こんにちは。脇本和洋です。

本メルマガでは海外のヘルスケアサービスの最新動向をチェックしています。
今回は、本編の1月~6月号から注目動向を振り返ってみましょう。

特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編

今年前半を「2つの視点」で振り返る

本編の今年前半では、

  • 大手食品会社「Medifast」の環境変化対応
  • 大手ドラッグストア「Walgreens」の提携戦略
  • 米国法人向け「Wellable」ウェルビーイングプログラム
  • 「WHOOP」に見るサービスを組み合わせた販売方法
  • 競合に負けない継続率の高いサービスを作る方法
  • 新年度スタートダッシュを成功させる企画作成3ポイント

といった内容でお届けしました。
お読みいただけましたでしょうか。


今回はその中でも、お問い合わせやご質問に答える機会の多かったテーマを2つ選び、深めてみます。


※参考>本編のバックナンバー
https://healthbizwatch.com/author-cat/wakimoto

注目テーマ1)「WHOOP」に見るサービスを組み合わせた販売方法

本編2月号でとりあげたのは、WHOOPというリカバリー度を測定する機器を販売する企業でした。

・WHOOP
https://www.whoop.com/us/en/
サービス開始2012年、売上150億円(IncFactによる推定、1ドル150円換算)


■2月号の要約

  • WHOOPのミッションは「アスリートのパフォーマンスを最大化すること」
  • アスリート向けに日々のリカバリー状態の測定に基づくチェックとソリューションサービスを提供する
  • チェックでは、睡眠(量・質・負債)、リカバリー度(心拍変動を測定)などの測定記録ができるデバイスを提供する
  • ソリューションサービスは、WHOOP Coachという生成AIを活用した個別性の高いパーソナルコーチングなどを提供する
  • アドバイスでは、顧客のリカバリーデータ、WHOOPの独自アルゴリズム、最新のパフォーマンス研究などをChatGPTに学習させ、回答を作る

※本編2月号
https://healthbizwatch.com/column/hbw-1074


■なぜ、米国では生成AIの活用が注目されているのか?

ヘルスケア分野での生成AIの活用は、まだ黎明期と言えます。
WHOOPは、その先陣を切ってヘルスケアサービスに応用しはじめています。
ChatGPTを開発したOpenAIのサイトでも紹介されています。

※参考>OpenAI のWHOOP紹介
https://openai.com/index/whoop/


生成AIの進化はとても速いです。
これからヘルスケアサービスにもっと応用されていくでしょう。

実際、WHO(世界保健機構)がテスト的に生成AIを活用した健康アドバイスを提供しはじめています。
この事実が米国での生成AI活用ヘルスケアサービスを加速させる一因と予想しています。

※参考>(ヘルスビズウォッチYouTube)WHO、生成AIを使った健康アドバイス「SARAH」をリリース
https://youtu.be/eJBtZkVSx4g

注目テーマ2)米国法人向け「Wellable」ウェルビーイングプログラム

本編6月号でとりあげたのは、Wellableという法人向けの健康サービスを提供する企業でした。

・Wellable
https://www.wellable.co/
設立2013年、売上32億円(Growjoによる推定、1ドル150円換算)


■6月号の要約

  • 米国では法人向けの健康サービスが「ウェルビーイング」という切り口でサービス提供を本格化させている
  • Wellableは、健康セミナー、フィットネス動画、ヘルスコーチングサービスを提供する
  • 特長は「ウェルビーイング」を意識していること。例えば、Personal Wellness Assessmentというサービスは、健康の8つの主要な側面(身体的、感情的、経済的、社会的、知的、職業的、環境的、スピリチュアル的)で評価でき、個人で使うとともに、組織としての分析にも使われている

※本編6月号
https://healthbizwatch.com/column/hbw-1090_


■なぜ、米国の法人向け健康サービスは、ウェルビーイングプログラムへ移行しているのか?

