こんにちは。脇本和洋です。
今回は、Generative AI(生成AI)のヘルスケアサービスへの活用についてお話しします。

生成AIは2023年のトレンドキーワードとなっています。
2023年は生成AI元年とも言われ、これから急速に進化を遂げていくことでしょう。
あくまで現時点の情報として、生成AIの理解を深めておきましょう。

特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編

Generative AI(生成AI)の行動継続への活用

日本ではGenerative AI(以下、生成AI)は、2023年春頃に多くのテレビやメディアで取り上げられました。
一度は使ってみた方も多いことでしょう。

生成AIはヘルスケアの多くの分野で活用が期待されています。

今回は、生成AIのヘルスケアサービス(主に予防分野)への活用の中でも、本メルマガのテーマでもある「行動継続」との関わりについて考えてみたいと思います。


【本号の目次】

1)生成AIとは
2)継続ドライバにみる「生成AI」の活用
3)行動継続(定着)における生成AI活用はまだ序章

1)生成AIとは

生成AIは、文章、画像、音声をユーザーの指示に従って作ってくれるものです。

2023年4月、生成AIの一つである「ChatGPT」を開発したOpenAIのCEOサム・アルトマン氏と岸田首相が会談し、日本を重視した開発を行うことが話されたとされています。
この頃から生成AIが急速に注目されてきます。

生成AIは、インターネット、スマホに続く第3次革命ともされていますが、本メルマガのテーマである「ヘルスケアの行動継続支援」と結び付くとどうなるでしょうか?

例えば、あなたがダイエット中、間食がやめられないで困っているとします。
今まで3日坊主で続きませんでした。


【生成AIでできること(例)】

ステップ1:
生成AIにまず自分のプロフィールを入れる(回答の精度を高めるため)。
そして自分に合いそうな間食を減らすための方法を50個出してと依頼する。
すると数秒で50個のアイデアが出てくる。

ステップ2:
出てきた中から継続できそうなことを選び、実践する。

このようなことが今、だれでも無料でできるようになっています。

『生成AIは顧客の行動継続(行動変容)に大きく関わってくる』

まずはそのように見ていただくとよいと思います。

2)継続ドライバにみる「生成AI」の活用

改めてですが、ヘルスケアサービスでは行動継続(行動定着)が大きな成功要因となります。

スポルツでは「継続利用度が高く定着化するサービスにするために組み込むべき開発要素」を継続ドライバとし、8つの要素に分けています。

・インセンティブ
・ヘルスナレッジ
・モニタリング
・IoTリンケージ

・ゲーミフィケーション
・ヘルスコミュニケーション
・パーソナライズ
・コミュニティ

※参考>継続ドライバの解説
https://healthbizwatch.com/column/hbw-1038

継続ドライバは、技術進化に伴いバージョンアップしてきました。
2013年頃のスマホ出現により各ドライバは進化しました。
そして、今回の生成AIの出現により各ドライバの使い方も大きく進化するとみています。

今回は以下の3つのドライバについて、進化を予想してみましょう。


■ヘルスナレッジ

ヘルスナレッジは、様々な切り口で「気づき・実践方法」を与え、行動継続を促すというもの。

「1)生成AIとは」の例でも紹介したよう、生成AIは顧客に合った継続の方法を見つけるアイデア出しで使えます。

ただアイデアは豊富に出ますが、安全性や効果の視点では疑問が残るアイデアが含まれ、使うかどうかの判断は個人にゆだねられるという欠点があります。
つまり、間違ったことをして逆に体を壊すということもありうるわけです。

この欠点をいかに克服するか?
米国では、Patients Engagement(医療における治療の継続支援)の領域において、この信頼性の低さという欠点をクリアした独自の方法で情報を提示することを特長にする企業(MEMORA HEALTHなど)も出てきています。
生成AIの欠点はすぐに克服される良い例だと思います。

※企業例:MEMORA HEALTH
https://www.memorahealth.com/


■ヘルスコミュニケーション

ヘルスコミュニケーションは、専門家との直接のコミュニケーションにより、行動継続を促すというもの。

これからはヘルスケアの専門家も高齢化し、人数が減ることは避けられません。
栄養士やフィットネストレーナーも高齢化、人員も減ってくるでしょう。

生成AIを使うと年齢性別を問わず人物画像を自由に作れます。
話す内容はベテランの専門家が作り、実際に話すのはそのAI人物が行っているように見せる。
そのようなことが可能になってくるのです。

