こんにちは、渡辺武友です。
ヘルスケアにおいてAI活用も、もはや当たり前になってきました。
とは言え、ヘルスケアの中でAIが活用される場も多岐に渡っていますので、現状の整理をしてみたいと思います。

特集:健康ビジネス・マーケティング&収益化編

ヘルスケアにおけるAI活用

AI(Artificial Intelligence:人工知能)がヘルスケアに使われることが当たり前になってきました。

一般的にヘルスケアへのAI活用で有名になったのは、IBMの「Watson Health」ではないでしょうか(※今年「Watson Health」は投資会社Francisco Partnersに売却)。
「Watson Health」が立ち上がったのは2015年。その後、OracleやMicrosoftなど大手IT企業が次々とAIを使ってヘルスケアへの参入を果たしました。

話しは変わりますが、今の車業界にIT企業の参入が増えてきたことなど、まさに数年前のヘルスケア業界で起きたことだと、思ってしまいます。

今後、AIはヘルスケアでどのような役割を担っていくのでしょうか?
今回は、現状の「ヘルスケアにおけるAI活用」を共有していきます。

AIは医療領域から発展

ヘルスケアを健康予防から医療までとした場合、AI活用は医療の領域では、創薬、疾患の診断、レントゲン画像解析、医療従事者の記録やデータベース参照サポートなど、すでに多くの分野で役立っています。

AIの導入は創薬開発や医療従事者の支援など、医療提供側に向けたものが最も多い印象です。
現在は、自宅での遠隔監視においてデータ解析にAIを活用するケースも増えてきてきます。

参考:MIT、睡眠時の呼吸からパーキンソン病を診断するAI
(2022/09/16 mHealth Watch掲載)
https://mhealthwatch.jp/global/news20220916

患者とのコミュニケーションなど、利用者側に向けたものもあります。
イギリスのBabylon Health社の遠隔診療プラットフォームが有名です。
Babylon Healthが提供する「GP at hand」はチャットボットによる医療診断を24時間提供し、必要に応じ対面診断サービスを提供しています。

「GP at hand」の導入により、ちょっとした体の不調でわざわざ病院に行って長時間待つと思うと我慢してしまったり、逆にたいしたことのない人が病院に多く集まることで、本来必要な医療が届かないという問題を、チャットボットによる一次診断を受けることによって大幅削減することに貢献しています。

日本でもBabylon Healthのようなビジネスモデルの導入が進んでいます。
Ubie社が提供する症状検索エンジン「ユビー」、AI問診する「ユビーAI問診」はどちらも利用者(利用施設)が増加しています。
「ユビー」は「GP at hand」のように検索結果(症状)から適切な医療への案内をサポートしてくれます。
「ユビーAI問診」は病院の待ち時間に患者が症状を入力することで、医師に事前に詳しい症状を伝えることができ、医療の質を高めながら時間短縮に貢献しています。

健康予防領域での活用

健康予防領域におけるAI活用も複数のケースが見られます。
最も多く見られるのは、健診結果や問診から、未来の疾病リスクを予測するものや、バイタルデータや健康行動記録から最適な対策や商品を紹介するものです。

現状としては、医療よりも健康予防の方がAI活用は苦戦している印象です。
それは、医療の方は課題を見つけ、正しく治療する方法を見つけ出すことにAIを活用し、発見後は適切な治療を施していけばよいことになりますが、健康予防はAI診断から適切な予防方法を提示したとしても、提示された健康行動をやり続けることができるかは、対象者本人次第となってしまうためです。

医療においても、生活習慣病など治療と平行して生活習慣改善を組み合わせることが望まれる場合、例え服薬はしてくれたとしても、正しいやり方を伝えるだけでは行動継続にはつながりにくいのです。

健康予防領域において成果(予防改善)につながるAI活用としては、例えばダイエットアプリを提供する米国Noom社は、行動変容・促進のため、どうすれば長期的にポジティブに健康行動に持っていけるのか心理学に則ったアプローチを行っています。

生活習慣病改善に取組む米国Livongo Health社も、行動変容・促進に注力したアプローチを取っています。
どうやったら対象者が前向きに健康行動に取組むことができるのかをヘルスコーチがみつけ、行動支援としての情報提供にAIをうまく組み合わせています。

健康予防領域(生活習慣病支援含め)においては、
「わかっているけどできない、続かない」
にどう寄り添い行動につなげられるかが、成果につながるAI活用になってきていると言えます。

Noomの例で記載しましたが、“心理学に則った”がポイントです。
表現の仕方によっては、AIを使っていることが対象者の心理的に前向きに取組めなくなる場合があります。
優れたAIを開発できれば自慢もしたくなりますが、対象者が求めることは何かを心理的に分析して表現することが望まれます。

