こんにちは、里見です。

ヘルスケアサービスでは、客観的な指標としてデータが用いられ、グラフなどでのデータの見える化や健康診断データの改善を目的としたプログラムなど、データを中心としたサービスが提供されています。
この客観的な指標とは対称的な位置付けとして、ヘルスケアサービスの中では重要な要素である主観的な指標が存在します。

今回は、この主観的なアプローチについてヘルスコーチングの視点から解説してみたいと思います。

特集:ヘルスコーチングの視線編

ヘルスコーチングの可能性を探る:ヘルスケアサービスにおける客観的指標と主観的指標

1、客観的と主観的

一般的に客観的評価とは、自分ではなく自分以外の人の好みや感じたこと、多くの人に共通する感覚を基準とした評価方法のことで、第三者の目線で物事を冷静に見たり考えたりすることです。

これに対して主観的評価とは、自分の好みや考え、自分が感じたことを基準とした評価方法のことで、自分の立場を基準にして物事を見たり考えたりすることになります。

ヘルスケアの領域では客観的評価と主観的評価は、以下のような分類で扱われることが多いです。

○客観的評価
・健康診断データ
・体重、体組成データ
・歩数などの活動データ
・睡眠データ
・栄養成分、摂取カロリーデータ
・心拍データ

○主観的評価
・体調
・疲労
・目覚め
・空腹感、満腹感
・意識、意欲
・集中力
・気持ち

ヘルスケアの領域における客観的評価と主観的評価は、データとして見える化できるものと、本人の感覚で判断するものに大きく分かれて語られることが多いです。

2、客観的と主観的は連動しない

客観的な評価の代表例としては、健康診断データがあります。

健康診断のデータは基準が設けられており、それぞれのデータごとに基準値が設定され、基準値の範囲内か、それとも基準を外れていれば医師の受診や再検査ということがデータをもとに客観的に提示されます。

このように健康診断のデータは異常を見つけて適切に対処する、治療する指標としては、かなり有効な客観的評価指標です。

しかし、体重データや睡眠データなどの客観的な評価では、体重や睡眠は健康に大きく関係しているデータではありますが、すぐに何か身体的に影響があるものではありません。
また、体重データや睡眠データなどは、自身の健康や体調といったどちらかというと主観的な評価と一致していないケースがあったりするものです。

例えば、睡眠時間としてのデータではしっかりと寝ていることになっていても、実際に起床時の感覚としては眠気が残っている、疲労が回復していないなどの場合では、客観的なデータと主観的な感覚にズレが生じることがあります。
体重データについても、食事を節制してもそのまま体重の減少にすぐに反映されないなど、なかなか自分の主観と客観データが連動しないことがあります。

客観的評価やデータの難しさの一つに、この客観的指標であるデータと本人の主観的な評価、感覚が一致しないことが、健康の取り組みが長続きしないことに関係していると考えられます。

また、健康診断のデータで医師への受診勧奨があったとしても、受診しない人は少なくありません。
受診しない人の中には、やはり主観的な評価に近い部分である自覚症状などが無い場合には、データが自分ごと化されていないケースが考えられます。

3、自分ごと化には、客観的 < 主観的

ヘルスケアのサービスの入口、きっかけの多くは、なにか課題を認識していて、その課題を解決したいというもので、比較的主観的な評価が入口になっていることが多いです。

ダイエットは、体重計測による客観的評価であるデータがきっかけ、入口に見えますが、実はデータを見てダイエットが必要かどうかを認識しているのは主観的な側面であって、体重データで客観的な評価を受けているわけではないのです。

ある大学の検証結果では、ダイエット経験がある女性とダイエット経験がない女性では、肥満だと感じる体重で約2.5kgの差があったようです。

<肥満だと感じる体重>
・ダイエット経験が有り:51.83kg
・ダイエット経験が無し:54.31kg

このように、課題を認識して人を動かす際には客観的評価であるデータも必要な要素なのですが、やはり強い動機や目的意識を持った取り組みにしていく最中では、主観的な評価である自覚症状や自分ごと化するための感覚や気持ちの部分が重要な要素になってくるのです。