※技術例:adobe画像生成AI「Firefly」
https://firefly.adobe.com/inspire/images
(会員登録すれば、無料で人物写真画像を作れる)


■ゲーミフィケーション

ゲーミフィケーションは、ゲーム性、エンターテイメント性を加え、「楽しいから・かっこいいから・気持ちいいからなど、別の目的でやっていたらいつの間にか健康になった」という形で行動の継続を促すというもの。

生成AIとエンターテイメント性は相性がよいとみています。

例えば、推しの専門家からなんらかのアドバイスを受ける際、生成AIを使って自分のためだけに言ってほしい励ましの言葉を作ってもらえ、それを使って継続しやすいサービスにレベルアップしていくことも予想されます。

※技術例:音声AIの活用「CoeFont (コエフォント)」欲しい声が1秒で手に入る
https://coefont.cloud/
(トップのページで声を作る体験がすぐできる)

3)行動継続(定着)における生成AI活用はまだ序章

生成AIは、いわば生まれたばかりの赤ん坊(つまり、黎明期)と言ってよいでしょう。

米国のヘルスケアサービスの成功・注目事例として我々がよくとりあげる企業(Medifast、Livongo、Pelotonなど13社)に関して、生成AIの活用を先月調査しました。
生成AI活用の記載があったのは4社であり、またその活用方法もまだ詳しく公開していませんでした。
現在まさに活用を研究していて、2024年には一挙にサービスが出てくるとみています。

一方、国内のヘルスケアサービスでも、この半年で30本近い生成AIを活用したサービスが出ていますが、ベータ版での発表も多く模索している段階です。
現時点で各社サービスを評価してもあまり意味はないでしょう。

ヘルスケアサービス、特に行動変容(行動継続・定着の支援)という領域で、生成AIの活用は大きく広がっていくはずです。

ただ、生成AIが超えられないところがあるとするとそれは、

『生成AIは実際の人ではない』ということです。

実際の人と話した時の感動・温もり・パワーが最大の健康行動の継続要因であることは、どんなに生成AIが進化しても変わらないでしょう。

ですので、実際の人をどのタイミングでどのように使い、それを補完するために生成AIをどの段階でどのように活用し、行動継続(定着)を促すかをそれぞれのサービスごとに検討していくしかありません。

今回紹介した継続ドライバ視点での生成AI活用例は、まだ序章にすぎません。
「行動継続(定着)×生成AI」は、今後目が離せないトレンドの一つと思います。
【脇本和洋】

健康ビジネスキーワード

「新商品開発の意味」

「新商品開発は、既に自社で持つシーズ(技術・材料)で今までにないより高度な機能を発揮できるプロダクトをつくることである」

これは正しいでしょうか、誤りでしょうか?

間違いではありませんが、正解でもありません。
まず、新商品開発は顧客に新たな価値を提供することが目的になります。
その価値は顧客が使用し喜ぶものである必要があります。

極端な言い方をすれば「新商品開発は顧客の新たな喜ばしい習慣づくり」です。
顧客の喜ぶ習慣づくりという視点を持って貴社は商品開発に向かっているでしょうか。

今週の注目記事クリップ

[1]Upmind、東京大学との共同研究でアプリでの瞑想の実践がリラクゼーション・感情コントロールに有意な効果があることを新たに確認(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000083261.html
メンタル不調のない労働者を対象にした研究成果であり、マインドフルネス瞑想の習慣化によるメンタルヘルス不調の予防への活用が期待できます。(2023/10/11)

+++★追加解説動画:8分18秒(編集主幹 大川耕平)★+++
エビデンス+アルファが勝負!!
https://youtu.be/l9ZT5FAQivE

[2]サンスターグループ、企業の歯科健診について意識調査
https://www.sunstar.com/jp/newsroom/news/20231108/
全国の人事・総務担当者を対象に「健康経営に関する調査」を実施、企業における歯科健診の取り組み・意識について調査。健康経営優良法人の9割が“お口の健康が全身の健康に影響すること”を知っていると回答。一方で歯科健診実施は3割のみ。(2023/11/08)

[3]花王、デリケートゾーンケアを始めた人の7割が“気持ちの変化”を実感~自分を大切にしている気持ち“セルフラブ感情”の芽生え~【PDF】
https://www.kaobeautybrands.com/content/dam/sites/kanebo/www-kaobeautybrands-com/pdf/press-release/2023/231108_release.pdf
https://www.kaobeautybrands.com/
花王ビューティリサーチ&クリエーションセンターがデリケートゾーンに関する調査を実施。デリケートゾーンケアが、単なる悩みへの対策にとどまらず、自己愛や美意識を高めることへも好影響を与えることが示唆されました。(2023/11/08)

