こんにちは、渡辺武友です。
今回は、デジタルヘルスの設計手順についてお伝えします。
ポイントは「デジタルヘルスをするならITのプロになるな!」です。

特集:健康ビジネス・マーケティング&収益化編

デジタルヘルスの設計手順

[健康ビジネス・マーケティング&収益化編]では、今月も新規ビジネス検討のポイントとして、新規ヘルスケアビジネスの検討で多くなっている「ヘルスケア×デジタル」の設計手順をお伝えしていきます。

デジタルヘルスとは、医療のデジタル活用だけではなく、予防支援へのデジタル活用、医療と予防行動をつなぐ橋渡しまで範囲は広いです。
今回は、「予防支援へのデジタル活用」をイメージしながらいきましょう。

よくあるデジタルヘルスの設計手順

デジタルを活用してヘルスケアビジネスを考えようとしたとき、よくあるアプローチとして“デジタルでできること”から考えはじめる傾向があります。

例えば、写真やデータを使ってログを残すことができるので、健康管理に役立てよう。と言ったものや、その記録に合わせてレコメンドを発信しよう。などです。
このように、デジタルでできることを起点に、商品サービスを作り上げていきます。

しかし、この発想で生まれたものが、どれだけの人に利用してもらえるでしょうか?
しかも有料で。

スマホが普及する以前から、写真やデータを使った記録サービスや、記録からレコメンドを送るような機能はありました。
しかし、このようなサービスが爆発的に売上を伸ばしている例は聞いたことがないですよね。

根本的なこととして、ヘルスケアビジネスは「ユーザーの健康課題の解決」です。
ユーザーが「これなら解決(改善)するだろう」と思えなければお金を払う価値を感じません。

デジタルでできることから始めると、「楽に記録できること」を提供価値にしてしまうことがあります。
「楽に記録できること」にお金を払ってでもやりたい人がどれだけいるでしょうか?
ユーザーは記録がしたいのではなく、健康課題を解決したいのです。
結果が出れば、デジタルでもアナログでもいいのです。

ご自身のビジネスでは、デジタルヘルスを検討することが命題であっても、発想の起点は“ユーザーが得たいゴール”です。
デジタルの活用を検討するのは、ゴールを達成する方法が決まってからがよいのです。

設計で最初に取り組むべきこと

ヘルスケアビジネスを行うためには、以下の要素が必要となります。

1)ユーザーの健康課題を解決する
2)ユーザーが健康課題を解決するための支援をする
3)収益化のための仕掛けを行う

前章で、ヘルスケアビジネスは「ユーザーの健康課題の解決」をすることだと記載しました。
ヘルスケアビジネスに関わる以上、この視点が抜けてはならないです。

「ウチは検査に強みがあるから関係ないな」
と思ってはダメなのです!

なぜなら、その検査による結果が思わしくなければ改善行動をしなければなりません。
しかし検査結果に対して、「医者か専門家に相談してください」では、見捨てられた気分になります。

原因を見つけてしまった以上、解決するまでサポートすることが必要です。
もちろん、その解決支援を選ぶかどうかはユーザー次第です。
サポートは誰かに任せてもよいのです。解決に結びつけることが大切になります。

例え、デジタルを活用した画期的な計測方法を思いついたとしても、それをビジネスにするためには、そもそもユーザーがどんな健康課題を解決できないことに困っているのか?を起点に考えないと、ユーザーがお金を払う価値まで結びつかなくなってしまうのです。

最初は「1)ユーザーの健康課題を解決する」を検討します。
この段階では自社リソースに縛られない方がよいです。

例えば、自社の強みがダイエットで必要な体重計測だとしましょう。
体重を落とすためには、体重計測するだけではなく、食事や運動などの改善策が必要になります。
この改善策は、自社にないものでもよいので最良なものを想定することが重要です。

