こんにちは、渡辺武友です。

ヘルスケアにおけるビジネス展開、なんとなくで考えていませんか?
実は皆さん一番苦労するところです。
ここらで真剣に考えてみませんか!?
今回はちょっとピリッとくる話です。

特集:健康ビジネス・マーケティング&収益化編

ヘルスケアビジネスの最適解は縦展開戦略

「健康効果の高い商品、サービスを1品開発し、より多くの人に届ける」

このような発想でビジネスモデルを検討することがありますが、ヘルスケアビジネスにおいては、このパターンで永続的にビジネスを伸ばし続けているものはごくわずかです。
例え永続的に販売できているものでもビジネスモデルとしては“からくり”があります。

ヘルスケアビジネスにおける最適な戦略とはどのようなものか?
見ていきましょう。

求められる新規ビジネス

新規ビジネスを検討する企業に、よく求められる条件として以下のものが挙げられます。

・潜在的課題へのアプローチ(新規性)
・他社にはない独自性(先行優位性確率)
・より多くの顧客に届ける(大きな市場で展開)

この発想が通じていた時代は確かにありました。
それは「モノが足りなかった時代」です。

食品を腐らないように保存したい → 冷蔵庫の誕生

昭和(それ以前)の頃なら潜在的課題にアプローチすれば、その潜在的課題が多くの人が求めるものでしたので、潜在的課題へのアプローチが新たな市場を形成してきました。

しかし、現在は大抵のモノは足りているのではないでしょうか!?

例え潜在的課題を見つけても、その課題を解決できたからと言ってビジネスになるかは別問題です。
すでにどこかの誰かがチャレンジし、ビジネスにならずに撤退している可能性も大いにあります。

実はヘルスケア領域においては、すでに誰かがチャレンジして失敗しているケースがけっこう多いのです。
失敗したことを、大っぴらに言うことではありませんので、ほとんどが静かに終了し、そのようなビジネスをやっていた痕跡(ログ)を消してしまいます。

大手企業では、自社で過去に手掛けて撤退しているものを新たに始めることがありますが、その理由を聞いてみると、意外にも自社で過去にやっていたことを知らなかった、なんてことがあります。
以前の教訓を踏まえた取組みでなければ、厳しい結果になってしまうのも仕方のないことでしょう。

なぜ時代が変わっても、

・潜在的課題へのアプローチ(新規性)
・他社にはない独自性(先行優位性確率)
・より多くの顧客に届ける(大きな市場で展開)

を求めるかと言うと、一つの要因として考えられるのは、このようなアプローチをして売れた商品やサービスは、美談として人の記憶に残りやすいためでしょう。

例えば、ちょっと懐かしいものとして「ジョーバ」や「ビリーズブートキャンプ」など覚えていませんか?
どちらも一時はブームとなっていました。どちらも今までにはなかったものです。

「ジョーバ」が一般向けに出たのは2000年、「ビリーズブートキャンプ」が日本で発売されたのは2005年です。
2000年からの5年間でダイエット商品はこの2点だけかと言うと、もちろんそんなことはありません。それこそ星の数ほど販売されていました。

「ジョーバ」も「ビリーズブートキャンプ」もかなり前に終売していますが、当時を知っている人であれば、今も思い出す人は多いでしょう。
しかしあまり売れなかったものは、ほとんど記憶に残っていないのではないでしょうか!?

このように20年前のもので、今までにない発想のもので売れたものは記憶に残りやすいのです。
ただし、市場には数千の商品やサービスが注目されることなく市場から消えていったことも忘れてはいけないのです。

拡販とは横展開による顧客獲得?

新たな商品やサービスをリリースし、最初に狙った市場である程度売れると、商品やサービスは変えずに、他の市場でも同じように売りたいと考えることがあります。
「横展開」と言われるやつです。

例えば、女性向けに提供してきた商品を男性向けに販売したり、コンシューマ向けで販売していたサービスを法人企業向けに販売したりします。

このような横展開ができれば、商品の中身は変えずに(多少のカスタマイズはしても)、パッケージやプロモーションを変えることでアプローチできるので、開発コストを抑えることができます。とても効率的です。

しかし、単純な横展開で元々の市場と同じような成果を上げた事例もないのです。

仮に横展開でメインの市場ほどではないが、例えば1/10程度売ることができたとしましょう。
売上だけを見れば増加しているので横展開してよかったとなりますが、利益率で見ると、それほど旨味を感じない数値に留まっていることが多く見られます。

その理由はプロモーション費用が嵩むためです。

市場が変われば認知活動からしなければなりません。
プロモーション費用とは広告や販促ツールの費用だけを指しているのではなく、営業をすれば営業マンの人件費がかかります。SNSを使って無料で告知活動をしているだけだとしても、やはり人件費がかかってきます。

