[ヘルスコーチングの視線編]ヘルスコーチングの可能性を探る:顧客オンボーディング×ヘルスコーチング
こんにちは、里見です。
ヘルスケアビジネスでは、顧客の継続率や定着率が成功に向けた重要な要素です。
この顧客の継続率や定着率に向けて最初のハードルは、オンボーディングと呼ばれる、接点を持った後からサービスを理解し、使い始め、活用できるまでの初期段階です。
今回は、ヘルスケアサービスにおける「顧客オンボーディング」について、ヘルスコーチングの視点から解説してみたいと思います。
特集:ヘルスコーチングの視線編
1、アプリ利用開始1週間後の継続率は約20%前後
一般的にアプリをインストールした顧客のうち、約75%が最初の1週間以内に離脱すると言われています。
また、ヘルスケア関連アプリの1週間後の継続率が約20%前後であるというデータもあります。
これはアプリに限ったデータではありますが、ヘルスケアサービス全般で見ても、サービスとの最初の接点から実際に使ってもらう、活用できるまでの初期段階での離脱率は高いのです。
ヘルスケアビジネスにおいて顧客の継続率や定着率が成功に向けた重要な要素なのに、最初の1週間で約4分の3が離脱してしまう状況では、本当の意味で継続して利用し、定着してくれる顧客は、サービスと接点をもった顧客の数のほんの一握りほどになってしまうのです。
したがって、サービスと接点を持って使ってみてくれた顧客の離脱率を下げることが重要になってきます。
今回解説する「顧客オンボーディング」とは、サービスと接点を持ってくれた顧客が自社のサービスを理解して、活用できるまでの初期段階を最大限に活用するためのサポートのことです。
この初期段階のサポートが、本当の意味でのサービスの継続率や定着率に大きく影響しているのです。
2、顧客オンボーディングとは
サービスと接点を持った顧客がサービスを理解し、活用できるまでサポートする「顧客オンボーディング」は、初期の設定、サービスや機能などの紹介も含めて、顧客が自分自身でサービスを活用できるまでの初期段階のサポートという位置付けになります。
「顧客オンボーディング」で主に必要な要素
1)初期設定、セットアップ
2)サービス、機能の紹介や使い方の説明、案内
3)初期の体験、体感
「顧客オンボーディング」で必要なサポートとして、大きく分けると上記のような要素になりますが、これらをサービスと初めて接点を持ったタイミングで一気に提供すると情報量ややることが多くて、離脱の原因になってしまいます。
離脱のポイントを見極め、一気に提供するのではなく、少しずつ情報を増やしていくよう、顧客のペースに合わせた設計が必要です。
顧客はサービスと接点を持った時点で、なんらかの期待を持っています。
重要なのは、これらの期待にできるだけ少ないステップで応えることです。
あまり手間のかかるステップなどを踏ませると、期待に対してマイナス要因として離脱のポイントにつながります。
ただし、顧客の期待に最小限のステップで応えるだけでは不十分であり、顧客が困った時にサポートが備わっていることも、離脱を防ぐ重要なポイントです。
今回「顧客オンボーディング」について、ヘルスコーチングの視点で解説したいのは、上記1)、2)の初期設定やサービス、機能の紹介や使い方の説明、案内の部分ではなく、上記3)の初期の体験、体感を通した離脱を防ぐポイント、そして「顧客オンボーディング」のその先の継続、定着につながるアプローチです。
3、顧客オンボーディングにおける初期の体験、体感
顧客はサービスと接点を持った時点で、何らかの期待を持っています。
例えば、何か健康の課題を解決したいなどです。
しかし、サービスと接点を持っても初期の設定やサービス、機能の説明が長くて、顧客が実際に手に入れたい健康の課題に向けた取り組みのスタート地点に辿りつくまでが長いと、もうそこで離脱してしまいます。
顧客は何らかの期待を持ってサービス利用を開始します。
このタイミングでの顧客の期待値、やる気はかなり高い状態なのです。
この初期の顧客の期待値、やる気を下げない、むしろ高めることができれば、離脱する可能性は低下して「顧客オンボーディング」は成功とも言えます。
では、初期の顧客の期待値、やる気を下げない、むしろ高めるアプローチとはどんなことなのかというと、ヘルスコーチングでもスタートの時点で重要なアプローチと位置付けている以下の2つになります。
1)目標、ゴールの設定とイメージング
2)小さな成功体験
上記2つの要素は、「顧客オンボーディング」のタイミングで入れ込むことが可能です。
この2つで顧客の初期の期待値、やる気にアプローチして、離脱を最小限に抑えることが可能になります。
やはり、受動的に情報を受け取っただけでは、顧客自身にとっての気づきにつながりにくいため、顧客の初期の期待値、やる気に作用することができません。
顧客自身で気づいて体験、体感することが顧客の初期の期待値、やる気に影響してくるのです。
それでは、「目標、ゴールの設定とイメージング」「小さな成功体験」それぞれについて、ここからお伝えしていきます。
4、目標、ゴールの設定とイメージング
