こんにちは。リサーチコンサルタントの脇本和洋です。
本編では、我々のリサーチ活動の中から、海外の注目事例を毎月1回紹介しています。

今回紹介するのは、メンタルヘルスに関わる事例です。

米国では、コロナ禍において失業率が急速に上昇し将来に対する不安を抱える人が増えたこともあり、メンタルヘルスサービスが数多く登場しました。
激しい競争の末すでになくなった事例もありますが、今回は、その中で注目している2つの事例を紹介します。

特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編

メンタルヘルスのユニーク事例に迫る

メンタルヘルスが改めて日本でも注目されています。
理由の一つとして、不眠の第一の原因にメンタルヘルス(ストレス)があげられる点があります(注1)。
眠れないのは、つらいことですよね。
その原因の一位がメンタル面なのですから、これからも注目されるべきでしょう。

本編では、今までにメンタルヘルスの注目例として、悩みの種類に対応するサービス(Modern Health)だったり、セラピストとコーチングを融合させたサービス(Lyra Health)、瞑想を行うサービス(calm)など、いくつか紹介してきました。

今回は、少し違う切り口でアプローチする事例を2つ紹介します。

・紹介事例1:Silk and Sonder(日記を絡ませたアプローチ)
・紹介事例2:Circles(同じ悩みを持つ人とのつながりアプローチ)

(注1)第一三共ヘルスケア:働く世代の「睡眠」に関する意識調査
睡眠に関する悩みが生じる原因は「仕事や人間関係によるストレス」(37.2%)が最も多い。
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/content/newsletter_220721.pdf

紹介事例1:Silk and Sonder(シルクアンドソンダー)

一つ目に紹介する事例のユニークな点は、「感情を日記に書く(ジャーナリング)」という手法を使って心の落ち着きをもたらすことです。

■事例名:Silk and Sonder
https://www.silkandsonder.com/

■設立:2017年

■資金調達額:4.2億円(2023年1月時点)
※1ドル=100円換算

■ターゲット
女性(特に不安やストレス、トラウマなどメンタル不調に悩む女性や、ポジティブマインドを持ってメンタルのバランスをよくしたい女性)。

■提供サービス:
Wellness Journal(日記)とオンラインでの学びを組み合わせたサービス。

■価格(B-C):月額24.95ドル

■サービスの流れ

1:申し込み後に日記セットを受け取り、アプリをダウンロードして登録する(日記は月1冊で、毎月送られてくる)

2:日記に日々の睡眠や気分をアナログで記録する(手で書く)。その月の課題に取り組む(目安は1日5分)

3:Sonderソーシャルというオンラインミーティングに参加する(ファシリテーターと仲間と一緒に、その月の課題にいっしょに取り組んだり、気持ちを吐露し合う)

「感情を手書きで記録する」という手法をベースに、コミュニティ機能を加えて、心の安定を図る。
そんなサービスと言えるでしょう。

紹介事例2:Circles(サークルズ)

二つ目に紹介する事例のユニークな点は、「つらい思いをした人同士を結び付ける(自助グループ)」という手法です。

■事例名:Circles
https://circlesup.com/

■設立:2020年

■資金調達額:24.5億円(2023年1月時点)
※1ドル=100円換算

■ターゲット:
離婚を経験した人、身近な人の死に直面した人、中絶を経験した人、不妊治療がうまくいかない人、節酒がうまくいかない人、現在介護をしている人など、つらい経験をしている人。

■提供サービス:
自分と似たつらい経験をした人と出会え、共感を得たり、立ち直りのきっかけをつかめるサービス。

■価格(B-C):月額79ドル
※最初の1週間は無料

■サービスの流れ

1:自分が抱える課題について質問に答える
どんな点に悩んでいるか(離婚、身近な人の死など)、どんなサポートを期待するか、性別、年齢などの質問に答える

2:質問内容に合わせて自分にとってふさわしいサークルが紹介される

3:12週間のプログラムに参加する
プログラムは少人数で、メンタルヘルスの専門家がファシリテートしてくれる。頻度は週に一度、ビデオチャットでライブで行われる。毎週違うトピックスで話が展開される。

