こんにちは。脇本和洋です。

[海外事例にみる継続支援アプローチ編]では、海外トレンドや注目事例を紹介するとともに、健康サービスの肝となる「継続支援アプローチ」を紹介しています。

今回のテーマは、

  • 歯周病
  • 禁煙
  • アルコール依存

の3つです。

これらのテーマが注目される背景を簡単に述べた後、海外注目事例を紹介します。

特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編

歯周病・禁煙・アルコール依存に関わる注目3事例

2022年6月に政府が発表した「骨太方針2022」において、「国民皆歯科健診」の具体的検討が織り込まれました。今後、歯周病を指摘される人が大きく増える可能性があり、歯周病領域はホットな領域になるとされています。

また禁煙に関しては、政府が進める健康経営の認定要件の一つとして「喫煙率低下に向けた取り組み」が組み込まれており、企業を中心に禁煙の取り組みが活発化しています。

さらにアルコール依存に関しては、コロナ禍による不安・孤独の解消のためにアルコール依存の人が増えているとされます。日本を代表するアルコール依存の治療機関である久里浜医療センターでは、電話相談が前年より1.5倍増加しているとのことです。(注1)

そこで、今回はこの3つのテーマで、海外の注目事例を紹介することにします。

注1:あなたは大丈夫?コロナ禍のアルコール依存(NHK クローズアップ現代より)
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4558/

事例1.歯周病予防サービス「Quip NYC」

今までの歯周病予防サービスは、「電動歯ブラシ+アプリ」の形をとり、ブラッシングの時間などを記録するサービスが中心であった。
海外では専門家が見守ることまで行う事例も出てきている。

■事例名:Quip NYC Inc.
https://www.getquip.com/

■設立:2014年

■資金調達額:162億円(2022年6月時点)
※1ドル=100円換算

■サービス概要
Bluetooth経由でスマホと連動するスマート電動歯ブラシ

■主な売り先:B-C

■金額:スターターキット(本体、ヘッドブラシ、歯磨き粉、専用アプリ)60ドル

■サービスの流れ
1:スターターキットを購入し、専用アプリをダウンロードする

2:歯磨きをする

3:スマホで履歴(時間、長さ、磨いた範囲、強さなど)やワンポイントアドバイスを確認する

4:一日2回、2分間の歯磨きを実践するとポイントが付与され、たまると周辺グッズなどの特典がもらえる

■最新の動向
2022年4月、オンライン歯科診療を行うToothpic社を買収。オンラインで歯科検診し、次の検診までしっかりとquipで歯磨き習慣を維持する。quipアプリでの歯磨きの実施結果を、オンライン歯科医と共有できるしくみを作るものと予想される。

■サービス継続の工夫
・磨き方を記録し、振り返ることで歯磨きへの意欲を高められる
・ポイントをためて特典をもらえるインセンティブを用意している
・オンラインで医師に見守られることで、長く正しい歯磨き習慣ができるようにしている

事例2.禁煙支援サービス「Pivot」

今までの禁煙支援サービスは、禁煙補助薬などの薬のみを利用するものが多かったが、近年ではモバイルヘルスを取り入れながら、禁煙をサポートする事例が増えてきた。

■事例名:Pivot Health Technologies
https://pivot.co/

■設立:2015年

■資金調達額:40億円(2022年6月時点)
※1ドル=100円換算

■サービス概要
デバイス、アプリ、コーチング、コミュニティなどがそろった禁煙プログラム

■主な売り先:B-B、B-C

■金額(B-C):299ドル(2週間のニコチン入りガムのようなもの、2か月のコーチング、6か月の専用アプリがつく)

■サービスの流れ
1:禁煙をスタートさせたら、一日3~4回、呼気デバイスで呼気をチェック

2:専用アプリで進捗状況や体内の有害物質の減り具合、禁煙を続けるためのアドバイスなどをチェックし、モチベーションを維持する

3:コーチとチャットを通じてメッセージをやり取りしたり、コミュニティメンバーとのやり取りを通じて具体的なアドバイスやアイデアを学んでいく

■サービス継続の工夫
・デバイスは体内の有害物質(一酸化炭素物質)の減少をチェックできるので、体がきれいになる喜びがある
・コーチは「共感と寄り添い」を意識し、元喫煙者のコーチもいる
・コミュニティメンバーは、禁煙に成功した人と、現在禁煙に取り組んでいる人で形成されている。成功者からの知恵を得られる点が大きい

