[ヘルスコーチングの視線編]ヘルスコーチングの可能性を探る:ヘルスコーチングをヘルスケアサービスに取り入れる時の大きな誤解:その2
こんにちは、里見です。
ヘルスコーチングは、コミュニケーションを通して健康行動にフォーカスをし、行動の継続を促し、健康的な行動変容を支援していきます。
このヘルスコーチングを、ヘルスケアサービスに取り入れていく際に起こりやすい誤解について、前回からお伝えしております。
今回は「その2」として、引き続き解説をしていきたいと思います。
特集:ヘルスコーチングの視線編
前回、ヘルスケアサービスにヘルスコーチングを取り入れていく際に起こりやすい誤解として、以下の3つについて解説しました。
誤解1:ヘルスコーチングは生活習慣病の予防につながる
誤解2:ヘルスコーチングで継続支援は十分
誤解3:「人」によるコミュニケーションが必須
今回は続きとして、新たに4つの誤解について解説します。
誤解4:ヘルスコーチングは万人に効果的
ヘルスコーチングは、ある程度行動を起こそうとしている人達に向けたコミュニケーションに適していると言えます。
逆に、少しでも変えたい、今よりちょっと良くなりたいと自ら思っていない人には、効果的なコミュニケーションとして成立しません。
なぜなら、ヘルスコーチングでは「対象者」が中心であって、ヘルスコーチは伴走者だからです。
そのため、「健康」に対してそれほど身近に感じてくれていない行動変容のステージでいう「無関心期」の人に対しては、なかなか響かないものです。
この行動変容のステージの「無関心期」の人達をどうにか動かしたい、どうにか取り組みに参加させたいといった要望は、BtoB向けのサービス、特に企業、職域、団体向けのサービスを提供している現場で、質問を受ける機会がよくあります。
興味関心を持ってもらうための仕掛が必要な「無関心期」や、行動への一歩を踏み出すためのアプローチが必要な「関心期」の人達に向けては、入り口としてはヘルスコーチングとは別のアプローチ、手法を使う必要があります。
対象者自らの行動でしか、目標、ゴールを手にすることはできません。
その行動の継続をサポートするのがヘルスコーチングのアプローチだから、少しでも変えたい、今よりちょっと良くなりたいと自ら思っている人、動き出そうとしている人に適したコミュニケーションと言えるのです。
誤解5:ヘルスコーチングはメンタル不調にも効果的
ヘルスコーチングでは、ゴール、目標に向かって具体的な行動にフォーカスして、継続的に具体的な取り組みの会話を繰り返していきます。
そのため、ある程度行動を起こそうとしている「0地点」から上のプラスの領域の人達に向けたコミュニケーションに適していると言えます。
メンタル不調のケースの場合には、問題点にフォーカスして問題を取り除くといった視点がまずは必要となり、問題点を取り除いて「マイナス」から「ゼロ」に戻すアプローチが優先されます。
このようにヘルスコーチングは、メンタルの問題解決に適したコミュニケーションではありません。
メンタル的なテーマを扱うケースでは、やはりカウンセリングのコミュニケーションのほうが適していると言えます。
一般的なコーチングでも、メンタル的に問題、課題を抱えている人は「アンコーチャブル(コーチしてはいけない人)」に分類し、対応せずカウンセラーなどの専門家に引き継ぐことがルール化されています。
しかし、米国などのヘルスケアサービスを見ていると「メンタルコーチ」「メンタルコーチング」といったサービスを見かけることがあります。
この「メンタルコーチ」「メンタルコーチング」では、問題を取り除いて改善するための「行動」にフォーカスして、継続的にコミュニケーションを通してサポートしていたりします。
このように、「問題」にフォーカスするのではなく「行動」にファーカスして改善するアプローチであれば、ヘルスコーチングとしても対応可能です。
誤解6:フィードバック=褒めること
この誤解は、比較的健康関連の専門家、特に現場を経験されている方々に起こることが多いです。
本来「フィードバック」とは、自分を映す「鏡」のようなものなのです。
鏡を見ることによって状況を確認し、改善するポイントを見つけて、それを修正して、再度修正した結果を確認するといったサイクルを、ありのままを映してフィードバックしてくれる鏡を利用して、常に「確認」→「改善」→「確認」するサイクルで良くなるように活用していくものです。
だから「フィードバック」は、「鏡のようなフィードバック」が本来のフィードバックの基本形で、まずは客観的事実を伝えるといったスタンスが必要です。
健康専門家の中には、「承認や共感を伝えなくては」などと意識し過ぎてしまったり、フィードバックしようにも対象者のマイナス面、負の部分しか見当たらずフィードバックの言葉選びに困ってしまうということをよく聞きます。
また、健康専門家の中には「なにか格好良いことを言わなくては」「気の利いたアドバイスをしなくては」といった、対象者を上からの目線で見ているといったことも背景にあるのではないかと感じています。
誤解7:ヘルスコーチングでは教えない
