こんにちは。リサーチコンサルタントの脇本和洋です。
[海外事例にみる継続支援アプローチ編]では、我々のリサーチ活動の中から、注目事例を毎月紹介しています。

今回とりあげる事例は、ヘルスケア専門家プラットフォームを展開する「TaskHuman」という事例です。

ヘルスケア専門家プラットフォームが注目される背景に触れた後、

  • TaskHumanの事業概要
  • TaskHumanのサービス詳細
  • TaskHumanが目指す「Work and Life Integration」

という切り口で紹介します。

特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編

ヘルスケア専門家プラットフォームTaskHumanが目指す姿

ヘルスケア専門家プラットフォームは、ユーザーが自分の興味あるテーマで専門家を選び、ビデオチャットを使って、専門家からアドバイス・コーチングを受けることができるサービスのことです。
米国の場合、1,000名以上の専門家が集まっているサービスが多く、主にB-B(企業向け)に提供されています。

代表事例としては、今回紹介するTaskHuman以外にも、BetterUp、Torchなどがあり、いずれもこの数年で資金調達額が急速に伸びています。

米国で注目される背景には、コロナの影響で多くの人が専門家とビデオチャットを行うことに慣れたこと、また専門家は、遠隔で人に伝える(教える)スキルが高まっていることがあります。

今回は、ヘルスケア専門家プラットフォームの中から、TaskHumanを例に、この先端ビジネスが狙っている方向を紹介します。

事業概要:1,000名を超える専門家からサービスを受けられるTaskHuman

■事例名:TaskHuman Inc.
https://taskhuman.com/

■動画によるサービス説明(約2分)
https://youtu.be/eTeq8hApTNg

■設立:2017年

■資金調達額:33億円(2022年7月時点)
※1ドル=100円換算

■サービス概要
フィットネス、メンタル、自己啓発、資産運用などの分野において1,000名を超える専門家(コーチ)から、ビデオチャットでコーチングが受けられるサービス。

■売り先
B-Bが中心(B-Cも一部ある)
※企業では、Finastra、Medidata、RingCentralといった有名企業が導入

■費用
非公開(B-B)
※B-Cの場合、1セッション60ドル(一人のコーチと1時間のビデオチャットの場合)

サービス詳細:テーマはプライベート分野まで幅広い

■コーチングを受けられる分野(体と心の健康)
・体の健康:フィットネス、ヨガ、ストレッチ、よりよい睡眠、ヘルシーイーティング、断食 など
・心の健康:瞑想、呼吸法、マインドフルネス など


■コーチングを受けられる分野(プライベート)
TaskHumanは当初「体と心の健康」だけでスタートするも、その後「プライベート」分野も充実させている。

(プライベート分野の例)
・家庭:子育て、ペットのしつけ、家族の死に備える など
・ファイナンシャル:節約法、住宅ローンの運用法 など
・個人のスキルアップ:リーダーシップ、目標設定、生産性の向上 など


■サービスの流れ

1:アプリで興味あるテーマを選ぶ。登録されている複数のコーチが出てくるので、各プロフィールを見ながらコーチを選ぶ(相性選びにはAIが活用されている)

2:コーチのスケジュール表を見て予約し、コーチングを受ける。時間は1時間が基本。コーチ選びに迷う場合、コーチに10分の電話をかけて、自分に合いそうかを確かめることも可能


■サービス継続の工夫

・1,000名を超える専門家がおり、相性のいいコーチを選ぶことができる(相性が悪ければコーチをスイッチできるようにしている)

・コーチ自身のソーシャルメディアへのリンクを積極的に紹介し、顧客がソーシャルメディアに登録すれば、コーチと継続的な関係性をもてるようにしている

・体と心の健康だけでなく、「家庭の問題」「ファイナンシャル」といったプライベート分野まで広げ、様々な分野のコーチに相談できるようにしている

・コーチ同士で情報やノウハウを共有できるよう、コーチ専門のコミュニティがあり、コーチの品質を高める工夫がある

TaskHumanが目指す「Work and Life Integration」

専門家プラットフォームTaskHumanのサービス、いかがでしたでしょうか。

サービス展開を経過で整理しておきましょう。

まず、TaskHumanの顧客はB-B(企業向け)が中心であるため、社員が仕事で成果をあげるための土台となる「健康分野(体と心)」にフォーカスしてサービスを展開しました。

しかしここで、環境変化(コロナ禍)が起きます。

社員は自宅にいる時間が長くなることで、今までは触れることのなかった家庭内の様々な問題に触れることになったり、家庭内での新しい役割を担い悩む場面が増えました。

そこで、TaskHumanはプライベートの問題も含めてサービス展開することが、仕事の成果をあげるためには必須であると気づいたのです。
そして、コーチングを受けられる分野を「プライベート」分野まで広げました。

TaskHuman CEOのRavi Swaminathan氏は、ヘルスケア専門家プラットフォームとして目指す方向を

『Work and Life Integration(仕事とプライベートの融合)』

と表現しています。

例えば、優先度の高いプライベート問題を平日の仕事時間中にTaskHumanのサービスを使って集中的に解決し、その分週末に穴埋めで働き、結果的には高い仕事の成果を生み出すような働き方をさします。

日本でもコロナ禍による社員への影響は、米国に似たものがあると予想されます。
今後日本でも「Work and Life Integration」という考え方に基づき、日本の文化・現状を踏まえたTaskHumanに近いサービスが求められる時代になっていくと予想します。 【脇本和洋】

参考>本編「海外事例にみる継続支援アプローチ編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー