こんにちは、里見です。

ヘルスケアサービスにおける課題の一つが「継続」です。
この「継続」や「行動変容」に対して、スポルツでは2007年から、健康行動継続支援技術として「継続ドライバ」を研究、分析してきました。

この「継続ドライバ」について、今回から3回に分けてヘルスコーチングの視点から解説したいと思います。

特集:ヘルスコーチングの視線編

ヘルスコーチングの可能性を探る:「継続ドライバ」をヘルスコーチングの視点で解説【1回目】

1、継続ドライバの変遷

継続ドライバは、2007年に発表した時点では「継続ドライバ1.0」として10個のドライバでした。
その後、2016年7月に「継続ドライバ2.0」として、8個のドライバに再編成しています。

「継続ドライバ2.0」の8個のドライバ

1、インセンティブ
2、ヘルスコミュニケーション
3、ヘルスナレッジ
4、パーソナライズ

5、モニタリング
6、コミュニティ
7、ゲーミフィケーション
8、IoTリンケージ

この継続ドライバは、時代の変化によってサービスに取り入れられているドライバも変化してきています。

例えば、2012年~2017年の継続ドライバのトレンドは、ゲーミフィケーション、IoTリンケージといったデータの管理や見える化が中心のセルフモニタリングを、ICTを駆使してサポートすることが中心でした。

しかし、セルフモニタリングだけでは成果に導くことは難しく、やはりソリューションの提供や具体的な取り組み、また取り組みの継続が必要になり、行動や取り組みに「寄り添う」ための継続ドライバの活用が目立ってきています。

2、継続ドライバは組み合わせるとより効果的

ヘルスコーチングは、継続ドライバの中の「ヘルスコミュニケーション」のドライバの一つとして位置づけられます。

継続ドライバは、単独のドライバとしても成立しますが、それぞれのドライバと組み合わせて活用することで、より効果を発揮するケースもあります。

そのため、今回は8個の継続ドライバそれぞれに対して、ヘルスコーチングの側面からみた継続ドライバの特徴やヘルスコーチングの要素、アプローチの活用、組み合わせなどのポイントについて説明していきます。

3、ヘルスコーチング視点による継続ドライバ

1)インセンティブ


<ドライバの役割>

健康行動の継続度や目標の達成度に応じて、報酬がもらえる機能。


<ヘルスコーチング的な見方>

インセンティブは、継続ドライバの中でも動機付け、きっかけづくりに効果的なドライバの一つとして位置付けられます。

特に、行動変容ステージがあまり高くない、自発的に、能動的に健康課題の改善に向けた一歩が踏み出せない人に対して、一歩を踏み出すきっかけ作りの効果が期待できるドライバになります。

しかし、このインセンティブ(報酬)については、常に魅力的な報酬を与え続けないとインセンティブの魅力が薄れていってしまうケースがあります。
そういう意味で言うとインセンティブだけで行動の継続、習慣化まで引っ張ろうとするのには、やはり限界があります。

動機付けやきっかけづくりとしてインセンティブを活用し、行動の継続や習慣化に向けた下地を作ったり、行動に慣れるための別の入口、魅力という役割でインセンティブを活用したほうが良いです。


<ポイント>

サービスや取り組みの入口で別の魅力を設けて一歩を踏み出すための役割としたインセンティブの活用は効果が期待できますが、その後、同じインセンティブの提供だけで、行動の継続、習慣化を対象者任せにしてしまってはもったいないです。

インセンティブをきっかけにせっかくサービスや取り組みをスタートした人達を次のステップの行動の継続、習慣化に向かわせる仕掛けをしっかりと提供していくことが重要な要素です。

インセンティブは、動機付け、きっかけづくりという役割で活用して、そのあとどのように行動の継続、習慣化に向かわせるかという視点が必要で、インセンティブで一歩を踏み出してもらい、その後、行動の継続、習慣化に向けたアプローチと組み合わせることがポイントになります。

2)ヘルスコミュニケーション


<ドライバの役割>

健康向上プロセスで用いる有効なコミュニケーション方法。


<ヘルスコーチング的な見方>

ヘルスコミュニケーションには、ヘルスティーチングやヘルスカウンセリングなど、複数のコミュニケーションのスタイル、アプローチが存在します。
これらのヘルスコミュニケーションの中で、対象者の「自らの行動」にフォーカスしているのが、ヘルスコーチングです。

