ヘルスビズウォッチ視点で解説
2023年版 ヘルスケア用語解説
ヘルスケアとは(メディカルとの違い)
ヘルスケアとは直訳するとヘルス=健康とケア=管理で健康管理になります。メディカルは医療のことです。
ヘルスケアとメディカルには共通領域があります。
ヘルスケアはカバー範囲が広い言葉なので、全体像を理解する必要があります。
どの領域からフォーカスするかによって価値基準が異なる場合があります。
「健康」の定義
まずはヘルスケアの基盤となる健康の定義を整理しておきます。
健康に関してWHOが定義する「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」が有名です。
※公益社団法人日本WHO協会「世界保健機関(WHO)憲章とは」(2023年2月24日時点)
もう一度言いますが、ヘルスケアはとてもカバー範囲の広い言葉です。
公益財団法人日本ヘルスケア協会の2015年の定義によると
「ヘルスケアとは、自らの「生きる力」を引き上げ、病気や心身の不調からの自由を実現するために、各産業が横断的にそこの実現に向けて支援し、新しい価値を想像すること、またはそのための諸活動」とあります。
※公益財団法人日本ヘルスケア協会「ヘルスケアの定義」(2023年2月24日時点)
この表現の中にある「病気や心身の不調からの自由を実現」はメディカルの範囲であることからヘルスケアはメディカルも含めた「生きる力」を引き上げるケアであると我々HealthBizWatchは解釈しています。
2つのヘルスケア
ここで注意したいのは“メディカル領域にポジションしたヘルスケアと、メディカル外のヘルスケア”が存在することです。
最近注目を集めているヘルスTECHのスタートアップのテーマはほとんどがメディカル領域におけるイノベーションをテーマにしています。
それに対して予防領域でのダイエットケアもヘルスケアといえるのです。
ヘルスケアとは医療内外の2つあるといえます。
ウェルネスとウェルビーイング
ウェルネスとウェルビーイングは、近未来におけるあらゆるビジネスや生活局面における重要キーワード&コンセプトであることは間違いありません。
この2つの違いよりも関連性を理解することが重要だと考えますので、各々の定義から確認していきましょう。
ウェルネスとは
「ウェルネスとは、病気ではない状態であるヘルス(健康)を[基盤]として、その基盤をもとに豊かな人生、輝く人生を実現することが[ゴール]である。
何かに没頭している、熱中している、生き甲斐を見つけているなど、目指す過程も活き活きと輝いていればウェルネスであることが新しいウェルネス観として提唱されている」(ウィキペディアより)
※ウィキペディア「ウエルネス」(2023年2月24日時点)
ウェルビーイングとは
「ウェルビーイングとは、誰かにとって本質的に価値のある状態、つまり、ある人にとってのウェルビーイングとは、その人にとって究極的に善い状態、その人の自己利益にかなうものを実現した状態である」(ウィキペディアより)
※ウィキペディア「ウェルビーイング」(2023年2月24日時点)
HealthBizWatchにおける解釈は、ウェルネスは健康的コンディションが基本で、ウェルビーイングは幸福な状態、充実した状態など生活の質(QOL)の要素が占める比率が高いというイメージです。
ウェルネスは日本では2010年頃から使われており、使用頻度も時系列的に増加してきていましたが、2020年を過ぎ、ウェルビーイングがそれを上回る露出頻度になってきていると実感しています。その傾向を受けてか日本経済新聞は「2022年はウェルビーイング元年」といっているようです。
ヘルスケアビジネス(ヘルスケア事業)
ヘルスケア(健康管理)をビジネスとして行うことを意味するのがヘルスケアビジネスです。それは健康管理のモノ・コト・情報を提供することなのですが、誰が対価を支払うのかによってビジネスモデルが異なります。
ビジネスモデルの違い
ケア対象者の健康状態によって健康管理の意味合いが異なることを注意しなければいけません。
治療・回復・健康維持は医療費(保険)領域になり、健康維持・増進・予防は医療費外となるのが一般的な捉え方になります。
いい換えると、ケアを始める時点の対象者の状態と目指す方向によってビジネスモデルが異なることを理解してください。
ビジネスと捉えた場合ヘルスケア領域に存在しているパターン
a) 患者に対応する病院やクリニックなどの医療機関を対象としたビジネス
b) 自治体や組織の構成員(市民または従業員)をケアするビジネス
※医療機関を営むことはメディカルビジネスになります。
ここまでが保険や組織の福利厚生などで大半のコストが賄われるケースとなります。
そして、受益者負担が基本であるビジネスが以下です。
c) 保険外の治療・回復系サービスビジネス
d) 健康維持・増進サービス及び物販
ヘルスケア事業参入に関する企業意識調査(PwCコンサルティング合同会社実施)の企業からの回答内容がとても注目に値すると思われるので抜粋します。
100億以上の企業で新規事業に携わる350人のマネジャー職へのウェブアンケート
1) 回答企業の約70%がヘルスケア事業への参入に積極的であり、約25%の企業が実際に事業を開始している
2) 回答企業の30%以上が「健康増進デバイス・アプリケーション」「健康経営」といった、既存事業から間口を広げやすいテーマに関心を寄せている一方で、「遠隔医療」「パーソナライズ医療」のような、治療領域への参入に興味を持つ企業は10%前後にとどまっている
3) 約半数の企業が「市場の成長性」「市場規模」といった、ヘルスケア市場のポテンシャルに期待を寄せているが、「ブランドイメージの向上」「顧客基盤拡大」といった具体的な事業への貢献を期待する企業は20%以下にとどまっている
4) ヘルスケア市場への参入に不安を感じている要因として、「ケイパビリティ・人材不足」「実行計画の不在」「ビジョン・戦略の不在」などを挙げた企業がそれぞれ約40%を占めている
まとめると多くの企業がヘルスケア市場に何らかの興味を持っているが、参入する決め手に欠いているといえないでしょうか。
そのような企業にこそHealthBizWatchは購読していただきたいのです。
※PwCコンサルティング合同会社「ヘルスケア事業参入に関する企業意識調査」(2023年2月24日時点)