こんにちは。脇本和洋です。

[海外事例にみる企画ヒント編]は、ヘルスケアビジネスの継続利用度の向上をテーマに注目の海外事例をお届けしています。

今号は、2021年のヘルスケアビジネスのキーワードとなりそうな「デジタルセラピューティクス(デジタル治療)」と、その注目事例を取り上げます。

特集:海外事例にみる企画ヒント編

デジタルセラピューティクス(デジタル治療)の注目事例

デジタルセラピューティクス(Digital Therapeutics)は、デジタル治療とも呼ばれます。

日本デジタルセラピューティクス推進研究会によると、
「デジタル技術を用いた疾病の予防、診断・治療等の医療行為を支援または実施するソフトウェア等の製品群の一つ。薬機法上の許認可を要し、単独ないしは医薬品・医療機器と併用して用いられるもの」
とされます。

つまり、通常の医薬品と同じように、デジタル治療は医師によって処方されます。

米国では、2010年からFDA(米国食品医薬品局)が許可をだしており、デジタル治療が進んでいます。
例えば、

・糖尿病治療用:Welldoc「BlueStar」、voluntis「Insulia」
・薬物依存症向け治療用:PearTherapeutics「reSET」
・喘息治療用:propeller health
・パニック障害治療用:Palo alto health science「freespira」

などがあります。
多くは、在宅での治療が必要な疾患に対して、デジタル治療が承認されています。

日本でも、2020年に厚生労働省が、株式会社CureAppのニコチン依存症治療アプリ「CureApp SC」を薬事承認し、2020年12月から保険適用で「医師によるアプリの処方」が始まりました。

デジタル治療は、今後注目されていく分野です。

今回は、糖尿病関連のデジタル治療サービスとして最も歴史があるWelldoc社の「BlueStar」を紹介します。

医師とバーチャルコーチが見守る「BlueStar」

「BlueStar」は、米国で2010年に2型糖尿病の人向けのデジタル治療サービスとして初めて承認されたものです。生活習慣病領域では、一番歴史があるデジタル治療サービスです。
血糖値などのデータが医師と共有され、生活習慣の改善が続くための的確なアドバイスが得られることを特徴としています。

■事例名:welldoc(BlueStar)
https://www.welldoc.com/product/

■設立:2005年

■資金調達:55億円(2020年12月時点)

■売り先:保険会社、病院、企業

■FDAの承認
BlueStarは、2010年にFDAから承認を受けている

■日本展開
2019年にアステラス製薬と提携、日本(アジア)での展開を想定している

サービスの流れ

BlueStarのサービスは基本アプリを使って行われます。
サービスの流れは以下です。

1.血糖値、血圧などの記録をする

2.体重計、血圧計、スマートウォッチなど300以上の記録機器のデータとも連携し、データをアプリで見ることができる

3.測定された血糖値や、行動状況などに合わせ、バーチャルコーチによるリアルタイムフィードバックがある
(AIを使って状況に合わせて自動で表示される)

4.ウイークリーチャレンジを設定する
(食事を記録する、1日3食とる、毎日果物をとるなど)
(糖尿病管理で必要な、食事、運動、睡眠、ストレスなどの項目あり)

5.日々、読み物レッスン(アメリカ糖尿病教育協会が監修)を受ける

6.血糖値などのデータは医師と共有される
期間ごとのサマリーレポートが医師に送られ、病院の関係者で共有される。その情報に合わせて、アドバイスがある

7.近くのヘルシーレストランの検索も可能

複数の継続ドライバを絡める

BlueStarの紹介内容をみると、
「一人でなく、医師とバーチャルコーチに見守られながら糖尿病治療の改善行動を継続できること」
を、最大の価値として訴求しています。

つまり、『継続支援』に重点をおいているわけです。

スポルツでは、継続を支援する技術を、「継続ドライバ」と命名し、8つの要素に分けています。

※参考>継続ドライバとは(動画解説あり)
https://healthbizwatch.com/news-014

BlueStarはその中でも、

・ヘルスコミュニケーション(医師による見守り)
・パーソナライズ(個々の状況に合わせたバーチャルコーチからのアドバイス)
・モニタリング(血糖値などの記録)
・ヘルスナレッジ(読み物レッスン)

という要素を使っています。

BlueStarのサービスは、ヘルスコミュニケーションを中核に、パーソナライズ、モニタリング、ヘルスナレッジといったように複数の継続ドライバを入れて、工夫している点がわかります。

継続支援は、このように核となる継続ドライバを決めて、複数を絡めることが基本になりますが、BlueStarのサービスもこの基本にそったものになっているわけです。

治療行動の「継続支援」が充実したものが多いのが「デジタルセラピューティクス(デジタル治療)」のサービス。

2021年は、本メルマガでもBlueStar以外にもいくつか紹介していきます。
「デジタルセラピューティクス(デジタル治療)」というキーワード、今年は是非チェックしてください。 【脇本和洋】

