[健康ビジネス・マーケティング&収益化編]今年前半を振り返る、注目の「○○テック」
こんにちは、渡辺武友です。
国内外のデジタルヘルス・ニュースをクリッピングするmHealth Watchでは、今年前半も多くの「○○テック」を取り上げてきました。
その中でも、抜きん出た存在となるのはどのようなテクノロジーなのでしょうか?
「注目ニュース」を振り返りながらチェックしていきます!
特集:健康ビジネス・マーケティング&収益化編
「○○テック」とつくものが相変わらず多いですね。
以前、ヘルスケア領域は「ヘルステック」でまとめられていましたが、今では「スリープテック」や「フェムテック」など細分化した名称が主流です。
「○○テック」と言われると先進的な印象を与えるのですが、私は残念ながらワクワクしてきません。
10年以上見てきましたが「○○テック」として紹介されてきたものには、何度もがっかりさせられてきました。
その多くは、テクノロジー的にはすごいのかもしれませんが、ユーザーが健康課題解決のために「どうしても使いたいもの」にはなっていないためです。
そのような「○○テック」の中でも、極稀にキラッと輝くもの、実際に成果を出しているもの、今後に期待が持てる事例を、世界のデジタルヘルス・ニュースをお届けするmHealth Watchで紹介した今年前半の「注目ニュース」からピックアップしてみたいと思います。
「メンタルヘルステック」における価値化
・Z世代向け音楽療法アプリ『Spoke』、Ada Ventures主導で約1.7億円のラウンドを獲得(2月28日掲載)
https://mhealthwatch.jp/global/news20220228
メンタルヘルスへのアプローチではヨガや瞑想などが主なコンテンツとなってきましたが、すべての年代に適しているとは言えません。
Spokeは若い世代が興味を持つ、音楽を活用し、若い世代に支持されるアーティストと協力してコンテンツを研究開発してきました。
ヘルスケアでは、科学的に正しいことを押し付けてしまうことがよくあります。
薬物療法と違って、ユーザー(患者)自身が改善行動をしなければ結果に結びつかない場合、ユーザーが自ら率先して取組みたいと思えるアプローチが必要になります。
Spokeのアプローチはターゲットに合わせ、うまくテクノロジーを活用した事例として可能性を感じます。
・Calm、Ripple Health Groupを買収し、メンタルヘルスの提供を拡大(2月14日掲載)
https://mhealthwatch.jp/global/news20220214
Ripple Health Groupが提供するアプリは、患者やケアチームとのコミュニケーションツール「CareMemo」と、医療情報管理、服薬リマインダーが備わった「LikePaper」など、メンタルヘルスにおける予防よりも、治療に重点をおいたテックサービスを行っています。
そのRipple Health Groupを買収したのが、睡眠、ストレス改善など、予防寄りのテックサービスとして評価の高いCalmです。
Calmが新たに提供する「Calm Health」では、Ripple Health Groupのノウハウを活かし、予防から治療まで含めたメンタルヘルスを展開します。
この領域でCalmが抜きん出ているのは、テクノロジーを使った計測だけに留まらない、ユーザーが求める「眠れるようになりたい」「深い眠りを得たい」を実現するコンテンツを提供できていることです。
すでに多くのユーザーの支持を集めているCalmが提供するメンタルヘルスサービスであれば、抵抗感なく取組める人も多いのではないでしょうか。
進化する「エイジテック」
・脳のヘルステック企業LinusHealth、身体機能評価のスタートアップKinesisHealthを買収(4月11日掲載)
https://mhealthwatch.jp/global/news20220411
LinusHealthは、臨床医が認知機能や脳の障害を評価するためのデジタルツールで、研究現場、高齢者の生活、医療ケアなどに使われています。
KinesisHealthTechnologiesは、歩行、バランス、移動能力、転倒リスク、フレイルなどを評価するデジタルツールを提供しています。
身体機能と認知機能には往々にして関連があることから、脳に何か異常を検知したら、身体機能の変化を見ることで、改善策につなげていきます。
認知症に関する治療法、対策はまだまだ未知の領域です。
認知症の検知、評価だけでみても、すでに20年に渡り、多くの研究者、企業がチャレンジしてきています。
LinusHealthの取組みも、まだチェックからソリューションの流れが完成しているわけではありませんが、脳の変化から身体機能変化に結びつけることで、ソリューションの絞り込みがしやすくなってきました。
今後の展開に期待が持てます。
・研究:岡山大学、フレイルになる人は2年前に舌の動きが衰えていた!(4月4日掲載)
https://mhealthwatch.jp/japan/news20220404-2
・研究:身体活動・多様な食品摂取・社会交流の3つがそろうと介護予防効果は顕著に高まる(5月9日掲載)
https://mhealthwatch.jp/japan/news20220509
1つ目の岡山大学の研究では、舌の動きに衰えが出ている人は2年後にフレイルになることを発見しました。
2つ目の東京都健康長寿医療センター研究所では、「身体活動・多様な食品摂取・社会交流」の3つが単独ではなく、3つが組み合わされ、充足数が増えるほど、要介護リスクが大きく低減することを発見しました。
この2つの「注目ニュース」は、どちらもテクノロジーの話しではなく、現状の見えてきた研究結果になります。
この2つの状態を把握するためには、テクノロジーは活かせるのではないでしょうか!?
