[海外事例にみる継続支援アプローチ編]行動変容を促すCGMとは?(その2)
こんにちは。脇本和洋です。
今号のテーマは、先月号に続いて「CGM(持続血糖モニター)」です。
CGMは、行動変容を促す新たな測定機器として注目されています。
今回は、CGMとは何かを改めて説明した後、
- CGMの特長(先月号の振り返り)
- 一般向けCGMの展開を行う「NutriSense」
- 一般向けCGMの今後
という切り口で紹介します。
特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編
CGMとは、Continuous Glucose Monitoringの略です。
日本語だと「持続血糖モニター」と呼ばれ、血糖値(注1)の変動を測定する医療機器です。
血糖値は1日のなかでも、食事(内容、量など)、運動、ストレスなど、さまざまな要因で変動しています。
※(注1)
正確には、CGMで測定するのは皮下の間質液中のグルコース濃度です。
一般的な血糖値(血液中のグルコース濃度)と、間質液中のグルコース濃度との間には、高い相関があります。
CGMの特長(先月号の振り返り)
患者が自宅で血糖値測定をする際、今までは指先から採血し、血糖値を測定していました。
しかも、一日に測定を数度行う必要があり、患者にとって大きな負担でした。
CGMの特長は、
- 採血が不要なこと(皮膚にパッチのようなセンサーを付ける)
- 血糖値(間質液中のグルコース濃度)が連続的にわかること
です。
そして、日々の生活の中で、どんな行動が血糖値を上昇させ、どんな行動が血糖値を下げるのかが、容易に身をもってわかるのです。
そのCGMの代表事例が、abbottの「FreeStyleリブレ」。世界での売上は3,700億円(2021年)です。
abbottは、Lingoと名付けた「一般向け」のバイオウェアラブルを開発すると発表しており、今後の展開が期待されています。
一般向けCGMの展開を行う「NutriSense」
abbottの新たな一般向けサービスは、今後に期待といった所ですが、米国ではすでにCGMを活用して一般向けサービスを提供する企業も現れています。
それが、今回紹介する「NutriSense」です。
■事例名:NutriSense
https://www.nutrisense.io/
■設立:2019年
■資金調達額:31.5億円(2022年10月時点)
※1ドル=100円換算
■売上:非公開
■ターゲット(サイト記載から推定)
・糖尿病ではないが、血糖値がやや高めの人
■サービス概要
CGMセンサー(Abbott Freestyle Libreを利用)とコーチングサービス(注2)を組み合わせたもの。
センサーと専用アプリで血糖値、食事、運動といったデータを記録し、栄養士のコーチから健康目標に応じたアドバイスと、食習慣や運動、睡眠についてアドバイスをもらう。
※(注2)
コーチングサービスの詳細記載はないが、自分に合った無理のない習慣を発見できるだけでなく、小さな成功体験を気づかせたりする「行動変容の要素」を組み込んだものと予想される。
■サービスの流れ
1:申し込むといくつかの質問フォームに回答する。
身長や体重、現在の健康状態や健康目標(減量、食習慣の改善など)、希望するコーチング特徴(フレンドリーか、厳しめか、知識を教えること重視かなど)といった基本情報を入力する。同サービスを利用するのに適しているかを判断する。
2:CGMセンサーが送られてくる。
アプリで血糖値の推移をモニタリングする。また食事の記録もとる。
3:栄養士のコーチから血糖値の推移と食事からわかることを教えてもらう。
さらに設定した健康目標に応じて、食習慣、運動、睡眠といったライフスタイルに関係したアドバイスをもらう。
■費用
月額250ドル(3か月プランの場合)
※栄養士によるコーチングは1か月間
■健康行動継続の工夫
- CGMを測定した後に、栄養士のコーチングサービスがある
- 栄養士がデータを読み解き、何をどうすればよいかを教えてくれるため、行動意欲が増す
一般向けCGMの今後:どんなサービスと組み合わせ、マネタイズするか
今回は、CGMの特長を振り返り、米国で進んでいる「一般向けCGMサービス」を紹介しました。
いかがでしたでしょうか。
米国では、一般向けCGM販売は開始になって間もなく、顧客への受容度、市場の成長度はまだ見えていません。
今は、継続を促す改善が行われている段階とみています。
「糖尿病ではないが、血糖値がやや高めという人」は日本でも数多く、そうした人に対して、「気づきを高める」というCGMの最大価値を生かすことは、見逃せないことです。
