こんにちは、里見です。

ヘルスケアのサービス・プログラムを設計し提供する際に、ヘルスコーチングが前面に出ることはあまり多くありません。
では、ヘルスコーチングはどんな位置づけで他の機能とどんな関係性になるのか、今回は基本的な設計部分ごとに解説してみたいと思います。

特集:ヘルスコーチングの視線編

ヘルスコーチングの可能性を探る:サービス・プログラムとヘルスコーチングとの関係性

サービス・プログラムの設計プロセス

サービス・プログラムを設計する段階では、まずは基本的な部分を定めた上で、次に具体的なアプローチ、コミュニケーション、コンテンツ、機能の設計になります。

以下のステップの項目は、ほんの一例です。

1)サービス・プログラムのテーマ、目的
2)サービス・プログラムのメソッド(目的に向けた手法)
3)サービス・プログラムにおける行動変容、行動の継続
4)サービス・プログラムの継続支援

このそれぞれの段階の中で、ヘルスコーチングの位置づけやポイント、組み合わせがそれぞれ存在します。

それでは、段階ごとに整理してみていきましょう。

1)サービス・プログラムのテーマ、目的

ヘルスケアのサービスやプログラムを提供する際には、提供する側としては、テーマを設定し目的も明確にします。

例えば、利用者の健康改善であったり、利用者のダイエットだったり、または商品、サービスの継続的な利用であったりと、提供者によって提供する目的は様々です。
また、その際のテーマについても、目的によって変わってきます。

提供するものによってテーマや目的はそれぞれ異なりますが、ひとつ共通して言えることは「継続」が必要になるということです。

特に、利用者の健康に対するなんらかの変化を目的にした場合には、「行動の継続」が必須になってきます。

ヘルスコーチングでは、目的やゴールを設定し、その目的やゴールに向けて具体的な行動にフォーカスして、PDCAサイクルを回しながら進めていくのが基本です。

この具体的な行動の取り組みを継続するという視点で、ヘルスコーチングは、サービス・プログラムのテーマ、目的の実現に必要な要素であり、どのように行動の継続を促していくのかという点で大きく関係してくるのです。

2)サービス・プログラムのメソッド(目的に向けた手法)

ヘルスコーチングでは、対象者の「ゴール・達成イメージ」、そして達成イメージを手に入れるための「具体的な行動」は、対象者が自ら決定して取り組むことが基本的なスタンスです。

しかし、実際にサービス・プログラムを提供する際には、対象者の目的を定めて、その目的に合わせた手法やメソッドを前提にプログラムを設計することになります。

ヘルスコーチングはコミュニケーションの技法であって、目的を手に入れるためのメソッドでも効果的な手法でもありません。

やはり、対象者の「ゴール・達成イメージ」に導くための効果的な手法の提供が必要になります。
例えば、ダイエットであればカロリー管理であったりもっと踏み込んだ糖質制限などなど、手法、アプローチは様々です。

しかし、誰もが知っている効果的なアプローチやメソッドでも、方法や内容を理解しただけではゴールに近づくことはできません。当然ですが、「行動」や「取り組み」といった「実践」がつきものです。
さらに、ゴールを手にするためには「実践」の「継続」が不可欠なのです。

それも、一時的な達成ではなく、その状態を維持、キープするためには、「行動」や「取り組み」を習慣化まで持っていくことが最も重要になります。

効果が期待できる手法やメソッドにプラスして「行動の継続」にフォーカスしたサポートであるヘルスコーチングのコミュニケーションと組み合わせることで、対象者の「ゴール・達成イメージ」に導くことが可能なのです。

どんなに効果的なメソッドや手法でも、ただ単純に伝える、教えるだけで、取り組みを対象者任せにしてしまっては、もともとのサービス・プログラムのテーマ、目的に近づくことはできません。

効果が期待できる手法やメソッドにプラスして「行動の継続」にフォーカスしたアプローチ、サポートを組み合わせることで、そもそもの手法やメソッドの効果、価値を高めることにつながるのです。