また、睡眠に課題を感じている人の場合も、ウェアラブルデバイスを装着して睡眠データを確認しても、その睡眠データ上では睡眠時間に問題なくても、主観的な評価である睡眠の課題は残ったままになるのです。

4、主観的な評価を高めるためのアプローチ

ヘルスケアの領域では客観的評価と主観的評価の両方が重要な要素であり、自分ごと化を強めるためには、やはり主観的な評価が必要になってきます。
また、健康への取り組み、課題の解決に向けては、継続的な取り組み、行動が不可欠になってきます。

この継続的な取り組み、行動にしていく上でも主観的な評価が欠かせない要素になってきます。

例えば、継続的な取り組み、行動の結果として客観的な評価であるデータの変化だけを見ていく場合には、データの変化にはある程度の期間が必要であり、またデータの見方、変化の捉え方も必要になってくるのです。

客観的な評価であるデータの変化に注目することは間違っていることではないのですが、目に見えたデータの変化を手に入れるまでの間は、なにも変化が得られず、モチベーションの維持や自己効力の維持が難しく、結果的に行動が続かないことにつながるのです。

自己効力とは、簡単に言えば「自分にはできそう」「達成できそう」「乗り越えられそう」といった、自信のような感覚で、自分が上手くやれそうだという期待感のようなものです。

客観的な評価であるデータだけに注目していると変化が見つけづらいため、自己効力を高めることが難しいです。

しかし、客観的な評価であるデータの変化が表れてくるまでのプロセスの中では、小さな変化は必ずあるものです。
この小さな変化を主観的な評価として見つけていけると、成功体験を通した自己効力の維持につながるのです。

5、自己効力を高める成功体験、成果、変化へのアプローチ

客観的な評価であるデータだけでは、なかなか成果、変化を見つけることができません。
この成果、変化を見つけられないことが、自己効力が得られない、高められない要因として考えられます。

そのため、主観的部分に目を向けて成果、変化へのアプローチを行うことが重要になってきます。

しかし、この自己効力は自身の中で気づき、発見することで得ること、高めることができるものなのですが、なかなか自己効力につながる気づきや発見の視点や意識を自ら見つける、気づくことは難しいものです。

そのため、主観的部分に目を向けて自らの発見で自己効力を高めるためには、ヘルスコーチングの「自らの気づき」への働きかけによるコミュニケーションが効果を発揮します。

ヘルスコーチングでは、対象者の自己効力につながるアプローチ、コミュニケーションを積極的に行うことで、モチベーションはもちろん自己効力を高めて行動の加速につなげていくのです。


今回お話した主観的な部分に目を向けた成果、変化へのアプローチは、ヘルスコーチングのコミュニケーションの要素の一つです。
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健康ビジネスキーワード

やり方は答えではありません

上手くいっている企業のプロセスを真似るだけではいけません。
beingがdoingより重要な理由がここにあります。
beingはあり方、doingはやり方です。

100をつくると決めることがbeingです。
これが決まればdoingはほぼ無限なやり方を導くことが可能です。

つまり、やり方を答えとしてそれのみを探したり、気にすることはナンセンスです。
Doingの背景にあるbeingを掴み取りましょう。
我々HealthBizWatchはbeingにこだわり続けます。

今週の注目記事クリップ

[1]伊藤超短波、今秋新発売『腸もみガジェット「chomomi(チョモミ)」』のブランドサイトをオープン(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000093.000028866.html
今回開発した「chomomi」は、腸もみトリートメントを行うサロン施術を研究し、4つの電極シートで再現したガジェット。クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」にて先行予約受付中。(2023/07/12)

+++★追加解説動画:4分50秒(編集主幹 大川耕平)★+++
モノづくり老舗のガジェット開発×クラウドファンディングというマーケティングです。
https://youtu.be/0OlsGcXSTKk

[2]旭化成、米国にヘルスケア領域の本部を設置
https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2023/ze230712.html
ヘルスケア領域のさらなる拡大を図るため、ヘルスケア領域の本部を米国に新たに設置したことをお知らせします。(2023/07/12)