ヘルスケアサービスで提供されている、記録・インセンティブ・情報提供などの比較的手離れが良いサービス、機能については、提供さえすれば対象者自身で取り組めるものです。

しかし、対象者自身で取り組める機能だけの提供だけでは、本当の意味での成果に導けない課題が存在し、その背景には継続の難しさということが大きな要因になっています。

機能、サービスを一方通行型で提供するやり方は、対象者の継続へのアプローチが弱く、対象者の改善に導けないことはもちろんですが、その結果としてサービスに対する顧客満足度が高まらない原因にもつながっていきます。


<ポイント>

対象者の行動の継続、習慣化に導くことが本当の成果につながり、顧客満足度に直結します。

どんなに効果が見込めるアプローチ、方法であっても、予防領域における健康への取り組みにおいては「継続」が欠かせないものです。
特に生活習慣病などの生活習慣が大きく関係しているものでは行動、改善の継続が必須になってきます。

本来の成果に導くためには「継続」へのアプローチは切り離せない必須アイテムなのです。

そのため、対象者の「行動」に着目して、行動の継続を支援するためのアプローチ、コミュニケーションにしていかない限り、行動の継続の先に存在している本当の意味での成果に導けないのです。

3)ヘルスナレッジ


<ドライバの役割>

健康づくりに必要な知識提供機能。


<ヘルスコーチング的な見方>

ヘルスナレッジは、健康づくりに必要な「知識」といった意味合いになりますが、本来は「健康知識を活用できる」といった「活用」まで含んでいるものと捉えた方が良いです。

健康知識に留まらず、様々な健康情報を活用し正しく行動を選択するといった、健康行動を支えるための「知識」「活用」であり、そして実際の「健康行動」まで含めて捉えるべきなのです。

正しい健康知識を提供し知識レベルでは向上できたとしても、なかなか健康行動に結びつかないのが、健康行動の取り組みの難しさであり、行動変容がなかなか進まないポイントでもあります。


<ポイント>

正しい知識を提供したとしても、行動に結びつかないのが健康行動の難しいところです。
やはり、健康行動に結びつけるための情報提供というスタンスで情報を取り扱い提供すべきなのです。

健康行動に結びつける、健康行動の定着化に向けては、一人ひとりの生活にフィットさせていくプロセスが大切です。

この生活にフィットさせていくプロセスでは、対象者に合わせた知識や情報をカスタマイズして伝えたり、タイミングに合わせて気づきにつながる情報を提供して、自分ごと化していくことがポイントになってきます。

例えば、行動変容のステージが異なれば、提供すべき情報はもちろんですが、受け手側の興味、関心も変わってきます。

情報提供は、行動のための正しい理解が目的であったり、視点を拡げるための情報であったりといった感じで、対象者の状況を見ながらパーソナライズして提供することがポイントになってきます。



1回目の今号では、3つの継続ドライバについて、ヘルスコーチングの視点で解説してみました。

次回の2回目では、「パーソナライズ」「モニタリング」の2つの継続ドライバについて解説します。
次回2回目もご期待ください。


今回ご紹介した継続ドライバのヘルスコーチングの視点での解説について、もう少しこんな点が知りたい、こんなサービスにどう組み合わせられるか、など気になっていることございませんか?

また、次回以降の2回目、3回目の「パーソナライズ」「モニタリング」「コミュニティ」「ゲーミフィケーション」「IoTリンケージ」について、こんなポイントが知りたいなどあれば、ご意見お聞かせいただけないでしょうか?

次回のメルマガで、みなさんのご意見を反映していきたいと思います。
ぜひご意見お寄せください。お待ちしております。


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健康ビジネスキーワード

「VUCA 時代」

ブーカと言われ始めてから随分と経った。

Volatility (変動性)
Uncertainty (不確実性)
Complexity (複雑性)
Ambiguity (曖昧性)

の頭文字の造語ですが、このVUCAが表している世界観は

「絶対的な答えが存在していない」
「誰もが未経験な世界の存在」
「今までのノウハウが通用しない」ということが常態化。

あなたはどう生きますか?