当然、新しい市場でプロモーションしている間、メイン市場では何もしなくて良いかと言えば、そんなことはなく、何も発信しなければ、その市場にいる人達は存在を忘れていきます。
メイン市場を捨てるのでなければ、横展開した市場数と合わせてプロモーションをしていく必要があります。

このようなコストも踏まえて、横展開すべきかを判断しないとならないのです。

ヘルスケアにおける理想とするビジネス展開

2項に渡って厳し目の話をしました。
では、どのように考えていけば良いのか?お伝えしていきます。

理想とするビジネス展開は、「横」ではなく「縦」に行ってください。
「縦」とは、既存顧客へ次の商品、サービスを提供することです。

ヘルスケアにおいて商品やサービスを購入する目的は、何かしら健康課題を解決したいか、目的を達成させるためです。

例えば、痩せたいと思った人が体重計を買ったとしましょう。
体重計が売り切り商品の場合、そのユーザーとの関係は買ってもらったらお終いです。
買った人が痩せられたかどうかもわかりません。
買ってくれた人のことは忘れて、次に体重計を買ってくれる人を探しにいきます。

仮に1人の購入者を獲得するのに15,000円のコストがかかるとしましょう。
体重計が15,000円だったらプラマイゼロです。
体重計が20,000円だったとしたら+5,000円ですが、製造や輸送コストを考えると赤字かもしれません。

では価格を25,000円、30,000円と上げていけば良いかと言うと、どんなものでも市場適正価格がありますので、市場価格より高くなって売れなくなってしまいます。

話しを戻して、ヘルスケアビジネスの目的は、お客さんの健康課題解決か目的達成です。
先程の例では、体重計を買うことがゴールではなく痩せることです。
例え単体商品を売るとしても、ゴール(痩せる)に連れていくことまでが本来の役割なのです。

しかし体重計が15,000円でないと売れなければ利益が残らず、さらにゴール(痩せる)に連れていく支援までしたら大赤字になってしまいます。

ですので、ヘルスケアビジネスにおいては横展開ではなく、縦展開で考えることで利益につなげます。

最初に買ってもらう体重計は信頼関係作りのためです。
つまり、その体重計を使って確実に痩せてもらうことで、お客さんはゴールを達成し、満足度が高まり、提供者へ信頼を寄せてくれるようになります。

体重計を買ったお客さんは痩せたら人生終わりではありませんので、次なる願望、欲求が生まれます。
満足度が高まると、提供者からの次の提案が次なる願望、欲求にマッチしていれば、すでに信頼関係があるので素直に受け入れることができます。

このように縦に縦にと深めていく展開が望ましいのです。

ヘルスビズウォッチで何度も、“ヘルスケアビジネスはお客さんと共に成長していくものだ”と伝えてきたのは、ビジネスを成立させるために重要な要素だと言うことなのです。

メルマガ1月17日号で紹介した
「米保険会社UnitedHealthcareに見る、制度活用と真の狙い」

この記事での「真の狙い」とは、まさに縦展開です。
改めてお読みいただくと理解が深まると思います。

「米保険会社UnitedHealthcareに見る、制度活用と真の狙い」
の記事はこちら

デジタルヘルスマーケティングのいろは

あなたがヘルスケア製品開発のプロであっても、もしくはヘルスケアサービス運用には絶対の自信があっても、お客さんが集まって来なければ、その素晴らしさは伝わりません。

仮に集まってくれた人達がいたとして、いきなり商品やサービスの素晴らしさを伝えたとして、どれだけの人が買ってくれるでしょうか?

今回お伝えした「縦展開」の話は、この2つを乗り越えた人でなければ気にしようもないでしょう。

まずは「見込み客に集まってもらう」そして「買いたいと思ってもらう」
このフェーズにもヘルスケア特有の専門性があります。


2月21日(火)に、中小・ベンチャー企業・研究機関・大学等でヘルスケアビジネスに関わる方々を支援するLIP.YOKOHAMA(公益社団法人木原記念横浜生命科学振興財団)主催でマーケティング、広報、営業に関するオンラインセミナーが開催されます。

私も「デジタルヘルスマーケティング」をテーマにお話したいと思います。
参加してくれた方には最後に、中小、ベンチャー限定でお得な情報もお伝えします。
(大手企業には提供しません!)