ユーザーがお金を払ってでも欲しいのは改善策であると意識してください。

デジタルを最大限に活かすために

デジタルを最大限に活かすためには、

1)ユーザーの健康課題を解決する
2)ユーザーが健康課題を解決するための支援をする

ここまで考えてから、利便性や効率化のためにデジタルへの置き換えを検討します。

例えば、計測や記録、さらには計測や記録忘れを予防する支援など、デジタルで役立てることはいくつもありますし、他社との差別化ポイントになります。

ただし、自身がユーザーの立場になるとわかると思いますが、ユーザーのメインは健康課題の解決なので、解決に至る工程に対しては価値を感じにくいのが実態です。
その感じにくい部分にコストが掛かったとして、そのままサポート料金を請求しようとしても、ユーザーには理解しにくいものです。

「2)ユーザーが健康課題を解決するための支援をする」とは、手間の割にお金が取りにくい部分となります。
そこで考えないとならないのが、

3)収益化のための仕掛けを行う

になるのです。

例えば、ユーザーに適切な金額を払ってもらうためには「健康課題を解決する」部分の価値を高める必要があります。
その高めた価値を考えたら、達成するためにまたデジタル活用を検討します。

このような順番で考えていくと、提供者が考える価値とユーザーが考える価値にミスマッチが起きにくくなり、価値を高めることで得たい収益を想定できるようになります。

最初の検討段階では、自身が「デジタル活用のプロ」であることが、意外と足かせとなるので、デジタル活用のプロ意識は封印するくらいでいきましょう。

健康ビジネスキーワード

「感想というコミュニケーション」

気づきをもらい、感銘を受けたという経験は誰にもある。
出会った相手にその場面で感謝の気持ちを伝えた経験をお持ちでしょうか?
また、受けた感銘に関する感想を後日でいいので伝えたことはあるだろうか?

前者は恩恵的感謝で続けた方がいい習慣
後者は普遍的感謝で相手のために貢献するという一歩進んだスタンスです。
心のこもった感想をくれた人のことをあなたはどう思いますか?

このフォーマットをヘルスケアサービスに当てはめた時、あなたのサービスはどれくらい具現できているでしょうか?
感想は人間関係の第一歩ということを再確認しましょう。

今週の注目記事クリップ

[1]予防医療のモチベーションは何?健康行動が起きる17のキーワード(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/research-20230427-1
朝日広告社が全国20-70代の男女10,001名を対象に「予防医療に関する調査」を実施(2022.12)。同時に、予防医療を実践する1,200人を対象にアンケートを行い、予防医療の実践に気持ちを駆り立てる17のモチベーションを突き止めた。(2023/04/27)

+++★追加解説音声:120秒(編集主幹 大川耕平)★+++
健康行動モチベーションの学びになります!
https://youtu.be/hCbRR39yWXM

[2]厚生労働省、「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」の最新版を公開します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32795.html
今般、本プログラムの最新版(ver.3.6)をダウンロードサイトにて公開しましたので、お知らせします。令和5年10月までに最新版のダウンロードをお願いします。(2023/04/26)

[3]富士経済、医療・ヘルスケア DX 関連の国内市場を調査
https://www.fuji-keizai.co.jp/file.html?dir=press&file=23049.pdf&nocache
医療DX実現に向けて、全国医療情報プラットフォームの創設や電子カルテの標準化といった取り組みが進んでおり、注目される医療・ヘルスケアDX関連の国内市場を調査。(2023/04/26)

[4]東京大学、食の栄養学的質と食に関する価値観・知識・技術・行動との関連【PDF】
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400213992.pdf
https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/
一般日本人成人を対象とした質問票調査。本研究は、食の栄養学的質と食に関する価値観・知識・技術・行動との関連を包括的に評価した世界で初めての研究です。(2023/04/26)

[5]クラブビジネスジャパン、月刊NEXTがリニューアル!スポーツウェルネスのトレンドメディアとして、より幅広い情報をお届け
https://business.fitnessclub.jp/articles/-/1569
インストラクター、トレーナー向けのキャリアマガジンとして、2006年3月から191号を発刊してきた月刊NEXTが、2023年5月号より大幅なリニューアルを実施。(2023/04/26)

