[海外事例にみる継続支援アプローチ編]生成AIの行動継続への活用(2)
こんにちは、脇本和洋です。
本メルマガでは、海外のヘルスケアサービスの最新動向をチェックしています。
今回は「生成AIの行動継続への活用」と題して、米国における2024年の動向を整理しましょう。
特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編
本編2023年11月号にて、「Generative AI(生成AI)の行動継続への活用」と題して、生成AIとは何か、継続ドライバに合わせた活用例を紹介しました。
その後、2024年に入り、米国では大きな動きがありました。
米国の大きな動きは日本に3年から5年遅れてきますので、ぜひチェックしておきましょう!
参考>バックナンバー:Generative AI(生成AI)の行動継続への活用
2024年4月:WHO(世界保健機構)が生成AIを活用したアドバイスを開始
■概要
・4月、WHOが生成AIを使った健康アドバイス「SARAH」をリリース
・健康的な習慣づくりを行うことが目的
・8言語に対応(日本語はまだ)
・文字だけでなく音声でも質問が可能
・ほめること(共感)があり、パーソナライズして具体的な継続のポイントまで提示
・支援企業はOpenAI、Soul Machines Biological AI、Rooftopの3社
■示されたこと
・利用者が質問の仕方を工夫する必要はあるも、WHOが生成AIを使った健康アドバイスを提示したことで、「生成AIはウソの情報を出すからヘルスケアサービスには使えない」といった固定概念は覆ったことになる。
・要は、プロンプト(指示文)や蓄積データなどを使ってうまく制御していく可能性が示されたことになる。
2024年5月:Googleの生成AI「Gemini」が進化、Fitbitへの新サービスへの応用
■概要
・5月、Google I/Oという開発者向け会議で、Googleの生成AI「Gemini」のAI Overviewsという機能が紹介された
・この機能を使ったサービス例が紹介され、複雑な条件を入れても一発回答があることが示された
■示されたこと
・Googleは2024年3月にFitbitのパーソナルコーチを生成AIで実現すると発表していた。当然、Googleの生成AI「Gemini」が進化し、Fitbitに搭載されることが予想される。
・FitbitのAIヘルスコーチングでは、Fitbitで得られる運動や睡眠といった身体データを学習させてアドバイスを最適化していくものと予想される。
2024年7月:OpenAI Startup FundとThrive GlobalがThrive AI Healthへの資金提供を発表
■概要
・OpenAI Startup Fundは、OpenAIが設立したベンチャーファンドで、生成AI技術を活用するスタートアップ企業を支援するためのもの
・Thrive Globalは企業向けウェルビーイングプログラム提供企業で、ヘルスコーチングサービスに強みをもつ
・この両社によって設立されたのがThrive AI Health。OpenAIの技術がフル導入されたヘルスケアのAIコーチングが実現されることになる
■示されたこと
・前半で紹介したWHOとGoogleの生成AI活用は、個人向け(B-C)での可能性が示されたものだが、このニュースは企業向け(B-B-E、日本でいう健康経営向け)での可能性が示されたことになる。
・企業向けではすでに人(専門家)が健康アドバイスを行っている場合も多く、生成AIを部分的に使いながら成果を高めることにつながる。導入も早いことが予想される。
・生成AIをリードするOpenAIがもつ画像、音声、動画、音楽といった生成技術を本格的に生かした行動定着サービスが開発されると予想される。
本格的に動き出した生成AI活用
2024年に入ってからの米国のヘルスケアサービスでの生成AI活用のトピックを3つ紹介しました。
いよいよ大手が動き出したな。そろそろ本格的な検討タイミングかもしれない。
そう感じた方も多いのではないでしょうか。
では、どのように検討を始めるべきか?
そのためには少なくとも以下の視点が必要です。
- 行動変容サービスのどの部分で生成AIを活用するか?(人との融合をどう図るか、どう制御するか)
- 進化する生成AIらしさ(アイデア発想の力、画像生成の力)をどう発揮させるか?
