こんにちは。脇本和洋です。

[海外事例にみる企画ヒント編]は、新規事業の立案、既存事業の活性化に役立つヒントを、海外事例を使ってお届けしています。

数多くのベンチャー企業が生まれ、消えていく米国のヘルスケア市場。
本メルマガでは、20年かけて設計した情報源の中から、有望な事例を厳選して紹介しているわけですが、一つの情報源として、「CB Insights」があります。

「CB Insights」は、資金調達やテクノロジーの動向から、有望なベンチャー企業を紹介する米国の情報サービスです。

同社は毎年、「Digital Health 150」という有望なヘルスケアベンチャー150社を発表しています。今回は、2020年に発表された中から注目事例を2社紹介します。

特集:海外事例にみる企画ヒント編

CB Insights 「Digital Health 150」にみる注目事例

今回紹介する「Digital Health 150」では、12のカテゴリー、150のデジタルヘルスケア企業が紹介されています。

そのうちエントリー数が多いのは以下3つのカテゴリーです。

1)Disease management & therapeutics (デジタルを活用した治療法)
糖尿病患者の行動継続をコーチング視点で支援する「OmadaHealth」「Virta」など15社がエントリー

2)Virtual care delivery (遠隔でのヘルスケアサービス)
遠隔診療サービス「Doctor on Demand」「98point6」など16社がエントリー

3)Clinical intelligence & enablement (治療活動を改善する取り組み)
患者の継続治療に役立つサービス「Wellth」「Twistle」他、27社がエントリー

また、その他のカテゴリーとしては薬の宅配、診断検査、病院運営の効率化、臨床検査などがあります。

今回のメルマガでは、1)2)内でとりあげられている注目事例を一つずつ紹介しましょう。

参考>CB Insights:Digital Health 150(2020年度)
https://www.cbinsights.com/research/report/digital-health-startups-redefining-healthcare/
150社が1枚のマップで表現されています

注目事例1.腰痛対策のデジタルヘルスサービス「Hinge health」(ヒンジヘルス)

1)Disease management & therapeuticsで紹介されている事例。

腰痛や関節痛というテーマは、病院での定期的な治療(リハビリ)だけでなく、決められた運動を「自宅」でいかに続けられるかが、その後の治療スピードを左右することになります。

しかし、

・生活が忙しく、運動を忘れたりする(不確実)
・症状が変化する中でリハビリ内容を自ら調整をする必要があり、自宅で一人では続けにくい(不快、不安)

といった市場の「不」がありました。

この「不」に、目をつけたのが「Hinge health」。デジタルと専門家を絡ませながら、腰痛改善の行動継続を支援します。

■事例名:Hinge health
https://www.hingehealth.com/

■設立:2015年

■資金調達:126億円(2020年10月時点)

■実績(導入企業):B-Bが中心
Walgreens、PHLIPS、Vail Resorts、Kraft Heinz、US Foodsなど250社以上

■サービス特長
・1-on-1 Virtual PT(理学療法士との1対1でのセッション)
・1-on-1 Health Coaching(行動の継続、動機付けを支援するヘルスコーチとのやりとり)
・Technology(体にセンサーをつけ、リハビリ運動として最適な角度・負荷で行う)

■サービスの流れ

(腰痛の場合)

・参加者には、ウエアラブルセンサーとタブレットが配布される

・参加者は、ウエアブルセンサーを体につける。センサーが体の角度を読み取り、適切な角度・負荷になっているか、タブレットに表示される。参加者はタブレットを見ながら確認し、リハビリ運動をする(1回10-15分)

・運動終了後には、簡単な健康づくりの知識を読む。さらに、腰痛の痛みレベルを入力する。コーチへの相談事項があれば入力も行う

・ヘルスコーチが、実行状況を確認し(おそらく理学療法士とともに)、痛み、リハビリ運動の達成度に応じて、リハビリ運動を変更する

(腰痛改善には減量が必要な場合も多い。顧客の声をみると、実際には減量に成功している人もおり、ヘルスコーチからの支援は日常の行動習慣にまで及んでいると予想される)

注目事例2:男性向けヘルスケア商品販売「Hims」(ヒムス)

2)Virtual care deliveryの中で紹介されている事例。

男性にとって、薄毛、インポテンツ(勃起不全)は相談しにくいテーマ。言うまでもなく、前者は育毛剤、後者は医薬品のバイアグラなどの商材が並ぶ大きな市場です。

この市場の「不」は何でしょうか?

