[海外事例にみる継続支援アプローチ編]今さら聞けない「機械学習型AI」と「生成AI」との違い
こんにちは。脇本和洋です。
米国では継続支援サービスにおいてAI活用が大きく進んでいます。
今回はヘルスケアサービスで使われている「機械学習型AI」と「生成AI」の違いについて、わかりやすく説明します。
特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編
最近、ヘルスケアサービスの現場でも「AIを活用したい」という相談が増えています。
特に経営層が生成AIに注目し始め、担当者も対応を迫られているケースも多く見られます。
では、自社サービスのAI化をどのように検討していけばよいのでしょうか?
そのために様々なニュースに触れるのはよいと思いますが、ニュースを読む前にまず押さえておくべき基礎知識があります。
それが、「機械学習型AI」と「生成AI」の違いを理解することです。
ヘルスケアサービスにおける「機械学習型AI」とは
■簡単にいうと
機械学習型AIは、「大量のデータを学習させ、新しい入力に対して“結果を予測したり、最適なパターンを選んだりする”AI」です。
■例え話
将棋AIをイメージしてください。過去の対局データを学習し、ある一手を打つと「この手の勝率は65%」と予測したり、そこから“最善の一手”を選ぶ。
これが機械学習型AIのイメージです。
■ヘルスケアでの活用例
・健診予測(予測)
過去の健診データ(年齢・性別・検査値など)を学習し、将来の血糖値や体重などを予測します。
・コメントの自動生成(選択)
体重や行動履歴に関するデータを学習し、用意されたコメントパターンから現在の状況に最も合ったものを選んで表示します。
※コメントそのものは人間が事前に作っておく必要があります。
・食事アドバイス(選択+予測)
食事画像と料理名を学習し、さらに料理ごとの栄養バランスを学習します。画像から料理名を認識(選択)し、そこから栄養バランスを推定(予測)します。
例えば、「ごはん・味噌汁・卵焼き」の朝食画像を分析し、「たんぱく質がやや少なめ」と判断。その上で「納豆やヨーグルトの追加がおすすめです」といったコメントを提示します。
■強み
・数値的な予測に強く、信頼性が高い
・デバイスなど定量データを扱う企業と相性が良い
・処理が自動化しやすく、スケールさせやすい
■課題
・精度を高めるには、大量のデータと設計コストが必要
・出力内容はあくまで「選択肢の中から」のため、柔軟性に欠ける
・行動変容や共感を促すには、別の工夫が必要
ヘルスケアサービスにおける「生成AI」とは
■簡単にいうと
生成AIは「ChatGPTなどで事前に学習された大量の情報をもとに、入力に応じて“その場で答えをつくる”AI」です。
■例え話
ChatGPTに「40代女性で間食が多い。対策は?」と入力すると、その人の状況に合わせて“その場で”コメントが生成されます。
既存のパターンを選ぶのではなく、文脈に応じて新しい言葉を創り出しているのが特徴です。
■ヘルスケアでの活用例
・共感コメントの生成
例えば、ユーザーが「富士山に登ってリフレッシュしました」と記録すると、「富士山いいですね!自然の中で過ごす時間は、心と体の健康にとってとても大切ですよね」といった共感コメントがその場で自然に生成されます。
・行動アイデアの提案と深掘り
「間食を減らしたい」という入力に対し、「午後にココアを飲んでみては?」と提案。
さらに「甘いのが苦手」と返ってきたら、「レモンピール入りのすっきり系ココアもおすすめです」といったアレンジ提案までできます。
※あらかじめ用意されていないアイデアでも、その場で自然に創り出せるのが強みです。
・なりたい姿のストーリー化/画像生成
「お腹まわりをすっきりさせて、沖縄でダイビングを楽しみたい」という目標があれば、それをもとに「未来の1日」を物語として生成したり、画像で見える化することもできます。
目標のリアリティを高めることで、行動意欲にもつながります。
■強み
・自社でデータを用意しなくても導入しやすい
・文脈に応じた文章・提案・共感コメントが自在に生成できる
・「自分ごと」として感じやすく、行動変容につながりやすい
■課題
・出力内容が毎回異なるため、品質・安全性のチェックが必要
・そのため実運用には「利用範囲の制限」や「専門家レビュー」などの設計が必要
大切なことは使い分け
AIには、それぞれ強みと課題があります。
だからこそ、自社の目的やリソースに合わせた使い分けがカギです。
【食品会社など】
デバイスや定量データが少ない場合は、生成AIが現実的です。
まずは「共感コメント」や「なりたい姿」など、リスクが低く、利用価値の高い機能から始めるのがおすすめです。
【機器メーカーなど】
計測データが豊富な企業では、まずは機械学習型AIで「予測型フィードバック」を行い、その後、生成AIを活用して「行動を促す共感コメントやアイデア提案」を加えるという使い方がおすすめです。
