こんにちは、里見です。
ヘルスケアサービスにおいては、最初の一歩を踏み出させる動機づけと、その後の行動を継続させることが大きな課題です。

今回は、一歩を踏み出させる動機づけと行動の継続について、ヘルスコーチングの視点から解説いたします。

特集:ヘルスコーチングの視線編

ヘルスコーチングの可能性を探る:外発的動機付けから内発的動機付けへの流れ


1、一歩を踏み出させるアプローチ


ヘルスケアサービス、特にBtoB向けヘルスケアサービスを提供する際、対象の集団には健康に全く興味・関心がない人が相当数含まれることがあります。

この「健康に対して無関心な人々」、いわゆる行動変容ステージの無関心層をどうにか変えたい、動かしたいというのが、BtoB向けヘルスケアサービスを導入する健保や企業担当者の課題です。

また、行動変容ステージの関心層の人々も、興味・関心はあっても一歩を踏み出せず、行動を起こしていない状況で、無関心層と同様に「こちらを向いてもらう」ことが必要です。
これらの無関心層、関心層の人々には、まず健康に関する取り組みを始めてもらうことが重要です。

しかし、健康について真正面から伝えても反応が得られないため、以下のようなアプローチ(伝え方も含む)が必要です。


アプローチアイデア(伝え方も含む)

1.健康を隠す(前面に出さない)
 oお得にもらえるインセンティブ
 o楽しさ、ゲーミフィケーション

2.恥ずかしさやリスクを強調する
 o健診結果が良くない(将来のリスク)
 o権利の剥奪、損失

3.気になるタイミングでアプローチする
 o健診前のタイミング
 o誕生日やライフイベント

4.成功者モデルを示す
 o成功した人のアドバイス
 o口コミ

5.楽・簡単さを強調する
 o〇〇するだけでいい(つらくない)

6.時間の節約や「ついで」を強調する
 oながら(ついでに)

7.我慢しなくて良い(ストレスがない)ことを強調する
 o〇〇を食べても痩せる

8.頑張っている人に共感を得る
 o教える人に共感する
 o頑張っている姿に共感する

2、一歩を踏み出させるアプローチは外発的動機付け


上記のアプローチアイデアをご覧いただくとお分かりの通り、まず一歩を踏み出してもらうためのアプローチは、外発的動機付けが中心です。
外発的動機付けとは、外部からの影響や要因によって、行動への意欲、すなわち一歩を踏み出す気持ちが高まる心理状態のことを指します。

例えば、「参加するとインセンティブが得られる」や「ゲームをクリアするとランクが上がる」などが該当します。

行動変容ステージの無関心層や関心層の人々は、「健康のために」「予防のために」といった自発的な理由で健康行動を始めることは難しく、自ら進んで健康への取り組みに参加しようとはしません。
そのため、健康そのものを目的としない別の目的や興味・関心を引き出す外発的動機付けのアプローチが必要になります。

3、外発的動機付けの限界点


上記で示したアプローチアイデア(伝え方も含む)を駆使し、外発的動機付けで一歩を踏み出したとしても、ヘルスケアサービスには次の課題が待ち受けています。

それが「継続」です。

外発的動機付けは、重い腰を上げて一歩を踏み出させる役割を果たしますが、それだけで「継続」まで導くのは難しいのです。
なぜなら、外発的動機付けは外部の影響や要因に依存しているため、それらが魅力的でなくなると飽きが生じ、効果が薄れてしまいます。

せっかく重い腰を上げて一歩を踏み出した行動変容ステージの無関心層や関心層の人々が行動や取り組みを止めてしまうと、元の状態に戻り、振り出しに戻ってしまいます。

そこで、外発的動機付けで一歩を踏み出した人たちを、本当に継続的な取り組みに導くためには、内発的動機付けのアプローチが必要になります。

4、継続へのアプローチは内発的動機付け


内発的動機付けとは、自身の内側から生まれる興味や関心が行動の動機になるものです。

例えば、「もっとキレイになりたい」「カッコイイ身体になりたい」といった目標やゴールなど、なりたい自分の姿への思いから生じるものです。

ただし、外発的動機付けで取り組みを始めた人が、すぐに内発的動機付けに切り替わるわけではありません。
そこには、さまざまなアプローチや自身の内側からの気づきが必要です。

この内発的動機付けを引き出すための、対象者の内側に向けたアプローチこそが、ヘルスコーチングにおけるコミュニケーションであり、寄り添いの姿勢です。

5、ヘルスコーチングの内発的動機付けに向けたアプローチ


ヘルスコーチングでは、目標に向けた行動の継続にフォーカスし、対象者が自ら行動できるスタイルを見つけるために、継続的なコミュニケーションを重視します。

内発的動機付けのアプローチの基本は、対象者が自ら気づき、主体的に取り組むプロセスをサポートすることです。
このコミュニケーションの基盤となるのは、多角的な視点からの投げかけやアプローチ、それに対する言語化を促し、対象者が自身の気づきを引き出すことです。