「ティーチング(教える)」と「コーチング」の大きな違いは、誰が「主体」であるのか、そして「伝え方」だと考えています。
ヘルスコーチングの領域では、間違ったやり方や身体にとって悪影響を与えてしまう行動に結びつかないように、しっかりとした導きである「ティーチング」的な要素が必要になってきます。
しかし、ここでいう「ティーチング(教える)」的要素とは、「教える」「指導する」ということではなく、あくまでも対象者の正しい知識の習得やリテラシーの向上のためのニュートラルな情報提供であって、目標に向けて行動に取り組む際の「選択支援のための情報提供」という位置づけになります。
主体はあくまでも対象者側であることが基本で、対象者の行動を支えるために、ヘルスコーチ側は情報提供や気づきを与えながら寄り添うコミュニケーションを取っていくことがヘルスコーチングなのです。
ヘルスケアサービスにヘルスコーチングを取り入れていく際に起こりやすい誤解について、前回と今回で合わせて7つ解説させていただきました。
まだまだ起こりやすい誤解はたくさんあると思います。
もし、前回と今回お届けした内容を含めて、ヘルスコーチングについてご不明な点などあれば、お気軽にご質問ください。
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「戦略立案も大切だけど」
学びを活かす力をつけることが重要。
全くの無計画・無戦略を良しとはしないのですが、考えすぎはもはやマイナス機能する可能性が高い。
あまりにも完璧を目指す計画立案は、行動に移した時の現実ギャップの差が大きい。
大きければ大きいほどダメージを多く受けます。
これは物理的な差と考えてもよく、大きいギャップの修正より小さい修正の方が楽なはずです。
どう修正するか?どう学びを活かすか?の力がこれからの実力の本質になっていきます。
今週の注目記事クリップ
[1]国立成育医療研究センター、「コロナ×こどもアンケート」第6回調査報告
http://www.ncchd.go.jp/press/2021/211117.html
第6回調査は、全国的に感染者数が多くなった第5波を受けて緊急で実施し、学校生活や新型コロナワクチンなどに関する捉え方に焦点をあてて調査。その結果、「学校に行きたくない」と感じているこどもが38%いることが分かった、など。(2021/11/17)
[2]森永乳業、全国一斉「大腸環境」実態調査 2021年 第2弾「便秘のタイプ」篇
https://www.morinagamilk.co.jp/release/newsentry-3801.html
47都道府県の20-59歳の男女1万人超を対象に調査。4割以上が大腸の不調を実感、最も多い大腸の不調は「便秘」。女性の4人に1人が便秘で悩んでいる結果が明らかになった、など。(2021/11/17)
[3]資生堂、進化した「Second Skin」技術で化粧品の枠を超えたビューティーケアへ
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003258
「Second Skin」技術をさらに進化させ、新たに「頬のたるみ(ほうれい線・マリオネットライン)の即時形状補正効果」「連用によるたるみ・シワ改善効果」「薬剤浸透促進効果」など、メイクアップ効果に留まらない価値を創出。(2021/11/17)
[4]東レエンジニアリング、手軽に精度の高い筋疲労計測を可能にした新たな生体計測装置「μ-CAS」を開発
https://cs2.toray.co.jp/news/tek/tek_newsrrs01.nsf/0/65B5D488F63994524925878E00300FF7?open
「μ-CAS」は、むくみを伴う筋疲労の計測が可能な生体計測装置。むくみによって生じる「生体インピーダンス」(電気抵抗)の変化を検知することで筋肉の疲労を手軽に高い精度で計測できる。(2021/11/17)
[5]ブレインスリープとLAVA International、睡眠の質向上に特化したヨガプログラムの共同開発・効果検証を実施
https://brain-sleep.com/news-info/934/
今回開発した「至福の睡眠ヨガ」が「黄金の90分」における深い睡眠の時間を増加させるなど、睡眠の質向上に寄与することが確認された。「至福の睡眠ヨガ」は、LAVAのオンラインヨガサービス「うちヨガ+」にて提供。(2021/11/17)
[6]アジャイルウェア、社員の運動習慣を促進する福利厚生サービス「KIWI GO」リリース
https://agileware.jp/press/2021_1117/
「KIWI GO」は、楽しく少しずつ従業員の運動を促し習慣化できるスマホアプリ。アプリとスマートバンドで運動を自動記録。行動科学に基づいた仕組みで無理なく運動を続けるとともに、社員同士のコミュニケーションも活性化できる。(2021/11/17)
[7]カーブスジャパン、東北大学加齢医学研究所と共同研究を開始【PDF】
