活用した「BASE FOOD」のオンラインコミュニティ「BASE FOOD Labo」が会員数5万人を突破
https://communeinc.com/ja/news/2024jul25
「BASE FOOD Labo」とは、ベースフードのユーザーコミュニティとして「健康があたりまえ」の世界を目指す研究員(ユーザー)と、食や栄養のプロフェッショナルたちが集う研究室です。(2024/07/25)

[8]オムロン、「PROTECT HEARTS PROJECT」始動
https://www.healthcare.omron.co.jp/corp/news/2024/0725.html
「血圧ケア」を通じて、日本の健康を支えるリーディングカンパニー6社が業界を越えた共同プロジェクトを立ち上げ。「血圧ケア」の大切さや、日々取り組める身近なアクションを啓発。(2024/07/25)

[9]Godot、世界初 AIと行動科学によりNTTドコモ「dヘルスケア」ユーザー体験向上を目指す(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000106742.html
AIを用いて、現状のサービスに対するスラッジ診断を実施し、利用者にとっての阻害要因を解消するとともに、利用者一人ひとりに合った後押し(ナッジ)を取り入れることで、適切な行動変容を促し利用者の健康サポートを強化します。(2024/07/26)

[10]日立システムズが提供する健康支援サービスでVポイントへのポイント交換を開始
https://www.hitachi-systems.com/news/2024/20240730.html
「生活リズムがよくなるアプリ」は、日立システムズが2022年2月からサービスを提供している、企業の健康経営を支援する「健康支援サービス(健康経営)」の従業員向けアプリケーションです。(2024/07/30)

[11]SOMPOインスティチュート・プラス、PHRガイドラインの活用により期待される効果~サービス品質向上と開発効率化の両立へ~
https://www.sompo-ri.co.jp/2024/08/01/13390/
PHRの適切な管理・活用を促す目的で、PHR事業者に向けたガイドラインの整備が進められている。本レポートでは、ガイドラインの状況を整理しつつ、その活用により期待される効果を確認する。(2024/08/01)

[12]『mHealth Watch』注目ニュース:タップひとつで眠りへ誘う『眠れるゲーム』が変えた睡眠習慣
https://mhealthwatch.jp/japan/news20240805-2
今回の『眠れるゲーム』は、入眠といった睡眠の課題の一つにシンプルにアプローチして、実際に入眠までの時間の適性につながっていることがデータとしても取れています。(2024/08/05)