すでに声の状態をAI解析することは可能です。身体活動・多様な食品摂取・社会交流も個別にはチェックする方法は開発されてきました。
また、その先のソリューションもすでにヘルスケアビジネス領域で提供されてきたことが多く活用できます。
すべて1から開発するのではなく、組み合わせと、対象者に合わせた使いやすさのアイデア次第となってきます。
ブレイクする「○○テック」の条件
今回取り上げた「○○テック」は、「メンタルヘルステック」と「エイジテック」です。
いかがだったでしょうか?
「メンタルヘルステック」はすでに多くのサービスが提供されていましたが、教科書的な内容をテクノロジーに乗せた程度に留まるものがまだまだ多い印象でした。
今回紹介した2社は、ユーザーが自ら取組みたいと思えるものは何かを徹底追求してきたものです。
Calmはすでに大きな成果を出していますし、Spokeにも若者世代向けのメンタルヘルスを切り開いていく期待が持てます。
「エイジテック」では、特に高齢者が直接利用することを考えた場合、テクノロジー自体を使うことが障壁になることもあります。
特に脳の衰えは避けて通れないものになりますので、今はテクノロジーが使える人でも、1年後には使えなくなることも想定しなければなりません。
多角的なチェックとその状況に合わせたソリューションの選択が必要になりますので、AIの活用をはじめ、「エイジテック」にはさらなる進化が求められます。
成果を出す「○○テック」を開発するには?
「○○テック」と呼ばれる以前から、最新テクノロジーをつかったヘルスケアビジネスは、20年以上前から存在します。
しかし、数%のビジネスモデル以外は、ブレイクすることはありませんでした。
でも、ブレイクすることなく終了してしまった当時最新テクノロジーのビジネスモデルが、どんな過ちを犯してきたのか、情報が引き継がれることがないため、現在も、テクノロジーがすり替わっただけの、まったく同じ過ちを盛り込んでしまったビジネスモデルが多く存在します。
そのような実態と、何に注力するとブレイクするのか?
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「データの向こうに人がいる」
ヘルスケアサービスは、顧客のバイタルデータをコネクテッド関係のなかで把握しながらの、価値創造=価値提案が今後のスタンダードになっていくと言われています。
ヘルスケア領域にポジショニングしている国内プレイヤーの多くは、データの向こうに人がいるという事実に対しての真剣さが足りません。
それを解決するのは、コトとモノをつなぐ熱量です。
顧客からどういう声を聞き取るか?それとどうテクノロジーをつなぐか?
Apple NIKE Fitbitから学んでください!
