HealthBizWatch Authorの大川耕平です。

前回の9月号では、ヘルスケアビジネスにおける日米ギャップの原因として、人口差、健康意識差、法律の違い、資金調達環境差という4つを取り上げ、これらを背景としつつも、日本が米国から即学び取り入れるべきは「顧客教育」であると述べました。

今回は、「顧客教育」の表現を少し変え「顧客学習コミュニケーション」とはどうあるべきかを考えます。

実は、何らかのヘルスケアサービスを事業展開しているとしたら、さほどの予算を使わずにして顧客との関係性=サービスパフォーマンス=売上に刺激を与える可能性が極めて高いのが「顧客学習コミュニケーション」なのです。

参考>第3回「日米ギャップからの学び」(2024年9月3日掲載)
https://healthbizwatch.com/column/hbw-1100

特集: ヘルスビズウォッチ特集企画

第4回:「顧客学習コミュニケーション」

日本独特「高コンテキスト文化」の落とし穴


日本は高コンテキスト文化であると言われます。

物事の背景や文脈などが高い割合で共有されているケースが多く、なんとなく意味が共有されていたり、なあなあで「言わなくても分かる」「なんとなくわかったつもり」でコミュニケーションが問題なく進んでいくという環境に我々は置かれています。
もともと、なあなあで説明不足が生じやすい環境にあると言えます。

それに加え、ヘルスケア領域の価値提供(モノ・サービス・情報)には、論理的にも科学的にも正しいことを行っているという認識があります。
そのため、「正しいから分かるはず」という思いを事業プレイヤーの多くが持ちます。

つまり、「説明不足×分かるはず」という回路が、サービスプロセスに無意識に組み込まれている場合があります。
そして、そのことに気づいていません。

ここを改善できたらどうなるでしょうか。


見込客と顧客に提供商品・サービスに関して今以上の理解のもとに楽しみながら価値を享受してもらい喜んでいただき、高い評価を与えてくれる循環が動き出すことをイメージしてください。

顧客学習コミュニケーションの目的は、自社サービスにおける「説明不足×分かるはず」という課題をポジティブに解決し、顧客との発展的な関係性を創出していくことにあります。
それにより、現状を打破することができます。

効果期待のアプローチ方法として

さて、顧客学習コミュニケーションはどのように進めていけばよいのでしょうか?

今回は、「モノ+サービス」でヘルスケア&ウェルネスサービス事業を展開しているケースを想定し、アプローチ方法のヒントを提示します。

  • アプリ+記録サービス
  • デバイス(機器)+サービス
  • 食品飲料(サプリ|代替食)+サービス

などを想定します。


「モノ+サービス」で展開される事業プレイヤーにとっての課題は

  • 利用者拡大
  • 利用頻度増加
  • 利用期間延長
  • 消費継続&拡大

をどう実現するかです。
それには、今以上の理解と期待から実践による満足向上へと導いていく必要があります。


先に配信した第2回「関係づくりから考えるヘルスケアビジネス」では、「関係の質→思考の質→行動の質→結果の質」という順序が重要であることを伝えました。


ご記憶の読者もいると思います。
今回は、この「関係の質」を「顧客学習コミュニケーション」という切り口でどうアプローチするか?になります。

関係の質を高めるためには、相互学習関係を創出していくことが実は結論となります。

顧客学習コミュニケーションのフレーム


顧客が学習しながら提供サービスの価値をより深く理解し、活用していく活動の場として(ステップとして)コミュニティ進化フレームである「共感→共有→共創」が適用できます。

顧客が自社提供商品サービスを理解して利用していくプロセスに「共感→共有→共創」のフレーム各ファクター現象が起きているかをチェックしてみましょう。


自社が提供している顧客向けのコンテンツをチェックしていくと、不足部分がはっきりと見えてきます。
今回は初歩的なアプローチとして「共感」「共有」の2つだけをチェックしてみてください。

「理解して感情が動き、仲間意識が生まれていく」ここまでのプロセスを経験できる可能性のあるコンテンツを提供できているでしょうか?