[4]大塚製薬、日本初 認知症の診療支援に用いる神経心理検査用プログラム「ミレボ(R)」の製造販売承認取得について
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2023/20231108_2.html
タブレット端末にApp Storeからインストールしたアプリ「ミレボ(R)」を使用することで、約3分間で簡便に検査を実施できます。(2023/11/08)

[5]LIXILと近畿大学、住宅内温熱環境と居住者の健康に関する研究論文を発表【PDF】
https://newsroom.lixil.com/hubfs/newsroom/PDF/JapanComms/20231108_ResearchPaper_Collaboration_KinkiUniversity.pdf
https://www.lixil.com/jp/
今回発表した研究論文「住宅内温熱環境と居住者の健康に関する研究」では、窓断熱改修による医療費削減額と暖冷房費削減額への効果を検証することを目的とし、調査・研究を実施した結果をまとめました。(2023/11/08)

[6]ベルシステム24とウェルネス・コミュニケーションズ、健康管理業務をまとめて一括代行するサービスを提供開始【PDF】
https://wellcoms.jp/data/news/246/news.pdf
https://wellcoms.jp/
中堅・中小企業の抱える従業員の健康管理に関する課題をまとめて解決する「中堅・中小企業向け健康管理業務一括代行サービス」を提供開始。(2023/11/09)

[7]ブレインスリープ、「睡眠×ビジネスパフォーマンス」に着目した検証を実施
https://brain-sleep.com/news_corporate/10357/
本検証結果から、継続的な睡眠改善行動が、睡眠時間や労働時間に変化がない中、睡眠偏差値や睡眠の質、日中の眠気の軽減、生産性の向上に寄与することが分かりました。(2023/11/09)

[8]ライオンなど、う蝕・歯周病罹患者の口腔細菌叢は歯科治療後も口腔状態が良好な人と異なることを解明【PDF】
https://doc.lion.co.jp/uploads/tmg_block_page_image/file/9312/20231109_01.pdf
https://www.lion.co.jp/ja/
ライオンは、メタジェン、日吉歯科診療所と共同で、予防歯科習慣普及に向けた取組みの一環として、う蝕・歯周病罹患者の歯科治療前後の口腔細菌叢を調査。口腔細菌叢を考慮した予防法の提案を目指す。(2023/11/09)

[9]C2C Platform、パーソナルトレーナー予約アプリ「FITree」を関西エリア限定でリリース(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000079.000035174.html
「FITree」は、好きなときに好きな場所でパーソナルトレーナーを呼べる予約マッチングアプリ。マシンの使い方やトレーニングの仕方を学びたい方からガッツリトレーニングしたい方まで目的によって自由にトレーナーを選ぶことができます。(2023/11/09)

[10]アトラグループとNEC、歩行センシング・ウェルネスソリューションを活用した新たな施術サービスの提供を開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000431.000078149.html
従来、歩行の質を計測・データ化するには研究室で専門機器を使用して計測するのが一般的でした。本プロダクトでは、センサを専用インソールに装着し利用者がいつも履いている靴にセットするだけで、専門機器と同等の精度で歩行の質を計測・データ化します。(2023/11/10)

[11]厚生労働省、医療費の見える化について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_21420.html
医療保険制度における財源等の仕組みを国民の皆様に広く理解していただくことを目的として、令和2年度から医療保険財源を中心にグラフ等を活用した資料を作成し、公表している(毎年更新)。(2023/11/11)

[12]インサイツ、第4期特定保健指導を先取りした“成果重視型”特定保健指導「マイナス2・2チャレンジ(R)」において50%以上が主要達成目標(2cm・2kg減)を達成
https://insights.jp/news/20231114
厚生労働省において令和6年度から始まる第4期特定保健指導に向けて3度目の見直しが行われました。見直しの大きなポイントは、特定保健指導によって成果が出たかどうかを評価する「アウトカム評価」の本格的な導入。(2023/11/14)

[13]オムロン ヘルスケア、30代-70代に聞いた 高血圧に対する意識と行動に関する調査
https://www.healthcare.omron.co.jp/corp/news/2023/1114.html
本調査の結果、健康に不安を感じている人は約8割にのぼりました。また、健康診断や人間ドックで3人に1人が「血圧が高め」と指摘されており、指摘後85%の人が何らかの改善行動をとっていることがわかりました。(2023/11/14)

