[海外事例にみる継続支援アプローチ編]Agetechに見る社会的健康
こんにちは。脇本和洋です。
[海外事例にみる継続支援アプローチ編]では、海外の健康サービスのトレンドや注目事例を紹介するとともに、健康サービスの肝となる「継続支援アプローチ」を紹介しています。米国では、ここ数年で「Agetech(エイジテック)」という領域で資金調達を行う企業が現れ、注目されています。今回は、この領域から2つの注目事例を紹介しますので参考にしてください。
特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編
WHOの健康の定義では、身体的健康、精神的健康、そして社会的健康が重要とされています。シニアの健康を考える際に重視したいのが、この社会的健康です。
社会的健康とは、簡単に言うと「人とのつながり」のこと。特に男性の場合、退職し社会との接点が消えることで、社会的健康が急速に衰えます。
社会的健康が衰える(つながりがなく、孤独になる)とどうなるか?
米国のブリガムヤング大学の研究によると、寿命に影響を与える要因の1位は、なんと孤独なのです(ちなみに2位が喫煙、3位が過度の飲酒、4位が運動不足、5位が肥満)。
今回は、“Agetechに見る社会的健康”と題し、Agetech領域の中でも社会的健康を意識したベンチャー2社を紹介します。
事例1) Mon Ami:大学生との出会いで社会性を上げる
米国では、高齢者の孤独を防ぐために、話し相手やお手伝いの人をマッチングするビジネスが発達しています。代表事例としてはpapaであったり、Mon Amiだったりします。最初に紹介する事例は、マッチング対象を大学生に絞ってユニークなビジネスを行う「Mon Ami」です。
■Mon Ami, Inc.
https://www.monami.io/
■設立:2018年
■資金調達額:5.9億円(2021年12月時点)
■サービス概要
孤独感や認知症などを抱えている高齢者と大学生をつなぐマッチングサービス。買物同行や話し相手、趣味やゲームの相手といった社会的/感情的な補助とケアをする「コンパニオン・ケア」サービスを提供する。
■サービスの流れ
1:登録する
登録の際には、関心事や趣味といった情報も入力する。
2:依頼する
依頼内容は単に軽作業をするといったことではなく、話し相手になる、一緒に買物に行ったり散歩をする、といった孤独を埋めることが中心となる。
3:依頼内容、言語、趣味などが共通している大学生とマッチングされる
登録されている大学生は厳密な審査に合格しており、医療や社会福祉などの分野を専攻している学生もいる。また認知症といった特定の症状を持つ患者に対応するスキルを持っている場合もある。
■サービス継続の工夫
共通の趣味といった要素でマッチングされるので、高齢者も自分の興味や関心を若者と共有し、自慢できる。そのことが自己肯定感や存在意義を与え、サービス継続につながっていると思われる。
事例2) Rendever:VR旅行でコミュニケーションを増やし、高齢者施設内での社会性を上げるル系プログラムを追加
Mon Amiは、特に介護の必要がない人がターゲットでした。一方、介護が必要となり、高齢者施設に入った場合でも、施設内でのコミュニケーションがなく、そこでも孤立することは十分想定されます(特に男性)。
次に紹介するRendeverは、VR旅行を通じて施設内でのスタッフ・住人とのコミュニケーションを拡大し、つながりを深めることを狙ったサービスです。
■Rendever, Inc.
https://www.rendever.com/
■設立:2016年
■資金調達額:2億円(2021年12月時点)
■サービス概要
施設に入居する高齢者の社会的孤立を防ぎ、コミュニケーションを促進するためのVRプラットフォームサービス。複数の利用者が同時にVR体験をし、そこから感情の共有、会話といった社会性交流を促す。
■サービスの流れ
1:グループを作り、VRセットを配布する
2:ホスト役(施設スタッフなど)が、VR視聴メニューを決定する
メニューには世界の名所を見るコースだけでなく、カスタマイズしたバーチャルツアーが可能。他にも、ダイビングといったアクティビティ体験、バーチャルゲームなどが選べる。
3:利用者同士あるいは利用者とホストの間で会話をしながら視聴する
視聴番組によってはクイズなどがあり、受け身ではなくインタラクティブに楽しめる。
■サービス継続の工夫
単にVR番組を一人で見るというのではなく、そこから会話が生まれる簡単なクイズを用意するなど、ホストがコミュニケーションを促せるしかけを用意している。
社会的健康でもたらされる顧客感情とは?