[6]asken、あすけん管理栄養士 道江の書籍「結局、これを食べるが勝ち」が発売
https://www.asken.inc/news/2023/4/26/-
4月4日の予約販売開始後、Amazon人気度ランキングおよびベストセラー1位を獲得し、多くの方に注目をいただいております。(2023/04/26)

[7]メタジェン、2023年度「腸内デザイン共創プロジェクト」始動
https://metagen.co.jp/news/2023/04/01283.html
2023年度も参画企業の皆さまと共に、社会実装の本格化に向けて活動を始動いたします。腸内環境に基づいた層別化ヘルスケアサービス体験など。(2023/04/27)

[8]アドバンテッジリスクマネジメント、中小企業のストレスチェックに関する実態調査を実施
https://www.armg.jp/news/newsrelease/2023/0427/
今回の調査では、回答者となった中小企業の経営者・役員の55.7%が「ストレスチェックの取り組みが機能していない」と回答したことが明らかとなりました。委託先からの改善提案については、6割以上が「不十分」さを実感。(2023/04/27)

[9]MMD研究所、「2023年Apple Watchの利用実態に関する調査」を実施
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_2199.html
予備調査では18歳-79歳の男女27,611人、本調査ではApple Watchを利用している485人を対象に調査。Apple Watchの所有率は9.7%、20代男性が最も多く24.7%。Apple Watch利用者の継続利用意向は89.3%。(2023/04/27)

[10]Splink、記憶力・注意力を3分でセルフチェックするブレインヘルスケア健診DXツール「mCQ(R)」が正式提供開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000026.000060865.html
健診・病院待ち時間を利用し、受診者様への脳ドックやブレインヘルスケア啓発に活用。2021年5月よりβ版の提供を開始しており、現在すでに全国30施設を超える病院・クリニックに採用されています。(2023/05/01)

[11]マイナンバーと紐づいたPHRのメリットは?(Healthtech DBより)
https://healthtech-db.com/articles/phr_mynumber
PHRは個人の医療健康情報を記録したものである。これと現在政府が普及を進めているマイナンバーを紐付ける動きが活発化している。この記事ではマイナンバーによってPHRがどう変化していくかについて考察していく。(2023/05/01)

[12]法研、へるすあっぷ21 2023年5月号を発刊
https://www.sociohealth.co.jp/magazines/healthup21.html
特集は、どこまでわかった?腸内細菌研究の今。これまでの研究でわかってきた腸内細菌の働きや、腸内環境をよい状態に保つためのセルフケアについて、専門家にうかがいました。(2023/05/01)

[13]グローバルニュートリショングループ、プラントプロテイン戦略を押し流す失敗の波|NNBマンスリーレポート2023年4月号
https://global-nutrition.co.jp/nnbm/nnb202304/
NNB4月号日本語要約版をお送りします。今号のNew Nutrition Businessでは、プラントベース代替食品の失敗事例を総括しています。(2023/05/02)

[14]花王、「仮想人体生成モデル(VITA NAVI(R))」を活用しMILIZEがAI健康可視化ツール「健康資産」を開発
https://www.kao.com/jp/newsroom/news/release/2023/20230508-001/
健康診断データ、毎日の健康につながる行動・身体の情報(歩数、体重、睡眠時間、運動量、健康食品の摂取、ライフスタイルの変更など)を入力すると、それらを換算して健康資産ランクを表示し、さらに将来の医療費を推計。(2023/05/08)

[15]東京都健康長寿医療センター研究所など、健康的な食事のタンパク質比率が判明
https://www.waseda.jp/top/news/90022
本研究から、若齢、中齢ともにタンパク質比率が25~35%が最も健康的であることが明らかになりました。この研究成果は、食事の三大栄養素バランスによる健康維持や健康長寿に大きく貢献するものと期待されます。(2023/05/08)

