こんにちは。脇本和洋です。

[海外事例にみる企画ヒント編]は、健康ビジネスの新規事業、既存事業の継続利用度の向上をテーマに注目の海外事例をお届けしています。

今号も、先月につづいて「Global Wellness Trendsにみる注目事例(その2)」を紹介しましょう。

特集:海外事例にみる企画ヒント編

Global Wellness Trendsにみる注目事例(その2)

先月紹介した、「Global Wellness Trends」というレポート。
レポートでは、以下の10のキーワードが設定されています。

■2020 Global Wellness Trends
https://www.globalwellnesssummit.com/2020-global-wellness-trends/

10のキーワードでトレンドを紹介

1)FOCUS SHIFTS FROM SLEEP TO TRUE CIRCADIAN HEALTH(快眠リズム調整)
2)THE FERTILITY BOOM(妊娠力をつける)
3)ORGANIZED RELIGION JUMPS INTO WELLNESS(宗教とウエルネス)
4)AGING REBRANDED(中高年エイジングビジネス)
5)MENTAL WELLNESS AND TECHNOLOGY(メンタルウエルネスとテクノロジー)
6)WELLNESS MUSIC(ウエルネスミュージック)
7)THE WELLNESS SABBATICAL(仕事と健康の両立)
8)J-WELLNESS(日本のウエルネスビジネス)
9)IN WELLNESS WE TRUST(ウエルネスビジネスの信頼性)
10)ENERGY MEDICINE GETS SERIOUS(エナジーメディスン)

先月の[海外事例にみる企画ヒント編]では、1)2)3)のトレンド内に記載があった注目事例を紹介しましたので、今月は4)5)6)のトレンド内で記載のあった注目事例を紹介しましょう。

注目事例1:更年期女性に絞ったコーチングサービス「Gennev」

トレンド4)「AGING REBRANDED(中高年エイジングビジネス)」の中で紹介されている事例。

日本でも更年期女性の様々な問題をテーマにした商品は多いです。
しかし、競合商品との価格競争に巻き込まれ、継続購入につながらないケースもよく見られます。

海外では、まずサービスを提供し顧客との関係性を構築し、その後商品を継続的に販売することを狙う事例が数多くあります。
このパターンで更年期女性をテーマにしたのが「Gennev」です。

■事例名:Gennev
https://gennev.com/

■設立:2016年(サービス開始)

■資金調達:4.5億円(2020年10月時点)

■概要
・自分の更年期タイプを知る、自身の健康づくりの現状を俯瞰する

・ヘルスコーチと電話で話し、自分に合ったプラン(ゴール、健康行動)を知る(有料)

・サプリメント購入、場合によってはビデオ通話を使い医師の処方を受ける(有料)

・ヘルスコーチ、医師とメッセージをやりとりする(有料)

上記のような流れでサービスを受けます。ヘルスコーチはガイド役であり、ゴール設定をしてくれる人。コーチが寄り添いながら関係性を築きます。その結果、サプリメント購入行動の継続を促します。

注目事例2:メンタルウエルネスでのVR活用「Oxford VR」

トレンド5)「MENTAL WELLNESS AND TECHNOLOGY(メンタルウエルネスとテクノロジー)」で紹介されている事例。

メンタルのテーマは様々ありますが、高所恐怖症、強迫性障害(注)といった、日常生活の中で人が陥るテーマに関して、その克服を目指します。
今までは、病院での治療(薬など)、本、ワークブックなどを使ったものが中心でしたが、治療を長く継続できるものは少なかったです。

そこに、VR技術を使って解決を試みる事例があります。それが、Oxford VR です。

■事例名:Oxford VR
https://ovrhealth.com/
※サービス説明動画あり

■設立:2018年(サービス開始)

■資金調達:18億円(2020年10月時点)

■商品特徴
・仮想空間であえて困難な状況に入り込み、そこでの成功体験をもとに克服していく
・高所恐怖症は、平均してわずか2時間の治療で、患者の恐怖心を68%軽減するという。定期的に続けることで、さらに効果が増すものと思われる
・バーチャルコーチが、認知行動療法(CBT)を用いて治療を行う

