HealthBizWatch Authorの大川耕平です。

繰り返しになりますが、この大川耕平の担当号は6月が最終号になります。
そこで、今号を含めた3回で今までの流れを総括していきます。


参考:「健康サービス・デザイン編」まとめ(2025.04.01号)

特集: ヘルスビズウォッチ特集企画

第11回:「ウェルビーイング・アイテム研究編」



今回は2021年11月から30回続いた[ウェルビーイング・アイテム研究編]を振り返り、「ウェルビーイング・アイテム」を再考します。

ウェルビーイングは“言葉”から“生活設計”へと進化しつつあると私はみています。
単なる流行語ではなく、日々の選択と行動が生み出す実感知として、個人と社会のあいだに根を張り、広がり始めていると言えます。
その進化の中心にあるのが「王道のウェルビーイング・アイテム」です。

このシリーズでも紹介してきた、食事、睡眠、運動(フィットタイミング)、腸活、そして“仕事”。これらの5つは、誰しもが日常的に関わる営みでありながら、正しく扱うことで自己肯定感と実感的健康を生み出す“未来への資源”へと変容するのです。


では、この王道5領域をいかに再定義し、ビジネスとして展開していくか。
以下に、5つの切り口を提示します。

1.「食事」は“選択力”から“編集力”へ


食事は「命をつなぐ営み」から「自己編集の場」へと進化していきます。
その鍵が「食事力=選択・調整・タイミング」の三位一体スキルです。


提案視点:いま問われているのは、何を食べるかより「なぜ、いまこれを食べるか」。
この“Why”を個人が言語化・可視化し、自分の生活リズムのなかに編集していける仕組みがビジネスチャンスです。

実例:BASE FOODやあすけんに見る、KeyFood×自己記録の掛け算。
次の一手は「食の自己編集を支援するAIフィードバック+レコメンド型食体験設計ツール」はいかがでしょうか。

2.「睡眠」は“回復”から“パートナーシップ”へ


睡眠を“測る”だけでなく、“共に整える”。
テクノロジーが介在することで、単なる休息時間が「自己回復力のスキル」として磨かれていくという解釈はいかがでしょうか。


提案視点:スリープテックは、Product-Led Growth型のサービス設計に移行すべき段階です。ユーザーが“自分の睡眠”を他者(企業・専門家・仲間)と対話する設計が求められます。

実例:スタートアップの睡眠改善サービス+既存ブランドの協業。
プロダクト単体でなく、「睡眠の質を軸にした価値観共有の場」をいかに提供できるかが問われています。

3.「フィットタイミング」は“習慣”から“シーンづくり”へ


フィットネスは、タイミング次第で“儀式”にも“日常のスイッチ”にもなります。
その柔軟性を、いかに都市生活や個人のライフスタイルに編み込めるかで強力なウェルビーイングドライバーになります。


提案視点:コロナ後、私たちは“いつでも、どこでも、ちょこっと”動ける環境に慣れました。重要なのは、時間や空間の制約を超えた「個別のフィットタイミング」の提供です。

実例:chocoZAPなどの「24h × 自由服装 × 通い放題」設計。
次なる視点は、“場所や服装ではなく、気分とリズムに寄り添うデザイン”。音楽、香り、映像、デジタルガイドと連動する「フィットスイッチ体験」が有望と見ています。

4.「腸活」は“健康法”から“自分理解のインターフェース”へ


腸内環境を可視化することで、自分自身のリズム・性質・感情の起伏を再解釈できる。
腸活は“心と体の翻訳機”になりつつあります。


提案視点:単なる「良い菌」ではなく、“日常データ × 感覚のメタ認知”としての腸活支援が新境地です。データは「点」ではなく「線」で見せることで、生活設計への応用が可能になるのではないでしょうか。