また、内発的動機付けを促すための気づきは、広い視点でのアプローチが求められます。
対象者ごとに気づきのポイントが異なるため、そのアプローチも個別に調整する必要があります。

ヘルスコーチングにおける内発的動機付けへのアプローチ例

1.ゴールを明確にし、イメージ化する
2.小さな変化や成果を発見する
3.進捗を明確にする
4.行動や取り組みを整理する(自分に合う、合わないなど)
5.ハードルを整理し、明確にする

などがあります。

6、外発的動機付けから内発的動機付けへの流れ


ヘルスケアサービス、特にBtoB向けヘルスケアサービスを提供する際には、まず一歩を踏み出してもらうための外発的動機付けのアプローチと、その後の継続を促す内発的動機付けのアプローチの両方が必要です。

せっかく重い腰を上げて一歩を踏み出した行動変容ステージの無関心層や関心層の人々を、いかに準備期、実行期に導けるかが重要なポイントとなります。

無関心層や関心層の人々を一気に準備期、実行期へ導くのは難しいですが、外発的動機付けで外側から興味・関心を高めつつ、取り組むプロセスの中で少しずつ内発的動機付けのアプローチを組み込み、自らの気づきを通じて内発的動機へと変化させることが求められます。

せっかく一歩を踏み出した人たちが取り組みを止めてしまわないように、外発的動機付けから内発的動機付けへのプロセスに注目することが重要です。


今回お話しした内発的動機付けに基づくヘルスコーチングのアプローチは、ヘルスコーチングの基本的な手法のほんの一例です。

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健康ビジネスキーワード

「一番多い誤解」

国内のヘルスケアビジネスを30年サポートしてきて、事業プレイヤー側で今でも減らない誤解があります。
それはどんなものか?

「正しいから分かる」というロジック。

指摘すると合点するが、修正しても、また暫くすると元に戻る。
貴社ではいかがですか。

今週の注目記事クリップ

[1]Huawei、アップグレードされた健康モニタリングシステム『TruSense』を発表
https://mhealthwatch.jp/global/news20240911-2
中国で行われたイベントで発表した『TruSense』システムは60以上の健康とフィットネスの指標を測定する「包括的かつ正確な」モニタリング機能を提供すると述べた。(2024/09/11)

[2]Collision 2024:注目の北米テックトレンド。垂直型AI・ネクストサブスク・ヘルステック
https://mhealthwatch.jp/global/news20240913
カンファレンスの最終日は、プレゼンテーションやパネルディスカッションの多くがヘルスケアテックに焦点を当てた開催であった。特に医療分野におけるAIの利用拡大、血液検査やがん検出の新技術などのスタートアップが出展をしていた。(2024/09/13)

[3]ゼンショーホールディングスとカゴメ、「ナッジ」と野菜摂取量推定機「ベジチェック(R)」を活用することで外食で野菜メニューの注文率が増加することを確認【PDF】
https://www.zensho.co.jp/jp/company/news/resource/pdf/240909.pdf
https://www.zensho.co.jp/jp/
ゼンショーとカゴメによる野菜摂取の促進にむけた共同実証研究。1カ月にわたる実証研究の結果、お客様の行動変容を後押しする「ナッジ」を活用した掲示物と野菜摂取量推定機「ベジチェック(R)」を活用した店舗では、休日の推奨野菜メニュー注文率の増加が認められました。(2024/09/09)

[4]Uniposと日経BP、人的資本経営領域において業務提携
https://pr.unipos.co.jp/2024/09/11/unipos_nikkeibp_humancapital/
Uniposの人的資本経営に関する知見、日経BP 総合研究所の各種レポート作成ノウハウや発信力というそれぞれの強みを活かすことで、組織改革や人材育成のコンサルティングから、それらの取り組みに関する情報開示の実現まで、企業の人的資本経営をトータルにサポートできると考え、今回の業務提携に至りました。(2024/09/11)

[5]スタートライン、WOWOWコミュニケーションズとの共同開発「心理的柔軟性」に着目した新たなウェルビーイング研修を提供開始
https://start-line.jp/news/wc_well-being0911/
今回、両社において共同開発・リリースを行う研修「いきいきと働くための心理的柔軟性:ウェルビーイング経営とACTの実践」は、従業員のメンタルヘルス対策に加えて、社員の「働きがい」を高めることに注目し、従業員一人ひとりの「心理的柔軟性」を高めることを重視した研修です。(2024/09/11)