・何を選んでよいかわからず、口コミに頼るしかない。本当にエビデンスがあるものかもよくわからない(不信)
・商品パッケージがそれらしく、見た目が恥ずかしい(不満)
・処方箋がないと購入できない商品が多く、病院で対面で医師と話さなくてはいけない(不便)

これらの「不」に、Himsは目をつけました。

■事例名:Hims
https://www.forhims.com/

■設立:2017年

■資金調達:158億円(2020年10月時点)

■売上(推定2019年):110億円

■サービス概要(脱毛の場合)

・販売する商品は、脱毛分野の専門家がエビデンスをもとに選定した商品となる。Finasteride(脱毛治療の医薬品)、ビタミン豊富なサプリメントグミ、シャンプー、コンディショナーといったもの

・それぞれの商品は、デザインを工夫しており、脱毛対策商品には見えない工夫をする
例>商品イメージ
https://www.forhims.com/hair-loss/hair-power-pack

・また、医薬品を求める場合は、オンライン診療ができるしくみを保有。自身の悩み、病歴、健康状態、ライフスタイルなどの問診に答え、医師のオンライン診療を受け、処方箋が発行され、同社の医薬品が郵送で送られてくる

注目事例にみる共通点

今回は、Digital Health 150の中から、2つの注目事例(「Hinge health」、「Hims」)を紹介しました。いかがでしたか。

事例の共通点としては以下2点があります。

●市場の「不」は何かを見極める

Hinge healthは、リハビリ運動を自宅で行う場合、「忘れる、やる気がでない、自分の状態に合わせたやり方がわからない、続かない」といった、顧客の「不」に着目しました。

Himsは、男性特有の悩みに対して、「効果のあるものがよくわらない、買うのが恥ずかしい、わざわざ病院に行きたくない」といった、顧客の「不」に着目しました。

これらは、言われてみると納得しますが、企画当事者としては、当たり前すぎて、発見することが難しいものです。

こうした「当たり前の不」に着目する大切さがわかります。

●継続しやすいしくみを組み込む

Hinge healthは、理学療法士に見守られながら、自分でリハビリ運動を続けることができます。
また、センサーを用いて、自分の体の状態に合わせ無理がなく最適な負荷で運動できます。

Himsは、見た目を気にしないでよい商品パッケージで購入を継続でき、さらに遠隔診療で人と会わずに、相談を長く続けることができます。

単に「市場の不」を見つけるだけではだめで、それを解決し、健康行動を継続しやすくするために、デジタルの力を使っているというわけです。 【脇本和洋】

参考>本編「海外事例にみる企画ヒント編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー

健康ビジネスキーワード

「非」型イノベーションに慣れる!

ウェブ会議などの非対面コミュニケーションをほとんどのビジネスパーソンが体験し、そのメリットとデメリットも分かってきた。グループウェアやビジネスチャットを使った非同期コミュニケーションの便利さは働く場所と時間を選ばない。「非」型イノベーションを使い倒して自分の強みを再定義するタイミングが来ました。

今週の注目記事クリップ

[1]経済産業省、METIジャーナル 変革に踏み出す企業にお墨付き「認定制度」がスタート
https://meti-journal.jp/p/13127-2/
経営戦略としてのDX(デジタルトランスフォーメーション)を後押しする施策が拡充されつつある。11月、DX推進に向けた準備が整っていると判断される事業者を国が認定する「DX認定制度」が本格的にスタートした。(2020/12/02)

[2]パナソニック、「働く」を実験する「worXlab(ワークスラボ)」を開設
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2020/12/jn201203-1/jn201203-1.html
「worXlab」は、オフィスワーカーがいきいきと健やかに働けるウェルネス環境を提供し続けることで企業の持続的発展に貢献する、人起点の空間価値創出を目指す。(2020/12/03)

[3]クックパッド、「食トレンド大賞2020」と「食トレンド予測2021」を発表
https://info.cookpad.com/pr/news/press_2020_1203
大賞は家族で一緒に楽しめて調理や後片付けも簡単な「ホットプレートごはん」。「コロナ太り」という言葉も生まれ、ヘルシー食のオートミールの検索頻度も急増。(2020/12/03)

[4]カカクコム・インシュアランス、「価格.com保険」、オンライン保険相談サービスを開始
https://corporate.kakaku.com/press/topics/20201203a
「オンライン保険相談サービス」では、パソコンやスマートフォンを使って保険コンサルタントに相談ができる。オンラインで保険商品の説明が受けられるとともに、複数商品の一括比較も可能。(2020/12/03)

[5]日立社会情報サービス、流行予測AIを活用した「感染症予報サービス」を提供開始
https://www.hitachi-sis.co.jp/newsrelease/2020/201204.html
「感染症予報サービス」は、流行予測AIを活用し、インフルエンザの流行状況を予測・情報配信するサービス。本サービスを利用する民間企業・自治体は、目的に合わせて予報情報をWebサイト上で公開し、対象のユーザーに情報を配信できる。(2020/12/04)

[6]森永乳業、ラクトフェリンの摂取が子どもの睡眠の質を改善する可能性を確認
https://www.morinagamilk.co.jp/release/newsentry-3533.html
森永乳業では、長野県松本市、信州大学との産官学連携で共同研究を実施し、ラクトフェリンの摂取が子どもの睡眠の質を改善する可能性を確認。ラクトフェリンは、母乳、特に初乳に多く含まれるたんぱく質で、赤ちゃんの成長と発達に重要な役割を担っていると考えられている。(2020/12/04)