顧客が何か健康への取り組みやヘルスケアサービスに接触するのは、主に健康課題が存在したり、課題を解決したいと思ったタイミングが主になります。
しかし、健康課題の解決や改善の目標から、より自分事化してもらうためには、ゴールを達成した先にいる自分の具体的なイメージが必要です。
そのイメージこそがワクワクするような目標設定となって、このあとの具体的な取り組みの原動力となりモチベーションにも大きく影響していきます。
そのため、健康課題の解決や改善の目標から、より自分事として捉えてもらうための目標とゴールの設定とイメージングは、具体的な取り組みの原動力であり、モチベーション維持に欠かせず、また健康課題の解決や改善の目標に向けた取り組みを継続するためにも必要な要素です。
自分事化してもらうための目標、ゴールの設定とイメージングは、「顧客オンボーディング」の時点での離脱防止だけではなく、「顧客オンボーディング」を乗り越えた先のサービスの継続、定着にも大きく関係していきます。
通常、ヘルスケアサービスにおける目標設定は、「マイナス3キロ」や「健診結果の改善」のように課題解決のみを目指すものであり、これらでは自分事化が難しく、モチベーション維持にも繋がりにくいため、ワクワクする目標設定とは異なります。
ゴールや達成イメージは、取り組みを継続し加速させるための「源動力」のような位置づけです。
顧客のゴールや達成イメージの位置づけを高めるとともに、コミュニケーションの中に効果的に活用していくことが、対象者のゴールや達成イメージに近づけるためには重要な要素で、ヘルスコーチングのこのアプローチは「顧客オンボーディング」でも活用可能なのです。
5、小さな成功体験
「顧客オンボーディング」では、初期の顧客の期待値、やる気を下げないアプローチとして、顧客自らの成功体験や体感が重要なポイントになっています。
特にスタートして早い段階で、小さな成功体験を経験できるかどうかが離脱を防ぐポイントでもあり、その後の継続意欲にも大きく関係してきます。
通常、サービス開始当初は、結果や成果に多くの顧客の意識が向いています。
しかし、最初から結果や成果を得られるものは少なく、やはりある程度の継続した取り組みが必須になってきます。
また、スタート当初にどれだけ小さな変化、成果を見つけられるかということもポイントで、それが「成功体験、体感」として自己効力感につながっていくのです。
この自己効力感とは、簡単に言えば「自分にはできそう」「達成できそう」「乗り越えられそう」といった自信のような感覚で、自分が上手くやれそうだという期待感のようなものです。
サービス開始の早い段階で、この小さな成功体験を通した自己効力感へのアプローチは、このまま継続していくと何か良さそうな結果が得られそうといった感覚につながっていくため、「顧客オンボーディング」の中でのアプローチとして重要な要素になります。
小さな成功体験は、本来自身の中で気づき、発見することで得ること、高めることができるものなのですが、なかなか「自己効力」につながる気づき、発見の視点や意識が抜けてしまうケースが多くあるため、その側からの刺激、発見のプロセスなどのアプローチが必要です。
そのアプローチこそがヘルスコーチングのアプローチと共通なのです。
これまでの経験で、自らの気づきによって実感できた「出来る」という自信を持てた人ほど、継続して結果や成果を手にすることができています。
また、プログラムが終了したあとも自走して継続できている人も、この「出来る」といった自己効力が高い人たちです。
やはり、「自らの発見」が重要な自己効力は、ヘルスコーチングの「自らの気づき」への働きかけによるコミュニケーションが効果的なのです。
今回は、ヘルスケアサービスにおける「顧客オンボーディング」について、ヘルスコーチングの視点から「目標、ゴールの設定とイメージング」「小さな成功体験」の2つに絞ってお伝えしました。
今回お話した「目標、ゴールの設定とイメージング」「小さな成功体験」は、ヘルスコーチングの具体的なアプローチのほんの一例で、ヘルスコーチングにはもっと多くのアプローチの要素があります。
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【今回の注目】
クロス・マーケティング、睡眠に関する調査(2024年)実態編(2024/04/09)
https://www.cross-m.co.jp/news/release/20240409/
→解説はコチラ
良い睡眠に向けた取り組み、睡眠改善のアプローチに必要なこととは(7分12秒)
https://youtu.be/NR506QC2fTY
+++★注目記事クリップ★+++
[1]ネスレ日本、日本人の健康課題“座りすぎ問題”に対して“ブレイク”を提案、専門家監修の新コンテンツ「座りすぎ問題とブレイク」を公開
https://www.nestle.co.jp/media/pressreleases/20240410_nestle