https://www.curves.co.jp/press/pdf/p20211117.pdf
https://www.curves.co.jp/
サーキットトレーニングがスマート・エイジングの4条件(運動・栄養・社会性・認知)に及ぼす影響を包括的に検証する共同研究。従来研究対象だった「認知的健康」に加えて、新たに「身体的健康」「社会的健康」「精神的健康」に及ぼす影響を検証する。また、新たに「男性」も研究対象とする。(2021/11/17)
[8]時代の最先端はボーダーレス、“区切らない”商品・サービス・プロモーション事例(ウーマンズラボより)
https://womanslabo.com/category-news-market-211117-1
今回は、市場のボーダーレス化を象徴する具体的なトレンドキーワードを4つ(ジェンダーニュートラル、ノーマライゼーション、フェーズフリー、エコフレンドリー)紹介。(2021/11/17)
[9]パナソニック、「空間見える化ソリューション」を発売
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2021/11/jn211118-1/jn211118-1.html
空間見える化ソリューションは、空間内に人・環境センサを最適配置することで、空間の混雑度、温度、湿度、CO2濃度などを計測し、データとして提供するサービス。オフィスや施設の安心・快適な運用をサポートする。(2021/11/18)
[10]エーテンラボ、習慣化アプリ「みんチャレ」で神奈川県の子ども食堂に野菜飲料を寄付!高齢者のフレイル予防継続が子どもの食支援につながる(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000080.000024217.html
神奈川県とともに「フードバンク」や「子ども食堂」等の子ども達への食支援活動をサポートする寄付プロジェクトを開始。アプリを通じた地域貢献活動で、未病対策の意欲を高める。(2021/11/19)
[11]ネオファースト生命、認知症保障保険「認知症保険 to スマイル」を発売【PDF】
https://neofirst.co.jp/cms/news/pdf/2021/2111220001.pdf
https://neofirst.co.jp/
「歯の健康度」と認知症リスクの関係がさまざまな研究で明らかにされていることに注目し、業界初「歯の健康度」による保険料割引の仕組みを導入。また、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)も保障。(2021/11/22)
[12]コト、呼吸のリズムを可視化するスマートデバイス「ZenTracker(仮称)」を開発
https://www.koto.co.jp/?p=588
ZenTrackerをウェストに挟みスマホ専用アプリと接続。着用後すぐに呼吸状態を確認することができる。あとは、デバイスのことは忘れて日常生活を楽しむだけ。ZenTrackerが呼吸の深さ、呼吸数、無呼吸などの呼吸の乱れを記録し続ける。(2021/11/22)
[13]日本計画研究所、東京メトロの「eスポーツ事業戦略」
https://www.jpi.co.jp/seminar/15767
開催日は2022年1月13日(木)。なぜ、東京メトロが事業参入したのか。その経緯から、2021年6月にオープンした日本初の「eスポーツジム」及び2021年8月に実施した「eスポーツ大会」の実例等も踏まえ、今後の東京メトロのeスポーツ事業の戦略を語る。
[14]Appleの取締役会にJohnson & JohnsonのCEOが参加
https://mhealthwatch.jp/global/news20211119
Appleは、何年もの間iOSやWatchOSに健康に特化した機能を数多く投入するなど、健康とウェルネス分野への野望を公にしてきた。ゴルスキー氏をガバナンスチームの一員として起用したことは驚くべきことではない。(2021/11/19)
[15]Pelotonがコネクテッド筋力トレーニングシステム『Peloton Guide』を発表
https://mhealthwatch.jp/global/news20211122
Peloton Guideの495ドルという価格で手に入るのは、Guide本体(テレビに接続するカメラシステム)、心拍数バンド、リモコン。その他の筋力トレーニングに必要な器具は、ユーザーが用意することになっている。(2021/11/22)
[16]『mHealth Watch』注目ニュース:Ro、ダイエット薬『Plenity』が前年比1,500%になると予想
https://mhealthwatch.jp/global/news20211129
『Plenity』は、クラスII医療機器として2019年にFDA承認を受けた。利用者は製品の処方箋を受けるためRoの遠隔治療を利用できるが、同製品は薬ではないとGelesisは明確にしている。(2021/11/29)