「自分と同じような人がいる」「感情を吐露できる安心できる場所である」という自助グループの手法をベースに、オンラインをうまく使って心の安定を図る。
そんなサービスと言えるでしょう。

メンタルヘルスに対する手法(メソッド)を知る

今回はメンタルヘルスに関する、注目事例を2つ紹介しました。

メンタルヘルスに対する手法は、

・認知行動療法(行動習慣化を促すヘルスコーチングとの併用もあり)
・瞑想

以外に、

・感情を日記に書く(ジャーナリング)
・自助グループ

という手法があるということを今回紹介しました。

メンタルヘルス改善の継続のためには、今の自分にとってどの手法が向いているか、どの組み合わせが一番良さそうか、それを早く判断できることが実は大切です。

メンタルが弱まっている段階で、がんばることは難しいでしょう。
一刻も早く自分に合ったサービスを見つけたいでしょう。
手法は複数になっても構いません。
メンタルヘルスにおいては、この手法自体が体系的に整理されておらず、一般の人にとってわかりにくくなっています。

メンタルヘルスサービスの提供において、こうした手法の整理、そして手法自体をわかりやすく伝えることが、まずは必要だと思います。 【脇本和洋】

参考>本編「海外事例にみる継続支援アプローチ編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー

健康ビジネスキーワード

「Wellbe-Switch(ウェルビースイッチ)」

ウェルビースイッチ。これは造語です。
ウェルビーイング(快適自己肯定モード)へ入るスイッチのことをこう呼びたいと思います。

毎月第1週目のHealthBizWatchオーサー号(大川耕平担当)では、ウェルビーイング・アイテム研究と称してウェルビーイングに寄与する様々なアイテム(商品・サービス・コト・習慣・マインドセット)を紹介し考えていくビジネスコラムを展開しています。

詳細定義や分析は大川のビジネスコラムでお届けしていく予定ですが、このウェルビースイッチの存在を意識して顧客に接することができるできないで、大きくウェルビーイングビジネス・プレイヤーのパフォーマンスは変わるはずです。

今週の注目記事クリップ

[1]ジンズホールディングス、悪い姿勢が続くとaiboが「ワンッ!」と教えてくれる!「JINS MEME」とソニー「aibo」が連携開始(PR TIMESより)
https://jinsholdings.com/jp/ja/news/aibo/
今回の連携サービスにより、aiboのオーナーはaiboとの生活の中でJINS MEMEを自然に楽しみながら使うことができ、セルフケアにとって重要な使用の継続や習慣化への貢献が期待できます。(2023/02/10)

+++★追加解説音声:110秒(編集主幹 大川耕平)★+++
セルフケアの全く新しいスタイルの登場です!
https://youtu.be/zI3wFrfBd_0

[2]キリンビバレッジ、健康経営トータル支援サービス「KIRIN naturals」で、日立社会情報サービスへの「適正飲酒プログラム」の提供を開始!
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2023/0208_01.html
今回の「適正飲酒プログラム」は、LINEを活用して自身の日々の飲酒量を記録し、管理栄養士によるアドバイスを通じて従業員の適正飲酒習慣を支援するプログラムです。(2023/02/08)

[3]トーフミート、豆腐から作る新食材「TOFU MEAT(トーフミート)」がAmazonにて販売開始!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000103123.html
豆腐の原料となる大豆は国産大豆を100%使用し、お肉のような味わいと食感を実現。特殊な豆腐の製造方法により大豆臭が少なく、スイーツにも代替が可能。(2023/02/08)