今回の二つの事例からヒントはありましたでしょうか。
米国では、気軽に人に話しかける国民性があり、初対面の人でもすぐに打ち解ける傾向にあります。一方日本は、その逆です。
ですので、今回紹介した事例モデルを日本にそのまま持ってきて、うまくいくかは分かりません。このような場合、事例がもたらしている「顧客感情=本質」をヒントにすることをお勧めしています。
事例1の「Mon Ami」から導かれる顧客感情は、
- 若い人と出会えてうれしい。元気がでる
- 自分の得意なことを教えることができてうれしい
というもの。
また、事例2の「Rendever」から導かれる顧客感情は、
- 知っている場所や知識を自慢できるのでうれしい
というもの。
二つの事例の本質である、これらの顧客感情をヒントにサービス案を検討してみてはいかがでしょうか。 【脇本和洋】
参考>本編「海外事例にみる継続支援アプローチ編」をお読みの方へ
我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。
詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。
●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー
健康ビジネスキーワード
「便利以上の意味のあること」
かつてのモノ主導の時代では、役立つ便益を核とした「快楽」や「達成」が中心的な価値観でした。
今、精神的な要素に重きが移っていくうねりの中に私たちはいます。
便利より意味への価値観シフトが進んでいます。
国産車とポルシェの違いにあなたは何を見出すでしょうか?
ヘルスケアサービスも意味的価値へのアプローチが必要です。
今週の注目記事クリップ
[1]ヤフー、「どこでもオフィス」を拡充ー社員約8,000人それぞれが最適な働き方を選択することでウェルビーイングが向上ー
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2022/01/12a/
通勤手段の制限を緩和し、居住地を全国に拡大できるなど、社員一人ひとりのニーズにあわせて働く場所や環境を選択できる人事制度。(2022/01/12)
[2]アドバンテッジリスクマネジメントとポーラ・オルビスホールディングス、日本版Well-being Initiative参画企業間連携を開始
https://www.armg.jp/news/newsrelease/2022/0112
第一弾として、ポーラ・オルビスホールディングスの“me-fullness”プロジェクトのWell-being経営における有用性検証を、アドバンテッジリスクマネジメントのストレスチェック/エンゲージメントサーベイ「アドバンテッジ タフネス」を通じて実施する。(2022/01/12)
[3]健康博覧会×ウーマンズ、「ジェンダード・イノベーションEXPO~性差発想の女性ヘルスケア市場拡大を目指して~」を開催
https://womanslabo.com/info-220112-1
開催日は2023年2月8日-10日、東京ビッグサイトで開催される健康博覧会にて。性差発想の女性ヘルスケア/フェムテックに取り組む国内企業が一同に集結するBtoB展示会。(2022/01/12)
[4]国立成育医療研究センター、父親が家事・育児をする時間を確保するには、仕事関連時間を9.5時間以内にすることが必要
http://www.ncchd.go.jp/press/2022/211018.html
本研究では、子どもを育てている父親が家事・育児をする時間を確保するためには、長時間労働をどこまで是正すればよいのか、その一つの具体的な時間の目安を示すことができたと考えられる。(2022/01/13)
[5]canow、1つのIDでパーソナルデータを一括管理・提供できるID管理型ライフログサービス「mine」のビジネス検証を開始
https://canow-jp.com/2022/01/13/897/
ビジネス検証の第1弾として、母子健康手帳に記録されたパーソナルデータをIDに紐づけることにより、医療機関や介護施設などの別サービス利用時にIDに紐づいたデータを一括入力できる実証実験を進めていく。(2022/01/13)
[6]エーテンラボ、みんチャレ×禁煙補助薬で新たな禁煙サポートプログラム「みんチャレHealthcare 禁煙」を提供(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000083.000024217.html
企業・健康保険組合向け「禁煙支援事業」を開始。本プログラムは、参加者が禁煙補助薬でニコチン依存による諸症状を緩和するだけでなく、みんチャレを使って5人1組で禁煙の習慣化を目指す。(2022/01/13)