新コンテンツでは、座位行動に関する研究の専門家による「座りすぎ問題」についてビジュアルを交えた解説や、その対策としての“ブレイク”を生活に取り入れるための具体的なアドバイスなどを掲載しています。(2024/04/10)
[2]東北大学、認知症におけるアドバンス・ケア・プランニングの推進に向けた国際提言を発表
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/04/press20240410-01-acp.html
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは、将来の医学的治療とケアについて家族や医療従事者と話し合い、その人なりの目標や選好を見出すためのプロセス。(2024/04/10)
[3]シチズン・システムズ、ユーザーが「体組成計」または「体重計」として使い方を自由に選択できるBluetooth(R)機能搭載の体組成計『HMS721C』を発売
https://www.citizen.co.jp/release/news/detail/2024/20240410.html
本製品は使いやすく進化した自社開発の新スマートフォンアプリ『Health Scan』との連携で、測定結果をかんたんに記録・管理できるようになりました。(2024/04/10)
[4]ベースフード、完全栄養食で心身の健康の“ベースアップ“をサポート!「BASE UP PROJECT」スタート
https://basefood.co.jp/news/1724
プロジェクト第1弾「BASE UP SPORTS PROJECT」本格始動。各種スポーツシーンやボディメイクにおいて“スマートフード”完全栄養食である「BASE FOOD」を日常的に取り入れていただくことで、健康的なカラダづくりやスポーツパフォーマンス向上の“ベースアップ”をサポートしていくプロジェクト。(2024/04/11)
[5]ジェイフロンティア、健康経営を推進する企業向けに新サービス「SOKUYAKUベネフィット」の提供を開始
https://jfrontier.jp/pressrelease/34986/
導入第一号は株式会社ツルハ。社員への福利厚生サービスとして、オンライン診療・服薬指導・処方薬配送サービスの利用が可能に。(2024/04/11)
[6]HQ、会社員1,320人に聞いた 2024年版ワーカーペインと福利厚生の利用実態調査
https://corp.hq-hq.co.jp/news/posts/20240411-hq-survey
従業員の悩みが多様化する一方で、選択型福利厚生の利用は娯楽・余暇に偏り。人的資本経営に寄与しない「福利厚生の形骸化」が明らかに。(2024/04/11)
[7]ロッテ、約6割が咀嚼能力アップ!約4割がお口ポカンやいびきが改善!~保護者も実感!フーセンガムトレーニングによる口腔機能の改善~(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000110734.html
口腔機能向上を目指し、山口県内44園、約1,300名の年長園児が園や家庭でフーセンガムトレーニングを実施。(2024/04/12)
[8]スポーツオアシス、十人十色のゴールに沿ったダイエットをサポートする「10 COLORSダイエット」スタート
https://www.sportsoasis.co.jp/2024/04/12/pr_10cd/
お客様それぞれ、十人十色のゴールに沿ったダイエットを、自己流ではなくスタッフが一緒に考え、伴走する「10 COLORSダイエット」を2024年4月から年間の企画として実施します。(2024/04/12)
[9]早稲田大学、わずか40秒の運動で身体に起こる劇的変化
https://www.waseda.jp/inst/research/news/77216
わずか40秒の高強度間欠的運動で、全身および筋肉の酸素消費量ならびに大腿部(太もも)の主要な筋肉の活動が大きく増加することを発見した。(2024/04/12)
[10]パナソニック、もれなく体組成計がついてくるfoodable健康応援セット
https://panasonic.jp/topics/2024/04/000000895.html
4月から新生活がはじまり、食生活が乱れがちなこの時期に体組成計がついてくる特別セットをご用意。キッチン家電、厳選食材に加え、体組成計(EW-FA14)がついた特別セットは、初月月額980円(送料込み・税込み)。(2024/04/15)
[11]エムティーアイ、コンディショニングノート『Atleta(アトレータ)』が、部活動の指導・運営を地域に委託する「地域移行」を実施する高校に初採用!
https://www.mti.co.jp/?p=34707
13年ぶりに再始動する英数学館高等学校サッカー部をデジタルの力で支援。『Atleta』が高校の部活動における地域移行事業に採用されるのは、今回が初めてとなります。(2024/04/15)
[12]キリンホールディングス、ダブルヘルスクレームの機能性表示食品「骨密度&免疫ケア タブレット」新発売!