トライ&エラー。
better is best. fail fast, learn a lot.で行くしかないのです。

今週の注目記事クリップ

[1]笹川スポーツ財団、運動・スポーツ実施時におけるアプリ等使用の実態~IT・テクノロジーの浸透がスポーツライフにもたらすものとは~
https://www.ssf.or.jp/thinktank/sports_life/column/202310.html
笹川スポーツ財団が実施した「スポーツライフに関する調査」2022では、「過去1年間の運動等でのアプリ・ゲーム等使用経験」を新たに追加項目として、その実態の把握を試みました。(2023/10/11)

+++★追加解説動画:8分52秒(編集主幹 大川耕平)★+++
ヘルスケア・アプリ経済圏の始まりか?
https://youtu.be/RGF7pgx5u_s

[2]ロート製薬、仲間と楽しくチャレンジ!新たな健康増進施策「新ウェルチャレ2023」運動習慣の定着とチームビルディングに寄与
https://www.rohto.co.jp/news/release/2023/1011_01/
運動目標「30分の運動を週2回以上の実践者の割合」の達成に向け、健康宣言日2023年6月10日より約2か月間、オリジナルの健康増進施策「新ウェルチャレ2023」を開催しました。(2023/10/11)

[3]日立製作所、ヘルスケア事業を会社分割し、日立ハイテクに統合
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2023/10/1011.html
本会社分割により、日立ハイテクで「診断×治療×デジタル」によるヘルスケア事業を推進し、ヘルスケアイノベーションを創出していきます。(2023/10/11)

[4]TENTIAL、「BAKUNE」シリーズのリカバリーウェアの全タイプが家庭用医療機器の新設カテゴリー「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の届出を完了、販売開始
https://corp.tential.jp/news/231011-relaese-2
テンシャルは「健康に前向きな社会を創り、人類のポテンシャルを引き出す。」をミッションとし、科学的根拠に基づく信頼できる製品をお客様に届けることを第一に考えていることからも、新基準に賛同し、順次切り替えの対応を実施しています。(2023/10/11)

[5]リンケージ、働く女性の健康保持増進へ向けAMEDの研究開発基盤整備事業に外部組織委員会として参画(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000067.000053753.html
本研究では、職場における就労女性の健康増進を目的としたチェックリストを開発いたします。このチェックリストを利用することで、就労女性が自身の健康のみならず、キャリアと私生活を両立させ継続して就労できることを目指します。(2023/10/11)

[6]インパクトスタートアップ、初の30社選定 遠隔モバイル胎児モニターなど 経産省(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/news-women-231011-1
インパクトスタートアップとは、医療や福祉・環境・エネルギーなどの社会課題の解決を目的に設立された、持続可能な成長の実現を目指す新興企業を指す言葉で、新市場を創出するキープレーヤーとして注目されている。(2023/10/11)

[7]ベンチャーサポートグループ、<老後資金と働き方調査>約8割の50代会社員が「老後の生活費が不安」と回答!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000060.000102050.html
全国の50代会社員 男女1,004人を対象に「老後資金と働き方」に関する調査を実施。具体的な不安として「物価上昇に伴う老後の必要資金の変動」「年金での生活」などの声が上がった。(2023/10/11)

[8]Upmind、東京大学との共同研究で、アプリでの瞑想の実践がリラクゼーション・感情コントロールに有意な効果があることを新たに確認(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000083261.html
メンタル不調のない労働者を対象にした研究成果であり、マインドフルネス瞑想の習慣化によるメンタルヘルス不調の予防への活用が期待できます。(2023/10/11)

[9]Hakuhodo DY Matrix、100年生活者研究所:食欲の秋を前に「100年生活者調査~食事編~」を実施(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000117890.html
20-80代の男女728名を対象に人生100年時代の幸福と食事の関係性を明らかにする意識調査を実施。100歳まで生きたいのは食事で小さな幸せを感じる“幸福体質”の人!食を通して幸せになる各シーンを分類した「5つの幸せレシピ」を紹介。(2023/10/12)

[10]ステディジャパン、スマートに有酸素運動を習慣化できる「STEADYスピンバイク Plus」を販売開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000046.000044477.html
累計13,000台超の販売実績を誇る人気製品「STEADY スピンバイク」の静音性&シームレスな負荷調節はそのままに、バーチャルサイクリングアプリとの連携、機能性と美しさを両立したデザイン性、最大120分の長時間稼働の3つを“Plus”した進化モデルが誕生。(2023/10/12)