[4]2023年1月ヘルスケア企業資金調達ランキング(Healthtech DBより)
https://healthtech-db.com/articles/202301_fundrasing_ranking
Healthtech DB調べにて、2023年1月に資金調達を行なっている企業をリサーチした。それらの企業を資金調達額順にランキング化し、紹介。(2023/02/08)

[5]cotree、「職場のメンタルヘルス対策としてのオンラインカウンセリング活用ガイド」を公開
https://cotree.co/posts/whitepaper
この度公開した「職場のメンタルヘルス対策としてのオンラインカウンセリング活用ガイド」では、企業における従業員のメンタルヘルス対策の現状と小規模から取り組める対策のヒントについてまとめています。(2023/02/09)

[6]キユーピー、好みや気分に合った商品が見つかる新コンテンツ「myドレッシング診断」を開発
https://www.kewpie.com/newsrelease/2023/2878/
「myドレッシング診断」は、「気分」「こだわりポイント」「よく使う食材」「気になる味わい」「好みの味」の5つに回答するだけで、3,000を超えるパターンからAIが瞬時に3つのおすすめドレッシングを提案してくれるコンテンツ。(2023/02/09)

[7]ジィ・シィ企画、健康経営サポートサービス「NUCADOCO」、「REALITY Spaces」を利用したメタバース連携PoCを開始!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000091233.html
従業員はNUCADOCOアプリで利用のアバターを連携し、アニメアバターやリアルアバターを使い分けてメタバース空間に常時接続することで、昨今のテレワークでの課題であるコミュニケーション不足を解決します。(2023/02/09)

[8]Welbyとスズケン、医療DX推進へサービス開発及び普及の協業体制を強化
https://welby.jp/category/news/230210153000.html
Welbyは、PHRの普及ならびに社会実装に向けて国内外各社と協業体制を強化するため、代表取締役・比木武が株式会社スズケンの「ヘルスケアソリューション事業本部 執行役員」に就任することをお知らせします。(2023/02/10)

[9]アインホールディングスなど、薬局で脳の健康状態のチェック・相談を行う実証実験を開始【PDF】
https://www.ainj.co.jp/Portals/0/ir/news/20230210_newsrelease.pdf
https://www.ainj.co.jp/
3社は、本実証実験において薬局での認知機能のチェックや相談サービスのニーズを把握するとともに、認知症の早期発見に必要なサービスの検討を行います。(2023/02/10)

[10]東急不動産、フィットネス事業におけるルネサンスとの資本提携について~東急スポーツオアシスの事業を承継する新設会社株式の一部譲渡~
https://www.tokyu-land.co.jp/news/2023/001532.html
資本提携後は、ルネサンスと東急スポーツオアシスの合算で国内に直営約140店舗の規模を有する、フィットネス業界において売上で最大規模の企業グループとなります。(2023/02/10)

[11]パーソルホールディングス、『データから見る企業実態調査』従業員のエンゲージメント向上への課題意識を持つ企業は7割以上に
https://www.persol-group.co.jp/news/20230210_11513/
本調査は、企業の経営層ならびに人事に携わる人を対象に、人的資本経営に関連する人事施策について調査を実施し、その中から「エンゲージメント」に関連する取り組みをレポートにまとめたものです。(2023/02/10)

[12]ウェザリー・ジャパン、「Snore Circle PRO スノアサークルプロ」の一般通常販売を開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000021528.html
シリーズ累計販売台数47万台突破!リアルタイムで「イビキ」「呼吸レス」をケアするいびき防止デバイス。(2023/02/10)

[13]SOMPOひまわり生命、お客さまの健康を応援する「インシュアヘルス」商品の累計販売件数100万件突破【PDF】
https://www.himawari-life.co.jp/-/media/himawari/files/company/news/2022/a-02-2023-02-13.pdf?la=ja-JP
https://www.himawari-life.co.jp/
2018年4月から提供を開始した全9つのインシュアヘルス商品の累計販売件数が100万件を突破したことをお知らせします。また、インシュアヘルス商品に加入したお客さまが禁煙や健康状態の改善に成功しています。(2023/02/13)

