こんにちは、里見です。

ヘルスケアサービスを提供する際、目標の設定をユーザー、利用者に委ねていたり、簡単な設定でスタートできるものが比較的多くあります。
しかし、この目標の設定は、健康への取り組みでは継続はもちろん、モチベーションに大きく関係しているのです。

そこで今回は、目標の設定を掘り下げて、健康課題の解決とその先にある自己実現達成の関係性について、ヘルスコーチングの視点で分解して解説してみたいと思います。

特集:ヘルスコーチングの視線編

ヘルスコーチングの可能性を探る:健康課題の解決とその先にある自己実現達成との関係性

1)入口、きかっけは健康課題の解決ニーズ

ユーザー、利用者が重い腰を上げて、何か健康への取り組みやヘルスケアサービスに接触するのは、主に健康課題が存在したり、課題を解決したいと思ったタイミングが主になります。特にBtoCの場合には、自ら課題を認識して解決したいと思ったことがきっかけ、動機となります。

この時点では、課題を解決したいということなので、目標を設定すると以下のような内容が一般的です。

例)
・体重をマイナス○○キロ、体重○○キロにしたい
・健診データを改善したい
・膝痛、腰痛を改善したい
などなど

このような改善ニーズが目標として設定されるのですが、この改善ニーズは常にユーザー、利用者の欲求として存在しているわけではありません。

減量、ダイエットしたいというニーズについては、自身の体型や体重は鏡や体重計で常日頃から認識することはできますが、悩みやニーズはその瞬間だけは大きくなりますが、すぐに萎んでしまう人も多いのです。

やはり、課題と向き合ったり認識するタイミングだけは悩みやニーズが強くなりますが、その意識はよっぽどじゃない限り続かないものなのです。

また、健診データを改善したいという課題や目標も、健康診断の前後だけは強くなるのですが、年に1回の健康診断の前後だけであって、健康診断が終了してある程度期間が経過すると、悩みやニーズへの意識は低下してしまいます。

特に、健診データは数値だけであって、ほとんどが身体の症状など何か感じることが無いため、健診データを改善したいという課題を持ち続けることは難しいものなのです。

2)課題を解決したいニーズはすぐに萎んでしまう

以前、この[ヘルスコーチングの視線編]でもご紹介しましたが、「マズローの5段階欲求説」では、健康への課題解決のニーズは、下から2番目の「安全の欲求」の範囲に該当します。

健康への「不安」や「課題」が存在していて、それらが欲求となって出てきて、改善したいといった欲求、ニーズになります。

「マズローの5段階欲求説」

(5)自己実現の欲求

(4)承認の欲求


(3)所属と愛の欲求

(2)安全の欲求

(1)生理的欲求

(1)から(4)までは「欠乏欲求」「欠乏動機」とも言われ、この「欠乏動機」は足りないと不満足が生じます。
そのため、自分には足りていない、欠けていると認識した時だけ欲求が大きくなり、満たされたり、気付かないと欲求自体を認識しません。

このように、上記で説明した減量、ダイエットしたいというニーズや健診データを改善したいというニーズなどは、課題を認識して解決、改善したいと思ったその瞬間だけ大きくなりますが、そのニーズを認識し続ける機会や環境によっては、すぐに萎んでしまうものなのです。

逆に、身体的に何か不安を感じている場合や、既に体調を崩している人にとっては、「健康」がダイレクトに「欲求」として認識されて維持されます。

不安や体調について自覚がない人に対して、予防のために「健康活動」に取り組みましょうといったサービスが難しい理由の一つには、自分ごととして捉えることができないため、「遠い存在」として聞こえてしまうことが考えられます。

3)自分ごと化に向けた目標は「自己実現の欲求」

では、健康課題に対する改善ニーズをきっかけにスタートしたユーザーですが、悩みやニーズへの意識が低下する中でいかに取り組みの継続、モチベーションを維持してもらうかというと、それはやはり目標の位置付け、設定が大きく関係していきます。

