こんにちは、渡辺武友です。
国内外のデジタルヘルスニュースをクリッピングするmHealth Watchの今年前半の注目ニュースから、今知っておくべきテーマ3つを特集します。

特集:健康ビジネス・マーケティング&収益化編

2024年前半のデジタルヘルス注目テーマTOP3

10年運営してきたデジタルヘルスニュースメディアmHealth Watch
毎週、里見と私、渡辺が執筆している注目ニュースも、今年前半で22本掲載してきました。
その中から、今特に知っておいてほしい注目テーマを3つピックアップしたので紹介します。

注目テーマ1:利用者増大!ダイエット薬「GLP-1」


・Noom、Livinitiをパートナーに『GLP-1 Comanion』を提供(1月22日掲載)
https://mhealthwatch.jp/global/news20240122-2

・CostocoとSesame、減量パートナーシップ・プログラムを拡大(5月7日掲載)
https://mhealthwatch.jp/global/news20240507


ヘルスケアの永遠のテーマである“ダイエット”で、ここ1年米国で最も注目されてきたのが減量処方箋薬「GLP-1」です。

元々は糖尿病治療で血糖値を抑えるためのものですが、ダイエット(減量)においても認可されたため、利用者が増大しました。
市場全般で品薄な状況が続き、既存のダイエットサービス事業が減収するほどのインパクトがありました。

「GLP-1」は、利用時は食欲を抑えることができるので体重減少に貢献してくれるのですが、そのタイミングで適切な食生活や健康行動を身に付けないと、投薬終了後にリバウンドしやすい課題があります。

そのため、既存のダイエットサービスを提供していた企業は、「GLP-1」に組み合わせたサービスを次々にリリースしてきました。
また、ヘルスケアへ新規参入したCostocoなども、「GLP-1+サポート」を売りのひとつとしています。

現在「GLP-1」はダイエットにおけるブームとなっています。
このブームをいかに活用するかが、ビジネス上の大きな要素となっています。

テーマ2:高齢者対応の強化


・岡山大学、歯の数が多く、嚥下機能が良好だと2年後の栄養状態が良好!(1月15日掲載)
https://mhealthwatch.jp/japan/news20240115-2

・スマートシャワーの新興企業Showeeがアクセシビリティに光を当てる(3月18日掲載)
https://mhealthwatch.jp/global/news20240318-2


先進国が次々と高齢社会に突入しています。
少し前は日本が突出している印象でしたが、今は多くの国で高齢者率が増加し、その対策も各国から打ち出されています。

ただし、製品開発を行うのは主に働く世代であり、高齢者当人ではないため、本当の困りごと、また高齢者当人も気付いていない課題などが少しずれていることもあります。

岡山大学は、口腔から健康長寿社会に貢献するため、予防歯科学分野を長年研究しています。
単に「歯を大切にしましょう」ではなく、健康長寿を害する原因を多角的に分析しています。

WHOが発表したように、オーラルヘルスが健康への重要性を増している中、具体的な観点を示せるのは大きなきっかけとなるでしょう。


別の視点として、後期高齢者でなくても、それこそ中高年層でも、少しずつ老化ははじまっています。
ちょっとした物忘れが日常の中で増えるのは普通のことと言えます。

生活に支障をきたす前に、段階的にデジタルを活かして支援できるような生活環境が望まれます。
そのような生活環境に貢献するのがカタルーニャのスタートアップShowee社です。

Showeeが提供するスマートシャワーは、現在は高齢者施設や病院などへ導入されているようですが、近い将来、一般家庭にも必要なものとなってくるでしょう。

テーマ3:テクノロジーで痛みを改善


・Samphire Neuroscience、生理痛解消に脳を刺激するウェアラブル(3月4日掲載)
https://mhealthwatch.jp/global/news20240304

・無害な刺激で神経性の痛みを解消するウェアラブル『Nerivio』(6月17日掲載)
https://mhealthwatch.jp/global/news20240617-2


コンシューマ向けのデジタルヘルスによるアプローチ領域は、大きく予防(予後も含め)と治療があります。

市場として新しいテクノロジーが受け入れやすいのは、傾向的に予防よりも治療の方だと考えられます。
特に緊急性の高いもの。つまりすぐにでも取り除きたい“痛み”です。

なぜなら、予防は利用者自身が自発的に永続的な行動をしなければならないからです。
例えば、新しいテクノロジーで、毎日装着して遠赤外線照射することで予防になると言われても、予防効果が実感しにくいと使用することを忘れやすくなります。

しかし、「今すぐ痛みを取りたい」「長年悩まされている」などの場合、新しいものであっても可能性があるなら試したくなりますし、治療効果を感じれば継続使用しやすくなります。

もちろん、新しいテクノロジーがすべて予防に合わないとは思っていません。
機能だけで継続効果があるものと、そうでないものがあると言えるのではないかと思われます。


今回紹介した2つの新たなウェアラブルは、どちらもすぐに解消したい痛みにアプローチしたものです。
取組内容を確認し、ぜひ参考にしてください。

健康ビジネスキーワード

「不特定から特定へ」

ヘルスケアのマーケティングは、全てではないが概ねマスマーケティングが機能しにくい。

マーケティングというと不特定多数の中からより多くの見込客を洗い出し、アプローチする術であるという考え方をしているのであれば、きっとその事業プレイヤーは多くの授業料を支払うことになるはずです。
ヘルスケア・マーケティングのど真ん中は「特定多頻度」だということが我々の結論です。

貴社のヘルスケアマーケティングは「特定」されていますか?

今週の注目記事クリップ

[1]花王、興味関心のある美容成分TOP3は、王道の「ビタミン C」「コラーゲン」「ヒアルロン酸」年代ごとの効果イメージの違いも明らかに【PDF】
https://www.kaobeautybrands.com/content/dam/sites/kanebo/www-kaobeautybrands-com/pdf/press-release/2024/20240626_release.pdf
https://www.kaobeautybrands.com/
花王株式会社 ビューティリサーチ&クリエーションセンターは、「顔の肌」のための美容成分に関する調査を実施。全年代で興味の高い「ヒアルロン酸」について、研究員から基礎知識をご紹介。(2024/06/26)

[2]ライフログテクノロジー、「ジーンクエスト ALL」遺伝子×「カロミル」食事データ連携 およびその有用性についての検証を実施
https://www.calomeal.com/pressrelease/20240626.html
遺伝的タイプと食事データを掛け合わせ、より個人に合わせた食事メニューの提案などを目指す。(2024/06/26)

[3]キューサイ、心身の不調は30代から始まる!?[第1回 全国ウェルエイジング調査]で明らかになった“食”の大切さ|約4,500人の健康実態を発表
https://corporate.kyusai.co.jp/news/detail.php?p=9827
結果報告第3弾の今回は、カラダ・ココロの健康を軸に理想と現実、そしてさまざまな不調の予防策となりうる、ウェルエイジングスコアが高い人が心掛けている食事の傾向を明らかにしていきます。(2024/06/26)

[4]特定健診58.1%、特定保健指導26.5% 実施率過去最高ー2022年度の特定健診・特定保健指導実施状況より(保健指導リソースガイドより)
https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2024/013163.php
厚生労働省は、このほど2022年度の特定健診・特定保健指導の実施状況についてまとめ、公表した。(2024/06/26)

[5]キリンビール、シフトワーカーが抱える睡眠課題の解決に向け、キリンビール工場で「睡眠改善プログラム」のテスト展開を実施
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2024/0627_02.html
安全な職場づくりに向けて健康課題を解決するため、今回ユーフォリア社がこれまでアスリートに向けて提供してきた睡眠改善サポートを応用したプログラムを実施し、従業員の睡眠習慣や睡眠休養感をサポートします。(2024/06/27)

[6]東京建物とキャンサースキャン、ハーバード大学発 キッチンで学ぶ生活習慣改善プログラム“Teaching Kitchen”国内オフィスで初実装
https://tatemono.com/news/20240627-2.html
本プログラムの実装により、従業員の健康意識向上に資する新しい教育機会の提供といった観点から、オフィス入居企業のウェルビーイング経営・健康経営をサポートすることを目指します。(2024/06/27)

[7]GO TO MARKET、オンライン診療の利用率は12.3%|オンライン診療の利用経験に関する調査(2024年6月)(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000042.000079977.html
オンライン診療の認知率は64.1%、オンライン診療の利用率は12.3%であった。オンライン診療の利用経験者のうち、89.2%がまた利用したいと回答、など。(2024/06/27)

[8]大和証券グループとNECグループが連携し、ダイワのラップ口座契約者に将来の疾病リスク予測検査を提供
https://foneslife.com/news/20240628-1/
ダイワのラップ口座をご契約されており、一定の条件を満たすお客様を対象に、NECグループのフォーネスライフが提供する将来の疾病リスク予測サービス「フォーネスビジュアス」を特典として付与する取り組みを実施いたします。(2024/06/28)

[9]NECソリューションイノベータ、「人的資本レポート2024」を発行
https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/topics/20240628/
人的資本経営の推進体系を確立、社員のWell-being向上に向け「健康」「成長」「働きがい」に注力、人的資本経営の高度化に向けた全社横断WGの設置とKPIを設定、など。(2024/06/28)

[10]エミナルクリニック、理想のスタイル調査:約6割がセルフダイエットでは理想のスタイルを実現できないと回答!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000127.000053998.html
ダイエットでリバウンド経験のある20代~40代女性を対象に「理想のスタイル」に関する調査を実施。今後取り組んでみたいことは「食事の見直しや栄養学の学習(54.4%)」が最多。(2024/06/28)

[11]エーテンラボ、アプリで孤独・孤立を解消|ピアサポートアプリ「みんチャレ」がユーザー数150万突破
https://a10lab.com/press-20240701/
2024年4月に「孤独・孤立対策推進法」が施行され、「社会的孤立」が社会課題となっています。アプリ「みんチャレ」では、地域社会や個人における孤独・孤立問題の解消を目指し、ユーザーが自らの行動を通じて支え合える仕組みを提供します。(2024/07/01)

[12]メドピア、データ・AI活用で特定保健指導の対象者を減らす
https://medpeer.co.jp/press/13375.html
フィッツプラスとライフログテクノロジーが第4期アウトカム評価に対応した「リバウンド防止プログラム」を共同開発し、生活習慣の改善を強力サポート。(2024/07/01)

[13]メディカルスイッチ、スギ薬局の先端DX店舗へ服薬支援ロボット「FUKU助」を体験展示!カメラ搭載の新モデル(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000095607.html
FUKU助は、設定した時刻にお薬を出してくれる「服薬支援ロボット」です。ロボットの内部に最大31日分のお薬を収納することができ、服薬時刻になると音声と光で服薬を促して、1回分の薬を出してくれます。(2024/07/01)

[14]MEDEMIL、眼の動きから運転能力を測定する装置「MEDEMIL Drive(TM)」先行受注発売開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000145113.html
装置のゴーグルの中をわずか90秒ほど覗くだけで、運転に必要な眼の機能だけでなく、脳の機能(認知・注意力・判断力など)を複合的に評価し、運転能力をスコア形式で定量的かつ高速・簡便に測定できます。(2024/07/01)

[15]インターネットインフィニティ、仕事と介護の両立支援サービス『わかるかいご Biz』2025年度:育児・介護休業法改正対応にも活用できる新機能をローンチ【PDF】
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6545/tdnet/2470285/00.pdf
https://iif.jp/
2025年4月施行となる育児・介護休業法改正対応にも活用できる、従業員の「介護リスク度診断」機能と、診断結果にあわせて必要な知識が得られる「e ラーニング」機能の提供を開始しました。(2024/07/02)

[16]『mHealth Watch』注目ニュース:ラントリップ、”走るだけ”で安く買える!? RuntripマイルをECクーポンと交換
https://mhealthwatch.jp/japan/news20240708
今回注目したのはランニングアプリで、ランニングを計測することで走った分のECクーポンがもらえ、そのクーポンがランニングシューズなど、ランナーのニーズに応えた賞品と交換できる機能が追加されたというニュースです。(2024/07/08)