こんにちは。脇本和洋です。

近年、海外のヘルスケア事例を紹介する無料メディアが増え、本メルマガ読者の皆さまも日頃から数多くの海外ヘルスケアサービスを見ていることと思います。

ただ、事例情報に触れることが容易になっただけに「継続利用のためにどんな工夫をしているか?」を深く調べなくなり、表面的にマネをするアイデアにとどまるケースも多々見られます。

そこで、今号ではあえて事例紹介はせず、「行動継続を促す工夫」を知るための4つの方法についてお話しします。
この方法を知り、海外ヘルスケアサービスを見る目を養ってください。

特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編

「行動継続を促す工夫」を知る4つの方法

海外のヘルスケアサービスをマネした日本のサービスを見ていると、サービスの表層だけをマネしてうまくいっていない場合が多いです。

サービスの形だけをマネするなら簡単にできてしまい、それで成功するなら苦労しないでしょう。

そこで大切になっているのが、

  • 海外ヘルスケアサービスの裏に隠されていて
  • その会社が特に力を入れている

そんな

「行動継続を促す工夫」を知ることです。

スポルツは、このために一つの成功事例のリサーチに100から200時間かけています。

今回は、今までのリサーチ経験でわかってきた、海外先進事例の「行動継続を促す工夫」を知るための『4つの方法』についてお話しします。

<今回のお話>
・「行動継続を促す工夫」を知るとはどういうことか?
・「行動継続を促す工夫」を知る方法(1):CEOインタビューを見る
・「行動継続を促す工夫」を知る方法(2):自ら体験する
・「行動継続を促す工夫」を知る方法(3):利用者インタビューを見る
・「行動継続を促す工夫」を知る方法(4):理論を頭に入れて見る

「行動継続を促す工夫」を知るとはどういうことか?

例えば、ある海外の売上好調な健康食品会社には、電話による専門家サービスがついていたとしましょう。
では、この専門家サービスにはどんなノウハウがあるか?
それを調べていくことが「行動継続を促す工夫を知る」ということです。

調べた結果、

  • 専門家は全員、行動変容のコミュニケーションの教育を受けている
  • 専門家はその会社の健康食品を実際に使って、よい体調変化を感じている
  • 専門家の採用は資格ではなくコミュニケーション力で選んでいる
  • 専門家がアドバイスする際のヒントは、実はAIが提供している

といった専門家サービスの提供の「裏側」を知ることです。

こうした特別な情報を知るにはリサーチノウハウが必要です。
これから4つに分けて紹介しましょう。

「行動継続を促す工夫」を知る方法(1):CEOインタビューを見る

行動継続を促す工夫がオープンにされることは通常ないでしょう。
企業にとってはあまり教えたくない情報だからです。

ただ、その一部がオープンになる時があります。それがCEOインタビューです。
通常のCEOインタビューでは引き出されないことが多いのですが、特定のメディアや特定のインタビュアーによって引き出される場合があります。

例えば、日本でフィットネスクラブの継続率が高いことで有名なカーブスがあります。
CEOがインタビューでその特徴を述べていて、実はカーブスの武器はコミュニケーション能力ということが語られています。

参考>日本取引所グループ:上場会社トップインタビュー「創」
株式会社カーブスホールディングス
https://www.jpx.co.jp/listing/ir-clips/interview/detail/7085.html

「行動継続を促す工夫」を知る方法(2):自ら体験する

自分でサービスを体験すると、サービスプロセスがすべてわかります。
そして1か月も続けるとサービス継続のためにどんな工夫があるかも大体わかってくるでしょう。

もちろん女性向けサービスを男性の企画担当者が受けることができないとか、糖尿病向けのサービスを糖尿病でない企画担当者が受けることができないとか、海外事例なので受けることができないとか、いろいろ課題は出てくるでしょう。

しかし、もし日本語版が出ていたりする場合は、すぐ体験してみましょう。

例えば、米国の瞑想・睡眠アプリで売上トップクラスとされるcalmというアプリは、日本語版がすでに出ていてすぐに体験できます。
実際に1週間も受けてみれば、なぜこれほど人気があるか(継続したくなるか)理解できるでしょう。

参考>Calmアプリ
https://www.calm.com/ja

「行動継続を促す工夫」を知る方法(3):利用者インタビューを見る

米国のヘルスケアサービスで先進事例と評価されるものは、YouTubeページをもっていることが多いです。
その場合、利用者のインタビューや利用シーンが掲載されていることがあります。