[7]Journey to Wellnessなど、業界初!現役医師監修“動画を送るだけ”の「低料金×気軽」なオンラインパーソナルトレーニングサービス「FitAgo!」(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000086093.html
アライメント(関節や骨の整列度合い)診断を基に、その整列度を改善する「運動を処方」する“完全非対面”のオンラインパーソナルフィットネスサービス。(2022/01/13)
[8]日本郵便とアインホールディングス、処方箋医薬品当日配送の実証開始
https://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2022/00_honsha/0117_02.html
アイングループの埼玉県行田市内の調剤薬局において、日本郵便が提供する配送サービス「ゆうパック」により、処方箋医薬品を当日配送する実証を行う。(2022/01/17)
[9]日本医療政策機構、こどもの健康に関する新しい世論調査の結果を発表ーこども家庭庁のこころの健康に影響する取り組みへの期待が高まるー
https://hgpi.org/research/ch-survey-2022.html
本調査では、2023年に新設予定の「こども家庭庁」において、特に取り組んでほしい課題について尋ねた。こどもの頃、学校でこころの健康に関して学べなかった60%以上が「学びたかった」と回答、など。(2022/01/17)
[10]東急スポーツオアシス×新宿プリンスホテル、栄養・運動・リラックスがギュッと詰まった1週間ステイ
https://www.sportsoasis.co.jp/co/news/info/det931.html
2月20日(日)から6泊7日のウェルビーイングな滞在型プログラム。管理栄養士による食事講座や新宿近辺を巡るランニングイベント、ホテル最上階でのヨガレッスンやパーソナルトレーニング等を体験できる。(2022/01/17)
[11]askenとDNS、筋トレやボディメイクに効果的な食習慣を身に付けるコラボチャレンジ企画を開催
https://www.asken.inc/news/2022/1/17
「人を進化させる。DNS×あす筋ボディメイクコース限定チャレンジ」は、筋力トレーニングやボディメイクに大切なたんぱく質の1日の摂取量を5日間「適正」にするチャレンジ。(2022/01/17)
[12]ファミリーマートと帝人、“コンビに”なって展開している「スーパー大麦」シリーズが2021年12月に累計販売数2億食を突破
https://www.family.co.jp/company/news_releases/2022/20220117_01.html
1月18日からは、“PFCバランス&腸活で選ぶ”おむすび「スーパー大麦入り 大豆ミートそぼろ・玉子・岩下の新生姜入り」を発売。スーパー大麦に加え、MCTオイルと大豆ミートが入ったおむすび。(2022/01/17)
[13]RIZAPなど、健康寿命延伸プラットフォーム事業の実証実験に採択
https://www.rizapgroup.com/news/press-releases/pr-20220118-01/
RIZAP・JDSC・ユカイ工学の3社合同で、健康寿命延伸サービスの構築と検証を開始。RIZAPは、筋力維持による健康増進・健康寿命の延伸を目指し、フレイル予防における結果の見える化と継続化を実現するプラットフォーム構築を実証していく。(2022/01/18)
[14]ヘルスケアシステムズ、全年代の7割でたんぱく質の目標量達成せずー第80回日本公衆衛生学会総会で発表ー
https://hc-sys.com/news/press-release/220118/
全国の20代~80代の男女を対象に1日あたりのたんぱく質摂取量を尿で測定し、各年代のたんぱく質目標量の達成率と、たんぱく質を目標量摂取できている人の生活習慣との関連性を調査。(2022/01/18)
[15]CES2022:この電球はユーザーの健康状態をモニターする
https://mhealthwatch.jp/global/news20220118-2
本製品は、心拍数、体温、睡眠の記録といった健康状態の測定ができるスマート電球。一見したところ最新のNest Hubと同様の機能を持ち、同様の技術を使用している。(2022/01/18)
[16]『mHealth Watch』注目ニュース:ウーマンズラボ 「60のウェルビーイング指標」による調査でわかった、幸福の実態
https://mhealthwatch.jp/japan/news20220124
今回注目するニュースは「ウェルビーイング」というワードに関して。最近は「ウェルビーイング」を提供価値に据える商品・サービスが多く出てきており「ウェルビーイング」というワードを目にする機会が多くなってきています。(2022/01/24)