ヘルスコーチングでは、ゴールや達成イメージを常に意識して、具体的な行動(アクション)に取り組むことが基本的な構造です。
ゴールや達成イメージがしっかりと自分ごと化され、具体的にイメージできていることが、行動(アクション)の継続に関係していることはもちろん、モチベーションの維持にも影響してきます。

上記で挙げた、課題の解決としての目標例「体重をマイナス○○キロ、体重○○キロにしたい」「健診データを改善したい」は、実際には自分ごと化という視点では弱く、体重や健診データはあくまでも数値だけであって、そのデータを通した自分のイメージが湧きづらいものなのです。

やはり、自分ごと化という視点では課題の解決ではなく、達成した時の具体的なイメージや目的の具体化など、「マズローの5段階欲求説」の「(5)自己実現の欲求」の要素が必要になります。

4)「課題解決」から自分ごと化への「自己実現」の設定

ユーザー、利用者が重い腰を上げて、ヘルスケアサービスに取り組むきっかけや動機は、健康課題の解決、改善なのですが、そこからゴール、目標をより自分ごと化してもらうための「自己実現」の設定に向けた流れについては、2つの流れが考えられます。

(1):スタート、開始時に「自己実現」を設定する

健康課題の解決、改善を明確にした上で、その解決、改善のその先までイメージします。
スタート時のタイミングで、健康課題の解決、改善から一気に自己実現に向けたゴールの設定、それも自分ごと化できるイメージまで設定できるのかと、ちょっと疑問を持たれる人もいるかもしれませんが、実は解決、改善意欲が一番高い、いわゆるモチベーションが一番高い状態であるスタート時点では、自己実現に向けたゴールの設定まで到達することは比較的難しくはありません。

しかし、健康課題の解決、改善から自己実現に向けたゴールの設定については、コミュニケーションが必要になります。

(2):取り組みの途中で「自己実現」を設定する

健康課題の解決、改善でまずは取り組みをスタートしますが、取り組みを継続していく中で、出来そうだといった感覚や自己効力感が得られてくると、課題や改善の先に目が向いていきます。
このようなタイミングで、健康課題の解決、改善から一気に自己実現に向けたゴールの設定まで引き上げることが可能です。

この取り組みの途中での自己実現に向けたゴールの設定は、上記(1)のスタート、開始時に「自己実現」を設定した人に向けても、より自分ごと化を強める見直しのタイミングとして活用可能です。

取り組みの途中での自己実現に向けたゴールの設定では、出来そうだといった感覚や自己効力感が得られること、自ら気づくことがポイントになるため、やはりここでも、コミュニケーションによるサポートが必要になります。

5)自分ごと化への「自己実現」と「課題解決」との関係性

課題解決の目標から自己実現に向けたゴール設定とは、どんなイメージになるかというと、以下のような感じです。

例)
【課題解決としての目標】
・健康診断のLDLコレステロールの値を下げたい
・血圧の値を下げるため、減量マイナス○○キロ

【自己実現に向けたゴール設定】
・健康への不安がなく安心して仕事ができ、家族を守っていきたい
・格好良いウェアで趣味のゴルフを楽しんでいる
・集中して働き、家族とのプライベートも充実させたい

上記はあくまでも例、イメージですが、課題解決のその先を自分ごととして表現し自己実現に向けたゴール設定となっていることがポイントで、やはり最終的にはワクワクするようなゴール、そしてワクワクした気持ちで達成した先をイメージ化したり、ビジュアライズしていくことが重要です。

このように、健康課題の解決、改善の目標から、より自分ごと化してもらうための「自己実現」の設定をすることで、ゴールを達成した先にいる自分の具体的なイメージも出来上がり、そのイメージこそがワクワクするような目標設定となって、このあとの具体的な取り組みの原動力となりモチベーションにも大きく影響していきます。