AIは「便利そう」ではなく、「どう使うか」が問われる時代に入りました。
まずは、それぞれの特性を理解し、自社に合った方法からスモールスタートしてみてください。
一歩踏み出すことで、社内の議論も具体化し、次の展開が見えてきます。
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「事例はパクってからが勝負」
私たちHealthBizWatchは、これまで数えきれないほどの海外事例をネタに、お客様企業のヘルスケア事業の"カンフル注入"をしてきました。
でも、ただ事例を紹介するだけでは、ブームに乗ったつもりが転覆するのがオチ。
そこで私たちは、事例活用には“5つの段階”があると考えています。
レベル1:表面だけパクる(コピー&ペーストで満足)→ わかりやすく言うと、「とりあえずスムージー出してみた」みたいなやつです。
レベル2:パクって失敗して、学んだと思ったらまた失敗→ PDCAじゃなくて、FDFD(Fail→Do→Fail→Do)の無限ループ。
レベル3:なんでその事例がうまくいったのか、ちゃんと考えてからマネる→ ここからが「思考」フェーズ。ここまでくれば迷子にはならない。
レベル4:本質を理解して、ちゃんと自社仕様にチューニングしてからやる→ このあたりで「あの会社、なんか最近キレてるな」と周囲がざわつき始める。
レベル5:最終的にオリジナルに昇華。事例を超えて新しい定番にしちゃう→ もうここまで来ると“パクった”ことさえ誰も覚えていない。
多くのチームがレベル2で力尽きます。なぜか?
doing(やること)だけを真似て、being(あり方)を見ないからです。
うまくいくチームは「この事例がなぜ刺さったのか?」という「問い」から始めます。
そして、自分たちの文化や文脈、ユーザーの期待を織り込んで「意味あるdoing」に変えていく。
流行りのモデルをそのまま導入して「なんか違うんだよなぁ」で終わった経験、あなたにもきっとあるはず。
それ、beingが抜けてるサインです。
私たちHealthBizWatchが提供するのは、レベル3以上の“事例活用型イノベーション”。
「真似る力」より、「問い直す力」を伸ばす方が、結局近道なのです。
気になる方、ご一報ください。
今週の注目記事クリップ
+++★注目記事クリップ★+++
[1]米議会は23andMeの破産について疑問を抱いている
https://ht-watch.com/2025/05/23andme-1.html
米国下院のエネルギー・商業委員会のリーダーらは、23andMeの破産が顧客データにどのような影響を与えるか調査中だと述べた。(2025/05/12)
[2]中国発フィットネスアプリ『Keep』、24年売上高は410億円に。「AIコーチ」で個別指導も
https://ht-watch.com/2025/05/keep24410ai.html
同社はこのほど、フィットネス分野に特化したAIモデル「Kinetic.ai」と、これを基盤とするAIコーチ(AIエージェント)「Kaka」の体験版を同時に発表した。(2025/05/13)
[3]『HealthTechWatch』注目ニュース:TSOLife、高齢者向けコミュニティにAI活用を加速
https://ht-watch.com/2025/05/post-40.html
高齢者施設でのデジタル活用では、転倒検知や予防の支援、健康状態の管理などの導入は進んでいますが、TSOLifeは居住者同士のコミュニケーション活性にデジタルによる洞察を活かしています。(2024/05/19)
[4]issin、メタボ率全国1位の沖縄で95%が減量に成功、内閣府支援の実証に県内14市町村が参加し顕著な成果(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000103350.html
今回の沖縄での取り組みでは、「Smart Daily」を活用し、アンケートによるライフスタイル分析×専属コーチ×AIによるタイニールーティン提案を組み合わせ、継続的かつ無理のない生活習慣改善を支援しました。(2024/05/08)
[5]RIZAP、chocoZAP初、自動車ディーラーとコラボ「chocoZAP中央晴海店」5/10オープン
https://www.rizapgroup.com/news/detail?topics_id=1303
本店舗はchocoZAP一般会員のほか、同ディーラー顧客は無償でご利用いただける運用を行います。そのため車の点検等で発生するスキマ時間をちょこっとトレーニングに充てることができます。(2024/05/08)
[6]LIFEMと日本生命、働く女性の健康課題改善と、企業全体の健康課題への理解促進を目指し、協業を開始!