[14]RIZAPグループ、「chocoZAP」会員数100万人達成に関するお知らせ
https://www.rizapgroup.com/news/press-releases/20231114_01/
chocoZAPは、2022年7月にブランド展開を開始。「簡単」「便利」で「楽しく続けられる」というコンセプトがコロナ禍の収束にともなう健康意識の高まりの中で多くの人々の支持を受け、11月14日時点で全国40都道府県に1,160店舗を展開している。(2023/11/14)

[15]パナソニック、52%が「仕事中に肩こりを感じたことがある」一方、肩こりの認識があるものの放置している“肩こり放置者”が約半数
https://panasonic.jp/topics/2023/11/000000840.html
肩こりと仕事パフォーマンスについて調べるために、20-50代の男女1034名を対象に調査を実施。若年化していると言われる肩こりについても解説。(2023/11/14)

[16][世界糖尿病デー]糖尿病はどんな性差がある?合併症のリスク・性機能障害・薬の副作用など(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/news-women-231114-2
糖尿病の罹患は男性に多いが、合併症のリスクや薬の副作用などには性差があることがわかっており、男女それぞれに適したケアの必要性が指摘されている。糖尿病の性差にまつわる各所の情報を見ていこう。(2023/11/14)

[17]Polimill、スマホゲームでの健康維持増進をどう考えるか?
https://polimill.jp/pr2023111401/
「スマホゲームを活用した健康維持増進に賛成」が61.8%で最多。メリットの方が大きいと思う。高齢の方なども利用しやすければなお良い、などの意見が寄せられた。(2023/11/14)

[18]ガーミンジャパン、5回目となる「Garmin Health Summit」をシンガポールで開催
https://www.garmin.co.jp/news/pressroom/news2023-1114-garmin-health-summit/
Garminデバイスをウェルネスプログラムに活用した革新的ソリューションを表彰する「Garmin Health Awards 2023」の受賞者を発表。(2023/11/14)

[19]「Pixel Watch 2」と「Fitbit Charge 6」、激しい運動中も正確な心拍数トラッキングを実現した理由
https://mhealthwatch.jp/global/news20231108
Googleは、公式ブログで今年秋に発売した「Pixel Watch 2」と「Fitbit Charge 6」で、心拍数トラッキング機能をどうやって改善したのか、その取り組みを明かした。(2023/11/08)

[20]『Amazon Clinic』が咳、風邪、インフルエンザの患者を治療可能に
https://mhealthwatch.jp/global/news20231109-2
顧客は、デスクトップまたはモバイルの『Amazon Clinic』の「治療を探す」リストから新しい「咳、風邪、インフルエンザ」オプションを選択できるようになった。(2023/11/09)

[21]アップル出身者が創業したHumane、手のひらに投影できるデバイス「Ai Pin」を発表(CNET Japanより)
https://japan.cnet.com/article/35211332/?fbclid=IwAR3PFDDpMIqZq9XeN2Mh0MgrENEYAwZJNkt8u_RvGSTxowZy3ry4i1eUe4o
基本的にAi Pinはウェアラブルなプロジェクターであり、超広角RGBカメラで写真を撮ったり、テキストメッセージや電子メールを送ったり、「ChatGPT」に似た機能によって質問に答えたりできる。(2023/11/10)

[22]針を刺さずに血糖値が測れるスマートウォッチ『K’Watch Glucose』
https://mhealthwatch.jp/global/news20231110-2
『K’Watch Glucose』は間質液中に含まれるブドウ糖の濃度を持続的に測定して、血糖値に換算した値を記録する。腕時計端末型のCGMデバイスとしては『K’Watch Glucose』が世界初。(2023/11/10)

[23]『mHealth Watch』注目ニュース:Amazon、プライム会員向けに月9ドルの医療サービス
https://mhealthwatch.jp/global/news20231120-2
オンラインでの医療相談や病院の診察、検査の予約などが行なえる新サービス『Amazon Health』をスタートする。(2023/11/20)



+++★デジタルヘルス解説動画(オーサー 渡辺武友)★+++

【デジタルヘルス・ビジネスの疑問解消!】
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第29回 マーケティングリソースなしで100万以上DL フィットネスソーシャルアプリ『Hevy』(7分45秒)
https://youtu.be/ovEy4nFTKVk