こんにちは、渡辺武友です。

秋田名物の「いぶりがっこ」が、現在存続の危機に直面しています。
その理由は後継者不足などではなく、全く関係ない海外で、あるルールを作ってしまったためです。
こんなことがヘルスケアでも起きようとしています!

特集:健康ビジネス・マーケティング&収益化編

いぶりがっこが存続の危機!これは他人事?

秋田名物のお漬物「いぶりがっこ」が存続の危機に直面していることをご存知ですか?
その理由は、食品安全衛生の国際基準が改正されたためです!
この国際基準化により、もしかすると「いぶりがっこ」以外の伝統料理も販売できなくなる可能性があります。
この新たなルールを作った見ず知らずの海外の人たちは、日本の伝統など考慮してくれていません。

この話しは他人事ではなく、我々、ヘルスケアビジネスでも同じ状況になる可能性が出てきました。
今日の話し、心して読んでください!

なぜ「いぶりがっこ」が存続の危機なのか?

まず「いぶりがっこ」とはどのような食品かというと、燻製にした大根をぬか漬けにしたものです。
秋田の寒い冬の期間、数ヶ月に渡り漬け込んで完成します。

作っているのは主に農家の人です。雪深い秋田では冬の間は農業ができませんので、秋に収穫した大根を使い、冬の期間を利用して作ります。
まさに北国ならではのアイデアを活かした一品です。

ぬか漬けにする前に燻製にする作業がありますので、農家の納屋などを使って行い、燻製されたものは、そのまま納屋でぬか漬け作業を行っていることが多いようです。

この北国ならではの工夫で作られる「いぶりがっこ」が、改正衛生管理法の要件(漬物製造業も許可が必要な業種になったため)を満たさないため、存続が危ぶまれているのです。

HACCPを基準とした衛生管理の義務化

HACCP(Hazard Analysis Critical Control Point)とは、ISO 9001-HACCP(食品安全管理のガイドライン)という国際基準になります。
食品の加工・製造における食品の安全性を高めるための衛生管理方法になります。

元々はアメリカのアポロ計画の中で構想されたもので、宇宙食品の安全性を向上させるために導入されました。
宇宙に行くのに、異物や汚染物質が入っていたら大惨事ですので、厳格に管理しようと考えたわけです。
この考えは、普段の生活においても欠かせない要素であるとし、各国に広まりガイドラインが作成されていきました。

当然、規格は時代と共に改正が必要になります。
ここ数年、国内でも浅漬けによる食中毒が相次いだことからも、温暖化による製造管理環境を変えていく必要性がでてきたのです。

「いぶりがっこ」に関しては、主に農家の納屋で作られてきました。
今回義務化される衛生管理に対応させるためには、数百万円をかけて納屋を改築しなければなりません。
しかし、「いぶりがっこ」を製造する多くの農家は高齢者のため、設備投資をしてまで続けることができないのが実態なのです。

国際基準で定める以上、無視することはできません。
衛生面から考えれば、良かれとの思いでルールを作っているのですが、それにより今まで培った伝統が失われる場合もあるのです。

ヘルスケアも国際標準で厳格化へ

我々ヘルスケアの領域でも、上記のようなことが起きようとしています。

現在、

ISO/TC 314 Ageing Societies
WG4 Requirements and Guidelines for Promoting Wellbeing
ISO/NP 25554 Guidelines for Promoting Wellbeing in Local Communities and Organizations

「WG4高齢社会におけるウェルビーイングを実現するための指針」

の策定が進行しています。

ウェルビーイングの中には、多くのヘルスケアサービス、製品が関連してきます。
先程の「いぶりがっこ」のように、国際標準が制定されると、ご自身の製品やサービスを思ったように販売することができなくなる可能性があるのです!

今までは医療領域であれば多くの規制があるもの、逆に健康領域であればある程度は自由にビジネスが作れたわけですが、この健康領域にも医療領域と同じように規制がかかると思っていただければイメージしやすいと思います。

ここで考えやすいのは、「そのルールをいち早く知り、対応しよう」となるのではないでしょうか!?

もちろん、それも大切な考え方ですが、ルールを知ったとき、その対応のために数千万円の投資が必要になるかもしれません。
場合によっては1年間事業を止めないとならないかもしれません。
もし、まだそこまで軌道に乗っていないビジネスであれば、投資してまで事業を存続させるか判断することになるでしょう。

まさに農家が「いぶりがっこ」の販売を続けるか、やめるかの話しと同じと思いませんか!?

「いぶりがっこ」の場合は、すでにルールが定まってしまったので従うしかありません。
でもヘルスケアの場合は違うのです。
まだルールを作っている段階なので、自社ビジネス優位に活用することができるのです!