[3]エムスリー、健康経営の1歩目をサポートする「ハピネスパートナーズ」に新機能が登場ー企業の課題特定-施策提案-効果検証までを一括提供ー(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000125568.html
新健康指標EBHS Lifeが7月より本格的に標準搭載開始。働く人の心と体を守るストレスチェック・疲労度チェックも提供開始。企業が抱えるプレゼンティーイズムの分析にも対応。(2023/07/12)

[4]ブレインヘルスラボ、ビジネスに活かす睡眠資格「スリーププランナー(R)」2023年8月下旬より提供開始
https://sleep-planner.com/news/45.html
市場拡大に伴い正しい知識を持った人材の育成が必要だと考えて、睡眠研究に30年以上携わる西野精治氏(スタンフォード大学 医学部 精神科 教授 同大学睡眠生体リズム研究所 所長)をはじめとする12名の医師や専門家と本資格を開発。(2023/07/12)

[5]01Booster、[Makuake目標金額の500%超]サラダのかわりに飲む緑茶「ALL GREEN」が一般販売をスタート!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000530.000016550.html
Makuakeプロジェクト開始からわずか50分で目標達成!上質なシングルオリジン・ティーの栄養をまるごとおいしく補給できるALL GREENが、公式オンラインストアをオープン。(2023/07/12)

[6]松村寝具、子どもの睡眠環境実態:9割以上の親が子どもに適した睡眠環境をしっかり理解できてないことが判明(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000116798.html
小学生以下の子ども(親と一緒の布団ではなく1人で寝ている)を持つ親を対象に「子どもの睡眠環境に対する親の意見」に関する調査を実施。約8割の親が子どもの睡眠環境を気にかけていると回答。(2023/07/12)

[7]MICIN、Digital Health Times「英国民間組織の取り組みから考えるデジタルヘルスの流通基盤」掲載
https://dht.micin.jp/samd/samd17/
今回の記事では、英国におけるデジタルヘルスの取り組みを支援する民間組織であるORCHAの取り組みを取り上げます。(2023/07/13)

[8]ハルメクホールディングス、「推し」がいるシニア女性は昨年から約13%増加し47.9%
https://www.halmek-holdings.co.jp/news/press/2023/iof-4oru-4/
ハルメク 生きかた上手研究所は、50-81歳の女性461名を対象に「シニアの『推し』に関する実態調査」を実施。推しは人生の活力であり、推しがいる人ほど幸福度も高い、など。(2023/07/13)

[9]Rehab for JAPAN、自宅でできるオンライン介護リハビリ「Rehab Studio」の提供を開始
https://rehabforjapan.com/news/202307131129/
高齢者が自宅からオンラインでリハビリ専門職による介護リハビリが受けられる介護保険外のサービス。(2023/07/13)

[10]ORKAホールディングス、注目の最先端研究「脳腸相関」を新たに導入・実施ー「医科学研究所」と「運動施設」を一体化させた事業を展開ー(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000046703.html
特定の腸内細菌と集中時の主体脳波として知られるアルファ波との相関関係を確認。今後も健康増進に向けてヘルステック事業を強化していきます。(2023/07/13)

[11]ロック・フィールド、包材印字の栄養情報を強化、お客様の心と体の健康づくりに貢献
https://www.rockfield.co.jp/news/detail.html?relyear=2023&id=20230714-822fdd01
今回、任意表示である「糖質」「食物繊維」の2項目を追加表示。「糖質」は主にエネルギー源、「食物繊維」は摂取量不足が生活習慣病の発症率や死亡率に関連する指標とされており、健康意識の高いお客様からの関心が高い項目。(2023/07/14)

[12]SOMPOインスティテュート・プラス、第96回日本産業衛生学会で「従業員エンゲージメントと営業目標に関する分析」について発表しました
https://www.sompo-ri.co.jp/news/20230714-8884/
本発表では、調査対象会社(非製造業)の営業店ごとの従業員エンゲージメントの平均値(eNPS:Employee Net Promoter Score)と営業目標達成の関係について分析し、eNPSが営業目標の達成に寄与する因果性を示すことができました。(2023/07/14)