3)サービス・プログラムにおける行動変容、行動の継続

行動変容、習慣化については、まさにヘルスコーチングの要素、コミュニケーションが最も効果を発揮する部分です。

この行動変容、習慣化に向けたヘルスコーチングについては、これまでも様々な視点でこのメルマガで解説してきているので、今回は詳細の解説は割愛させていただければと思います。

というのも、次の「継続支援」とヘルスコーチングの棲み分けや意識するポイントについて、今回は特にしっかりと解説したいので、ヘルスコーチングの要素、コミュニケーションは、過去のメルマガをご覧いただきたく、ご了承ください。

4)サービス・プログラムの継続支援

今回お伝えしている内容からする継続支援というと「行動の継続」に視点が向きがちですが、実際のサービス・プログラムの提供では、サービス全体として捉えた場合の「継続」という視点が必要になります。

その全体として捉えた「継続支援」こそが、スポルツで整理している継続ドライバです。

「継続ドライバ2.0」の8個のドライバ

1、インセンティブ
2、ヘルスコミュニケーション
3、ヘルスナレッジ
4、パーソナライズ
5、モニタリング
6、コミュニティ
7、ゲーミフィケーション
8、IoTリンケージ

上記の8個の継続ドライバは、対象者がサービス・プログラムと向き合う際に響くポイント、モチベーションを維持する際の要素です。

では、上記でお伝えしたヘルスコーチングの視点である「行動の継続」と何が異なるのかというと、ヘルスコーチングがフォーカスする「行動の継続」は、対象者の「ゴール・達成イメージ」と直接的な関係であり、「ゴール・達成イメージ」と「行動の継続」はセットになります。

しかし、サービス全体として捉えた場合の「継続」の視点である「継続ドライバ」は、どちらかというと対象者の「ゴール・達成イメージ」に直接的に結びついているわけではなく、対象者の興味や関心に結びつくものになります。

そのため、サービス・プログラムを設計し具体化していくプロセスでは、ヘルスコーチングの視点である「行動の継続」とサービス全体として捉えた場合の「継続」を意識的に分けて考える必要があります。

ひとくちに「継続」として両者をいっしょにしてしまって、ヘルスコーチングの「行動の継続」に偏ってしまうと、対象者の興味関心へのアプローチが弱く魅力的なサービス・プログラムになり得なかったり、やってみたい、試してみたいと思わせることに欠けたサービス・プログラムになります。

逆に、サービス全体として捉えた場合の「継続」に偏り、ヘルスコーチングの「行動の継続」の視点が抜け落ちてしまうと、本来のサービス・プログラムの目的や対象者の「ゴール・達成イメージ」への導きが弱くなってしまい、そもそもの価値が提供できなくなったりしてしまいます。

例えば、サービス全体として捉えた場合の「継続」という視点で、「インセンティブ」や「コミュニティ」の継続ドライバを採用して具体的に提供したとしても、ポイントの収集やコミュニティによる交流だけの視点だけでは、「行動の継続」には結びつきづらいものです。

やはり、ポイントの収集やコミュニティによる交流の機能にヘルスコーチングの「行動の継続」の要素をいかに組み合わせられるかがポイントになってくるのです。

このように、サービス全体として捉えた場合の「継続」の視点だけで提供するのではなく、ヘルスコーチングの「行動の継続」という視点と合わせたアプローチが、サービスの目的や対象者の「ゴール・達成イメージ」には不可欠になってきます。

単純な「継続」という視点で捉えると上辺だけで目先の機能やコンテンツの提供に走りがちで、ヘルスケアサービスに求められる「行動の継続」への視点が抜けて落ちてしまうケースがまだまだ多く見受けられます。

ヘルスケアのサービスやプログラムを提供する際には、「継続」を、サービス全体として捉えた場合の「継続」とヘルスコーチングの「行動の継続」の両面からの検討、提供が必要なのです。