米国の法人向けプログラムは、ディジーズマネジメントプログラム(重症化予防が主目的)、もしくはウェルネスプログラム(疾病予防が主目的)といった切り口で語られることが多かったです。

しかし近年、米国法人向け健康プログラムの提供価値は単に健康になるだけでなく、従業員の満足度と幸福度を高め、「生産性の向上」につながることが強調されています。

特に、米国法人向け健康サービスの大手である「VirginPulse」がウェルビーイングを切り口にサービスを提供していることが、他社にも影響を与えています。


■ウェルビーイングプログラムの解釈とこれから

ウェルビーイングプログラムには、身体の健康と心の健康以外に、社会的健康と経済的健康が加わると考えるとよいでしょう。
この基本的な考え方のもと、各社が名称や内容をアレンジしながらサービス提供しています。

Wellable以外でも例えば、WellStepsという企業は現時点では身体の健康を促すサービスが中心ですが、サービスのフィロソフィー(基本的な考え方)として6つの切り口(身体の健康、心と感情の健康、栄養と健康、職業の健康、経済の健康、社会の健康)で捉えています。
今後はサービスを拡充させていくと思われます。


米国では法人向け健康サービスは、単に健康になるという価値ではなく、生産性の向上(これは企業ごとに具体的な価値として設計が必要と思われますが)にいかに結びつくか、そのためにウェルビーイングという切り口に変わってきています。

2つの注目テーマの共通点

今回の2つの注目テーマ、いかがでしたでしょうか。
テーマとしては全く違っていましたが、その共通点もあります。
それは一つ上の価値を提供しているということ。


例えば、WHOOPの価値は「アスリートのパフォーマンスを最大化すること」。
従来の多くの機器は「測定して気づきを与える」といった価値でした。
生成AIを活用しサービスを組み合わせて、一つ上の価値を追求します。

また、Wellableなどウェルビーイングを意識したプログラムを提供する法人向けヘルスケアサービス企業の多くは「企業の生産性を高めること」を意識しています。
従来の法人向けサービスの多くは「健康になる」という価値でした。
これも一つ上の価値を追求しています。


市場が拡大し飽和段階に達すると、小さな改善改良では埋もれてしまいます。
一つ上の価値を追求し、価値を実現するための新しいサービスを提供していることは、日本でも参考になるのではないでしょうか。

健康ビジネスキーワード

「新しい消費者像」

ネット社会にあってヘルスケア消費者をどう捉えていくか?
これは事業をスケールさせていく上で重要な枠組みの一つです。

どう捉えるべきか?
我々が提案するのは、セルフ・エデュケーション・バイヤー(自ら学ぶ消費者)です。

顧客が賢くなっていくプロセスに寄り添うコミュニケーションデザインが必要です。
提供しているヘルスケアサービスにこの考え方が用意されているか否か、貴社ではいかがでしょうか?

今週の注目記事クリップ

[1]オムロン、働くひとの健康を創るiCAREとの資本業務提携契約締結について
https://www.omron.com/jp/ja/news/2024/07/c0703.html
両社の強みを最大限に発揮することで、データを活用した健康経営領域での革新的なソリューションの創出を目指します。(2024/07/03)

[2]SOMPOインスティチュート・プラス、健康行動の手前の準備状況をPHRサービスで把握する~OKI 睡眠習慣改善ソリューション「Wellbit(TM) Sleep」の場合~
https://www.sompo-ri.co.jp/topics_plus/20240703-12895/
民間企業からも、健康行動の手前のプロセスから準備性を評価し、働きかけに活用するサービスが現れてきている。今回は、沖電気工業(OKI)の睡眠習慣改善ソリューション「Wellbit(TM) Sleep」に着目する。(2024/07/03)

[3]ZaPASS JAPAN、「コーチングのイメージ調査」を実施
https://zapass.co/news/240703
コーチングは怪しい?ネガティブなイメージを持つ人がいる一方で、コーチング利用経験者の約7割が仕事でのパフォーマンス向上に効果を感じたと回答。(2024/07/03)

[4]メタジェン、「AIによる腸内環境評価システム開発」が成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)に採択されました
https://metagen.co.jp/2024/07/03/20240702-0928/
Go-Tech事業は、中小企業者等による精密加工、表面処理、立体造形等のものづくり基盤技術及びサービスの高度化を図ることを目的として、中小企業者等が大学・公設試等と連携して行う研究開発および事業化に向けた取組を支援するもの。(2024/07/03)

[5]日本インフォメーション、不眠大国ニッポンの最新睡眠事情「睡眠に関する調査」(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000076.000048646.html
睡眠に関する意識と実態を徹底調査!今回はコロナ禍の影響も詳細に分析。10代~50代の平均睡眠時間は6.4時間。コロナ禍より睡眠悩みは微増傾向、など。(2024/07/03)

