[海外事例にみる継続支援アプローチ編]生成AIをヘルスケアサービスに活用する時の課題
こんにちは。脇本和洋です。
本メルマガでは海外のヘルスケアサービスの最新動向をチェックしています。
今回は、2025年の注目テーマ「生成AI活用」の課題について考えます。
特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編
2025年のヘルスケアビジネスを検討する際の注目ポイントとして
・生成AIの活用
があります。
WHO(世界保健機構)やFitbitなどが積極的に活用しており、注目すべき状況になっていることは、先月の本号でお伝えしました。
※参考>本編のバックナンバー(2024年12月今年後半を「2つの視点」で振り返る)
生成AIをヘルスケサービスに活用する時の課題
米国では生成AIのヘルスケア活用が本格的に進んでいますが、爆発的に増えてきているとは言えません。そこには課題が潜んでいるのです。
現在、私たちは生成AIを活用したヘルスコーチングサービスの開発を進めています。
その中で感じている課題や、よく聞かれることを2回に渡って紹介していきます。
今回は3つの課題をとりあげます。
■課題1:生成AIとの対話は無限に続くが、それで問題ないのか?
生成AIとのやりとりをしてみると、「この会話、いつになったら終わるのだろうか?」と思う場合も多いことでしょう。
悩みが深く、相談にじっくり応じるサービスであれば問題ありませんが、ヘルスケアの予防サービスのように、ユーザーが短時間でのサービス利用を望む場合、無限に続くスタイルは避ける必要があります。
解決の方向性は、会話をステップに区切って進めるよう指示するということです。
一連の流れを最初に作りそれに当てはめていくスタイルをとります。
こうすることで、一定時間内で会話の成果を出すことができます。
■課題2:生成AIの出力は安全なのか?
企業として生成AIを活用してヘルスケアサービスを作るには、生成AIの出力に責任をもつ必要があります。
生成AIは常に学習しているので、同じ質問をしても出力結果が同じということは少ないです。
また、健康づくりに反する内容を出力するようでは、企業としてリスクが大きく、利用は難しいでしょう。
解決の方向性はいくつかあります。
一つは、ある範囲で検証された「ナレッジデータ」を自社でもつことです。
このナレッジデータの中で生成AIに自由に回答を考えさせるのです。
細かいノウハウはありますが、専門家が監修した安全な「ナレッジデータ」を元に回答を出力することは有効な方法論となります。
■課題3:生成AIらしさを発揮できているか?
解決の方向性はいくつかあります。
上記の課題1と2を克服しようとして真剣になりすぎると、いつしか従来のシステム(ルールベースのチャットボット)とよく似たものになります。
つまり生成AIらしさが失われていくわけです。
そのためには、「生成AIらしさ」を忘れないでおく必要があるのです。
---<生成AIらしさ(その1)>
「個別性+創造性」で、やりたくなるアイデアを出せる
例えば、ある会社員の人に「運動不足を改善する方法」を提案するとします。
従来のルールベースのシステムでは、「在宅か外出が多いか」「有酸素運動か筋トレのどちらが好みか」といった情報をもとに、例えば、「在宅でできる筋トレを数種類提案する」といったシンプルなものでした。
生成AIを活用するとどうなるでしょうか?
例えば、生成AIとの対話の中でその人には小学生の子供がいて、趣味がゴルフだったとわかったとします。
生成AIであれば、リアルタイムに「ゴルフでよく使う腰回りの筋トレを、小学生の子供と一緒に在宅で楽しみながら鍛える」といった、個別性と創造性を兼ね備えたアイデアを出すことができます。
つまりは、「その人がやりたい!」と思えるアイデア出しができることが、生成AIらしさというわけです。
---<生成AIらしさ(その2)>
「共感を重視した対話スタイル」で、動きたくなる
例えば、揚げ物が大好きな会社員の人に「揚げ物を減らすこと」を伝えたいとします。
従来のルールベースのシステムでは、あらかじめ設定されたルールに基づいて「やるべきこと」を提示する形式が一般的です。
そのため、提案は「カロリーを減らすために揚げ物をやめましょう」といったシンプルで直接的な指示に終わりがちです。
これでは提案が押し付けのように感じられ、行動を促す力が弱いのです。
一方で、生成AIはユーザーの気持ちや状況に寄り添った、より共感的で柔軟な表現を生成することが得意です。
例えば、「揚げ物がお好きだと、食事が少し物足りなく感じてしまうこともありますよね。でも、同じ満足感を得られるように、揚げ焼きやグリルに変えてみると、カロリーを抑えながら楽しめるかもしれません」といった提案を生成できます。
単なる行動提案ではなく、ユーザーの感情や価値観を考慮した表現にできるので、行動を促す力が強いのです。
提案内容は単なる「行動のための指示」ではなく、「利用者の気持ちに響き、実践したいと思える」形に変わります。
このような共感を重視した提案の適応力こそが、生成AIが従来システムを超える大きなポイントなのです。
課題解決の方法論はまだ確立されていないからこそ、今がチャンス
ビジネスで成功するには、環境変化の大きな波に先行して乗ることが大切な要素です。
生成AIらしさの所で紹介したよう、生成AIをうまく使うと「圧倒的なパワーで健康行動を促す可能性」があるのです。
次号では、ビジネス面(収益面)での課題も踏まえ、解決の方向性をお伝えします。
楽しみにしておいてください。