(注)強迫性障害:わかっていながらも何度も確認を繰り返し、日常生活に影響がでます。例えば、ドアのカギを閉めたかといった確認を何度も何度も行ってしまう行為を指します。不安やこだわりが強いことが原因にあるとされます。

注目事例3:好きな音楽が、自分の運動リズムに合わせて早くなったり、遅くなったりするアプリ「Weav music」

トレンド6)「WELLNESS MUSIC(ウエルネスミュージック)」で紹介されている事例。

音楽のウエルネス効果として「リラックス」というのはどこにでもあります。
一方、音楽で運動を促進するという効果に結び付ける事例があります。それが、Weav musicです。

■企業名:Weav music
https://www.weav.io/
※サービス説明動画あり

■設立:2015年(サービス開始)
https://www.weav.io/about-us

■資金調達:5億円(2020年10月時点)
・サービス開始後わずか5年で売上1,000億を超える企業となったPeloton社からの出資も受ける

■アプリ概要
・自分のお気に入りの曲が、自分の走るスピードに合わせてテンポをリアルタイムで合わせてくれるようになるアプリ
・曲の1分あたりのビートがランナーの1分あたりの歩数に合わせて瞬時に適応する技術を搭載している

トレンド事例にみる「継続利用度向上の工夫」

今回は、2020 Global Wellness Trendsより、3つの注目事例(Gennev、Oxford VR、Weav music)を紹介しました。

  • Gennevは、「ヘルスコーチングサービス」で信頼を作った上で商品の継続購入を促す
  • Oxford VRは、VRを使って患者に「できる!という自己肯定感」を作り、治療継続を促す
  • Weav musicは、「お気に入りの曲」がいろんなリズムで楽しめることで、運動継続を促す

といった切り口で、それぞれ「継続利用度」を高める工夫をしている点には注目したいですね。

特に、ヘルスコーチングを使った継続利用度向上は、今や米国では先進事例のスタンダートになりつつありますので、ぜひ注目してください。 【脇本和洋】

参考>本編「海外事例にみる企画ヒント編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー

健康ビジネスキーワード

「マッチング発想」

不得意や不足を補うことも大切なのですが、異領域の才能や機能とのマッチングで化学反応を楽しむというスタンスも有効です。食わず嫌いは損をする時代へ、自分の可能性を信じましょう。

今週の注目記事クリップ

[1]日本調剤、メドレーが提供する調剤薬局窓口支援システム「Pharms」の全店舗導入を決定
https://www.nicho.co.jp/corporate/newsrelease/20201104_nr1/
「Pharms」は新しい患者体験と業務効率の向上を目指した調剤薬局向けシステム。一気通貫のオンライン診療・オンライン服薬指導の体制整備によるさらなる患者さまの利便性向上のため、全店舗に「Pharms」を導入することを決定。(2020/11/04)

[2]タニタ、「TANITA 4C Technology」搭載体組成計 4モデルを発売
https://www.tanita.co.jp/press/detail/2020/1104/
「TANITA 4C Technology」は、脂肪量や筋肉量などからだの厚みによる体格の個人差による計測値への影響を低減し、健康指標の正確性をより高めたハイスペックの家庭用体組成計。(2020/11/04)

[3]リンクアンドコミュニケーション、AI健康アプリ「カロママ」シリーズ、食事入力機能がリニューアル
https://www.linkncom.co.jp/news/press/459/
ユーザーの要望を明確にした上で、より便利に・簡単に利用できる入力画面へと改善。「解析結果とメニュー画像を関連付けて表示」「カロママでのみ導入されていた『音声入力』機能を、カロママ プラスにも展開」など。(2020/11/04)

[4]味の素、米国フードテックベンチャーキャピタルAgFunder Inc.および日本ベンチャーキャピタル(株)のファンドに出資
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/presscenter/press/detail/2020_11_05.html
今回のファンド出資を通じて、国内外のスタートアップ企業との関係構築の機会を増やし、さまざまな分野のベンチャー企業との協業を推進し、「食と健康の課題解決企業」の実現に向けた歩みを着実に進める。(2020/11/05)