うまくAIを活用して成果を出している企業を分析していくと、その辺りのケアが優れていることがわかります。

デジタルヘルスをめぐる環境変化を知る
ランチタイムセミナーを開催

AIに限らず、革新的なテクノロジーの発展、活用はヘルスケアにおいても重要なことは皆さんもよくおわかりのことでしょう。

しかし、最新のテクノロジーを使っているからと、ビジネスが拡大するわけではないことも事実です。

革新的で最新のテクノロジーを活かすためには、まずは「トレンド」「環境変化要因」を掴んでおくことだと考えます。

11月24日(木)12:10より、デジタルヘルスの環境変化を掴むランチタイムセミナーを開催します。
短時間で、デジタルヘルスで何をおさえておくべきか?知ることができる場となります。


【ランチタイムセミナー】
デジタルヘルスをめぐる環境変化を知る「成果重視の流れ(その1)」

日程:2022年11月24日(木)12:10-12:50(40分)
申込締切:2022年11月22日(火)12:00
会場:Zoomミーティング
定員:40名(定員になり次第、募集は終了します)
費用:無料

お申込みはこちら:
https://healthbizwatch.com/seminar/hbw-046

健康ビジネスキーワード

「ウェルビーイング・ポートフォリオ 」

ウェルビーイングをテーマとするサービスやプロダクトが今後急増することが予測されています。
本質的なものからなんちゃってまで玉石混交状態にもつれ込むはずです。

その人にとってのウェルビーイング・アイテムが何か?
そして、複数あるアイテムのドライブ度(活用運用度)のバランスが重要であるとの認識も遅かれ早かれ多くの方々が気づくはずです。

このバランスをマネジメントするポートフォリオが必要になるはずです。

このポートフォリオ的ポジションを誰がゲットするのでしょうか?
まさにこれからの領域です。

今週の注目記事クリップ

[1]LINE、LINEリサーチ:今と近未来の流行予想調査(第二十一弾・完全栄養食編)を実施(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004054.000001594.html
日本全国の18-59歳の男女を対象に「完全栄養食(完全食)」の現状の認知率や利用経験率、今後の流行予想などについて調査を実施。「完全栄養食」の認知率は全体で54%、10-20代男性では66%という結果に。(2022/10/27)

+++★追加解説音声:110秒(編集主幹 大川)★+++

完全栄養食ブームを正しく理解しましょう!
https://youtu.be/16YYxO3c9aI

[2]博報堂生活総合研究所、2023年ヒット予想&2022年ヒット実感ランキングを発表
https://www.hakuhodo.co.jp/news/newsrelease/100405/
“2023年 ヒット予想”のキーワードは【攻めの安近短】。“2022年 ヒット実感”(今年ヒットした/話題になったと思うもの)についても調査したところ、1位は「睡眠の質を高める乳酸菌飲料」。(2022/10/26)

[3]クックパッド、保育園のお迎えと同時に食品の買い物が完結する「クックパッドマート for 保育園」を開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000277.000027849.html
増加する共働き子育て世帯(DEWKs世帯)の課題解決を目指し、生鮮食品EC「クックパッドマート」の商品受け取り用生鮮宅配ボックス「マートステーション」の保育園への設置を強化する「クックパッドマート for 保育園」を開始。(2022/10/26)

[4]ウェルネスダイニング、体のたるみが気になる方のために「たんぱく質が摂れる脂質調整食」を新発売!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000054072.html
1食あたり(十六穀ごはん付き)たんぱく質30g以上・脂質10g以下になるように調整された、痩せやすい体づくりができる宅配食。大満足のボリューム感で、食べることを楽しみながら痩せやすい体づくりをサポート。(2022/10/26)

[5]そのもの、日本が誇るスーパーフード“納豆”で米国市場へ本格進出!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000045905.html
ニューヨーク最大の街フェス『JAPAN Fes New York』で、米インターネット通販最大手Amazonが米国向けに日本製品を取り扱う特設サイト「ジャパンストア」にて「こな納豆」を出展。(2022/10/26)

[6]キューサイ、機能性表示食品「血管ストレッチ」新発売
https://corporate.kyusai.co.jp/news/detail.php?p=7737
加齢とともに低下する血管のしなやかさ(柔軟性)維持に役立つ「カツオ由来エラスチンペプチド」と血液中の中性脂肪を低下させるサラサラ成分「DHA・EPA」の2つの機能性関与成分を配合した日本初の血管・血液ケア商品。(2022/10/27)

[7]明治とDeNAライフサイエンス、プロテイン選びに悩む方のサポートにつながる、個々に適切なプロテインの種類や摂取量を推奨する仕組み(アルゴリズム計算式)を構築
https://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2022/1027_01/
一人ひとりに最適なプロテインの種類や摂取量を推奨するアルゴリズムを作成し実証試験を実施したことを、第81回日本公衆衛生学会総会にて発表。(2022/10/27)