[6]インテグリティ・ヘルスケアと沢井製薬、医療機関における生活習慣病管理を支援する「生活習慣病管理療養計画書作成支援プログラム」をPHR管理プラットフォーム「Smart One Health」でサービス提供開始
https://www.integrity-healthcare.co.jp/news/press/phrsmart-one-health_240703
本プログラムを活用することで、医療機関は各種ガイドラインに対応しつつ、患者と合意した内容で療養計画書を効率よく作成することが可能になる。(2024/07/03)

[7]ソニーネットワークコミュニケーションズ、ネットワーク常時接続ウェアラブル端末&ヘルスケアクラウドソリューション「mSafety(TM)」にクイックサービスインを実現するアプリをソリューションに追加(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001442.000000196.html
「mSafety」は、心拍数や歩数の取得、GPSによる位置情報の取得、ユーザの行動検知、睡眠や消費エネルギーの推定、簡易メッセージ受信といった様々な機能を搭載しています。(2024/07/03)

[8]ACCELStars、住友生命保険相互会社との事業共創推進に向けてCVCからの出資受け入れ
https://www.accelstars.com/news/2024-07-04.html
東京大学医学部発のMedical Sleep TechスタートアップであるACCELStarsは、住友生命保険相互会社のCVCファンド「SUMISEI INOVATION FUND」から出資を受け、睡眠習慣改善サービスの開発に向けた事業共創を進めていきます。(2024/07/04)

[9]Zepp Health Corporation、Amazfit、世界初 米OpenAI社最新AIモデル「GPT-4o」を統合した音声操作サービスZepp Flow(TM)開始!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000053.000086476.html
Zepp Flow(TM)の導入により、Amazfitブランドの一部のスマートウォッチを自分の指で操作することなく、ユーザーは音声で操作し、より直感的かつ効率的に目的の動作を実施できるようになります。(2024/07/04)

[10]睡眠ヘルスケア協議会、睡眠サービス・製品の「質の見える化」へ。エビデンスを評価する「スリープサポート認証制度」を開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000137392.html
本制度に関わる活動を通じ、ヘルスケア分野において、消費者が科学的根拠に基づく信頼性の高い睡眠商品、睡眠サービスを選択できるようになることを支援します。(2024/07/08)

[11]Welby、「第6回 Welby Lunch Session」無料オンライン開催
https://welby.jp/category/news/240708101000.html
開催日は、2024年7月24日(水)。演題「デバイス連携によるPHRデータの価値とオムロンヘルスケアのデータサービス事業」。(2024/07/08)

[12]笹川スポーツ財団、生成AIChatGPT-4oの“evidence based policymaking”への貢献可能性
https://www.ssf.or.jp/knowledge/spi/42.html
本稿では、生成AIの代表格であるChatGPTの最新版ChatGPT-4oのアップデートされた機能の一つである高度なデータ分析の実行結果と従来型の人によるデータ分析結果との比較評価を試みた。(2024/07/09)

[13]パソナグループ、『Awaji Well-being Week 2024』今秋開催
https://www.pasonagroup.co.jp/news/index112.html?itemid=5141&dispmid=798
ウェルビーイングをテーマにした複合型イベント『AWAJI WELL-BEING WEEK』は、「からだ」「こころ」「きずな」の3つのテーマを基にウェルビーイングを実現する様々なイベントを兵庫県淡路島にて開催します。(2024/07/09)

[14]ヘルスケア投資会社Altaris、Sharecareを5億1,800万ドルで買収
https://mhealthwatch.jp/global/news20240703-2
法人向けヘルスケアビジネス上場企業のSharecareは、ヘルスケア投資会社Altarisによる5億1,800万ドルの買収で正式契約を締結し、Sharecareは非公開化されることになる。(2024/07/03)

[15]Wellth、AIによる血圧のパーソナライズ予測機能を拡張
https://mhealthwatch.jp/global/news20240704-2
Wellthの新機能は同社の独自AIモデルを採用することで、ユーザーの血圧がユーザーと医療提供者が協力して設定した目標範囲を超えた場合にパーソナライズされたヘルスアラートを提供する。(2024/07/04)

[16]『mHealth Watch』注目ニュース:Fabric、WalmartからMeMDを買収
https://mhealthwatch.jp/global/news20240716
この買収により、Fabricは雇用主および保険者向けのサービスを拡大し、ビヘイビアヘルス戦略を強化するとともに、臨床情報および自動化サービスをMeMDに統合する。MeMDの医療専門家はFabricのネットワークに加わる。(2024/07/16)