ヘルスケアサービスにおいて「継続」は重要なテーマで、外すことができないアプローチです。

その中で、ヘルスコーチングは継続に働きかける効果的なアプローチの一つです。

米国のヘルスケアサービスの事例を見ていても、「継続」に注力する事例が多く、近年、米国の医療保険業界も健康サービスを強化する動きが顕著になってきており、その健康サービスをみていると「継続」がトレンドになってきております。

そこで、米国の大手医療保険会社が共通して導入する健康サービスをご紹介して、その健康サービスの中で、共通して提供されているサービスやブームとなっている健康サービスについてお届けするセミナーを開催します。

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みなさんのご参加お待ちしております。

ー医療保険のサービスブームをおさえる!ー
<<米国の医療保険会社10社に見る健康サービスのトレンド>>
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健康ビジネスキーワード

「顧客との関係性づくり_一貫性の原理」

基本的に人間は
一旦選んだ相手(モノ)から次を選ぶ
という習性があり
それを一貫性の原理というそうな。

どんな小さくてもいいけど
見込み客に何かを選択してもらい
関係性をつくることが
マーケティングとして重要です。
さて、どんな小さなことから始めますか?

今週の注目記事クリップ

[1]ジョリーグッド、3ヵ年10億円の医療教育VRプラットフォーム構築事業が本格始動!外傷診療のVR教育を標準化、1,500施設へ導入目指す
https://jollygood.co.jp/news/2844
同社が提供する「オペクラウドVR」による「外傷診療におけるVR遠隔臨床学習プラットフォームの構築に関する研究」が、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の医療研究開発革新基盤創成事業に採択された。(2021/07/07)

[2]Holoeyesなど、5GやXR技術などを活用した歯科領域の遠隔手術支援の実証実験を実施
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2021/20210707_01/
今回の実証実験では、5GとXR技術、3Dプリンティング技術を活用して、東京にいる指導医が大阪にいる若手歯科医に、VR・AR映像を通して診断・治療の指導と手術の支援を行う。(2021/07/07)

[3]早稲田大学など、タンパク質摂取時間と筋量増加の関係
https://www.waseda.jp/top/news/73617
タンパク質摂取による筋量増加効果は、量だけでなくタイミングも影響することを明らかにした。体内時計に合わせた朝のタンパク質摂取タイミングが筋量増加に効果的である可能性がある。(2021/07/07)。

[4]ラフール、「ウェルビーイング(well-being)カオスマップ 2021版」を公開!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000096.000042113.html
HR系サービスを状態把握、人材配置、健康管理、コミュニケーション活性化を軸にまとめた、ウェルビーイングカオスマップ。(2021/07/07)

[5]キユーピー、公式サイトに新コンテンツ「食生活アカデミー」を開設
https://www.kewpie.com/newsrelease/2021/2228/?_ga=2.134578481.1388692805.1626153886-1075424344.1621388619
食生活アカデミーは、未来を創る子どもたちが食生活に関して主体的に学び、考え、判断できる力を育むためのサイト。併せて「キユーピーの自由研究」も本サイト内で募集を開始する。(2021/07/08)

[6]大日本印刷、ゲームと競技スポーツを融合させた「スマートeスポーツ」を開発
https://www.dnp.co.jp/news/detail/10161131_1587.html
ボクシング 山中慎介さん、フェンシング 三宅諒選手をスペシャルアンバサダーに迎えて、ボクシングとフェンシングのスマートeスポーツプログラムのサービス提供を開始。(2021/07/08)

[7]サンスターグループ、25万人の歯と医療費を分析した論文を日本歯科医療管理学会雑誌で発表
https://www.sunstar.com/jp/newsroom/news/20210708/?_ga=2.235612165.564329617.1626268722-1489108106.1624345219
分析の結果、「歯の本数が多く、かみ合わせが良いほど医療費が低い」ことなどが判明。なるべく多くの歯を残し、上下の歯でかめる状態を保持することが医療費抑制と健康維持に重要であることが示唆された。(2021/07/08)