ここで注意が必要なのが、「自己実現」のゴールを達成するためには、健康課題の解決、改善が前提になっており、また健康課題の解決、改善には、解決、改善のための行動、取り組みの継続が必須になっていることです。

ワクワクするようなゴール設定や達成した先の具体的なイメージは、一気に手に入れることはできませんし、ゴールに近づくためにはプロセスがあります。
特に、健康、予防領域における健康課題の解決、改善では、間違ったプロセスややり方ではスタート時よりも悪化してしまうケースも出てきます。

そのため、健康課題の解決、改善の目標から、より自分ごと化してもらうための「自己実現」の設定は、具体的な取り組みの原動力でありモチベーション維持に欠かせないものであり、出発点でもある健康課題の解決、改善を手に入れるための取り組みを継続する上でも必要な要素なのです。


今回お話した健康課題の解決、改善の目標から、より自分ごと化してもらうための「自己実現」の設定など、ヘルスコーチングには多くのアプローチの要素があります。

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健康ビジネスキーワード

「売り方が重要」

いいものをつくれば売れると考え行動するのが商品思考。
商品を売るときに顧客中心に考えるのが顧客思考。

1970年代初め、国内で大ヒットしたカップヌードルは米国へ進出するも当初は全く売れなかったという。
ラーメンが当初米国人にあまりにも馴染みがなかっただけでなく、意外と食に関してはコンサバティブであったことも影響していたらしい。
「いい商品なので使ってもらったら絶対気に入ってもらえる」型発想による現象。

そうです、いい商品だけでは売れないのです。
提供側の押し付けではなく、顧客側から見た納得理解のポイント探し、つまり顧客思考で売り方を切り替えてからカップヌードルの米国での爆発的ヒットが始まりました。

では、どうやって売ったか?
「これは、具の多いスープ」

あなたはどう感じましたか?

今週の注目記事クリップ

[1]ロッテ、継続的なガム咀嚼によって自律神経・気分状態が改善し、さらに唾液中の免疫成分濃度が増加することを確認【PDF】
https://www.lotte.co.jp/info/news/pdf/20220713092202.pdf
https://www.lotte.co.jp/
順天堂大学の小林弘幸教授、医療法人社団順幸会小林メディカルクリニック東京(理事長 小林暁子)と共同で「ガム継続摂取による自律神経、ストレスおよび唾液中のIgA濃度への影響に関する研究」を実施。(2022/07/14)

+++★追加解説音声:80秒★+++
https://youtu.be/1V_iFqt7Po8

[2]エムティーアイ、スマホでオンライン診療からピル処方まで「ルナルナ おくすり便」の提供開始!
https://www.mti.co.jp/?p=31686
「ルナルナ おくすり便」は、医師とのオンライン診療からピルの処方までをスマートフォンで完結できる、医療機関と利用者をつなぐプラットフォームサービス。(2022/07/14)

[3]ヘルステックとは何か?どんな市場か?(Healthtech DBより)
https://healthtech-db.com/articles/about-healthtech-market-overview
ヘルステックとは、ヘルスケアとテクノロジーを掛け合わせた言葉である。近年AI、IOT、クラウド、ウェアラブル等テクノロジーを用いたサービスが増えたことによって利用されるようになった。(2022/07/14)

[4]アシックスとアシックス・ベンチャーズ、スタートアップ企業との事業連携推進プログラム「ASICS Accelerator Program 3.0」を実施
https://corp.asics.com/jp/press/article/2022-07-14
プログラムの募集テーマは「3年後のスポーツ」で、2021年12月から募集を開始。DEMO DAYでは、実証実験ステージに移行する協業案を3件採択した。最優秀賞は、Point Fit Technology Limited。(2022/07/14)

