こんにちは。脇本和洋です。

今号のテーマは、「米国医療保険会社の健康サービス」です。
米国では、公的医療は高齢者など一部の人に限られます。
多くの人は勤務先の会社を経由して、民間保険会社の医療保険に加入します。

加入者が病院にかかればかかる程、医療保険会社は医療費を多く支払うことになります。
ですので、米国の医療保険会社は、医療費の抑制のため健康サービスの導入に積極的なのです。

今回は、米国医療保険会社の健康サービス動向をチェックしてみましょう。

特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編

米国医療保険会社2社の健康サービス動向

米国の代表的な医療保険会社には、

  • United Health
  • Independence Blue Cross
  • Aetna
  • Kaiser Permanente
  • Anthem
  • Humana

などがあります。

昨年5月の本メルマガでは、United HealthとIndependence Blue Crossの健康サービスを取り上げました。
今回は、United Healthのその後の動きと、新たにAetnaの健康サービスを紹介します。

事例1.United Healthの健康サービス動向

■医療保険会社名:United Health
https://www.unitedhealthgroup.com/

■健康サービスの概要
United Healthは、外部企業Rallyと契約し健康プログラムを提供する。

■健康サービスの特長(Rallyの特長)

  • 個人の健康状態に応じた予防サポートプログラム
  • 健康管理活動に連動するポイントプログラムあり(インセンティブ)
  • 1対1のヘルスコーチングで参加者が健康的な習慣を身につけるように促す
  • 同じ課題を持つ人同士のオンラインコミュニティに誘導し、相互のプレッシャーにより健康行動を促す

■近年の動き

  • United Healthは、Rallyのサービスを継続提供しながらも、2021年7月から外部企業Pelotonのサービスも提供しはじめた
  • Pelotonは、本メルマガで幾度か特集したオンラインホームフィットネス企業。自宅にいながらにして、ニューヨークのバイクスタジオでの臨場感と一体感を楽しめるというもの。インストラクターによるエンターテイメント性の高いレッスンが特長である
  • United Healthの会員は、Pelotonの月会費4か月分が無料(アプリサービスのみ利用の場合、1年間の会費が無料)になるキャンペーンを開始。医療保険会社でPelotonと提携したのはUnited Healthが最初となる

■健康行動継続の要素

  • Rallyによるインセンティブ、ヘルスコーチング、コミュニティといった要素に加えて、近年ではPelotonによるエンターテイメント性といった要素が加わってきていることがわかる

事例2.Aetnaの健康サービス動向

■医療保険会社名:Aetna Inc.
https://www.aetna.com/employers-organizations.html

■健康サービスの概要
Aetnaは、自社開発プログラムと外部企業プログラムを併用している。

<自社開発プログラム>

  • Aetna One care management(健康行動によるポイントインセンティブ、AIを使いパーソナライズした健康行動の推奨を行うなど)
  • Women’s health and well-being(女性の健康支援プログラム)
  • member engagement platform(検査結果、薬局での支払いなどの会員データから個人に合わせた健康アラート、プログラムの推奨を行う)

<外部企業プログラム>

  • Diabetes Management(外部企業Livongoのヘルスコーチングの行動変容プログラム)
  • Behavioral Health(外部企業AbleToの行動変容プログラム)

■健康サービスの特長

  • 自社開発プログラム、外部企業プログラムともに「行動変容」をキーワードとする
  • 特にLivongoのプログラムでは、ヘルスコーチが一人ひとりにつく。そして、継続できる行動を発見でき小さな成功体験を感じながら進められる

■近年の動き

  • 2021年7月、Aetnaは健康サービスの新たな取り組みとして、Attain Games challengeを開始した

<Attain Games challengeの概要>

・参加者は以下の2つのチームに分かれる
※世界一に輝いたことのある体操選手(Johnson East)のチームと、有名プロフットボール選手(Andrew East)のチーム

・専用アプリとアップルウォッチを使って参加する。一日3つの健康チャレンジがアプリで設定されるので、それに取り組む。達成したかはアップルウォッチに記録される

・達成度に応じてポイントが加算される。チャレンジ期間の最後に最も多くのポイントを獲得したチームが勝利して特典がもらえる

■健康行動継続の要素

  • 自社開発プログラムのインセンティブ、パーソナライズ、外部企業Livongoによるヘルスコーチングといった要素が中心。近年ではAttain Games challengeのエンターテイメント性が要素として加わる