実例:ウンログやAuB社のような“可視化→気づき→行動”の三段活用設計。
今後は「気分・睡眠・腸内状態・食事ログ」の相関を自動マッピングするパーソナルBI(行動インテリジェンス)サービスが、次の主戦場になると思っています。

5.「仕事」は“成果主義”から“カルチャー創造”へ


仕事が単なる手段ではなく、人生のウェルビーイングそのものになる時代。
プロジェクトやチームの単位で「共に心地よい文化を築く」ことが、成果にも直結します。


提案視点:プロジェクト=小さな社会です。
その“文化”にウェルビーイングをインストールすることで、エンゲージメントは高まり、生産性も創造性も向上します。

実例:PMBOK第7版に見られる“人間中心プロジェクト設計”の波。
企業はプロジェクト憲章に「ウェルビーイング項目」を入れ、対話・称賛・助け合いルールを標準化すべきです。
これは、“心理的安全性”を制度として組み込む一歩です。

ウェルビーイング=人間のOS再設計


これら5アイテムに共通する視点は「個別化」「可視化」「接続性」です。
ウェルビーイングとは、五感と感情を媒介に“生きる力”を編集し直す試みであり、それを支援する企業・サービスこそが次代を牽引していきます。

あなたのビジネスは、この王道5領域のどこで、誰に、何を届けますか?


●大川へのお問い合わせや質問などがあればこちらへ(直接届きます)。
ディスカッションも大歓迎です!  

 

健康ビジネスキーワード

「共創はめんどくさい」

考え方も、ペースも、時には好き嫌いさえも違う。
思い通りにならないことの連続だ。

何度も立ち止まり、何度もズレを調整して、前に進む。
一人ならもっと早くできたかもしれない、そんな気持ちになる瞬間もある。
けれど、それでも共創に挑む理由は、たったひとつ。

自分一人では決して見えなかった景色に出会えるからだ。

新しいアイデア、意外な突破口、想像を超えるシナジー。
それは、違いに向き合い、時間をかけて関係性を育てた者だけが手にできる贈り物。
めんどくさいけど、なんだかんだ、また誰かと手を組みたくなる。
共創とは、不便さを超えた先にある、不思議な喜びだ。

今週の注目記事クリップ

+++★注目記事クリップ★+++

[1]Lark HealthとCVS Caremark、心臓代謝ケアで提携
https://ht-watch.com/2025/04/lark-healthcvs-caremark.html
慢性疾患の予防および管理プラットフォームを提供するLark Health社は、CVS Caremark社の「Point Solutions Management」プログラムを通じて利用可能になると発表した。(2025/04/18)

[2]英国の女性の健康の先駆者であるElvieが経営破綻し、搾乳器のスタートアップ企業Willowが買収
https://ht-watch.com/2025/04/elviewillow.html
Elvieの倒産は、今年600億ドル市場になると推定されながら、多くの逆風に直面している女性の健康の世界におけるより広範な課題の一部を物語っている。(2025/04/18)

[3]Appleの「AIドクター」、2026年に登場か
https://ht-watch.com/2025/04/appleai2026.html
AppleはAIの医師、つまり同社のモバイル機器に組み込むヘルスコーチによって、「ヘルスケア」アプリを強化するとみられる。(2025/04/22)

[4]『HealthTechWatch』注目ニュース:ローランド・ベルガー、グローバル各国の食と健康~未来予測と事業機会~
https://ht-watch.com/2025/04/post-23.html
ドイツに本拠を置く経営戦略コンサルティングファームであるローランド・ベルガー社が、食と健康に関するレポートを発行しました。ぜひチェックしてください。(2025/04/28)

[5]P2C Studio、シリーズ累計販売150万個突破!フィットネスインストラクター竹脇まりな監修のmarinessからMEGAドン・キホーテ渋谷本店にプロテイン自販機が登場!
https://p2cstudio.com/news/32699/
より多くの方にmarinessプロテインをお試しいただくため、2025年4月7日(月)からMEGAドン・キホーテ渋谷本店にプロテイン自動販売機を設置いたしました。お試しいただけるのは人気フレーバー3種、リッチチョコレート、苺ミルク、コーヒー。(2025/04/16)