[11]Emma Sleep Japan、ドイツ発スリープテック・ブランドEmma-The Sleep Company、睡眠負債国の日本 効果的なパワー・ナップ手法に関する研究(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000070849.html
Emma-The Sleep Companyでは、効率の良いパワーナップ(仮眠)を研究、提唱することで、十分な睡眠を取りづらい日本人の生産性と幸福感の向上に繋がるよう研究を進めている。その研究結果の一部を紹介。(2023/10/12)

[12]スリーアール、3秒スキャンの体脂肪計「BELLO ベロ」CAMPFIRE限定で特別価格に!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000074.000111100.html
「BELLO 体脂肪スキャナー ベロ」は、お腹にあてるだけで内臓から皮下の脂肪までを素早くキャッチする革命的な健康ツール。測定結果はリアルタイムでスマホアプリに表示。過去のデータとの比較やトレンド分析も行えます。(2023/10/12)

[13]東京大学、労働者の精神健康の保持・増進はどうあるべきか?6つの提言【PDF】
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400224241.pdf
https://www.u-tokyo.ac.jp/
本論文の研究成果、特に6つの提言は、これからの職場のメンタルヘルス対策の進むべき方向性を示すものであり、昨年発表されたWHOメンタルヘルス対策ガイドラインやILO/WHO政策ガイドとともに、職場のメンタルヘルス対策の研究および実践を推進する基盤となると期待されます。(2023/10/13)

[14]ヘルスケアビジネスの商機、どこにある?事業戦略に役立つ記事5選(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/marketing-case-231012-3
ヘルスケア市場への新規参入が相次ぐ中、自社は何を強みに戦うべきか?どの領域を狙うべきか?参入済みの企業も、これから参入する企業にも役立つ、ヘルスケアビジネスの商機が見えてくる記事をピックアップ。(2023/10/13)

[15]CyberneX、イヤホン型脳波計 XHOLOS Ear Brain Interfaceシリーズに耳を塞がない貼り付け式の新モデル「XHOLOS Free」が新登場
https://www.cybernex.co.jp/news/2sq22p5o
XHOLOS Ear Brain Interfaceシリーズは、外耳道などから脳波をはじめとする生体情報を取得できるBCIデバイス。従来の脳波計が持つ、装着時の不快感や動作の制約といった課題を解決し様々なシーンで脳波の測定を実現します。(2023/10/16)

[16]リグア、血行促進でビジネスマンを支えるウェルネススーツ「WWS Health+」の先行販売を開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000019838.html
累計22万着を売り上げ1,900社が導入、WWSの大ヒット商品「スーツに見える作業着」シリーズの新レーベル「WWS Health+」が立ちあがりました。WWSの革新的なスーツ型作業着の機能はそのまま、IFMC.による血行促進機能がプラスされています。(2023/10/17)

[17]JAPAN WELLNESS INNOVATION、「Fitness Monsters(フィットネス・モンスターズ)」が機能拡張して本日アップデートリリース!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000048634.html
あなたが「動く」とモンスターが成長する!「FITNESS MONSTERS」は日々の運動をゲームの要素と融合させ、ユーザーがポイントを獲得しながら、独自のモンスターキャラクターを育てることができるフィットネスアプリ。(2023/10/17)

[18]『mHealth Watch』注目ニュース:多言語対応アプリが高齢者の認知能力を向上
https://mhealthwatch.jp/global/newsd20231023
日本だけが超高齢社会に突入と思ってしまうことがありますが、先進国の多くが高齢社会を迎えることとなり、その対応策が次々と打ち出されてきています。今回発表された『Ami』は、ゲームで多言語を使うことで、脳活性を図るというものです。(2023/10/23)



+++★デジタルヘルス解説動画(オーサー 渡辺武友)★+++

【デジタルヘルス・ビジネスの疑問解消!】
デジタルヘルスのビジネスに関わる人に役立つ情報をお届けします。

第25回 デジタルヘルス躍進に向けた国際標準化(ISO規格)活用(6分19秒)
https://youtu.be/NXtQ1IyLkaU