今後日本でもどんなサービスを組み合わせ、マネタイズしていくか、そこに注目していきたいと思います。 【脇本和洋】
参考>本編「海外事例にみる継続支援アプローチ編」をお読みの方へ
我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。
詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。
●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー
健康ビジネスキーワード
「新規事業をどうやって創るのか 」
全く、今までとは違う何かを始めてしまうというのも一つの有効な手です。
既存事業がありながら、新たな成長の道筋を見つけたいというのが事業者の思いです。
絶えず、新規事業を模索したいのが事業主の性だと思います。
スタッフはこれを理解しておくべきです。
さて、新規事業とは新たな売上をどう上げるかにつきます。
そのアプローチはすでに解明されています。
・顧客を変える
・商品サービスを変える
・価格を変える
・場所(チャネル)を変える
・時間帯を変える
・プロセスを変える
さて、貴社であればどこから着手しますか?
今週の注目記事クリップ
[1]ゴールドウイン、関東最大面積を誇る、初の“体験型”3店舗を恵比寿ガーデンプレイスに出店
https://corp.goldwin.co.jp/info/page-30278
THE NORTH FACE初のキャンプ特化型新業態「THE NORTH FACE CAMP」、キッズアイテムを横断して展開する新業態「PLAY EARTH KIDS」、日々のココロとカラダのメンテナンスをテーマにした「NEUTRALWORKS.」をオープン。(2022/11/07)
+++★追加解説音声:100秒(編集主幹 大川)★+++
キャンプビジネスは質的変化が始まっています!!
https://youtu.be/AU_3p7m1YV8
[2]iCARE、産業保健実務従事者の86%が健康管理システムCarelyを推奨!
https://www.icare.jpn.com/news/20221102/
Carelyは、産業保健業務のDXを進めるクラウドシステムと経験豊富な専門家のサポートによって、産業保健師や産業看護師が健康づくりの専門性や価値を最大限に発揮できるよう後押しし、健全な組織づくりを継続できるサービスを提供。(2022/11/02)
[3]ピックアップ特集:ヘルスケア事業、異業種からの挑戦[第15回]パナソニックが目指す「介護の需給ギャップ」解消(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00055/102600016/
早くから介護ビジネスに参入したことで知られるパナソニック。同社が現在、最も力を入れている取り組みの1つが「介護の生産性向上」。先端テクノロジーの活用や積極的な異業種連携などにより、新しい介護の在り方を提案している。(2022/11/02)
[4]P3、乗るだけ自宅トレーニング「バランスロッカー」で正しい姿勢と歩き方を(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000031386.html
靴のように左右別々に使える新しいバランストレーニング用品「バランスロッカー」を開発し一般販売を開始。乗るだけで体が整い、正しい姿勢や歩き方につながります。(2022/11/02)
[5]Upmind、「マインドフルネス業界カオスマップ2022(日本版/海外版)」を公開(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000083261.html
国内で初めてとなる、近年急速に成長している国内/海外のマインドフルネス業界カオスマップ2022を公開しました(今後、市場の概況とともに毎年更新していきます)。(2022/11/02)
[6]薬局業界のDXはどのように進んでいくのか?(Heathtech DBより)
https://healthtech-db.com/articles/pharma-dx-outline
近年多くの業界で起こっている“DX”。そんな中、今まさにDXが本格的に始まろうとしているのが薬局業界だ。大きな要因は、厚生労働省によるオンライン服薬指導関連の制度化が着々と進んでいること。(2022/11/02)
