こんにちは、里見です。
前回のこの[ヘルスコーチングの視線編]では、モチベーションを保つためにも、常に目標、ゴールへの意識を向けられるように刷り込むことが大切だということをお話しました。

今回は、その目標、ゴールなどを設定する際に注意しておきたいポイントについて、特に設定を促す専門家やサービス提供者側に認識していただきたい点について、お話したいと思います。

特集:ヘルスコーチングの視線編

ヘルスコーチングの可能性を探る:目的、目標、ゴールを使い分けていますか?

1、目標設定を促す側の理解不足

ヘルスコーチングは健康的な行動変容を支援するコミュニケーション技法です。

そのため、ヘルスコーチングでは「行動」を追いかけPDCAのサイクルを回しながら、常に対象者のゴールや達成イメージに近づくためのサポートをしていきます。

その最初の重要な作業が、ゴールや達成イメージの設定になります。

ヘルスケアのサービスをみていると、この最初の作業のゴールや達成イメージの設定が、「軽く設定されている」ことが多いです。
ゴールや達成イメージの設定では、「自分ごと化」されることが最も重要なポイントなのですが、一般的には「健康になりたい」「痩せたい」「◯◯キロ落としたい」「膝痛、腰痛を改善したい」などといった、少々自分ごと化し辛い感じの設定になっているケースをよく見かけます。

これは、設定する側(対象者)が悪いのではなく、設定してもらう側の目標、ゴールへの理解不足やアプローチに問題があると考えています。

2、設定を促す側の問題点

ゴールや達成イメージを設定する人達にとっては、まずは健康課題を解決したいというのが入り口、きっかけになっていることが多いです。

この健康課題の解決をそのままをゴールや目標に設定した場合、みなさんもお気づきだと思いますが、一般的で楽しくないゴールや達成イメージになってしまいます。

例えば、具体的に数値まで落とし込めたとしても、課題の解決なのでこの程度です。
・体重を5キロ落としたい
・腹周りを85センチにしたい
・血圧を下げたい
などなどです。

上記のようなゴール設定は、楽しいイメージ、ワクワクした印象は伝わってきません。

これは、ゴールを設定する人達の問題ではなく、このゴールを設定し導く側の問題です。
ゴール、達成イメージなどがモチベーションに影響しているということへの認識不足と、一番は「目的」「ゴール」「目標」「達成イメージ」それぞれ異なる視点なのに、一つの大きな括りとして「目標設定」と捉えてしまっている点が大きいです。

一般的に言われている「目標設定」という言葉の中には、「目的」「ゴール」「目標」「達成イメージ」などなど、異なるものが存在しているのです。

これら「目的」「ゴール」「目標」「達成イメージ」などの言葉による視点の違いを認識して、それぞれを使い分けながらアプローチすることで、課題解決の目標だけしか見えていなかった対象者を楽しいイメージ、ワクワクした感覚で自分ごと化したゴール設定に導けるのです。

3、「目的」「ゴール」「目標」「達成イメージ」のそれぞれのポイント

「目的」「ゴール」「目標」「達成イメージ」などの使い分けでは、目標を設定する側(対象者)に、最初からそれぞれの言葉の視点を理解してもらう必要はありません。

まずは、目標を設定してもらう側である専門家やサービス提供者側がしっかりと違いを認識し、それぞれを使い分けながらアプローチすることがポイントになります。

1)「目的」

「目的」とは、何のために課題を解決したいのか?という理由や意義を指します。
何のために課題解決を成し遂げようとしたいのかといった、取り組みの根本的な部分です。
「体重を5キロ落としたい」というのは「目的」ではなく、どうして「5キロ落としたい」のかといった本質的な面を見つけていく、明確にしていく必要があります。