https://www.mti.co.jp/?p=35647
本協業により、当社が提供する法人向けフェムテックサービス『ルナルナ オフィス』が、日本生命の提供する健康増進コンサルティングサービス「Wellness-Star☆」のサービスラインナップに加わり、2025年4月より日本生命を通じて提供を開始しています。(2024/05/08)
[7]ライフツービッツ、副作用なしにアプリで「うつ」や「不安」を軽減!京大チームらが実施した世界最大の臨床試験にて、認知行動療法に基づいたストレス対策アプリ『レジトレ!』が抗うつ薬と同等以上の効果を示す結果に!
https://www.life2bits.com/%e5%89%af%e4%bd%9c%e7%94%a8%e3%81%aa%e3%81%97%e3%81%ab%e3%82%a2%e3%83%97%e3%83%aa%e3%81%a7%e3%80%8c%e3%81%86%e3%81%a4%e3%80%8d%e3%82%84%e3%80%8c%e4%b8%8d%e5%ae%89%e3%80%8d%e3%82%92%e8%bb%bd%e6%b8%9b/
『レジトレ!』は、うつ病治療等に用いられる認知行動療法の核となる5つの基本スキル「行動活性化」「メタ認知」「睡眠行動改善」「コミュニケーション改善」「問題解決法」を手軽に自主的に学び実践できるよう設計されており、ユーザーは日常生活の中でレジリエンス(心の回復力・耐性)を楽しくトレーニングすることができます。(2024/05/08)
[8]ブレインスリープ・BREATHER・BP&CO.、共同検証を実施!
https://brain-sleep.com/blogs/news/11685
共同で、睡眠と呼吸に関する検証を行いました。検証の結果、寝る前に深呼吸を意識的に取り入れることにより、副交感神経が優位になり、睡眠の質が向上することが示されました。(2024/05/09)
[9]つながりAI、ドライバーの孤独感解消へ ココネット社と「同僚AI」実証実験を開始
https://tsunagari-ai.com/news/doryo-ai-test-start
配送ドライバーの“同僚”として相談や雑談に応じる対話型AI「同僚AI」の実証実験を共同で開始します。本取り組みにより、ドライバーのエンゲージメント向上や離職防止、現場の声を活かした経営改善への示唆創出を目指します。(2024/05/08)
[10]オトバンク、体を動かしながらオーディオブックを楽しもう!運動と読書の習慣化をサポートする「耳活ウォーキング」キャンペーンを2025年も開催
https://www.otobank.co.jp/news/lR4-IoCW
昨年は18,299人が参加!認知症対策研究でも注目される「耳活ウォーキング」。好きな作品を楽しみながら歩くことができるので、ウォーキングのモチベーションが高まります。(2024/05/09)
[11]MTG、着るだけで猫背・巻き肩をケアする「Style BX Innerwear」累計出荷枚数10万枚を突破
https://www.mtg.gr.jp/news/detail/2025/05/article_2347.html
『Style』ブランドは2014年に誕生した「世界から姿勢による不調をゼロにする」をブランドビジョンに、現代に生きる姿勢による不調を抱えるすべての人に向けた“姿勢サポートブランド”です。(2024/05/09)
[12]関西医科大学、「いつ食べるか」で満足感や食欲が変わる可能性~概日周期による舌上皮細胞分裂制御の結果生じる味覚の受容変化メカニズムを明らかに~【PDF】
https://www.kmu.ac.jp/news/laaes7000000w7gi-att/20250509Press_Release.pdf
https://www.kmu.ac.jp/
「いつ食べるか」によって食事の満足感や食欲が変わることが示唆され、肥満や摂食障害の改善につながる時間栄養学への応用が期待されます。(2024/05/09)
[13]フラー、保険アプリの月間平均利用時間は16分、利用者は40代以上の男性が中心
https://www.fuller-inc.com/news/202505-insurance-app-market-research-report
アプリ市場分析サービス「App Ape(アップ・エイプ)」で蓄積するデータをもとに、保険アプリの動向や特徴をまとめた「保険アプリ市場調査レポート」を公開しました。(2025/05/12)
[14]東京大学、時間栄養学の視点からみた食行動ー食事の質および肥満との関連ー【PDF】
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400263894.pdf
https://www.u-tokyo.ac.jp/
20~69歳の日本人1047人を対象として、時間栄養学からみた食行動を幅広く調査。本研究は、時間栄養学的行動と食事の質および肥満との関連を、異なる二つの調査法(質問票法と日記法)を用いて検討した世界で初めての研究です。(2025/05/13)
+++★デジタルヘルス解説動画(解説:渡辺)★+++
【デジタルヘルス・ビジネスの疑問解消!】
デジタルヘルスのビジネスに関わる人に役立つ情報をお届けします。
第52回 動かない人を動かすプログラム(5分39秒)
https://youtu.be/bT8lg4IrvyQ