米国医療保険会社の健康サービスでおきていること

2事例に共通する「健康行動継続の要素」を整理しましょう。

●共通要素1)インセンティブ+ヘルスコーチング

United HealthとAetnaの共通要素は、インセンティブとヘルスコーチングです。
実は、この組み合わせは今回紹介したUnited Health、Aetnaだけでなく、多くの医療保険会社の健康サービスでも共通しておきているトレンドです。

●共通要素2)近年、エンターテイメント性が加わる

近年、United HealthとAetnaはともに、エンターテイメント性の高い健康サービスを使っています。

United Healthが導入したPelotonのサービスは、インストラクターの外見・内面の魅力を前面に出すことが特長であり、その生き方に共感し、「あのインストラクターとならやってみたい!」と感じさせるものになっています。

AetnaのAttain Games challengeは、有名スポーツ選手といっしょにチャレンジを行える点が最大の特長です。
「健康に興味はあまりないけど、あの人とならやってみたい!」そんな感情にもっていきます。

医療保険会社の会員には、健康意識が高い人から低い人まで様々な会員がいます。エンターテイメント性の高い健康サービスは、健康意識の低い人でも興味がわきやすいものです。

米国の医療保険会社の健康サービスの動向として、今まで以上に『ターゲット』を意識し、健康行動継続を支援するサービスになってきている。

そう読み取ることもできるのではないでしょうか。 【脇本和洋】

参考>本編「海外事例にみる継続支援アプローチ編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
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今週の注目記事クリップ

[1]琉球大学と神戸大学、コロナ禍の身体活動量には社会経済格差がある
https://www.u-ryukyu.ac.jp/news/33092/
本研究は、コロナ禍における場面別の身体活動実施状況に関する社会経済格差を検討した世界で初めての研究。仕事、余暇、移動に関する身体活動や座位行動において、所得や学歴による格差が認められた。(2022/04/06)

[2]筑波大学と東京成徳大学、心理的ストレスの原因を解決しようとする行動がチームや選手の個人を成長させる
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20220406140000.html
高校生サッカー選手を対象に、集団効力感、チームメイトとの人間関係に関する心理的ストレスレベル、および、それに対する心理的ストレス過程(認知的評価、対処行動、ストレス反応)について調べた。(2022/04/06)

[3]「スマホで聴診」を狙うアプリ、オンライン診療のMICINが承認申請(日経デジタルヘルスより)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/12583/?ST=ch_digitalhealth
オンライン診療では、対面診療で得られる聴診や触診などの情報を取得するのが難しい。今回開発したアプリで呼吸音を得ることで、オンライン診療に生かしてもらう。(2022/04/06)

[4]bondavi、元データアナリストが「習慣化」を科学したアプリの継続成功ユーザーが10万人突破(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000066061.html
習慣化アプリ「継続する技術」で、前年度に「本を読む」「筋トレをする」などの目標を30日間継続できた人数が10万人を超えた。新社会人、新入生の「新しい習慣」づくりにも。(2022/04/06)

[5]Kort Valuta、決済機能とヘルスケア機能を併せ持つスマートリング「TwooCa Ring:T-Ring(仮称)」の開発を発表
https://kortvaluta.com/news#/%E6%B1%BA%E6%B8%88%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%81%A8%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%82%A2%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%82%92%E4%BD%B5%E3%81%9B%E6%8C%81%E3%81%A4%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AA
国際ブランド認定チップを実装することによる決済機能に加えて、心拍、睡眠、日々の活動状況を管理することができるリング型のウェアラブルデバイス。日本のみならず世界中のお店で利用が可能。(2022/04/07)

[6]キャピタルメディカ、「遠隔型調剤薬局サービス クスリオ」のサービス開始
https://capimedi.com/20220407pr/
「遠隔型調剤薬局サービス クスリオ」は、全国の病院で出された処方箋を利用者がLINEで薬局に共有することで、処方薬を自宅にお届けするサービス。(2022/04/07)