動画は長くても3分から5分。YouTubeなら字幕で読み取っていけばサービス内容がかなりわかります。
さらにReviewしている動画も見つかれば、継続にどこが効いているか予想も立てやすくなります。

「行動継続を促す工夫」を知る方法(4):理論を頭に入れて見る

あらかじめ行動変容理論を頭に入れてから事例を見ると、行動継続の工夫をつかみやすくなります。
なぜなら、先進事例も行動変容理論を参考にしている場合が多いからです。

行動変容理論を整理した本は数あるのですが、ご自身で気になるものを探してみるといいでしょう。
ちなみに私は以下の書籍をベースに理論を頭に入れています。

参考>やる気を引き出す8つのポイント 行動変容をうながす保健指導・患者指導
(松本千明著 医歯薬出版)
https://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=235040

行動継続を促すアイデア出しの時、海外事例を使いこなすために

ヘルスケアの新サービスアイデアをチームで出す時、海外の先進事例を参考にしてアイデア出しをする場合も多いことでしょう。

あなたが調べた海外事例を使って、チームメンバーでアイデア出しをする際には、「この事例の継続を促す工夫はこれです!」とズバッと言えることが望ましいです。

そのためには、今回紹介した4つの切り口のどれでも構わないので、一度使ってみてリサーチいただくとよいと思います。

実際にリサーチしてみるとわかることですが、リサーチした情報をつなぎ合わせて「類推する」という力も必要になります。
このことも最後に補足としてお伝えしておきます。 【脇本和洋】

参考>本編「海外事例にみる継続支援アプローチ編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートを作成しました。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー

健康ビジネスキーワード

購入理由

一般的に購入を決断する時の理由として代表的なものは

セーフティー
フォーミー
コストセーブ
フォロー
アドベンチャー
パワーセーブ

の6つと言われています。

ヘルスケア領域のプロダクト&サービスで今後注目されるのはアドベンチャーです。
あなたのプロダクト&サービスにアドベンチャー要素はありますか?

今週の注目記事クリップ

[1]リクルート、ホットペッパーグルメ外食総研「トレンド座談会」レポート | 飲食店での栄養成分表示「あった方がよい」79.6%(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002060.000011414.html
今回は「飲食店での料理の栄養成分表示」について、20代-60代の男女1,035人にアンケート調査を実施。栄養成分表示で気になるのは「エネルギー」に次いで「炭水化物」「脂質」。(2023/06/13)

+++★追加解説動画:4分(編集主幹 大川耕平)★+++
カロリーなどの栄養成分表示は飲食店で「あった方がよい」79.6%
https://youtu.be/6UGRVtF543U

[2]インテグリティ・ヘルスケア、ヘルスケアサービス企業とコラボレーション
https://www.integrity-healthcare.co.jp/news/press/phrsmart-one-health4
オンライン診療、生活習慣病の重症化予防サービス、看護師による24時間対応のチャット健康相談、産業医による生活習慣改善アドバイスなど、PHRシステムSmart One Healthを活用した健康経営を推進するサービスを提供。(2023/06/07)

[3]おいしい健康、全国のクオール薬局においてアプリ販売・提供を開始
https://corp.oishi-kenko.com/news/20230607_qol.html
今回、デジタルとビッグデータを活用した新しい食事・栄養体験をクオール薬局店頭で提供すべく、AI献立・栄養管理アプリ『おいしい健康』の取り扱いを開始。(2023/06/07)

[4]Upmind、東京大学と共同開発したスマートフォンアプリを用いて、毎日5-10分のメディテーションの習慣化の実証効果の把握に成功(生産性が有意に向上するなど)(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000083261.html
この実験には東京大学とUpmindの共同開発した独自の瞑想ガイドを利用。日本語の瞑想ガイドの習慣化を促進するアプリをデバイスとして開発し、国内で初めてとなる科学的な効果検証に取り組んでいます。(2023/06/07)

[5]ワーク・ライフバランス、「睡眠シンポジウム2023」をオンライン開催
https://work-life-b.co.jp/20230608_25099.html
開催日は2023年7月6日(木)参加費無料。「組織の生産性向上には睡眠改善が一番効果的な理由」をテーマに企業事例や最新の労働経済学研究を紹介。(2023/06/08)