- ビジネスとしての可能性をどう示すか?(健康成果だけでなく、ビジネスモデルへの効果など)
これらを整理していきながら、
- 国内海外の実際の生成AI活用パターン事例を知っている
- 行動変容のサービスの提供経験があり、実証できる環境をもっている
そんなパートナーを見つけて先手をとっていくことがよいです。
今後も定期的に生成AIを活用したヘルスケアサービスの最前線をお伝えしていきます。
健康ビジネスキーワード
「セルフケアの肝」
デジタルの浸透、AIの拡大、ウェルビーイング志向の常態化の中で、今後益々注目されるのがセルフケア・プロセス。
好調なセルフケア・サービスが共通して中心においているのが、スピリチュアルとコミュニティです。
貴方の商品・サービスのセルフケア・プロセスにどちらかの要素はあるでしょうか?
今週の注目記事クリップ
[1]いびき対策になる?舌のトレーニングデバイス「GenioFlex」(bouncyより)
https://moov.ooo/article/66c4589e14ee9d129655c0f5
「GenioFlex」は、微弱な電気で舌の筋肉を鍛えるマウスピース型のデバイス。舌を鍛えることで睡眠時にスムーズな呼吸ができ、いびきを抑えられると主張している。(2024/08/30)
[2]日常会話から嚥下障害を評価するAI(The Medical AI Timesより)
https://aitimes.media/2024/09/03/14349/?5392
韓国のKonkuk University Medical Centerの研究チームは、AIを用いて日常会話の音声データを音節単位で分析し嚥下機能を評価することで、非侵襲的で簡便な方法を提案している。(2024/09/03)
[3]健康リテラシーは多言語の挿入物ではない(MedCityNewsより)
https://medcitynews.com/2024/09/health-literacy-is-not-a-multi-language-insert/
米国では6,730万人以上の人々が家庭で英語以外の言語を話している。しかし、患者と医療提供者が同じ言語を話さない場合、英語が堪能でない人々の健康とwell-beingに負の連鎖的影響を及ぼす可能性がある。(2024/09/03)
[4]VirtuixのVRトレッドミルがいよいよ9月に発売
https://mhealthwatch.jp/global/news20240904-2
Virtuix社はついにVRトレッドミル『Omni One』の発売日を9月10日と明らかにした。「ついに」というのは、この2,595ドル(送料別)のシステムは10年以上前から開発されていたからだ。(2024/09/04)
[5]アリババクラウド、資生堂のスキンケアブランドに顧客対応アプリ提供
https://mhealthwatch.jp/global/news20240910
新たな顧客エンゲージメントプラットフォームとして設計され、顧客にブランドの哲学を伝え、スキンケアに関する問い合わせに対応することを目的としている。(2024/09/10)
[6]『mHealth Watch』注目ニュース:価値に基づくケアと医療技術イノベーションの展望
https://mhealthwatch.jp/global/news20240917-2
今まで何度か特集してきました“ヘルスケアの価値に基づくケア(Value Based HealthCare:VBHC)”の現状を紹介した記事です。(2024/09/17)
[7]モルゲンロート、持続可能な医療の実現を目指し、医師の長時間労働を改善するAIアバター問診の主要技術の特許を取得!(CLOUD PRESS ROOMより)
https://lp.press-room.cloud/presskit/company/pressRelease/detail?pressReleaseId=9142
本特許は、最新のAI技術を駆使したアバター問診のソフトウェア、オペレーションの部分を支える知財となります。別途出願中の関連特許(ハードウェア)と組み合わせることで、診察前に必要な問診情報を収集し、近年問題視されている医師の負担軽減と診療の質の向上を実現します。(2024/08/23)
[8]ガーミンジャパン、Garminデバイスをウェルネスプログラムに活用した革新的ソリューションを表彰する「Garmin Health Awards 2024」ファイナリストが決定(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000135223.html
本年のファイナリストに選ばれたのは、7つのプロジェクト。日本からは、株式会社竹中工務店の従業員の福利厚生(Employee Health Benefits)に関するプロジェクトがファイナリストに選ばれました。(2024/09/04)
[9]ユカイ工学、コミュニケーションロボット「BOCCO emo」に、日々の血圧測定や記録を楽しくする新機能。ヘルスケア機器との無線接続が可能に
https://www.ux-xu.com/news/20240905
血圧や体重などの測定時間を予め設定しておくと、BOCCO emoが「血圧を測る時間だよ」などと促してくれます。これまで、忘れがちだった健康測定の習慣化をサポートします。(2024/09/05)
[10]メディリード、「知りたいこと」への関連性が高い順にデータベースから提案!AIを活用した設問レコメンドツールを公開