(目的の設定例)
・体重を減少して、生活習慣病のリスクを下げる
・健康への不安を解消して、全力で仕事と向き合う

2)「ゴール」

「ゴール」は、目的のための最終的な目印みたいなもので、目標としていた最終到達地点です。目的とセットで具体的にしていくものです。
例えば「腹周りを85センチにしたい」というのをゴール設定にしがちですが、腹周りを85センチするための目的がなんなのかによって、「腹周りを85センチ」はゴールではなくなってくるのです。
目的を明確にすることで、課題解決だけしか見えていなかったゴール設定が、より自分ごと化された「ゴール」へと変化していきます。

(ゴールの設定例)
・健診データを改善して家族で旅行を楽しむ
・仕事もプライベートも充実させる

3)「目標」

「目標」とは、ある意味大きな括りで使われるケースが多く、人によっては異なる意味で捉えるため、目標を設定する側と設定してもらう側での認識のズレが生まれるケースがあります。
「目標」の位置づけ、定義を明確にすると、ゴールまでの途中の目安や通過点マイルストーンを目標と位置づけた方が、「ゴール」と「目標」の違いが明確になります。
「ゴール」と「目標」を明確に使い分けることで、目標を設定する側と設定してもらう側の視点を合わせることができるので、認識のズレが起こらなくなります。

(目標の設定例)
・2ヶ月後に腹周りをスッキリさせる
・1ヶ月後には、格好良く颯爽と歩いている姿勢を手に入れる

4)「達成イメージ」

「達成イメージ」とは、なりたい姿や状態の映像・具体的なイメージです。
この「達成イメージ」は「ゴール」と連動することが多く、「ゴール」に辿り着いた時の具体的なイメージ、具体的な状態、姿です。
この「達成イメージ」は、より具体的にイメージすること、映像化することが重要なポイントであり、「達成イメージ」をより具体化する作業こそが、楽しい、ワクワクした感覚が生まれて自分ごと化につながります。
また、具体化された「達成イメージ」こそが、取り組みの中でのモチベーションの維持に威力を発揮するのです。

(達成イメージの設定例)
・引き締まっているお腹で家族で海外のリゾートで楽しんでいる
・休日の朝、格好良いウェアで趣味のゴルフを楽しんでいる

4、「目標」と「行動目標」を混同しない

目標を設定する際に、上記のような言葉の位置づけ、視点などを区別することが、目標を設定してもらう側のアプローチとして重要です。
また、この「目標」という言葉で注意したいのが、「行動目標」という言葉の使い方です。

ゴールや達成イメージを常に意識して、具体的な行動(アクション)に取り組む構造が、ヘルスコーチングの基本です。
このヘルスコーチングの構造の具体的な行動(アクション)のことを一般的には、「行動目標」と呼んだりします。

私が気にしている点として、「行動」と「目標」を合体させた「行動目標」という言葉では、「行動」することが目標に位置づけられてしまうことです。

あくまでも、ゴール、目標に向けて取り組むのが具体的な「行動」です。
「行動」を継続することはもちろん重要で、行動に意識を向けることが必要なのですが、上記で説明した「ゴール」や「目標」に「行動」を設定すること自体は、各言葉の定義や視点からみても成立しません。

そのため、「行動」と「目標」を合体させた「行動目標」という使い方は、対象者に誤解を与えたり、「行動」をこなすことが目的にすり替わってしまうことに繋がる可能性を含むので、注意が必要であると感じています。

今回は、「目標設定」という大きな括りの中を深堀りし、それぞれの言葉の定義や視点についてお話しましたが、今回の「目標設定」に関連した内容は、特に専門家やサービス提供側としてのスキルとして必要な要素だと考えています。

これらの言葉の定義や視点を意識的に使い分けることで、目標設定する人(対象者)のゴールや達成イメージが変化していくので、ぜひ活用してみて欲しいと思います。

今回解説した、ゴール設定する際に注意しておく言葉の定義、視点について、簡単な解説動画を準備しています。
自分ごと化に向けた目標設定について解説します!

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