[5]「高性能なおもちゃ」Apple Watch、病気発見につなげる正しい使い方を(日経デジタルヘルスより)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/110200663/?ST=ch_digitalhealth
医療機器ではないウエアラブル端末は、あくまで専門的検査を最適に実施するための『気付き』を与えるためのもの。医師は医療機器ではないウエアラブル端末で測定したデータだけをうのみにして、手術したり投薬したりしてはいけない。(2020/11/05)

[6]健康行動に取り組んでいない女性6割、なぜ無関心?(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/marketing-201104-1
食習慣・運動習慣の改善に関心・意向がない無関心層の女性は約4割、改善意向があるものの行動はしていない女性は2割で、合わせると約6割近くが、食・運動による健康行動を起こしていないことがわかった。(2020/11/05)

[7]カゴメ、全国の医師400名に「免疫力に関する調査」を実施【PDF】
https://www.kagome.co.jp/library/company/news/2020/img/20201106.pdf
https://www.kagome.co.jp/
本調査からは多くの医師が、秋以降は免疫力維持を今まで以上に意識すべきであることや、そのために“粘膜免疫”が重要であること、粘膜免疫維持のためにビタミンA摂取が効果的であると考えていることが明らかになった。(2020/11/06)

[8]資生堂、「ナイトオンラインカウンセリング」期間限定スタート
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003011
資生堂は、仕事や家事が終わった後の夜の時間帯に、ビューティーコンサルタントによるカウンセリングを希望するお客さまのニーズに合わせ、オンラインによる夜の時間帯(18:00-21:30)のカウンセリングを、期間限定で実施。(2020/11/09)

[9]明治と医薬基盤・健康・栄養研究所、世界初!たんぱく質摂取と筋肉増加の普遍的な相関関係をメタアナリシスで解明
https://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2020/1110_01/
これまでたんぱく質摂取量と筋肉量における増減の相関についての研究は、筋力トレーニングなど運動と組み合わせた研究が中心だったが、本研究では複数の研究結果を統合して分析するメタアナリシスの手法を用いて、日々のたんぱく質摂取量と筋肉量増加との間に普遍的な正の相関関係があることを、明らかにした。(2020/11/10)

[10]KOMPEITO、有機・無農薬野菜にこだわったサラダの自動販売機「SALAD STAND」が登場!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000015058.html
AIセンサーを利用して自販機周りの人の通過数・滞留数を計測し、そこから得た情報と購買データ・賞味期限・時間を組み合わせ、ダイナミックプライシングを構築していく。(※特許出願中)(2020/11/10)

[11]Garmin、新たに体組成計『Index S2』を発表
http://mhealthwatch.jp/global/news20201104-2
『Index S2』は、体重に加えて、体脂肪率、BMI、骨格筋量、骨量、体水分率を計測することができる。画面には過去30日間のグラフが表示されるため、時間の経過に伴う体重の傾向も確認できる。(2020/11/04)

[12]Apple、手首内の血管パターンなどでユーザー認証するスマートウォッチ-特許を取得
http://mhealthwatch.jp/global/news20201109-2
この特許は、スマートウォッチのような腕時計型デバイスにおいて、手の甲側の手首表面と接しているセンサーで手首内部の組織パターンを取得し、パターンの特徴からユーザー認証する技術を説明したもの。(2020/11/09)

[13]『mHealth Watch』注目ニュース:Omada Healthのデジタル糖尿病予防プログラム、12か月後の血糖値と体重を改善
https://mhealthwatch.jp/global/news20201116
Omada Healthがネブラスカ大学、ウェイクフォレスト大学と進める研究についての報告です。おそらく今後も引き続き長期データを取っていくのでしょう。このような実験は、2-3ヶ月程度と短期間のものが多く、今回のように1年単位でデータ収集することは重要です。(2020/11/16)