こんにちは。脇本和洋です。

本メルマガでは海外のヘルスケアサービスの最新動向をチェックしています。
今回は「米国法人向けヘルスケアサービスのトレンド」を紹介します。

特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編

米国法人向けヘルスケアサービス「Wellable」にみるトレンドとは?

米国の法人向けウェルネス市場の規模は3.5兆円(Fortune Business Insights 2023年調べ、1ドル150円換算)ともされます。

日米の医療保険制度の違いもあり、米国の法人はヘルスケアサービスの導入に積極的ですが、その分参入企業の競争も激しく、そこでは生き残りをかけた取り組みがなされます。
日本から見れば、恰好のベンチマーク先になります。

今回は、数ある法人向けヘルスケアサービスの中から、最近のトレンドを示しているWellableを紹介します。

Wellableはどんな会社?

Wellableは、法人向けのヘルスケアサービスを提供。
身体の健康、心の健康、社会的な健康までを想定して広くウェルビーイングという位置付けでサービス提供する会社です。
設立が2013年、売上32億円(growjoによる推定、1ドル150円換算)です。

https://www.wellable.co/

単にサービスを提供するだけでなく、法人向けヘルスケアサービスのトレンドを発表するなど、業界動向に詳しいユニークなサービスプロバイダーと言えます。

Wellableのサービス種類

では、Wellableのサービスメニューはどのようになっているでしょうか。

主なサービスメニューとしては、以下があります。

  • Lifestyle Spending Account(日本でいうカフェテリアプランのようなもの)
  • Health Fairs(健康セミナーなど)
  • On-Demand(各種フィットネスの動画配信)
  • Health Content(健康行動を促すヒントを配信)
  • Health Coaching(栄養、フィットネス、ストレス管理などに認定ヘルスコーチが対応し、行動定着を促す)
  • Tobacco Cessation(Truth Initiative のデジタル禁煙プログラムと提携)

これらを見ると、知識を提供するだけでなく、ヘルスコーチングプログラムも提供し、行動定着までを目指すサービスと言えます。


さらに、特長的なものを紹介しましょう。

・Personal Wellness Assessment
米国ではHealth Risk Assessment (HRA)という提供サービスのカテゴリーがあります。
それに値する同社のサービスです。
健康の8つの主要な側面(身体的、感情的、経済的、社会的、知的、職業的、環境的、スピリチュアル的)で評価でき、個人で使うとともに、組織としての分析にも使われます。

・Program Analytics
利用者のプログラム利用状況が一目でわかるダッシュボードのようなものです。
主に担当者が利用します。
特に、エンゲージメント(継続利用度など)がわかるようにしています。
また、従業員からの定性的なコメントも収集できるようにしています。

もう一つの特長が、法人向けの情報発信

Wellableのサービスは、ウェルビーイング視点でまとまっていて評価分析まで行うことが特長ですが、もう一つの特長が法人向けの情報発信です。

法人向けの顧客接点をいかに広げ、顧客担当者に役立つ情報を提供するかが、法人向けサービスが選ばれるためのポイントになります。

Wellableの法人向けプロモーションの全体像はサイトを見るだけでは判断できませんが、顧客担当者にとって必要な知見を積極的に提示することで、顧客からの信頼を高めていくスタイルをとっていることは容易に理解できます。

(顧客接点を広げるための情報発信の例)

・法人向けヘルスケアサービスのトレンド発表(毎年発表)
今年が第7回のトレンド発表とのことなので、長くこの取り込みをしています。
どのような分野のヘルスケアサービスが伸びているか、逆に伸びていないか、どのようなことをプロバイダーに期待しているかなどがわかります。
https://www.wellable.co/resources/employee-wellness-industry-trends-reports/2024/


その他にも、ブログでは多くの担当者が気になる「生成AIの活用」について述べたり、サイトでは競合他社との比較表を提示したり、成果分析が簡易にできるツールを出したりしています。

こうした情報発信を通じて、法人顧客のリストを集めるとともに、法人顧客からの信頼を獲得し、プロモーションを加速するスタイルをとっていると予想されます。

米国法人向けサービス企業のトレンド

現在スポルツでは、数ある米国法人向けヘルスケアサービス提供企業の中から約100社をリサーチし、その結果を紹介するレポートの発刊準備を進めています。

その活動の中で見えてくるのは、Wellableのように

  • サービスはウェルビーイングの領域まで広がっている
  • 領域ごとに専門のサービスプロバイダーが活躍している
  • エンゲージメント(行動定着)がキーワードになっている
  • 全体のウェルビーイング施策の評価分析ができることが望まれている
  • 単にサービス提供するだけでなく、法人向けサービスのトレンドをいち早く掴み法人担当者へ情報提供し、顧客からの信頼を高めている
  • 技術観点でいえば、生成AIの活用を本格検討しはじめている