事例3.アルコール依存の克服支援サービス「Quit Genius」

アルコール依存の克服支援サービスは、今まで数多くは現れてはいなかった。
近年では禁煙サービスと同様に、モバイルヘルスを取り入れた新たな事例が増えてきた。

■事例名:Quit Genius
https://www.quitgenius.com/

■設立:2017年

■資金調達額:78億円(2022年6時点)
※1ドル=100円換算

■サービス概要
アルコール(たばこなど)の依存症を治療するデジタル治療サービス

■主な売り先:B-B

■金額:非公開

■サービスの流れ
1:医師による遠隔診療の予約、使用する薬とアルコール検知器、ケアプランの設定をする

2:薬とアルコール検知器が届く。専用アプリからの通知に合わせて薬を服用し、定期的に検知器でチェックし禁酒状況をモニタリングする

3:アプリでセラピーセッションによる学びと簡単なエクササイズ運動を行う

4:週ごとに担当カウンセラーとの電話による面談で励ましとアドバイスをもらう

■サービス継続の工夫
・モニタリングデバイス(アルコール検知器)とカウンセラーによる見守りにより、禁酒を支援する
・自宅で完結しており、依存症ということを周りに知られることがないので続けやすい

注目事例の共通点

今回紹介した3つの事例、いかがでしたか。

3事例に共通する継続の工夫は、
『モニタリング+人による見守り』ということです。

モニタリングは、測定機器(機能)を使って、実行状況を見える化するものです。
人による見守りは、コーチやカウンセラーがついたり、プログラム参加者同士によりなされるものです。

実は、この『モニタリング+人による見守り』という組み合わせは、ダイエット領域、生活習慣病領域では、数多くの成功事例が採用するパターンなのです。

そのパターンが、歯周病・禁煙・アルコール依存の領域でも導入されてきている。

トレンドの一つとしてみると、わかりやすいと思います。

今後も、どのように成果が生み出されていくか、注目していきたいと思います。 【脇本和洋】

参考>本編「海外事例にみる継続支援アプローチ編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー

健康ビジネスキーワード

「第3コーナーで馬券を買う」

そんなことができるのだろうか?
それを具現しているのがZARA。
何が売れるかを予測してつくるのではなく、売れているものをつくれば売れるという発想の転換がここにあります。
流行を予測するのではなく、既に流行し始めたものをいち早く取り入れてつくり販売するスキームを構築しているのです。

あなたのビジネスへのヒントはありますか?

※ZARA:全世界に2,040店舗を超える展開をしているスペインのファッションブランド
※出典:経営センスの論理 楠木建 より

今週の注目記事クリップ

[1]Fitbit、睡眠パターンを長期的に分析する「睡眠プロフィール」機能を発表
https://mhealthwatch.jp/global/news20220712-2
Fitbitが発表した新機能「睡眠プロフィール」は、10種類の指標に基づいて着用者の睡眠を月単位で分析する。(2022/07/12)

+++★追加解説音声:100秒★+++
https://youtu.be/Zlghzmp07BA

[2]キャスター、「リモートワークを選ぶ理由ランキング」「リモートワークの5つの誤解」を発表。出社ゼロ・1,400人フルリモートワーク企業が調査
https://caster.co.jp/6235
自社で働くメンバーを対象に「リモートワークと働き方に関する意識調査」を実施したところ、世間でのリモートワークのイメージとは異なる興味深い考察を得ることができた。(2022/07/04)

[3]メディカル・データ・ビジョン、糖尿病AIアプリ「dAlbet」でSBI証券と連携
https://www.mdv.co.jp/press/2022/detail_1810.html
「dAlbet」は、利用者自らが血液検査の数値を入力することで糖尿病のリスクなどが画面表示され、健康管理に役立てることができる、など。(2022/07/06)

[4]キッコーマン食品、「キッコーマン 大豆麺」シリーズ新発売!
https://www.kikkoman.co.jp/news/22020.html
「大豆麺」は、小麦に大豆を50%配合した、大豆でつくった“新しい主食”。高たんぱく・低糖質な「大豆麺」と専用スープ・ソースをセットにした商品。(2022/07/06)

[5]hacomono、フィットネス参加率を増進する「PROJECT 3%→10%」始動!
https://www.hacomono.jp/news/CX8B67g1Aye2/
世界に圧倒的な遅れをとっている日本のフィットネス参加率。「ウェルネス産業を、新次元へ。」のビジョンを元に、心身ともに充実した人をひとりでも増やすことを目的に、日本のフィットネス参加率を推進するプロジェクトを立ち上げ。(2022/07/06)