自社ビジネスを優位にするための事業戦略

「WG4高齢社会におけるウェルビーイングを実現するための指針」は、現在策定中です。
実はこの策定中であれば、自社ビジネスが優位になるよう提案をしてもよいのです。

「国際標準で自社ビジネスを優位にしていいの?」

こう思ったかもしれません。
なんだか怪しい話しをされていると訝しんでいるかもしれませんね(笑)

実はすでにグローバルスタンダードとして、このような取組みが当たり前に行われています。
世界的な企業、GEやIBM、Googleも規格が自社優位になるよう日夜戦っているのです。

日本企業のほとんどが、このような活動をできることすら知りません。
また知っている企業でも、世界の競合に阻まれ、自社ビジネスの優位性を提案できていないのが実態です。

こんな状況では、例え提案できることを知ったとしても、やったことがない企業ではできないのではないかと思うことでしょう。

しかし、今回は少し状況が違うのです!

現在策定している「WG4高齢社会におけるウェルビーイングを実現するための指針」は、議長国が日本になります。
策定中であれば、ウェルビーイングを達成するための具体策(ヘルスケアの取組み)を議長国である日本企業のみが提案してもよいのです。

具体的には、国際標準化のためには国際会議の場で日本を代表して提案します。
日本を代表するためには、所管する経済産業省ISO課(JISC)に、日本を代表して提案すべき内容と認められなければなりません。
ここを突破すれば、自社ビジネスを基準としたルール形成の可能性が出てくるのです。

もちろん、決して簡単なことではありません。
しかし、自社ビジネスが国際標準となれば、競合との大きな差別化となります。
競合はあなたのビジネスに合わせなければ商売ができなくなる可能性があります。

また逆に、競合がルールを作ってしまったら、あなたのビジネスが排除されることになりかねません。

国際標準とは、思った以上に無視できないものです。
他国では事業戦略に組み込むのがビジネススタンダードになっています。
そのうち考えよう、ではタイムアップになってしまいますので、気になった方は即行動に移してください。

はじめて聞いた方も多いと思います。
質問などいつでもお問合せページよりご連絡ください。
https://healthbizwatch.com/contact

オンラインカンファレンスで国内委員長より解説(終了)

2022年3月17日(木)~18日(金)の2日間、オンラインイベント
「げんきに暮らせる未来を創る 健康まちづくりEXPO2022」が開催されます。

このイベントで行われるカンファレンス、及び社会的健康戦略研究所ブースにて、ご紹介した国際標準化に関する解説を「WG4高齢社会におけるウェルビーイングを実現するための指針」の国内委員長を務める浅野健一郎氏が行います。

まもなく事前登録(無料)が行われますので、ご参加いただき、ブースに設けた相談コーナーにて気軽にご質問ください。

「げんきに暮らせる未来を創る 健康まちづくりEXPO2022」

共催:JTBコミュニケーションデザイン、朝日新聞社
出展者数:20社・団体(予定) / カンファレンス:10本(予定)
来場者数:3,000名(予定)
入場料:無料(完全事前来場登録制)

ウェブサイトはこちら
https://www.wellnesscity.jp/

健康ビジネスキーワード

「無謬性という圧」

これは、間違ってはいけないという圧。
国内の多くの組織に必ず存在する空気でもある。
さらに異端は認められにくいという同調圧がある中で新しいチャレンジをどう仕掛けていけばいいのだろうか?

(1)同社内でチャレンジできる環境を模索する
(2)転職する
(3)独立する
(4)外で育てる

正解は一つではないけれど、圧の範囲外で始めることを模索できるのであればベター。
新しいチャレンジは、ある程度の形になるまで圧を除外しないと育ちにくい。
あなたはどれを選びますか?

今週の注目記事クリップ

[1]Aesta、2022年版スポーツテックカオスマップをリリース
https://www.aesta.co.jp/sportstech-caosmap2022/
国内外スポーツテック領域の200サービスを全17カテゴリに分類。資金調達の動き、独自性、ユーザー数の多さなどを基準に独自目線で選出し、前作のスポーツテックカオスマップ2021.verから大幅にバージョンアップ。(2022/01/25)

[2]フローウィングと農研機構、超高齢社会に向けて 健康維持のためのミールセットを販売開始
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nfri/150421.html?utm_source=press&utm_medium=rss
NARO Style(R)PLUS MEAL SETは、おかず4種類、もち麦ご飯、べにふうき緑茶で構成。冷凍食品として提供され、冷凍庫で半年間保存可能。通常の小売を行う他、企業の健康経営(福利厚生)の一環としても利用できる。(2022/01/26)

[3]東北メディカル・メガバンク機構、尿ナトカリ比は低ければ低いほど高血圧有病リスクが低い、尿ナトカリ比は2.0を目標に
https://www.megabank.tohoku.ac.jp/news/47737
オムロン ヘルスケアとの共同研究。今後家庭高血圧に対する朝の尿ナトカリ比の目標値は2.0を目安とし、3日間以上測定することで高血圧予防・改善につながることが示唆された。(2022/01/26)

[4]サントリーウエルネス、年齢に対する価値観を見つめ直す「#実感年齢で生きようプロジェクト」をスタート!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000075017.html
「サントリーセサミンEX」の新ブランドメッセージとして、自分自身で感じる自分の年齢=「実感年齢」という考え方を提唱。本施策の第1弾として、日本人の年齢意識を大規模調査した「実感年齢白書」を発行。(2022/01/26)