[6]保健同人フロンティア、仕事と介護の両立支援で企業と従業員をサポート!新サービス「ビジネスケアラー応援団」をローンチしました
https://www.hokendohjin.co.jp/ja/news/news-20240905-01.html
仕事と介護の両立に関する理解度向上、介護制度の周知・活用支援、個別の悩み解決で、企業・従業員をサポートし、介護による離職や生産性低下を防止します。(2024/09/12)

[7]JR東日本など、JR横浜駅にて「駅からオトクに快眠チャレンジ」実証実験を実施します【PDF】
https://www.jreast.co.jp/press/2024/20240912_ho02.pdf
https://www.jreast.co.jp/
健康測定が睡眠や健康関連の商品・サービスに対する購買意欲にどれほど影響するかなどについて検証します。JR横浜駅にて健康測定を実施し、その結果をもとに、睡眠習慣改善サービスの利用や、スタジオでのヨガ・瞑想を体験していただきます。(2024/09/12)

[8]おいしい健康・阪急阪神ホールディングス・ウェルビーイング阪急阪神・日立製作所、シニア層に向けてデジタル×リアルで食事・運動を支援するサービスの実証をします
https://corp.oishi-kenko.com/news/20240912.html
経済産業省が推進する「令和6年度日常生活におけるPHRを活用したユースケース創出に向けた実証調査事業」の実証事業者として採択されましたのでお知らせします。(2024/09/12)

[9]明治、日本初!日本の食習慣を反映した1食分を考慮した明治栄養プロファイリングシステム(Meiji NPS)の開発とその妥当性の検証
https://www.meiji.co.jp/corporate/pressrelease/2024/0912_01/index.html
当社は生活者の摂取量を栄養評価に反映するために、新たにサービングサイズを基準としたMeiji NPSを開発しました。食事の実態に近い評価を行うことで、さらに栄養価値の高い食品の開発や改良を進めていきます。(2024/09/12)

[10]アトピヨ、日本最大級のアトピー患者向けアプリ「アトピヨ」が世界トップのアクセラ「Berkeley SKYDECK」に採択!~米国版リリースへ~(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000067.000035958.html
今回のプログラムに合わせて米国版アプリをリリースし、現地フィードバックを通じて米国のアトピーの方に使われる症状管理・コミュニティアプリを実現していきます。そして、米国でも医療・製薬と連携し、アトピーの方に還元するサイクルを目指します。(2024/09/12)

[11]LIFEM、静岡県「令和6年度フェムテックによる女性活躍推進事業」の委託先に採択!9月13日より企業向けのサポートサービスを開始!
https://lifem.co.jp/news/202409131100
本事業では、静岡県内の企業で働く従業員を対象に、月経随伴症状・更年期症状などの女性の健康課題や、妊娠・不妊治療と仕事の両立などに関する意識調査、ヘルスリテラシー向上を目的としたセミナーの開催、健康課題に関するオンライン相談窓口の提供などを行い、効果測定まで実施します。(2024/09/13)

[12]WILLEE、健康経営の社内浸透を強化する「社内浸透サポート」のサービス提供を開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000149130.html
「社内浸透サポート」とは、健康経営に関する社内コミュニケーション方法を改善し、健康づくりの風土を醸成していくサービスです。従業員の健康に対する関心を高め、健康施策への参加率を上げることが期待できます。(2024/09/13)

[13]WizWe、「フィットネスクラブ新規入会者を対象としたLINE対話型伴走サポートによる来館促進の効果」について論文を発表(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000209.000035684.html
フィットネスクラブ入会者を対象としたスマートフォンによる遠隔伴走サポートは、初期来館頻度を促進させる効果があると示唆された。来館数の多いユーザーのメッセージの特徴語として「ありがとう」が抽出された、など。(2024/09/17)

[14]タウンドクター、ネスレ社共催 健康経営セミナー「健康経営における睡眠課題の現状と改善策の方向性」
https://npartner.jp/news/20241024-health-management-seminar-regarding-sleep-problems-co-sponsored-by-nestle-japan/
開催日は2024年10月24日(木)。本ウェビナーはネスレ日本株式会社様との共催で、医療法人RESM 理事長の白濱龍太郎先生をお招きし、睡眠課題の現状と改善策の方向性について、事例を交えてお話しいただきます。

[15]『mHealth Watch』注目ニュース:ユカイ工学、コミュニケーションロボットに、日々の血圧測定や記録を楽しくする新機能
https://mhealthwatch.jp/japan/news20240924-2
今回注目したのは、コミュニケーションロボットが日々の血圧や体重計測を知らせてくれて、測定結果も機器とコミュニケーションロボットが連携し、データの記録や変化についてもサポートしてくれるというニュースです。(2024/09/24)