[14]ネクイノ、累計100万DL突破!オンライン・ピル処方サービス「スマルナ」~スマルナ100万ダウンロード突破キャンペーンがスタート!~
https://nextinnovation-inc.co.jp/news/w0Fer5K5vgpFc6B604nT9
2023年2月1日(水)-5月31日(水)までの4ヶ月間、低用量ピルの「12シート一括決済プラン」が通常の価格から5,000円OFFになる「スマルナ100万ダウンロード突破キャンペーン」を開催中。(2023/02/13)

[15]こどもりびんぐ、女性が選ぶ「フィットネスクラブ」ランキング[2023年]
https://kodomoliving.co.jp/2023/02/5281/
今回は全国の女性562人が回答。フィットネスクラブの利用経験は43.8%で、現在入会中の人は15.8%でした。利用率第1位は「コナミスポーツクラブ」、総合満足度第1位は「ジョイフィット」。(2023/02/13)

[16]レキットベンキーザー・ジャパン、「メディキュット For MEN 着圧ナイトソックス ショート」新発売(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000181.000000979.html
着圧ソックスのメディキュットより“男性向け”新商品が登場。男性の脚に合わせて設計された足首からふくらはぎの段階着圧で脚を引き締めます。履いて寝て、翌朝脚スッキリ。男性の脚ケアに新習慣を提案。(2023/02/13)

[17]ウェアラブルセンサーを用いた感情予測(The Medical AI Timesより)
https://aitimes.media/2023/02/13/12834/?fbclid=IwAR3Z-ueE-ye3-ENQDu1i1M-76eomJbrSz1P1Wab_JHuy16SshWPxad8dk2I
ウェアラブルセンサーを用いて、物理的変化のみならず、感情変化を予測しようとする試みがある。(2023/2/13)

[18]日本リカバリー協会、「休養・抗疲労白書」発刊(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000085299.html
日本疲労学会、神戸リサーチコンプレックス協議会、べネクスと共同で行った、全国10万人の男女に実施した「ココロの体力測定2021」のデータを活用し、ジェンダード・イノベーションの視点で分析を行った「休養・抗疲労白書2022」を作成。(2023/02/14)

[19]Amazon、米プライム会員向けに月額5ドルの医薬品サブスク『RxPass』を開始
https://mhealthwatch.jp/global/news20230209-2
Amazonは、月額5ドル(約650円)で複数の対象医薬品を受け取れる、プライム会員向けの新しい特典『RxPass』の提供を開始した。米国のほぼ全州が対象。(2023/02/09)

[20]Garmin、FDAに認可されたウェアラブル『Venu 2 Plus』用のECG(心電図)アプリを起動へ
https://mhealthwatch.jp/global/news20230209
ユーザーは、アプリを使用して30秒間の心電図(ECG)を記録し、心拍リズムの結果を『Venu 2 Plus』ですぐに表示するか、Garmin Connectアプリで表示できる。(2023/02/09)

[21]TRIPPとEqua Health、臨床的に裏付けられたVRマインドフルネストレーニングを提供
https://mhealthwatch.jp/global/news20230210-2
両社は、拡張現実(XR)プラットフォーム初の臨床的裏付けのあるマインドフルネストレーニングの体験を開発し、集中力、平常心、感覚の明瞭さというマインドフルネスの中核となるスキルに焦点を当てた3つのセッションを提供する予定。(2023/02/10)

[22]『mHealth Watch』注目ニュース:明治安田生命、AI身体計測テクノロジー『Bodygram』を導入
https://mhealthwatch.jp/japan/news20230220
今回注目するのは、AI身体計測テクノロジー『Bodygram』を、明治安田生命が提供する「みんなの健活サービス」のラインアップに追加したというニュースです。(2023/02/20)