参考>本編「海外事例にみる企画ヒント編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー

健康ビジネスキーワード

「どんな時でもアグレッシブでシャープなビジネスパーソンの共通点」

彼ら(彼女ら)は心とカラダの最適化法を知っている。
脳と心は一緒で、そして思考と運動はセットであることを知り調整実践(コンディショニング)しているからです。

今週の注目記事クリップ

[1]エムティーアイ、健康管理サービス「CARADA」、ヘルスケアに特化したオンラインサロンを開設!
https://www.mti.co.jp/?p=27825
第1弾は、健康学習学会名誉会長を務め、多くの企業で産業医を務める石川 雄一氏による、産業医のスキルアップを支援するサロン「スーパー産業医のすすめ」を1月6日(水)より開設。(2021/01/06)

[2]日本温活協会、「温活カオスマップ」を発表
https://www.onkatsu.or.jp/topics/detail/id=259
「温活」への注目度が高まり、様々な企業・団体が関連商品やサービスの提供を開始している。日本温活協会は、増加している温活業界の商品やサービスを調査し、可視化すべく温活に関わる商品・サービスを網羅した「温活業界カオスマップ」をまとめ、公開。(2021/01/06)

[3]日本調剤、東京23区全域を対象に医薬品即日配送の実証実験を開始
https://www.nicho.co.jp/corporate/newsrelease/20210107_nr1/
バイク便の業界最大手であるソクハイの即配サービスを使った医薬品即日配達の実証実験。東京都内の19店舗において体制を整備し、オンライン発熱外来を受診した患者さまを対象に、東京23区全域を配送対象地域として即日配送のニーズを検証。(2021/01/07)

[4]森永乳業、健康セミナー事業「健幸サポート栄養士」を開始
https://www.morinagamilk.co.jp/release/newsentry-3550.html
「健幸サポート栄養士」は健康経営を進める会社で社員向け健康セミナーを考えられている法人、自治体での市民向け健康講座などをご検討される自治体や教育団体を対象に、健康で幸せな毎日を送るためのメソッドを提供するセミナー型のサービス。(2021/01/08)

[5]ファミリーマート、「大豆ミート」を使用した新商品9種を発売
https://www.family.co.jp/company/news_releases/2021/20210112_01.html
2021年も高まる“健康志向”ファミリーマートが提案するサステナブルな食生活。“ピリ辛な担担風パスタサラダ”やおつまみとしても楽しめる“揚げ豆腐”など商品のラインナップを拡大。(2021/01/12)

[6]JEITA、日米企業のDXに関する調査結果を発表【PDF】
https://www.jeita.or.jp/japanese/topics/2021/0112.pdf
https://www.jeita.or.jp/japanese/
DXの取り組み状況は、全社・部門レベルを合わせると米国企業は約3割、日本企業は約2割が実践中で、2017年調査と比較して日本企業は著しく伸長したが、一方でいまだ半数近くが情報収集中や取り組みをしていない状況であり、未着手の企業が多いのが現状。(2021/01/12)

[7]パラマウントベッドとaba、排泄ケアシステム「Helppad」が介護の情報管理システム「SCOP」と連携を開始
https://www.paramount.co.jp/news/detail/169
今回のシステム連携は、「SCOP」の各端末画面で「Helppad」が予測したおむつ交換の適切なタイミングを確認することができる。「SCOP」の端末画面にて、介護記録業務やおむつ交換の適切なタイミングなどを一元管理することで、スタッフの業務の効率化を支援。(2021/01/12)

[8]dely、2021年、健康志向の高まりで注目される発酵飲料は「甘酒」(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000154.000019382.html
レシピ動画サービス「クラシル」は、利用者に対して料理や食意識、糀甘酒に関するアンケートを実施。糀甘酒に対して「発酵食品のため健康が維持できるイメージがある」という回答が最も多い結果になった。(2021/01/12)

[9]シード・プランニング、HOT Forum -医療・ヘルスケア分野におけるアウトカム評価研究会- 第1回「近未来社会におけるヘルスケアの在り方(仮題)」
http://www.seedplanning.co.jp/forum/outcome/2021/01.html
開催日は2月25日(木)。プログラム内容は「弘前大学COIが創造する健康ビッグデータとヘルスケア領域のデジタルトランスフォーメーション(DX)」「大阪大学が推進するSociety5.0と次世代医療・ヘルスケアに向けたパーソナルヘルスデータ(PHR)の活用実装」など。

[10]Peloton、フィットネス機器大手のPrecornを4億2,000万ドルで買収
https://mhealthwatch.jp/global/news20210106
この買収により、製造の多くを社内に取り込み、デバイスのサプライチェーンをより細かく制御できるようになり、研究開発チームを大幅に拡大して、100人の新しいスタッフを追加できると述べた。(2021/01/06)

[11]調査:2020年第3四半期のスマートウォッチ市場調査結果を発表
https://mhealthwatch.jp/global/news20210106-2
香港のCounterpoint Technology Market Research社は、2020年第3四半期のスマートウォッチ世界市場に関する調査結果を発表した。スマートウォッチの出荷量は、前年同期比で6%の増加を記録したようだ。2020年第3四半期は、Appleが28%でトップの座を維持。(2021/01/06)

[12]『mHealth Watch』注目ニュース:日経デジタルヘルスが厳選、2021年を占う医療関連の10大キーワード
https://mhealthwatch.jp/japan/news20210118-2
今回の医療関連キーワードは、あくまでも医療領域に関わるキーワードとなっていますが、10個のキーワードを見てみるとヘルスケア領域にも関連してくるキーワードがずらりとピックアップされている印象を受けます。(2021/01/18)