これからヘルスケア商品サービスを準備する方、すでに準備できているが、どう販売につなげてよいか悩んでいる方はご参加ください。

開催日も近づいております。
人数制限もありますのでお早めにお申込みください。

「LIP.横浜 販路開拓セミナー
~顧客を知り、顧客を得るための基本メソッド~」

開催日時:2月21日(火)13:30 - 16:00、2月22日(水)14:00 - 16:00
開催方法:オンライン(ZOOMウェビナー)
参加費:無料
定員:300名
主催:LIP.YOKOHAMA(公益社団法人木原記念横浜生命科学振興財団)

詳細、参加申込はこちら
https://dhmarketing.peatix.com/

健康ビジネスキーワード

「Educare(エデュケア)」

これは我々の造語です。
エデュケーションとケアを組み合わせたものです。

ヘルスケアやウェルビーイングサービスの場合、提供相手に提供価値をどう享受してもらうかの基本知識を習得してもらうことが求められます。
そのプロセスを表現したのがこのエデュケアです。

貴社のコミュニケーション文化に、このエデュケアがありますか?

今週の注目記事クリップ

[1]ワン・パブリッシング、健康情報メディア「FYTTE」がヘルスケアトレンド2023を発表!!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000447.000060318.html
2023年のヘルスケアは“もっと自分に寄り添い、内観し、知ること”にシフト!最注目は「体と心の見える化」「エンタフィット」「リカバリータイム」の3つ。(2023/02/07)

+++★追加解説音声:160秒(編集主幹 大川耕平)★+++
このトレンド予測は秀逸です。
https://youtu.be/5_7N-DNGpAw

[2]サイバーエージェント、ドラッグストア・調剤薬局向けに治療用アプリの企画・開発ソリューションを提供する「デジタル創薬準備室」を設立
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=28494
治療用アプリの企画・開発および、薬事承認の支援ならびに販売・マーケティング・保守運用まで一気通貫したソリューションの提供・開発を行うことで、ドラッグストア・調剤薬局の医療事業進出を支援いたします。(2023/02/01)

[3]SELF、NTTドコモとバーチャル空間「MetaMe」での共同実証実験を開始
https://self.systems/ai-news-docomo-pre-release/
NTTドコモが開発するバーチャル空間での新たなコミュニケーションサービス「MetaMe(TM)」内の「Identity World」において、SELFのコミュニケーションAIを活用した共同実証実験を行います。(2023/02/01)

[4]メンタルヘルステクノロジーズ、経営者・IR担当・人事の約8割が人的資本経営に関して「情報開示」自体が目的になっている実態
https://mh-tec.co.jp/news/230201/
一方で、約9割が人的資本経営に向けた組織づくりは「生産性の向上や企業価値の向上につながる」と実感。人的資本経営に取り組んでいる企業の経営者、IR担当者、人事110名を対象に「人的資本経営の本質に関する実態調査」を実施。(2023/02/01)

[5]矢野経済研究所、健康・機能性食品素材(44素材)市場に関する調査を実施(2022年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3178
2021年度の健康・機能性食品素材(44素材)の市場規模は、前年度比103.1%と好調に推移。(2023/02/01)

[6]先端教育機構、「月刊事業構想」2023年3月号発売
https://www.sentankyo.ac.jp/news/uwppn64a1
【特集1】デジタルヘルスの新事業、データとAIが医療を変える。【特集2】SDGsの深化と真価、など。(2023/02/01)

[7]Muscle Deli、シニア世代の食意識アンケートで約60%が「フレイル」理解不足。知らない人ほどタンパク質を摂っていないことが明らかに(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000025162.html
2月1日はフレイルの日。ボディメイクフードのマッスルデリとシニア世代のウェルビーイングを実現するMIHARUによる食生活についての意識・動向の共同調査。4割が身近に食事相談出来る人が居ない、など。(2023/02/01)

[8]キリンホールディングス、キリンの独自素材「プラズマ乳酸菌」シリーズ 販売好調
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2023/0202_04.html
キリンホールディングスの独自素材「プラズマ乳酸菌」関連事業は、お客様から高い評価をいただき、2022年の年間販売金額が前年比4割増となりました。(2023/02/02)

[9]富士経済、ウェアラブル/ヘルスケアビジネス総調査 2023
https://www.fuji-keizai.co.jp/report/detail.html?code=832209813
本市場調査資料は、多様化/高度化するウェアラブル端末およびヘルスケアに関連するシステム/サービス、ヘルステックソリューションの市場を調査、主要参入企業の動向を明らかにします。(2023/02/02)

[10]hacomono、運動スクール事業をオンラインで広げていく「運動スクール向け次世代システム」を提供開始
https://www.hacomono.jp/news/20230202/
「hacomono」の新機能「運動スクール向け次世代システム」は、お客さま主導による入会や、レッスンへの出欠・振替を実現し、情報共有を円滑にすることをサポートします。(2023/02/02)