[6]アシックス、子どものあしの成長を予測するデジタルサービス「ASICS STEPNOTE」のさらなるパーソナライズ化を推進
https://corp.asics.com/jp/press/article/2022-07-07
主な機能拡充は、親と子のつながりを感じるパーソナライズされた足の成長予測。親の足長データを入力することで、一人ひとりの足の成長に一層寄り添った予測が可能に。(2022/07/07)

[7]アツラエ、Apple Watchで社員の健康とコミュニケーションを促進 企業の健康経営をアップデートする新サービス「Wellness Aile」をリリース
https://www.atsurae.co.jp/headlines/20220707.php
Apple Watchから取得するヘルスケアデータにより従業員の健康管理を行うことができる法人向けウェルネスサポートサービス。(2022/07/07)

[8]スキップ、国内最大級の40-50代女性向け美容健康メディア「つやプラ」固定読者数が400万人を突破!
https://skip.jp/news/line4million
「つやプラ」のLINE公式アカウントの友だち400万人のうち、91.4%が40歳以上の女性で月間約1,900万PVと、40-50代女性に特化して規模を持つ稀有なメディアとして存在感を強めている。(2022/07/07)

[9]KEYWORD:マイオカイン 運動と健康のメカニズムを解明するカギとなる物質(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/keyword/19/00170/
マイオカインとは、骨格筋(筋肉)から分泌される生理活性物質(サイトカイン)の総称。ギリシャ語のmyo(筋)とkine(作動物質)を組み合わせて作られた造語だ。(2022/07/07)

[10]博報堂、博報堂キャリジョ研「共働きファミリーの将来・未来への意識調査」を実施
https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/98712/
将来・未来について不安や不満を抱える人は8割超。不安を抱えながらも未来に対して考え行動をし始めている「未来行動ファミリー」は4人に1人の割合で存在。「時代に合わせて自分も成長や学習が必要」という価値観で、サステナブルな家事に関心を持つ。(2022/07/08)

[11]オトバンク、デジタル慣れするスマートシニアが拡大傾向<オーディオブック白書2022~シニア利用調査~>(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000226.000034798.html
昨年と比べて利用時間が増えていると感じているシニアユーザーは4割。1週間のうちオーディオブックを聴く時間は平均10時間。シニアユーザー7割は「スマートフォン」を使って聴いていると回答、など。(2022/07/08)

[12][2022年トレンド3]3次予防領域のヘルスケアソリューション(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/trend-220401-3
ウーマンズが毎年2月に発表する恒例の「女性ヘルスケア市場のトレンドキーワード」。2022年は8つのキーワードを発表した。本稿では「3次予防領域のヘルスケアソリューション」について解説。(2022/07/08)

[13]国際心理支援協会、オンラインメンタルヘルスケアサービスMeeetUがローンチ
https://ipsa.or.jp/news/4811/
こころの健康に関する知識や心理ケア、自助会・家族会の場を提供するオンラインサービス「MeeetU」β版を公開。(2022/07/09)

[14]ハーバー研究所、ユーザー約2,000人に「からだの不調アンケート」を実施【PDF】
http://www.haba.com/company/wp-content/uploads/2022/07/65d59b6c501848757dae909a373f463b.pdf
http://www.haba.com/company/
コロナ禍でからだの不調を実感する人が約8割。健康維持、病気予防のためにサプリメントや健康食品を摂取した人も約8割。(2022/07/12)

[15]トップアナリストに聞く「2030年のヘルスケアビジネス」:東証スタンダード市場、ぴかっと光る実力派ヘルスケア企業(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00019/070700028/
スタンダード市場の実力派ヘルスケア企業について、前回、前々回記事に続き、株式アナリストの和島英樹氏に注目5社を挙げてもらった。(2022/07/12)

[16]PHONE APPLI、自己開示から実現するウェルビーイング体感ツアーを開催
https://phoneappli.net/event/2022/20220805-event.html
8月5日(金)PHONE APPLI CaMPオフィスにて開催。キャンピングオフィスや焚火トークの効果、人事施策をはじめとしたルールやツールを活用し、スノーピークビジネスソリューションズとPHONE APPLIが実践した取組み事例を体験型で紹介するツアー。

[17]『mHealth Watch』注目ニュース:Mentally、ピアサポートに特化したこころのオンライン相談『mentally』
https://mhealthwatch.jp/japan/news20220719
今回の『mentally』というアプリは、メンタルヘルスに不安を抱える人向けということで、メンタルヘルスに不安を抱えた同じ経験を持つメンター(経験者)にアプリを通して相談できるというものです。(2022/07/19)