[8]イーウェル、ウェルネス経営をサポートするオウンドメディア「ウェルナレ」をグランドオープン
https://www.ewel.co.jp/category/news-release/p18470/
“ウェルネス”をテーマとした公式オウンドメディアを開設し、健康経営等のトレンドに関する特集や専門家による執筆記事を通じて、HR領域における最新のお役立ち情報を親しみやすい形で発信していく。(2021/07/09)

[9]asken、マンスリーレポート「あすけん食事ランキング7月号」あっさり低脂質な「ささみ」が急上昇!
https://www.asken.inc/news/2021/7/14/7-
前年同時期と比較して「ささみ」が737%と、鶏むね肉を使った「鶏ハム」(90%)や「サラダチキン」(200%)の登録件数の伸び率をはるかに上回る結果に。また、梅やしそジュース、とうもろこしご飯など自宅でも楽しめる季節の味が急上昇。(2021/07/14)

[10]ヘルスケア業界にもやってきたアップサイクルブーム 見事に生まれ変わった商品事例(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/category-news-market-210714-1
アパレル業界で活発だったアップサイクル。最近は食品・健康・美容などヘルスケア業界でも見かけるようになり、今年は特に食品領域での関心が国内外で高まっている。(2021/07/14)

[11]矢野経済研究所、従業員エンゲージメント市場に関する調査を実施(2021年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2755
2020年の従業員エンゲージメント診断・サーベイクラウドの市場規模は、前年比124.8%の38億2,000万円になると推計。リモートワークの広がりを受けて、従業員のメンタルヘルスをケアするために日々の状態を把握できるサーベイの需要が増加した。(2021/07/15)

[12]オムロン ヘルスケア、夏だからこそ気を付けたい!高血圧対策。「マスク着用による熱中症や脱水症」と「塩分摂取の調整」に不安を抱く
https://www.healthcare.omron.co.jp/corp/news/2021/0715.html
40代-70代の高血圧患者1,080人を対象に血圧管理に関する意識調査を実施。塩分調整の指標「ナトカリ比」の認知度はわずか7%。73%が「ナトカリ比」を聞いたことがない、など。(2021/07/15)

[13]hacomono、「ルネサンス オンラインレッスン」と健康増進型保険“住友生命「Vitality」”がhacomonoで連携開始
https://www.hacomono.jp/news/20210716/
今回の連携により“住友生命「Vitality」”加入者は特典として「ルネサンス オンライン Livestream」に一部無料で参加でき、レッスンを受講することでVitalityポイントが獲得できる仕組みを実現。(2021/07/16)

[14]富士キメラ総研、「ウェアラブル/ヘルスケアビジネス総調査 2021」発刊
https://www.fcr.co.jp/report/211q05.htm
COVID-19影響下でのAI/IoT/ビッグデータを用いた先進ヘルスケアソリューションビジネスを調査、分析。

[15]『mHealth Watch』注目ニュース:Otsuka PD&C、Holmuskと協力しbehavioural healthの研究にAIを活用
https://mhealthwatch.jp/global/news20210719-2
今回取り上げたニュースのキーワードは「behavioural health(行動保健学)」です。今後登場する機会が多くなる名称なので、覚えておいてください。(2021/07/19)

[16]『mHealth Watch』注目ニュース:睡眠前の照明環境が睡眠時の体温とエネルギー代謝に影響を及ぼす
https://mhealthwatch.jp/japan/news20210726-2
今回のニュースは、ブルーライトではなく、寝る前のLED照明と有機EL照明の違いによって、就寝中の深部体温が下がり、エネルギー消費量も下がり、その間の脂質酸化量が上がるということで、睡眠だけではなく、身体への直接的な影響や疾病にも関係してきそうだということです。(2021/07/26)