今週の注目記事クリップ
[1]ベースフード、完全栄養食のパイオニア「BASE FOOD」シリーズ累計販売数5,000万袋突破!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000022258.html
2020年以降商品ラインナップは4倍に拡充。実店舗販売は14,000店舗に。会員数は、2017年の発売開始から約5年で30万人を超えている(2022年5月末時点)。(2022/06/29)
+++★追加解説音声:100秒★+++
https://youtu.be/_M8_u7_FxE4
[2]エス・エム・エス、健康保険組合向け新サービス「One to One禁煙指導サービス」を提供開始
https://www.bm-sms.co.jp/news-press/prs_20220630_onetoone-kinenshidou/
本サービスは、メールによる禁煙情報の提供と担当アドバイザーによるインタラクティブなサポートにより、3か月で卒煙を目指すプログラム。事業所別の喫煙状況や従業員の依存度等、健康経営にも活用可能な分析結果を提供。(2022/06/30)
[3]ハルメクホールディングス、「シニア女性の幸福に関する意識実態調査」をハルメク 生きかた上手研究所が発表
https://www.halmek-holdings.co.jp/news/press/2022/t74o7yrjc/
法政大学大学院政策創造研究科 高尾真紀子研究室と共同で、50-84歳の女性507名を対象にWEBアンケートを実施。日本のシニア女性の幸福度は10点満点で7.77点、日本人平均よりも1.73点高い。(2022/06/30)
[4]東北大学東北メディカル・メガバンク機構、日本人5万人分の全ゲノム情報の解析を完了~3.8万人分の全ゲノムリファレンスパネルを公開~
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/06/press20220630-01-tmm.html
一般住民の集団を対象とした大規模な全ゲノム解析としては世界有数の規模であり、今後、日本における革新的な創薬をはじめ多様な研究開発に貢献することが期待される。(2022/06/30)
[5]ソトコト・プラネットとメディデント、ソトコト発の医食住ウェルビーイングメディア「Bene Vita(ベネヴィータ)」スタート!!
https://sotokoto-online.co.jp/news/20220630/
医療、食事、住(ライフスタイル)の情報を発信するWebメディア。Bene Vitaとはラテン語で「良き生活」「良き人生」という意味。(2022/06/30)
[6]大正製薬、身体内部からの冷却による「運動パフォーマンス向上効果」及び「睡眠の質改善効果」をヒト試験で確認
https://www.taisho.co.jp/company/news/2022/20220630001037.html
本研究では、内部冷却が体温及び運動パフォーマンスに及ぼす効果の検証と、内部冷却が深部体温の低下を誘導することで、高温多湿な夏場における睡眠の質の低下を改善する可能性について検討。(2022/06/30)
[7]Muscle Deli、パーソナライズフードD2Cの「YOUR MEAL」が大豆ミートなどを使用した新商品6メニューを販売開始!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000113.000025162.html
食事診断であなたに最適なプラントベースフードをお届け。人の健康だけでなく、地球のサステナブルな健康を目指し、プラントベースのボロネーゼ、キーマカレー、麻婆豆腐などヴィーガン対応の新メニューを開発。(2022/06/30)
[8]虎ノ門カイロプラクティック院、[テレワーク腰痛撲滅運動]世界一椅子に座る日本人に椅子の正座を習慣化して欲しい(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000098800.html
テレワークで悩みのひとつとなっている腰痛について、姿勢の改善からアプローチすべく、全国への普及を目指している「椅子の正座」を保つための座位補助器具であるZAGOOチェアーを2022年9月1日(木)より正式販売。(2022/06/30)
[9]キリンホールディングスとARROWS、「免疫」を学べる特別教材「免疫ケアで健康な毎日を!」展開開始
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2022/0701_01.html
小学6年生を対象とした楽しく簡単に「免疫」について学べる教材を全国の希望する小学校に無料で提供。ゲームや座学を通じて、45分間で楽しく「免疫」について学ぶことができ「免疫ケア」の重要性を啓発できる。(2022/07/01)
[10]凸版印刷、理想的なスイングを手に入れるゴルフトレーニングシステムを開発
https://www.toppan.co.jp/news/2022/07/newsrelease220701_2.html
アスリートの動作解析を基にした、初級者のスイングを効率的に改善するトレーニングシステムを販売開始。(2022/07/01)
[11]CORES、2週間で食生活が変わる。寝かせ玄米を使った体質改善「七号食プログラム」(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000091723.html
「七号食ダイエット」という言葉をご存じでしょうか?ファスティングや断食などの「空腹を我慢」する事も、「糖質制限」や「カロリー計算」などの面倒な事もない、まったく新しい体質改善のためのプログラム。(2022/07/01)
[12]クックパッドマート、生鮮宅配ボックス「マートステーション」導入マンションの総戸数が5万戸を突破(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000249.000027849.html
2019年より試験的にマンション共用部へのマートステーションの設置を開始し、エントランスで受け取れる利便性や非接触ニーズを満たす点などが評価され導入マンションが増加。(2022/07/01)
[13]エントリージャパン、呼吸筋トレーニングに関する情報提供・研究活動支援を行う「一般社団法人RMTJapan(日本呼吸筋トレーニング研究会)」2022年7月1日に設立(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000046732.html
変わる生活様式で呼吸力の衰えが急速、呼吸筋トレーニングによる健康増進を提案。「吸気筋トレーニングによる循環器機能の改善の可能性」をテーマにした医師向けオンラインセミナーを7月16日(土)に開催。(2022/07/01)
[14]SPORTEC事務局、「国際スポーツ&ウェルネスウィークエンド」日本初開催!参加クラブ登録受付中!