[7]ナリス化粧品、コロナ禍で「対面の会話が減った」中高年は8割超【PDF】
https://www.naris.co.jp/news_release/wp-content/uploads/2022/04/20220407%E3%80%80EPADHA-1.pdf
https://www.naris.co.jp/
2,000名以上の中高年男女を対象に日常の行動・意識について調査。「健康に自信がある」と答えた人はサプリメントを摂取している割合が高い、体力への自信は高齢者の方が高く記憶力と体力への自信は相関することが判明、など。(2022/04/07)

[8]アステリア・サイボウズ・Zoom・レノボ、<4社合同調査レポート>働き方改革をリードしてきた4社が“未来の働き方を考える”調査を実施
https://www.asteria.com/jp/news/press/2022/04/07_01.php
全国の20-60代のフルタイム就業者2,000名を対象に「これからの働き方を考える」というテーマで調査。完全テレワークになったら住みたい都道府県1位は「東京都」、ワーケーションで行ってみたい都道府県1位は「北海道」。(2022/04/07)

[9]イトーキ・NTTコミュ二ケーションズ・NTTドコモ、ニューノーマル時代の新たなコミュニケーションサービス「office surf」の実証実験を開始
https://www.itoki.jp/press/2022/2204_officesurf.html
コロナ禍で失われた"雑談"を取り戻し、企業の抱えるコミュニケーション課題の解決に向けた検証に取り組む。本実証実験の内容については、2022年4月に開催される「オルガテック東京2022」にて展示予定。(2022/04/12)

[10]ディノス、睡眠時の疲労感や不快感を和らげる寝具・ウェアを新発売
https://dinos-corp.co.jp/news/2022/04/12132400.html
寝るだけで疲労ケアができる翌朝に疲れを残さないシーツとウェアや、ミズノとディノスが共同で企画した睡眠中のリカバリーを目指した枕など。質の良い睡眠は日中のパフォーマンス向上にも寄与する。(2022/04/12)

[11]パーソルキャリア、女性の働き方とヘルスリテラシーに関する調査 vol.2
https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/research/2022/20220412_01/
ヘルスリテラシーが高い女性グループは、「仕事への満足」「目標達成」「はたらく喜び・楽しみ」「自己決定感」が、低いグループよりも総じて高い結果に。(2022/04/12)

[12]東京商工会議所、健康経営は難しくない?健康投資で会社に活力を!中小企業の実践事例と効果
https://myevent.tokyo-cci.or.jp/detail.php?event_kanri_id=200038
開催日は2022年5月24日(火)。健康経営が生まれた背景や、国の政策や「働き方改革」との関連といったマクロ視点と、先行企業における取り組み事例といったミクロ視点の双方から全体像をつかんでいただき、自社で今日から取り組める実践的なポイントを解説する。

[13]GoogleがFitbitの不整脈監視技術をFDAに認可申請
https://mhealthwatch.jp/global/news20220407-2
Googleによれば、この心拍モニタリング技術のアルゴリズムはユーザーの心房細動を98%の確率で発見できるとのこと。ちなみに、Apple Watchの心房細動検出機能は、同様の規模で行われた研究によると84%だった。(2022/04/07)

[14]Google、AIによるヘルスケアイノベーション
https://mhealthwatch.jp/global/news20220407
Google Healthが手がけるイベント「The Check Up」では、AI関連の研究開発や、その進捗についてが広く明らかにされた。(2022/04/07)

[15]EU、大手テック企業を規制強化。「デジタル市場法(DMA)」
https://mhealthwatch.jp/global/news20220411-2
デジタル市場法(DMA)の対象となるのは、「中核的プラットフォームサービス」を提供する、時価総額750億ユーロ以上、もしくは年間売上高75億ユーロ以上の大企業。(2022/04/11)

[16]『mHealth Watch』注目ニュース:バカン、トイレ利用体験の価値向上に向けてトイレで心地いい「ほんのひと休み」を提供
https://mhealthwatch.jp/japan/news20220418
今回注目するのは、トイレ利用体験の価値向上に向けて、トイレで心地いい「ほんのひと休み」としてストレッチなどの動画コンテンツを提供するニュースです。(2022/04/18)