[6]Wellmira、生成AIを活用した新たな食事画像認識サービスを開発、AI健康アプリ「カロママ プラス」に導入
https://www.wellmira.jp/news/press/2128/
生成AIと高度な検索エンジンを使うことで、メニューの認識精度を改善し、認識可能なメニュー数が現状の300メニューから15万メニューへと大幅に増加しました。(2025/04/17)

[7]テックドクター、医師400名に聞いた、スマートウォッチ活用の実態と可能性の調査を発表
https://www.technology-doctor.com/news/-wtqXpBq
調査では、スマートウォッチを診療に活用した経験のある医師が全体の31%、「今後、機会があれば活用してみたい」と回答した医師が42%にのぼり、全体の7割が活用に好意的であることが明らかになりました。(2025/04/17)

[8]MTG、ドコモがスマートリング「EVERING」の新シリーズの取扱いを開始
https://www.mtg.gr.jp/news/detail/2025/04/article_2345.html
今回、両社はより多くのお客さまに便利であんしん・快適な決済を体験いただくために、新シリーズ追加によるモデルの拡充を図るとともに、「EVERING」の取扱い店舗を拡大いたします。(2025/04/17)

[9]西川、自律神経センサー搭載の革新的クッション『コンディシート(ココロミエール)』がEXPO 2025 大阪・関西万博のサスティナブルフードコート『大阪のれんめぐり~食と祭EXPO~』に導入!【PDF】
https://www.nishikawa1566.com/news/news_file/file/20250420153612.pdf
https://www.nishikawa1566.com/
計測した生体情報を解析して来場者の身体状態に合わせた食事メニューを提案する新サービスを展開しています。(2025/04/21)

[10]リプロセル、SOMPOひまわり生命の女性向け福利厚生サービス「ライフイズ」と当社郵送検査「ウェルミル」の業務提携に関するお知らせ【PDF】
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4978/tdnet/2596024/00.pdf
https://reprocell.co.jp/
本提携に基づき、「ライフイズ」を導入されている企業・団体様向けに、「ウェルミル」の女性向け郵送ホルモン検査キットを提供いたします。これにより、働く女性のヘルスケアをより一層支援し、健康管理における新たな選択肢を提供することを目指してまいります。(2025/04/21)

[11]経済産業省、令和5年度補正PHR社会実装加速化事業(PHR利活用促進に向けた調査及び日常生活におけるPHRを活用したユースケース創出に向けた実証調査事業)報告書【PDF】
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/r5_hosei_seikatsu_houkokusho.pdf
https://www.meti.go.jp/
今年度の実証事業の概要、今年度の活動内容、本年度実証の検証結果、本年度事業の課題と解決の方向性、今後の事業ロードマップについて。(2025/04/18)

[12]ヘルスケアテクノロジーズ、HELPO遠隔特定保健指導サービスに「カロミルWebView」を導入
https://www.healthcare-tech.co.jp/news/20250422.html
ヘルスケアテクノロジーズでは、特定保健指導のパフォーマンス最大化の一環として、食事記録のユーザビリティ改善を図るため、HELPO遠隔特定保健指導サービスのサポート管理アプリ「HELPO」内に「カロミルWebView」機能を導入しました。(2025/04/22)

[13]ウンログ、[無料ウェビナー]腸活ブランド担当者必見!腸内環境基礎講座~ロイヤル顧客育成マーケティングもご紹介~
https://unlog-marketing-20250529.peatix.com/
開催日は5月29日(木)。腸活プロデューサー長瀬氏がマーケティング担当者のために「腸活」「腸内環境」の基本をわかりやすく解説します!腸活マーケティング担当者の方はもちろん、チームをマネジメントする層の方にもおすすめです。