このような視点で自社コンテンツをチェックしたことは、多くの事業プレイヤーにはないはずです。
猛烈な違和感を感じても心配しないでください。
私が過去にサポートした企業全てが強烈な抵抗反応を示しました。

しかし、下記の対比を提示すると顧客関係性シフトの必要性に気づいていただけました。

■商品・サービスを売るサイト&コンテンツ
■商品・サービスをテーマとした利用者コミュニティ(仲間づくり)


この2つには大きなギャップがあることにお気づきください。

「モノ+サービス」事業プレイヤーのビジネスパフォーマンスを拡大していくためには、関係の質を高めていく方向として相互学習関係を創出していく。
そのためにコミュニティ進化フレームを活用することを提案します。


<コミュニティ進化フレーム>

「共感」感覚的に価値観やメッセージに同意賛同できる。
「共有」似た価値観を自分も大切にしていることに気づき同意する。仲間意識が芽生える。
「共創」自ら動き貢献したくなる。



いかがでしたか。

「顧客学習コミュニケーション」づくりのサポートが可能です。
必要であればお声掛けください。


●大川へのお声掛け、問い合わせや質問などがあればこちらへ(直接届きます)。
ディスカッションも大歓迎です!
https://healthbizwatch.com/consultation?athr=12
 

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「顧客学習曲線」

新たなサービスを購入し使用を決意した顧客は、サービスの使い方を学習して、その習熟度によって価値の享受レベル(満足度)や継続利用意向が変わっていきます。

この動きを曲線で表現したものが顧客学習曲線です。
自社の顧客がどのような曲線を描いてサービス利用をしているか?
貴方は把握できていますか。

今週の注目記事クリップ

[1]DeepWell DTxが治療用ビデオゲーム開発ツールでFDAの認可を取得(TechCrunchより)
https://techcrunch.com/2024/09/14/deepwell-dtx-receives-fda-clearance-for-its-therapeutic-video-game-developer-tools/
FDAの認可により、DeepWellのバイオフィードバックソフトウェア開発キットは市販用として承認され、患者はストレスや高血圧に対する他の治療の補助として同社のゲームを使用できる。(2024/09/14)

[2]Withings、『Sleep Rx Mat』がFDA 510(k)認可を取得(mobihealthnewsより)
https://www.mobihealthnews.com/news/withings-sleep-rx-mat-receives-fda-510k-clearance
コネクテッドヘルステクノロジー企業のWithingsは、自宅で睡眠時無呼吸症を診断するために設計された非侵襲性、非接触型デバイス『Sleep Rx Mat』がFDA 510(k)認可を取得したと発表した。(2024/09/16)

[3]23andMe、独立取締役が一斉に辞任(TechCrunchより)
https://techcrunch.com/2024/09/17/23andme-sees-independent-board-directors-quit-en-masse/
Sequoia CapitalのRoelof Botha氏やYouTubeのCEOであるNeal Mohan氏ら5名を含む豪華な取締役陣を失うことで、同社の株価はさらに下落するだろう。(2024/09/17)

[4]Hinge Health、Midi Healthと提携し、更年期ケアへのアクセスを拡大
https://mhealthwatch.jp/global/news20240918
両社は、女性が更年期障害に対処し、関節痛や筋肉痛など更年期に多くの女性が直面する筋骨格系の症状に対処するための総合的なアプローチを提供する。(2024/09/18)

[5]呼吸器疾患に特化した「スマート聴診器」開発のAevice Healthが資金調達、日本からも出資
https://mhealthwatch.jp/global/news20240919
シンガポールのスタートアップAevice Health社は、胸に貼り付けるだけで発作の初期兆候を検出するウェアラブルデバイス『AeviceMD』を開発。(2024/09/19)

[6]AI活用のスマートリング『RingConn』、米国市場で急成長。睡眠改善で需要高まる(36Kr Japanより)
https://36kr.jp/304020/
4万人の『RingConn』ユーザーのうち70%は35~55歳の米国人だ。装着すれば閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)のモニタリングと早期発見ができるため、この目的で購入するユーザーが多いという。(2024/09/19)

[7]世界のAIアプリ市場が急成長。売上高は北米、ダウンロード数はインドがトップ(36Kr Japanより)
https://36kr.jp/306335/
1~8月の世界のAIアプリのダウンロード数は前年同期比26%増の22億回で、売上高は51%増の20億ドル(約2,800億円)だった。24年通年の売上高は33億ドル(約4,700億円)に達する見込みだという。(2024/09/20)

[8]『mHealth Watch』注目ニュース:Elon Muskのニューラリンクデバイス『Blindsight』がFDAの画期的デバイスに
https://mhealthwatch.jp/global/news20240930-2
何かと話題のElon Musk氏によるヘルスケアへの取り組み、注目している方も多いと思います。今回紹介された『Blindsight』は、視力を失った人(最初から見えなかった人も)の視力を回復させるというものです。(2024/09/30)

[9]シミックホールディングス、米国・Moffitt Cancer Centerと国際的ながん臨床試験の推進を目的とした戦略的パートナーシップを締結
https://www.cmicgroup.com/news/20240918
本パートナーシップは、革新的ながん治療法の実現に向けたクロスボーダーな臨床試験の円滑化を目的としています。試験参加者の多様性を増やし、これまでにない新たな治療法の開発を加速することで、世界のがん研究をリードしていきます。(2024/09/18)