[7]KEYWORD:時間栄養学(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/keyword/19/00187/
時間栄養学とは、ヒトの体が持つリズム(概日リズム)に合わせて必要な栄養を摂ることで健康維持を実現する栄養学のこと。(2022/11/04)
[8]ウェルナス、「AI食」技術を搭載した個別栄養最適食サービス「NEWTRISH」日経トレンディ2023年ヒット予測ランキングで11位にランクイン(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000062426.html
個別栄養最適食サービス「NEWTRISH」は、既存の食事摂取基準を基に栄養素の過不足を判断するわけではなく、AIの解析により、個人ごとに異なる栄養摂取特性の多様性に対応した画期的な「AI食」サービスとして高く評価されました。(2022/11/04)
[9][対談]ジェンダード・イノベーション、商機はどこ?矢野経済研究所×ウーマンズ(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/event-market-221104-1
ジェンダード・イノベーションは特に、医学、工学、情報学分野での牽引が期待されていることから、女性ヘルスケア業界でも今年に入ってから関心が高まっており、特に新規開発やイノベーションを商機に繋げる仕事に就くビジネスパーソンの間で話題に。(2022/11/04)
[10]富士フイルムと東京都健康長寿医療センター、AI技術を用いた認知症スクリーニング検査手法の共同研究を開始
https://www.tmghig.jp/research/release/2022/1107.html
本研究は、眼鏡型ウェアラブルデバイス(機器提供:株式会社ジンズ)で計測した、受診者の目や体の動きに関するデータとAI技術を活用して、認知症の疑いを判定する検査手法の確立を目的としています。(2022/11/07)
[11]日経BP、女性活躍を阻む“不都合な壁”とその解決策を提示する「ウェルビーイング向上のための 女性健康支援とフェムテック」を発行(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000086.000041279.html
「女性が働きやすい環境」の実現を妨げているのは管理職!?働く女性と管理職 約3,000人の生理についての実態調査を公開。働く女性と企業、そしてこれからの社会が変わるためのヒントを提示する一冊です。(2022/11/07)
[12]ファンケル、「体力」を見える化する技術を開発ー酸素飽和度測定による世界初の技術ー
https://www.fancl.jp/news/20220029/news_20220029.html
本技術によって個人の「体力」に合った最適な運動強度を簡便かつ正確に推定することができるため、医療分野、スポーツ分野以外にも多くの応用が期待されます。なお、本技術については特許を取得しています(*特許第6990333号)。(2022/11/08)
[13]ウェルネス、経営者の健康管理の実態は?約半数が「年に1度の人間ドックだけでは不安」と回答(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000049636.html
年に一度人間ドックを受診している経営者106名に対し、経営者の健康管理に関する意識調査を実施。「パーソナルドクターと一緒に健康維持の取り組みができる予防医療サービス」に67%が興味。(2022/11/08)
[14]法研、「へるすあっぷ21」2022年11月号(No.457)
https://healthup21.official.ec/
働く人の健康管理・健康づくり情報誌。特集は「よい睡眠が会社を救う!?働く人の睡眠問題」。
[15]研究:食品のカロリーや栄養を測定できる電子レンジ
https://mhealthwatch.jp/global/news20221102-2
電子レンジを使用している際に窓(フロントパネル)から漏れ出るマイクロ波を捉え、その食品中の栄養成分とカロリーを測定する。(2022/11/02)
[16]『mHealth Watch』注目ニュース:「AIツールの受け入れやすさ」で診断率に差
https://mhealthwatch.jp/global/news20221114
米Mayo Clinicの研究チームは、「AIツールの提案を採用しやすい医師」と「採用を躊躇する医師」とを比較し、心不全の診断率に2倍の差が生まれることを示した。(2022/11/14)