このような傾向が見えてきます。
日本で法人向けヘルスケアサービスを検討する際の参考にしてください。

<お知らせ>
米国法人向けサービスの提供企業レポートを近いうちに発刊します。
本メルマガでもお知らせしますので、楽しみにしておいてください。

健康ビジネスキーワード

「差別化ではなくて差異化」

他社と同じ領域に商品サービスを投入する。
これはどの業界でも日常茶飯事的に生じている現象です。
ヘルスケア・サービスでも同様。

そこで、他社と差別化するために何かの機能を足し算してしまうケースが多いようです。
「我々はこれがプラスされています」ということが優位に立つ根拠になると思い込んでいるからです。

本来目指すべきは差異化です。
それが意味することは独自の価値化です。
自分たちが提供する商品サービスに関する哲学を表現すると言ったら言い過ぎでしょうか。
そこには顧客視点が徹底的に練りこまれている必要があります。

一度、貴社商品サービスの差異化について社内で議論してみてください。

今週の注目記事クリップ

[1]あすけん、「Z世代のダイエットに関する意識調査」を公開
https://www.asken.inc/news/20240605investigation
初めてダイエットをした年齢が小学生・中学生(7歳~15歳)と回答した人は約3割。初めてダイエットをしようと思った理由の第1位は「自分の体型に自信を持ちたいから」など。(2024/06/05)

[2]NeU、1分でチェック可能な「運転脳力チェッカー」を提供開始
https://neu-brains.co.jp/information/press/2024/06/05/3310.html
「運転脳力チェッカー」は、忙しいドライバーでも短時間で簡単に安全運転能力をチェックできることをコンセプトとして設計しました。(2024/06/05)

[3]野村不動産ライフ&スポーツ、「脳活×パーソナルトレーニング」サービスを開始【PDF】
https://www.megalos.co.jp/corporate/wp-content/uploads/2024/06/20240605-4.pdf
https://www.megalos.co.jp/
30代から始まる海馬萎縮に対しての早期認知症対策のプログラム。海馬によいとされる筋力トレーニングと有酸素運動の提供、さらにはストレス軽減に寄与する独自メソッドのヘッドスパなどのコンテンツを提供します。(2024/06/05)

[4]藤田医科大学、食事記録アプリと食品摂取頻度質問票は 異なる食事調査法であることを明らかにしました
https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv000000ubxl.html
日本でよく使われている食事記録アプリと2つの食物摂取頻度質問票を直接比較したところ、摂取エネルギーや栄養素に相関は見られるが、互換性は見られなかった。(2024/06/05)

[5]シチズン時計、50年間の変化で見るビジネスパーソンの生活時間【PDF】
https://www.citizen.co.jp/cms/cwc/research/pdf/research_202406.pdf
https://www.citizen.co.jp/
全国のビジネスパーソン400人を対象とした『生活時間』に関する調査を実施。25年前(1999年)と50年前(1974年)に実施した同様の調査との経年変化に加え、スマートフォンやAIといった新しい質問を追加し、ビジネスパーソンの生活時間を探りました。(2024/06/06)

[6]アントレ、[高まる介護需要]2050年、高齢者の単独世帯が2割超の結果 独自調査 介護ビジネスの独立開業での最新ランキングを発表
https://entrenet.jp/corporate/news/news143/
24年5月最終週での介護関連ビジネスのランキングを独自調査。今後も高まり続ける介護需要を捉え、拡大市場である高齢者向け介護ビジネスランキングで上位を獲得した企業を紹介します。(2024/06/06)

[7]サイキンソー、ライオン株式会社から第三者割当増資による資金調達を実施
https://cykinso.co.jp/news/20240606
両社がより深く連携することにより、個々の細菌叢情報に基づいて最適化されたオーラルヘルスケアを提案し、健康に直結するより良い習慣づくりに貢献することを目的に、この度の資金調達に至りました。(2024/06/06)

[8]eatas、即時尿検査サービスを開発する株式会社ユーリアと共同研究を開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000077218.html
栄養状態の把握から健康状態の解決を目指し共同研究を開始。ユーリアが開発する即時尿検査サービスとイータスのパーソナル食事指導の知見及び、運営する管理栄養士コミュニティが協力することで、検査から食事指導まで一気通貫したサービスの開発を目指します。(2024/06/06)

[9]サントリー食品インターナショナル、企業の健康経営をサポートする「SUNTORY+」(サントリープラス)、導入企業1,000社突破!
https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF1490.html
一般的なヘルスケアアプリは一か月経つと継続率が15%を下回ると言われている中で、「SUNTORY+」の1か月後の継続率は89%、さらに88%の方が「健康に良い行動をすることが増えた」と効果を実感されています。(2024/06/06)