https://www.medi-l.com/blog/news/press_medisearch/
当社で構築したヘルスケアデータベースを活用した新たなツール「Medi Search powered by ChatGPT」をコーポレートサイト内で公開しました。これにより、医療関係者や研究者が効率的に必要な情報を得るためのデータを検索することができるようになりました。(2024/09/06)
[11]藤田医科大学、食品の摂取頻度・嗜好と生活習慣病の関連に一部性差が見られることを明らかに
https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv000000vm16.html
男性は肉、魚、清涼飲料水、アルコールを摂取する傾向が強く、女性は大豆、乳製品、野菜、果物、スナック菓子を摂取する傾向が強いことがわかりました。(2024/09/06)
[12]身体動作の可能性を最大化するAI指導「Sportip Pro」テクノロジーの力でウェルネス業界に変革を(Fitness Businessより)
https://business.fitnessclub.jp/articles/-/2261
カメラで撮影するだけで、個人の身体情報を可視化し、適切な運動メニューをわずか“1秒”で提供することが可能な「Sportip Pro」。さらなるサポートの強化を目指し、各種機能を日々グレードアップしている。(2024/09/06)
[13]日本リカバリー協会・日本疲労学会・ベネクス、9月8日は「休養の日」日本の休養意識を大調査【PDF】
https://www.recovery.or.jp/wp-content/uploads/2024/09/06d0a0aa56fcc24b30da27bb24ad2313.pdf
https://www.recovery.or.jp/
男性は休養を理解できない人が、理解できる人を大きく上回り、更なる休養のリテラシーの向上が必要に。20~40代は休養を理解できる人が、理解できない人を上回り、世代間で大きなギャップが出来ていることなどが分かった。(2024/09/09)
[14]サンスター、オーラルフレイルの地域ぐるみの多面的な啓発が住民の口腔保健行動変容を促すことを確認
https://jp.sunstar.com/notice/press_release/20240909_007272.html
神奈川県平塚市にて、日常生活のさまざまな場所でオーラルフレイル啓発の情報発信を実施し、加えてオーラルフレイル予防・フレイル予防の自分事化を目的とした住民主体の「カムカム教室お口元気プラス」を実施しました。(2024/09/09)
[15]ユーグレナとユーリア、日本初!カラダの栄養状態を2分で可視化する尿検査キット「栄養コンディションチェッカー」を全国のドラッグストアで販売開始
https://www.euglena.jp/news/20240909-2/
10以上の項目の結果が即時に分かる尿検査キットがドラッグストアで販売されるのは、日本で初めてのことです。医師や管理栄養士のアドバイス付きで、お客様の健康改善をサポートします。(2024/09/09)
[16]電通、第18回「ウェルネス1万人調査」を実施
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2024/0909-010773.html
使用意向率・現在使用率が最も高いヘルステックは、「心拍数や歩数、睡眠の質などを測定できる腕時計型デバイス」。「ウェルビーイング」という言葉について、「内容まで理解している」(0%)、「見聞きしたことがある程度(内容はわからない)」(24.2%)と認知度は31.1%に、など。(2024/09/09)
[17]エーテンラボ、吸わなかったタバコの合計金額がユニークな豆知識に変換されて楽しく禁煙に取り組める!「みんチャレ禁煙」に新機能登場
https://a10lab.com/press-20240910/
「禁煙したタバコの長さの合計が自由の女神像の大きさ46m5cmを超えました!」などの情報が表示され、禁煙を楽しく続けるためのモチベーションの維持をサポートします。(2024/09/10)
[18]広島大学、【研究成果】日本の高齢者において嚥下機能が低下すると睡眠の質も低下することが判明~睡眠の質改善への新たなアプローチ~
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/85304
嚥下機能を維持することで、睡眠の質の低下やそれに伴うさまざまな機能低下を防止し、全身の健康を維持するための新たなアプローチにつながると考えられます。(2024/09/10)
[19]味の素・東京大学・お茶の水女子大学、「電気調味料」の技術を開発~世界初、経皮電気刺激を活用して減塩食品の味を調整~
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/presscenter/press/detail/2024_09_10.html
「電気調味料」とは、下顎前部および首後部への微弱な電気の刺激で味覚をコントロールする当社が開発した技術そのものを指します。また当社は、本技術をより活用しやすくするためのデバイス仕様を検討し、首または耳に掛けて使用するウェアラブルデバイスのコンセプトを開発しました。(2024/09/10)