[5]慶應義塾大学病院の糖尿病・肥満症遠隔診療において医療機器メーカー各社とのクラウド連携による「拡充型血糖クラウド管理システム」の運用を開始
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2022/1/27/28-92334/
医療機器メーカー3社のクラウドと本システムのデータプラットフォームを運用する中部電力のクラウド連携の開始により、MeDaCaシステムを介し、医師が各医療機器メーカーのクラウドの垣根を超えて血糖値データを活用することが可能となる。(2022/01/27)

[6]大塚製薬、精神科領域におけるVRを用いたソーシャルスキルトレーニングのプラットフォーム構築についてジョリーグッド社と共同開発・販売契約を締結
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2022/20220127_1.html
ジョリーグッドと大塚製薬は、本業務提携によりメンタルヘルスの地域連携プラットフォームを確立し、さまざまな精神疾患を抱える患者さんの社会参加に貢献していく。第一弾はVRで統合失調症患者の社会復帰を目指す。(2022/01/27)

[7]エムティーアイ、『ルナルナ』が協力する東京大学の妊産婦のうつ予防に関する研究にて、妊娠前の生理不順が妊娠うつと関連がある可能性が明らかに
https://www.mti.co.jp/?p=30919
今回、妊娠前の月経周期の変動(月経周期ごとの日数の差の平均)が6日よりも長い人は、変動が6日以内の人と比べて、妊娠期のうつの度合いが大きい傾向があるということが明らかになった。(2022/01/31)

[8]クナイプジャパン、お風呂とQOLに相関関係「ライフスタイルと入浴に関する調査」を実施(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000026654.html
68%の人がお風呂に入る際にシャワーだけではなく湯船に浸かる時間を設けていることが分かった。また、入浴頻度が高い人は「人生の充実度」に加えて「世帯年収」も高くなる傾向にあることが判明。(2022/02/04)

[9]富士フイルム、指先から自己採血した血液を用いた新型コロナウイルスの抗体測定技術を新たに開発
https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/7536
本技術とリージャー社の自己採血による郵送血液検査サービスのノウハウを組み合わせることで、今回リージャー社が新たに提供する「新型コロナウイルス抗体セルフチェックサービス」が実現。(2022/02/07)

[10]東日本旅客鉄道、日本初!駅ホーム上に「スマート健康ステーション」OPEN【PDF】
https://www.jreast.co.jp/press/2021/20220208_ho01.pdf
https://www.jreast.co.jp/
西国分寺駅ホーム上に、対面(リアル)で診療を受けられるだけでなく、非対面(オンライン)でも診療を受けられることで、複数の診療科による総合的な診療が受診できるハイブリッドクリニックを開業。(2022/02/08)

[11]bondavi、「非ダイエットアプリ」がApple(App Store)ダイエットアプリ検索順位3週連続4位(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000066061.html
「習慣化」をテーマにしたアプリ「継続する技術」が4位という高順位にランクイン。世間が「ダイエットは習慣だ」と気づき始めている可能性が示唆された。(2022/02/08)

[12]クラブツーリズムと学研ホールディングス、「生涯健康脳~いつまでも健康な脳を維持するために」開催【PDF】
https://www.club-tourism.co.jp/jpn/wp/media/2022/02/%E3%80%90FNL%E3%80%91press21-54_online-seminar.pdf
https://www.club-tourism.co.jp/
開催日は2月23日(水)。学研×クラブツーリズム共同企画第二弾。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター教授の瀧靖之先生による、認知症予防に役立つオンラインセミナー。

[13]CES2022:Sleep Numberが新スマートベッドを発表
https://mhealthwatch.jp/global/news20220126-2
Sleep Numberは、内蔵センサーで呼吸や心拍などを把握し、必要に応じて温めたりできるスマートベッドをすでに展開しているが、今回の最新版は、新たにいくつかのセンサーや機能を加え、さらにソフトウェアも改良。(2022/01/26)

[14]業界リーダーらによるAI連合「AI3C」設立
https://mhealthwatch.jp/global/news20220127-2
米国のヘルスケアおよびライフサイエンスのリーダーたちは、同領域におけるイノベーション推進のため「人工知能産業革新連合」(Artificial Intelligence Industry Innovation Coalition: AI3C)の設立を公表。(2022/01/27)

[15]『mHealth Watch』注目ニュース:RIZAP、家事代行のベアーズと提携開始
https://mhealthwatch.jp/japan/news20220207
今回注目するのは、RIZAPが家事代行サービスを提供するベアーズと提携し、料理の作り置きまでをサポートするというニュース。(2022/02/07)

[16]『mHealth Watch』注目ニュース:Calm、RippleHealth Groupを買収し、メンタルヘルスケアの提供を拡大
https://mhealthwatch.jp/global/news20220214
スリープテックの中で突き抜けたのがCalmです。入眠改善に注力したアプリを提供できたことで、すでに(推定)500億円規模にまで成長しているのです。そのCalmが激戦区となる法人市場に力を入れてきました。(2022/02/14)