[6]プラネット、お口の健康維持・管理サイクルを実現する、初の患者向けアプリケーション「Dental E」ローンチ!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000123435.html
「Dental E」は、“歯科と国民をつなげる”をコンセプトに、分かりやすいイラストと解説で自分のお口の状態を知ることができ、診察予約が簡単にできる機能を持つアプリ。(2023/06/08)

[7]MTG、村田製作所とSIXPADが協業
https://www.mtg.gr.jp/news/detail/2023/06/article_2147.html
両手で血圧対策の「ねじり運動」ができる「SIXPAD Health Grip(シックスパッド ヘルスグリップ)」を新発売。1日1回約3分のねじり運動で、健やかな身体づくりをサポートします。(2023/06/09)

[8]三菱鉛筆など、筆記具の加速度センシングとディープラーニングによって集中力の予測が可能に
https://www.mpuni.co.jp/company/press/20230609-53119.html
東京大学の池谷裕二教授とストーリアとの共同研究として、筆記具の役割である“書く・描く”ことに加えて、新たな提供価値を創出するための試みの一つとして、筆記具の動きと脳波を記録し、筆記具の動きから脳波を予測するという実証実験を実施。(2023/06/09)

[9]ウンログ、8割の人が実感!うんち日記をつけることが健康作りへの近道(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000057086.html
ウンログユーザー1,826名を対象に「うんち記録とその効果に関する実態調査」を実施。約98%の人が、うんちを記録することにメリットを感じている、など。(2023/06/12)

[10]ウェルビーイング、さあ実践へ:今や世界の一大潮流、ウェルビーイングの実践メソッド「ビジョン・ゼロ」とは 第1回(日経デジタルヘルスより)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02483/060500001/?ST=ch_digitalhealth
ウェルビーイング(心身の健康や幸福)の実践方法を解説する連載第1回。企業が取り組むべきウェルビーイングは、従来の心に関する狭い捉え方にとどまらず、人間の肉体、精神、心を含めた広い捉え方にすべきだと考えます。(2023/06/12)

[11]Beyond Health事例、一人暮らしの高齢者もイキイキできる複合エリア誕生の背景(Beyond Healthより)
https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00003/051000300/
東坂市長にこれからの公民連携のあり方を聞く(後編)。後編では、同プロジェクトを先導するコーミン代表取締役の入江智子氏に、プロジェクトの実態や今後の展開などについて明らかにしてもらう。(2023/06/12)

[12]グローバルニュートリション、研究により睡眠サプリメントにおけるパーソナライゼーションの重要性が判明、ほか
https://global-nutrition.co.jp/gnggn/globalnews-20230612/
GNGグローバルニュース2023年6月12日号。この記事では、会員向けニューズレターの一部を抜粋してご紹介させていただきます。(2023/06/12)

[13]厚生労働省、ジャパン・ヘルスケアベンチャー・サミット2023を開催します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_33516.html
令和5年10月11日(水)より13日(金)までの3日間、パシフィコ横浜にて開催。出展申込締切は令和5年7月14日(金)。(2023/06/12)

[14]矢野経済研究所、2030年の医療産業(注目ヘルステック)に関する調査を実施(2023年)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3260
「2030年の医療産業」における注目ヘルステックを調査し、セグメント別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。(2023/06/13)

[15]『Microsoft Viva』に「Copilot」。OKR支援や社員エンゲージメント向上
https://mhealthwatch.jp/column/news20230607-2
『Microsoft Viva』は、従業員の活性化や支援、投資を行なうことでエンゲージメントを高め、生産性の向上を支援するためのプラットフォームとして提供されているもの。(2023/06/07)

[16]Peloton、新たに無料および高価なサブスクリプションを備えたワークアウトアプリをスタート
https://mhealthwatch.jp/global/news20230607
Pelotonはワークアウトアプリを刷新し、新たに設けた無料会員と月額24ドルの高級会員を含む3種類の会員レベルをユーザーに提供する。(2023/06/07)

[17]『mHealth Watch』注目ニュース:asken、習慣化アプリ「みんチャレ」とのダイエットに関する共同アンケート結果を発表
https://mhealthwatch.jp/japan/news20230619
若い世代(18-29歳)の痩せた女性の健康問題の原因の一つには、ヘルスリテラシーが低いこと、そしてしっかりとヘルスリテラシーを学ぶ機会が存在しないことではないかと私は以前から感じています。(2023/06/19)