[13]ポーラ化成工業、筋力トレーニングが美肌に貢献することを世界で初めて報告【PDF】
http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20230714_2.pdf
http://www.pola-rm.co.jp/
立命館大学スポーツ健康科学部 藤田聡教授らの研究チームと共同で、有酸素性運動と筋力トレーニングの両方が皮膚の弾力性と真皮構造を改善させること、特に筋力トレーニングは真皮の厚みを増加させ若々しい外見に貢献する可能性があることを世界で初めて明らかにしました。(2023/07/17)

[14]企業が発信する情報、女性はどれくらい信頼している?(20-50代)(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/marketing-research-230717-2
マーケティングリサーチ会社のアスマークが、20-50代の男女800人を対象に「情報取得に関するアンケート」調査を実施(2023年2月)。その中で、信頼できる情報ソースについて聞いた。(2023/07/17)

[15]キリンホールディングス、日本で最も詳細な腸内細菌検査「MicroBio Me」本格展開開始ーThorne社の解析技術を活用し、個人ごとの腸内細菌を詳細に解析ー
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2023/0718_01.html
キリンのヘルスサイエンス領域で「初」の腸内環境事業。検査結果レポートは医療機関を通じて本人に通知され、医師の判断に基づく一人一人の腸内細菌に応じた適切なアドバイスを受けることができます。(2023/07/18)

[16]ロッテ、ガムを噛むことにより フェイスラインが引き上がることが明らかに!【PDF】
https://www.lotte.co.jp/info/news/pdf/20230718060011.pdf
https://www.lotte.co.jp/
約8割が気になるフェイスラインのたるみ!セルフケアをできない理由は“時間的ハードル”。ガムを噛みながら複数の美容メリットを得る「ガムトレ」を歯科衛生士が徹底解説!(2023/07/18)

[17]ミズノ、環境配慮型素材採用 ミズノメディカルウエア発売
https://corp.mizuno.com/jp/news-release/2023/20230718
独自の「ダイナモーションフィット」は、人間工学に基づいた動作解析によるウエア設計で、作業時の動きやすさを追求。患者を抱える動作や腕の上下、しゃがみこみといった作業時の引きつれや圧迫感を軽減します。(2023/07/18)

[18]弘前大学と小林製薬、共同研究講座「オーラルヘルスサイエンス学講座」開設
https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2023/20230718/
本講座では、弘前大学が実施する「岩木健康増進プロジェクト」の超多項目健康ビッグデータを活用し、小林製薬の歯科口腔研究の知見・技術を融合させ、口腔環境と全身の健康状態との関係性を解明することを目的としています。(2023/07/18)

[19]SOULA、食事・運動・睡眠・肌ケア領域を融合 ユーザーの行動変容を促す提案型ヘルスケアアプリ「SOULA pie」Ver2.0提供開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000111046.html
企業・団体向けヘルスケア導入支援アプリ。Ver2.0では、ユーザーの目的に応じて、食事・運動・睡眠・肌ケアの領域を組み合わせたヘルスケア&ビューティーのための多彩なプログラムを提供。(2023/07/18)

[20]SnapCalorie、AIを利用して写真から食べ物のカロリーを推定
https://mhealthwatch.jp/global/news20230714-2
AIを活用した『SnapCalorie』は、スマートフォンで撮影した1枚の写真から食事の正確なカロリー数と主要栄養素の内訳を取得しようとするもの。SnapCalorieは追加で、200万ドルの資金を調達した。(2023/07/14)

[21]『mHealth Watch』注目ニュース:Best Buy Health、パートナーシップの形成とヘルスケアにおける立場
https://mhealthwatch.jp/global/news20230724-2
今回ご紹介するBest Buyの動向も、小売チェーンのヘルスケア展開の一例となります。(2023/07/24)



+++★デジタルヘルス解説動画(オーサー 渡辺武友)★+++

【デジタルヘルス・ビジネスの疑問解消!】
デジタルヘルスのビジネスに関わる人に役立つ情報をお届けします。

第3回 デジタルヘルスで今後必要な視点
https://youtu.be/xH_4sku4ggY

第4回 デジタルヘルスで必須となるポイント
https://youtu.be/1BcPdbWgs_4