[5]玄米酵素、“抗糖尿病作用”・“抗炎症作用”のある新しい生理活性物質FAHFAが“玄米・米糠発酵食品”に含まれていることが明らかに(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000075039.html
山形大学医学部付属病院との共同研究。FAHFAは、リンゴやブロッコリー、牛肉、鶏肉、卵黄に含まれることが報告されているが、“玄米・米糠 発酵食品”に含まれているFAHFAの量は、野菜・肉中に含まれるものに比べて極めて多く含まれていることが示唆された。(2022/07/14)

[6]「コロナうつ」を正しく知る:「コロナうつ」を乗り切るための3つの対策[第3回]外出自粛にも負けない習慣とは(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/column/00026/070600003/
コロナ禍の3大問題は「ストレス耐性の低下」「日光を浴びる時間の減少」「運動不足」。そしてこれらの対策として大切なことは「楽しく」「継続的に」「効果測定などのモチベーションを工夫する」ということです。(2022/07/15)

[7]サンルイ・インターナッショナル、女性のフェムケアを発信するメディアサイト「WOMB LABO」のショールーム型ストアを東京・代官山にオープン!
https://womblabo.com/topics/news/2460/
WOMB LABO Daikanyamaでは、代表の森田氏が処方開発した「INTIME ORGANIQUE」「Waphyto」「Mesoin」「Herboristerie」ブランドをはじめ、女性の健康課題に寄りそうフェムテックアイテム約60ブランド200SKUを取り揃えている。(2022/07/16)

[8]miive、これからの“働く”にフィットした新しい福利厚生をデザインする「miive(ミーブ)」正式リリース(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000074177.html
miiveは福利厚生に特化したプリペイドカード。利用用途と予算を設定した「ポイント」を付与して、さまざまな制度を柔軟に構築可能。エンゲージメントや生産性向上に繋がる制度をあらゆる規模の組織に導入できる。(2022/07/19)

[9]ミラーフィット、登録者数134万人超えの大人気YouTuberズボラストレッチ深井氏とのコラボレーションコンテンツを配信開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000076951.html
ハードな運動は苦手な方、忙しくてなかなかトレーニングに時間を割くことができない方にぴったりな「ズボラストレッチ 深井裕樹氏」のトレーニングコンテンツが「MIRROR FIT.」に登場。(2022/07/19)

[10]グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン、Haleon「Deliver better everyday health with humanity」(もっと健康に、ずっと寄りそって)のパーパスを掲げて発足(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000031922.html
シュミテクト、ポリデント、ボルタレン等のブランド・製品を有する独立したコンシューマーヘルスケアカンパニーの世界的リーダーの1つに GSK plc(GSK)からの事業分離が完了。(2022/07/19)

[11]健康行動ネットワーク、復職後、成果を出すための復職支援
https://kenkodo.net/refine/
8月3日(水)オンライン開催。ゲスト講師は一般社団法人リファイン就労支援センター代表理事 井田高志氏。

[12]綜合ユニコム、サウナ施設事業研究講座
https://www.sogo-unicom.co.jp/pbs/seminar/2022/0904.html
開催日は2022年9月7日(水)。今後の市場の競争激化が予想されるサウナ施設について、市場規模、施設タイプ別の最新動向、施設数・利用者数のデータ、これらのデータから見えるサウナ市場の実像と今後の展望について解説。

[13]アディダスとPeloton、新アパレルを共同開発
https://news.adidas.com/training/adidas-and-peloton-reflect-their-communities--everyday-greatness--with-latest-performance-and-lifest/s/e1aeb1b8-528f-4094-9236-f3d60594efe5
アパレルは運動前、運動中、運動後に使えるもので、スポーツブラ、Tシャツ、ランショーツなどがあり、両社から販売される。(2022/07/14)

[14]『mHealth Watch』注目ニュース:心臓ケア・バーチャルリハビリに2,000万ドル獲得
https://mhealthwatch.jp/global/news20220725-2
Moving Analyticsはまだ若い会社です。しかしポイントを押さえることで、達成率の高いプログラムを提供することができています。(2022/07/25)