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2024/0415_01.html
キリンとワダカルシウム製薬は骨と免疫の関連性に着目し、キリングループの独自素材「プラズマ乳酸菌」と、ワダカルシウム製薬が着目した「マルトビオン酸Ca」を配合した「骨密度&免疫ケア タブレット」を共同開発。(2024/04/15)
[13]三井住友海上火災保険、「上司が挑戦していないとモチベが下がる」若手が約6割!社会人800名を対象に[挑戦に関する意識調査]を実施【PDF】
https://www.ms-ins.com/news/fy2024/pdf/0415_1.pdf
https://www.ms-ins.com/
本調査から、上司や先輩の挑戦する姿が若手社員のモチベーションや成長実感に影響を与えることが判明しました。「挑戦する上司」と働く若手社員は約8割が成長を実感。「挑戦しない上司」と働く場合に比べ2倍以上の割合に。(2024/04/15)
[14]ティップネス、ダイエットに使えるお金は「月々5,000円以下が8割」8%がお金はあるのにダイエットに使わない!?理由は「時間がないから」(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000301.000009907.html
「HAPPINESS! magazine」にて、全国の男女100人を対象にダイエットについてのアンケートを実施。5,000円以下でやりたいダイエット「1位 食事制限」、など。(2024/04/15)
[15]サンスターグループ、米国で話題の新・健康メソッド「FMD(R)」(疑似ファスティング)日本初上陸に向け始動【PDF】
https://jp.sunstar.com/notice/docs/c2935b3725ab577cdf70d7d8eba60e15c9940cee.pdf
https://jp.sunstar.com/
「FMD(R)」(疑似ファスティング)とは、機能性成分やサプリメントの摂取による方法ではなく、研究に基づき、ファスティングをサポートする特別な栄養バランスで構成された食事をとることで、食べてもファスティング状態を維持することができる新・健康メソッドです。(2024/04/16)
[16]グローバルニュートリション、調査レポート:機能性表示食品制度と米国ダイエタリーサプリメント制度の比較
https://global-nutrition.co.jp/information/2024-04-15/
機能性表示食品制度と米国ダイエタリーサプリメント制度を比較、分析した結果、機能性表示食品制度は高い透明性を持つが「新規原料」「GMP」「有害事象の報告」は米国ダイエタリーサプリメント制度が先行していることが明らかになりました。(2024/04/16)
[17]経済産業省、令和5年度ヘルスケア産業基盤高度化推進事業(PHR利活用推進等に向けたモデル実証事業)報告書(令和6年3月ボストン・コンサルティング・グループ合同会社)【PDF】
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/reiwa5houkokusho.pdf
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/phr.html
プロジェクト概要、PHRの異業種企業間の連携に関する課題認識、PHRの異業種企業間の連携を通じた新たなユースケース創出に向けた実証事業、PHR利活用浸透に向けた今後の展開(案)など。
[18]YCが支援する依存症治療のバーチャルクリニックPelagoがシリーズCで5,800万ドルを調達
https://mhealthwatch.jp/global/news20240412
Pelagoの共同創設者兼最高経営責任者(CEO)であるYusuf Sherwani氏は、この資金をより多くのユーザーの獲得、臨床研究の取り組みの推進、さらなる製品の開発に使用する予定だと語った。(2024/04/12)
[19]Amazon Pharmacy、薬剤師が「genAI」と機械学習を使用して、数分で正確に薬を処理
https://mhealthwatch.jp/global/news20240416
Amazon Pharmacyによると、現場の薬剤師が生成AIと機械学習を使用して、数分で正確に薬を処方・提供するとのこと。(2024/04/16)
[20]『mHealth Watch』注目ニュース:Awarefy、AIメンタルヘルスアプリAwarefyに、心の成長をサポートする「AIコーチング」を搭載
https://mhealthwatch.jp/japan/news20240422
今回のAIメンタルヘルスアプリAwarefyに追加された「AIコーチング」機能は、コーチングのコミュニケーションをベースにしたアプローチになっているようです。(2024/04/22)