[16]空腹を操作できる飲むカプセル 米MITなどが開発(ITmediaより)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2305/08/news025.html?fbclid=IwAR2HnMQhxO7CWPJ-XUDsQWPmdqrQER15kCjs1kvMIiwFoGz49YQCLeeC8_k
胃の中で電気刺激を与えられるカプセル型デバイスを提案した研究報告。このデバイスは、電気刺激によって消化管ホルモンを制御することで、空腹感の操作や吐き気を緩和させることができるという。(2023/05/08)

[17]ライフログテクノロジー、「カロミル」にてChat GPTを活用した「AI食事相談チャット(β)」がスタート
https://www.calomeal.com/pressrelease/20230509.html
ユーザーの食事改善の行動を後押しする機能としてOpen AIが開発した「Chat GPT」を活用し、AIによる対話型「AI食事相談チャット(β)」を追加。これによりユーザーは1週間の食事データをもとにした食事アドバイスが得られる。(2023/05/09)

[18]順天堂大学、軽度の睡眠時無呼吸でも、循環器疾患リスクが増加ー約20年の追跡調査で明らかにー
https://www.juntendo.ac.jp/news/13804.html
本研究では、睡眠時無呼吸が軽度であっても、脳梗塞や虚血性心疾患の発症リスクが増加することを明らかにした。睡眠時無呼吸治療の保険対象を検討するため貴重なエビデンスとなる。(2023/05/09)

[19]癒合会、口腔ケアが腸活に繋がる!?腸内環境と口腔内環境には深い関係が。7割以上がその事実を知らなかった!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000068012.html
50代以上の男女を対象に「腸内環境と口腔内環境への意識」に関する調査を実施。腸内ケアを意識的に行っている方は半数以上、口腔ケアを意識的に行っている方は4割に満たない結果に。(2023/05/09)

[20]ソフトバンクG出資の中国フィットネスアプリ『Keep』、22年も120億円超の赤字
https://mhealthwatch.jp/global/news20230427-2
世界最大規模のユーザー数を誇る中国発の在宅フィットネスサービス『Keep』が3月28日、2022年2月に香港証券取引所に提出した上場目論見書を更新した。(2023/04/27)

[21]食料品チェーンAlbertsons Companies、Apple Watch特典プログラムを発表
https://mhealthwatch.jp/global/news20230428
今回の統合により、Apple Watchシリーズ3以降を使用する人は、自分の活動データをSincerely Healthアカウントと共有し、ムーブ、エクササイズ、スタンドの活動のリングを完成させると最大75ポイントを獲得できる。(2023/04/28)

[22]LivongoとTeladocからの教訓は、次世代のヘルスケアの課題を解決するのに役立つ
https://mhealthwatch.jp/global/news20230508
ラストワンマイルの問題を完全に克服したヘルスケア企業は存在しないが、近年のデジタルヘルスの進化を通じて得られた教訓のいくつかは、この問題へのアプローチに示唆を与える。(2023/05/08)

[23]ChatGPTが「乳がん関連の健康アドバイス」で有効性を示す
https://mhealthwatch.jp/global/news20230509
ChatGPTに対して、一般市民が健康上のアドバイスを求めるケースが急増している。米メリーランド大学医学部の研究チームは「乳がんの予防とスクリーニングに関してChatGPTが適切に回答できるか」の調査結果を明らかにした。(2023/05/09)

[24]『mHealth Watch』注目ニュース:デジタルヘルスの導入にプロバイダーが必要とするもの
https://mhealthwatch.jp/global/news20230515-2
Simon-Kucher社のシニアマネージャーであるKay Schultze氏とパートナーのJan Bordon氏は、最新のデジタルヘルストレンドに関する報告と、ヘルスケアプロバイダー(医療従事者)らがデジタルヘルスにどのように期待しているかについてMobiHealthNewsからの質問に回答した。(2023/05/15)