[10]アリナミン製薬、「ビフィズス菌で記憶の習慣」を新発売【PDF】
https://alinamin-pharma.co.jp/news/2024/09/assets/APC_Press_Release_20240918.pdf
https://alinamin-pharma.co.jp/
世界初、「脳に働きかける画期的なビフィズス菌 MCC1274」を配合した機能性表示食品『ビフィズス菌で記憶の習慣』を新たに発売することとなりました。(2024/09/18)

[11]GMOヘルステック、「無料」で医療プラットフォームを提供開始!
https://www.gmo.jp/news/article/9154/
金融システムで培った堅牢なセキュリティをはじめとするテクノロジーを医療分野にも活用することで、クリニック業務の省力化・自動化と患者さま中心の医療サービス提供の実現をサポートし、人手不足時代の持続可能な医療の実現とその発展に貢献してまいります。(2024/09/19)

[12]Mindbody ClassPass Japan、世界最大級フィットネス・ウェルネス・ビューティのサブスクリプションサービスClassPass開始(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000149049.html
ClassPassは世界30カ国で数万店舗のパートナーと提携しており、ユーザーはClassPass会員になることで、世界中のフィットネスジム・ウェルネス・ビューティ体験を利用できるサブスクリプションサービスです。(2024/09/19)

[13]ウィーメックス、遠隔医療システム「Teladoc HEALTH」が日本国内のマラソン大会で初導入
https://www.wemex.com/news/20240920_125.html
本大会では、北見赤十字病院が担当する美岬救護所に「Teladoc HEALTH」を設置することで、ゴール地点にある本部救護所で待機する同病院の医師との情報連携・遠隔支援に活用されます。(2024/09/20)

[14]亀田製菓、機能性表示食品『熱風焙煎 黒ごまチップス』新発売
https://www.kamedaseika.co.jp/news/20240920_22328/
亀田製菓が長年研究開発をしているお米由来の乳酸菌K-1を添加することで、日本の米菓・スナックで初めて「おなかの調子を整える」機能と「お肌の潤いを維持する」機能を表示した機能性表示食品です。(2024/09/23)

[15]MTG、神経筋電気刺激による大腿部及び臀部への刺激が自律神経活動に及ぼす影響の研究成果が『The Journal of Sports Medicine and Physical Fitness』に掲載
https://www.mtg.gr.jp/news/detail/2024/09/article_2294.html
臀部および大腿部に対する神経筋電気刺激は、血圧の上昇をともなわずに自律神経活動を変化させ、特に副交感神経に影響を及ぼすことが明らかになりました。(2024/09/24)

[16]サイキンソー、腸活で健康経営のススメ、腸活起点のコンディショニングについてウェビナーを開催します
https://cykinso.co.jp/news/20240924
開催日は2024年10月17日(木)。テーマ「ストレスを跳ね返し最高のパフォーマンスを!腸活でレジリエンス力アップへ」。(2024/09/24)

[17]東京医科大学、大腸がんの予後とゲノム異常を予測する人工知能(AI)の開発~新たなAIモデルによる個別化医療を目指して~
https://www.tokyo-med.ac.jp/news/2024/0924_160500003517.html
今回の研究では、ニューラルネットワーク(CNN)とサポートベクターマシン(SVM)を組み合わせた人工知能技術を利用し、病理形態学的情報の抽出・解析に成功しました。(2024/09/24)

[18]住友生命、給付金お支払い後のお客さまに対する生活習慣改善支援プログラム「Mystar」の提供について【PDF】
https://www.sumitomolife.co.jp/about/newsrelease/pdf/2024/240924.pdf
https://www.sumitomolife.co.jp/
生活習慣病に罹患し、給付金をお支払いしたお客さまを対象に、当該お客さまの生活習慣病重症化リスクを予防する取組みとして、住友生命グループである株式会社PREVENTの生活習慣改善支援プログラム「Mystar」を提供します。(2024/09/24)

[19]TOPPAN、オンラインイベント『~未開のビジネスチャンス~巨大市場としてのウェルビーイング考』を開催
https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2024/09/newsrelease240924_1.html
開催日は2024年10月23日(水)。保険やヘルスケア、日用品など消費者のウェルビーイング向上に携わる企業でウェルビーイングビジネスに取り組む先駆者や有識者が登壇し、企業がウェルビーイングを社会実装するための共創の必要性などをサミット形式で討論します。(2024/09/24)

[20]RX Japan、「Fem+(フェムプラス)」を開催
https://www.femtech-week.jp/hub/ja-jp.html
女性の健康と活躍を支援する展示会。会期は2024年10月17日(木)~19日(土)。構成展示会「Femtech Tokyo」「女性のウェルビーイング推進 EXPO」。(2024/09/24)