[8]ハルメクホールディングス、ハルイロ(ブログ):他誌がマネしたくてもしきれない!実売部数48万部超の雑誌『ハルメク』のヒットの秘密
https://www.halmek-holdings.co.jp/news/haliro/2022/v5zqmw0iulz/
シニア女性の生き方、暮らし、ファッションなどを中心に、親しみのあるコンテンツを読者に届けている雑誌『ハルメク』は、女性誌販売部数No.1で48万部(2022年7月発売)を超え、躍進が続いている。(2022/10/27)

[9]チームスピリット、「TeamSpirit EX October’22」の提供を開始
https://corp.teamspirit.com/ja-jp/news/release/2022/10/tex_oct22.html?_ga=2.133686030.1828495115.1667219290-1598994165.1667219290
「勤怠管理」機能において育児・介護休業法の改正で10月に開始した「産後パパ育休」に対応する機能をリリース。男性の育児休業取得率向上に取り組む企業を後押しします。(2022/10/27)

[10]キリンホールディングス、キリンの独自素材「プラズマ乳酸菌」シリーズ 販売好調!
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2022/1028_01.html
今年1~9月の国内外における「プラズマ乳酸菌」関連事業の販売金額は前年比約5割増となりました。免疫への関心・健康意識の高まりを背景に、免疫対策市場・機能性表示食品(飲料)が継続的に伸長し、好調に寄与。(2022/10/28)

[11]Futonto、どのようなお悩みをお持ちの方が睡眠計測アプリを利用しようと思うのか Top3のお悩みを発表(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000377.000019730.html
同社が無料で提供している睡眠計測アプリ「睡眠ランキング」の2022年9月度のデータを元に、アプリ利用開始時のお悩みTop3を発表。9月の睡眠スコアがTop100のユーザーの中、最も多かったお悩みは「肩こり」。(2022/10/29)

[12]福岡工業大学、「血管の硬さ」「血圧」「心拍数」一つの“指輪”で明らかに
https://www.fit.ac.jp/news/archives/4076
心臓や血管の病気のリスクを減らすために「血管の硬さ(血管弾性度)」「血圧」「心拍数」の3つの情報をオールインワンで、指に着けるだけで測ることができる指輪型の血管健康度チェックシステムを開発。(2022/10/31)

[13]国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター、わが国初「こころの幸福度」高い社会をめざしたメンタルヘルスプラットフォームの構築
https://www.ncnp.go.jp/topics/2022/20221031p.html
思春期を主とした若年者のメンタルヘルスに焦点を当てつつ、いつでもどこでも誰でもアクセス可能な全世代対応型遠隔メンタルヘルスケアシステム(KOKOROBO-J)を開発、全国実装を推進。(2022/10/31)

[14]花王、くらしの研究「40代以降の不調・イライラに要注意 知っていますか?男性の更年期」
https://www.kao.co.jp/lifei/life/report-82/
更年期を「認めたくない」男性は女性の3倍、ストレスを感じている人ほど症状が重い傾向、「からだや心の不調」への理解や協力を求める相手は妻一択の傾向、など。(2022/11/01)

[15]ベルシステム24とウェルネス・コミュニケーションズ、ウェルネス領域の新サービス創出に向けた業務提携契約を締結
https://www.bell24.co.jp/ja/news/holdings/20221101/
医療現場での“働き方改革”や企業の“健康経営”を支援する医療機関DX推進・企業の健康管理ソリューション開発を目指す。(2022/11/01)

[16]日本計画研究所、経済産業省:PHR利活用の新たなヘルスケアサービスの創出等 今後のヘルスケア産業政策の方向性
https://www.jpi.co.jp/seminar/16305
開催日は2023年1月26日(木)。本セミナーにおいては、PHRを利活用した新たなヘルスケアサービスの創出などPHR関連政策の方向性を中心に、今後のヘルスケア産業政策についてご紹介します。

[17]海外トピックス:慢性的ストレスとがん死亡の関連はどれだけあるか(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/news/overseas/00183/
慢性的なストレスを抱えている人は、将来的にがんにより死亡するリスクが有意に高いことが、米国国民健康栄養調査(NHANES)の30年以上に及ぶデータの分析から明らかになった。(2022/10/26)

[18]『mHealth Watch』注目ニュース:岐阜大学、ダイエットの成否を決定する脳内神経機構を解明
https://mhealthwatch.jp/japan/news20221107
今回注目するのは、ダイエットの食事制限の強度が、その後の体重のリバウンドに関係しているという研究結果のニュースです。(2022/11/07)