https://business.fitnessclub.jp/articles/-/1113
2022年9月16日(金)-18日(日)の3日間、世界140ヶ国で同時開催。国際スポーツ&ウェルネスウィークエンドは、2017年にフランスからスタートしたウェルネス啓発のためのソーシャルイベント。(2022/07/04)
[15]NeU、360度映像コンテンツのVR視線×脳活動計測 NeU-VR1.0体験会開催のご案内
https://neu-brains.co.jp/information/products/2022/07/04/2393.html
大学や企業の研究者を対象とした360度映像×アイトラッキング×脳活動計測アプリケーションの体験会。日程は2022年7月26日(火)、27日(水)、28日(木)の3日間を予定。(2022/07/04)
[16]ACAO SPA & RESORT、瞑想で集中力を高める「マインドフルネス YOGA」を開始【PDF】
https://www.acao.jp/wp-content/uploads/2022/07/%e3%83%9e%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%89%e3%83%95%e3%83%ab%e3%83%8d%e3%82%b9%e3%83%a8%e3%82%acNEWS.pdf
https://www.acao.jp/
HOTEL ACAOが提供するウェルネスプログラム第二弾は、黄昏時の屋上庭園で自分自身と向き合い、集中力を高めた状態で行う「マインドフルネス YOGA」。開催日は2022年7月14日(木)-9月15日(木)の毎週木曜日。(2022/07/04)
[17]ピックアップ特集 リハビリ新時代:第6回 急増する「リハビリ難民」のための「一体型」施設が登場(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00053/061600009/
介護保険サービスと保険外サービスの同時一体的施設の拡充に力を入れているユニマット リタイアメント・コミュニティ。全国で高齢者介護事業を展開する同社が描くリハビリ未来図とは?(2022/07/04)
[18]Mentally、ピアサポートに特化したこころのオンライン相談Webアプリ「mentally」正式ローンチ(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000094420.html
「mentally」は、メンタルヘルスに不安を抱える方が、運や縁に依存せず、誰でも経験者(公認メンター)にオンライン上で相談し、ピアサポートを受けることができるWebアプリ。(2022/07/05)
[19]新社会システム総合研究所、GAFAMが見据えるヘルスケア戦略ーIPランドスケープで浮き彫りにする バイタルセンシング・医療・バイオICT技術開発動向とその狙いー
https://www.ssk21.co.jp/S0000103.php?gpage=22389
開催日は2022年8月19日(金)。グローバル市場を俯瞰する方法として注目される特許情報を中心とした分析手法「IPランドスケープ」を用い、GAFAMのヘルスケア分野動向を概観した事例を紹介する。
[20]脳データのスタートアップRuneLabsが、AppleWatchベースのパーキンソン病トラッカーでFDA認可を取得
https://mhealthwatch.jp/global/news20220629
パーキンソン病向けの『StrivePD』ソフトウェアは、AppleのMovement Disorder APIを利用して、Apple Watchからパーキンソン病の震えや運動障害症状を追跡することができる。(2022/06/29)
[21]調査:多くのデジタルヘルススタートアップは、臨床試験や規制当局への提出が行われていない
https://mhealthwatch.jp/global/news20220701
JMIRに掲載された調査によると、規制当局への申請や臨床試験の数は、ベンチャー支援を受けているデジタルヘルス新興企業の多くが臨床的に堅牢ではないことが明らかになった。(2022/07/01)
[22]『mHealth Watch』注目ニュース:「自己組織化マップ」をAIで生成
https://mhealthwatch.jp/global/news20220711
今回の研究では「心理学的ウェルビーイング」つまり精神的状態が他の要素(コンディション)にどのような影響を与えているかを評価しています。(2022/07/11)