[10]SOMPOホールディングスとRIZAPグループが資本業務提携契約を締結~誰もがウェルビーイングを実感できる社会の実現に向け~
https://www.rizapgroup.com/news/detail?topics_id=1009
SOMPOホールディングスとRIZAPグループは、本資本業務提携を通して、全ての人が安心して、心身ともに健康な生活が送れる社会の実現を目指し、多方面での協業を推進してまいります。(2024/06/07)

[11]ティップネス、300名に聞いたダイエット・フィットネスに関する情報源はSNSが過半数!女性は「1位 Instagram」男性は「1位 YouTube」(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000313.000009907.html
全国の男女300名に対し「ダイエット・フィットネスの情報源」に関する調査を実施。現代のダイエット情報源がSNSで、男性はYouTubeを、女性はInstagramを主に利用していることがわかりました。(2024/06/07)

[12]乳がんの再発を予測する新しい血液検査~海外のヘルスケアニュース15選~(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/news-women-240607-1
新しい血液検査で乳がんの再発を予測できるようになるとイギリスの研究チームが発表。BBCの報道によると、研究はまだ初期段階ではあるが、がん患者を対象にした試験では平均して再発の約15か月前に癌を検出できたという。(2024/06/07)

[13]幸年期マチュアライフ協会と日本インフォメーション、男女4割もの「更年期かどうかわからない」という『更年期不明層』の“更年期無関心”が『更年期ロス』を招く【PDF】
https://www.maturelife.org/wp/wp-content/uploads/2024/06/20240607_%E3%80%90%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%80%91%E6%9B%B4%E5%B9%B4%E6%9C%9F%E8%87%AA%E8%A6%9A%E4%B8%8D%E6%98%8E%E5%B1%A4%E3%81%8C4%E5%89%B2%E3%82%82.pdf
https://www.maturelife.org/
40~50代マチュア世代の「更年期不」に注目し、30~60代男女を対象に、性差に加え、更年期の自覚による更年期との向き合い方・行動実態で異なる健康・生活意識を把握することを目的に、共同調査・分析。(2024/06/07)

[14]おいしい健康、医療機関向け生活習慣病管理DXソリューション「Kakaris(カカリス)」をリリース
https://corp.oishi-kenko.com/news/20240610.html
本サービスでは、単に療養計画書業務を自動化するのみならず、患者への問診や個別化した生活指導までを一貫して手間なく実現できる点が特徴です。(2024/06/10)

[15]LocoXとHIL、企業の健康経営を支援する新サービス「お腹ソムリエ健康経営パッケージ」の提供を開始
https://www.locoxinc.online/news/%E6%96%B0%E3%83%91%E3%83%83%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B8%E9%96%8B%E5%A7%8B
本パッケージでは、従業員の腹部の皮下脂肪や内臓脂肪ならびに筋肉の状態の測定と生活習慣の評価をお腹ソムリエが行い、その結果をもとにLocoXの専門家が個人や企業に合わせた改善プランを提案・提供します。(2024/06/10)

[16]ベネッセホールディングス、こどもちゃれんじとロート製薬が親子で学べる幼児向け「目の健康サイト」を開設(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001270.000000120.html
昨年は、利用者の98.4%が「役に立った」と回答されるなど好評の声を受け、今年も特設サイトの公開が決定。視力の成長期にある幼児の目の健康を守るための特設サイト「親子で学ぼう!しっかり守ろう!目の健康サイト」。(2024/06/10)

[17]フレイル予防:やせの人は脳卒中リスクが高い(保健指導リソースガイドより)
https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2024/013138.php
日本人の脳卒中患者では、脳卒中後の症状の経過に体格指数(BMI)が影響しており、低体重(BMI 18.5未満)のやせの人は不良である割合が高いことが、国立循環器病研究センターが5.6万人のデータを解析した調査で示された。(2024/06/10)

[18]スマホで写真を撮ると食事改善が上手くいく(保健指導リソースガイドより)
https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2024/013134.php
スマホなどのカメラ機能を利用して、食事の写真を撮ると、食生活を改善するきっかけになるという研究を、オーストラリアのカーティン大学が発表した。(2024/06/10)

[19]ベルシステム24、気圧予報に基づく体調管理アプリ「頭痛ーる」へ「Fitbit」のヘルスケアデータ連携による新機能を追加
https://www.bell24.co.jp/ja/news/bell24/20240611/
「頭痛ーる」の有料版プレミアムプラン利用者は、「Fitbit」を装着することで、「頭痛ーる」アプリ上にて「Fitbit」で計測された睡眠データや、5分ごとの心拍数データのグラフなどの詳細を確認することができます。(2024/06/11)

[20]『mHealth Watch』注目ニュース:無害な刺激で神経性の痛みを解消するウェアラブル『Nerivio』
https://mhealthwatch.jp/global/news20240617-2
今回紹介した『Nerivio』のように、新たなテクノロジーの開発により健康課題を解決に導くものもありますが、けっして新しいテクノロジーは使っていないが、健康課題解決に貢献するものもあります。(2024/06/17)