[7]メディカル・データ・ビジョンとオムロン ヘルスケア、「カルテコ」と「OMRON connect」が連携開始
https://www.mdv.co.jp/press/2020/detail_1443.html
連携により「カルテコ」の利用者は、オムロン ヘルスケアの商品である体重体組成計、血圧計、活動量計で計測した健康データを「OMRON connect」を経由して「カルテコ」に自動転送し、「カルテコ」の「ヘルスケア」ページで保管・閲覧することができるようになる。(2020/12/04)

[8]アシックス、「ASICS World Ekiden 2020」開催報告
https://corp.asics.com/jp/press/article/2020-12-04
アシックスは、チームで参加できるバーチャル駅伝レース「ASICS World Ekiden 2020」を、11月11日から22日までの期間で開催した。今回は、179か国以上、13,602チーム、56,007人とバーチャルレース史上最多となる、多くの方に参加申込があった。(2020/12/04)

[9]セブン&アイ・ホールディングス、大豆ミート入りのハンバーグ2品を発売
https://www.7andi.com/company/news/release/13144.html
大豆の加工品を原材料として使用した『セブンプレミアム 大豆ミートと牛肉のハンバーグ デミグラスソース』、『セブンプレミアム 大豆ミートと牛肉のハンバーグ トマトチーズソース』を発売。本来の肉を食べているような味、食感、口当たりを再現した大豆たんぱくを活用した代替肉と、牛肉を使用。(2020/12/04)

[10]ODD FUTURE、【日本初】コオロギタンパクを使用したカラダと地球に優しい「クリケットプロテイン」が再販開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000064875.html
「クリケットプロテイン」は、次世代タンパク質であるコオロギタンパクを使用するのみではなく、コストを度外視し徹底的にカラダと地球のことだけを考え抜いた人工甘味料・乳製品・グルテンフリーのラグジュアリープロテイン。(2020/12/04)

[11]バンダイ、心拍数や活動量でキャラクターを育成・進化させるウェアラブル端末型玩具「バイタルブレス」発売予定【PDF】
https://bandai-a.akamaihd.net/corp/press/100000990328163.pdf
https://www.bandai.co.jp/
第1弾として「バイタルブレス デジタルモンスター」を2021年3月13日(土)に発売予定。ユーザーの活動データ(心拍数・歩数)にあわせてデジモンのバイタル値(状態)やメンタルが変動し、育成・進化に繋がる。(2020/12/07)

[12]タキイ種苗、2020年 野菜の総括
https://www.takii.co.jp/info/news_201207.html
310人の男女を対象に「野菜」に関する調査を実施。2020年は「野菜の買い方・摂取意識」に変化。およそ2人に1人は「非接触での購入経験」があり、「無人直売所」「宅配サービス」が人気だったことなどが分かった。(2020/12/07)

[13]Mil、アレルギーやグルテンに対応したD2C事業の乳幼児フードブランド『the kindest』とサミットが提携
https://mil-inc.com/news/6546/
Milは、サミットと提携し、2020年12月9日より、サミットストア五反野店にて、Milが事業展開する乳幼児フードブランド『the kindest』を導入。(2020/12/07)

[14]アクサ生命、経営者5,303名に聞いた「社長さん白書2020」を発表【PDF】
https://www2.axa.co.jp/info/news/2020/pdf/201208.pdf
https://www.axa.co.jp/
従業員の健康づくりを重要な経営課題と位置づけ、生産性や企業価値の向上につなげる「健康経営」については、「内容を知っている」と答えた経営者が44.0%と、健康経営への認知に関する設問を取り入れた2016年の19.0%から4年間で倍増し、認知の高まりが明らかになった。(2020/12/08)

[15]Calm.com Inc.、カリフォルニア発 睡眠・瞑想・リラクゼーションの世界No.1アプリ「Calm」がついに日本上陸(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000071029.html
睡眠・瞑想・リラクゼーションなどヘルス・ウェルネス分野の世界No.1アプリである『Calm』は日本人ユーザーの為の日本語オリジナルコンテンツの提供を開始し、本格的に日本上陸。(2020/12/08)

[16]Apple、Apple Watchと連携するフィットネスサブスク「Apple Fitness+」開始!(GIZMODOより)
https://www.gizmodo.jp/2020/12/apple-fitness-start.html
Apple Fitness+は、10種類のワークアウトを提供。ユーザーは、好みのワークアウト、トレーナー、音楽、時間などを選択できて、毎週新しいワークアウトが追加されるらしい。(2020/12/09)

[17]新社会システム総合研究所、KDDIが目指す健康・医療領域のDX
https://www.ssk21.co.jp/S0000103.php?gpage=21035
開催日は2021年1月27日(水)。本セミナーでは、東京都「次世代ウェルネスソリューション」構築に向けたモデルプロジェクトの概要や、その成果を踏まえた事業構想、そして自治体・企業とのパートナーシップの考え方などについて解説。

[18]『mHealth Watch』注目ニュース:『Apple Watch』の推定出荷台数、前年同期比で75%の増加
https://mhealthwatch.jp/global/news20201214
数値が見えにくいApple製品に関する調査データです。推測であっても、規模感がわかることは目安になり、とてもありがたいことです。記事の最後に、ウェアラブル市場の順位が記載されています。(2020/12/14)