[11]ガーミンジャパン、女性のためのスマートウォッチ「Lily Classic」「Lily Sport」に新色登場
https://www.garmin.co.jp/news/pressroom/news2023-0202-garmin-lily-new-color/
小さなボディにエレガントなデザインを持ち、女性の健康をサポートする充実した機能を兼ね備えた女性向けスマートファッションウォッチ。(2023/02/02)

[12]熊本大学、抹茶がうつ様行動を軽減するメカニズムの一端を解明
https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/seimei/20230203
うつ病の発症を予防するためには日常の様々なストレスに適切に対処するセルフケアを実践し、心や身体の健康を維持することが大切です。今回の研究成果は、食品である抹茶がストレス対処に有益な作用をもたらす可能性を示しています。(2023/02/03)

[13]デサントジャパン、『デサント』より 動く時“さらにサポート効果を発揮”し締め付け感を軽減する高機能ソックス「MoveSox」を発売
https://www.descente.co.jp/jp/press_releases/230203des/
MoveSoxは「楽に歩く・楽に走る」ことを目指して開発された高機能ソックス。常時、足全体に締め付け感がある一般的なアーチサポートソックスと異なり、動きがあるときにさらにアーチをサポートするのが最大の特徴。(2023/02/03)

[14]日本美容創生の“更年期セルフケア”の実証事業が神奈川県の推進「神奈川ME-BYOリビングラボ」で採択(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000063174.html
本実証では、まずは美容室で働く女性を対象に、更年期症状のセルフチェックと理学療法士のアセスメント(評価)に基づいた運動方法を実践することで更年期症状に変化が現れるかを検証します。(2023/02/03)

[15]Bodygram Japan、明治安田生命が生活習慣改善につながるサービスとしてAI身体計測テクノロジー「Bodygram」を導入!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000044966.html
保険商品へ加入されたお客さまへの継続的な健康サポートの一環として「Bodygram」のデジタルソリューションを通し、健康維持や健康診断結果の改善に向けた日々の体型管理をスマートフォン1つで手軽に実施いただけます。(2023/02/06)

[16]ライフログテクノロジー、「カロミル」の食事記録機能を自社アプリへ追加できる「カロミルWebView」初導入!食事管理サービス「Food DOC」に連携
https://www.calomeal.com/pressrelease/20230206.html
食事・運動・体重管理アプリケーション「カロミル」の開発・提供をするライフログテクノロジーは、GENOVAが運営する医療メディア「Medical DOC」のLINE公式アカウント内「Food DOC」に「カロミルWebView」を導入。(2023/02/06)

[17]筑波大学、軽度認知障害(MCI)の新しいスクリーニング方法を開発~アルツハイマー病の早期治療介入を可能に~
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/medicine-health/20230207141500.html
今回、本研究チームはバランス能力を測定する新しい指標VPS(姿勢安定性視覚依存度指標)を開発し、これを用いれば軽度認知障害(MCI)の高感度なスクリーニングが可能となることを臨床研究により実証しました。(2023/02/07)

[18]ロッテ、人生100年時代を噛むことでサポートする新ツールを開発【PDF】
https://www.lotte.co.jp/info/news/pdf/20230206180138.pdf
https://www.lotte.co.jp/
生活者の咀嚼能力をチェックする「キシリトール咀嚼チェックガム」の結果をスマートフォンやタブレットを使用することにより、正確かつ客観的に評価することが可能になる「咀嚼チェックアプリ」の運用を開始。(2023/02/07)

[19]幸年期マチュアライフ協会、「更年期が幸年期になるカードゲーム」を発売開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000102868.html
このカードゲームは、マチュア世代当事者やその周囲の人が「更年期不」を理解し、アクションを促すきっかけを作るために開発。また、企業のマネジメント層向けの研修プログラムのワークのひとつとしても活用。(2023/02/07)

[20]研究:テレヘルスの利用ががん治療費の削減につながる
https://mhealthwatch.jp/global/news20230202-3
JAMA Network Openに掲載された研究によると、がん専門医がテレヘルス(遠隔医療サービス)を利用した場合、時間と移動コストの両方を節約でき、がん治療に関連するコスト負担が軽減されることが明らかになった。(2023/02/02)

[21]『mHealth Watch』注目ニュース:Oneleaf、オーディオプログラムがガイドする自己催眠アプリ
https://mhealthwatch.jp/global/news20230213
今回は「催眠術」を活用したデジタルヘルスサービスのご紹介です。「催眠術」と言われると怪しい空気になってきそうですので「催眠療法」としておきましょう。(2023/02/13)