こんにちは。脇本和洋です。

今回のテーマは、米国のヘルスケア分野で行動継続を促すアプローチとして主流になってきている「ヘルスコーチングサービス」です。
ヘルスコーチングサービスの歴史、そして現在を整理します。
一歩先のトレンドとしてチェックしてください。

特集:海外事例にみる継続支援アプローチ編

米国で主流になってきたヘルスコーチングサービス

最近、国内のヘルスケアサービスでもヘルスコーチングと名前が入るサービスが増えてきています。
本編では2005年にヘルスコーチングサービスを初めて取り上げ、その後も海外企業の展開状況を見てきました。

今回は、ヘルスコーチングサービスの歴史を事例で振り返り、このサービスの理解を深めていただければと思います。

<今回の内容>

・ヘルスコーチングサービスは米国でいつから始まったのか
・ある食品会社がヘルスコーチングサービスを開始し8倍の売上を達成
・大手医療保険会社も注目し、今や10社中8社が採用するまでに
・国内でもこのトレンドをチェックすることが、一歩先をつかむことになる

ヘルスコーチングサービスは米国でいつから始まったのか

メルマガ本編は1999年からスタートしていますが、初めてヘルスコーチングサービスを取り上げたのは2005年10月のことでした。

当時取り上げた事例は、ヘルスコーチ養成企業「Totally Coached」。

同社のヘルスコーチング手法の特長は以下の2点でした。
1)専門家はすべての答えを用意し教えることはしない
2)相談者に幅広い角度からの効果的な質問を行いながら、相談者自身が自分の課題や解決方法に気づくよう促す

Totally Coachedは、この特長を生かしたコミュニケーションができる専門家を育成していました。
2005年当時はヘルスコーチングという手法が体系化され、ビジネスとして成り立つ土台ができつつあった時期とみることができるでしょう。

※参考>バックナンバー「健康×コーチング」に見る新しい健康指導(2005年10月)
https://healthbizwatch.com/archive/column/162-2

ある食品会社がヘルスコーチングサービスを開始し8倍の売上を達成

そして2006年頃、ある食品会社がヘルスコーチングサービスに目をつけます。

この会社はダイエット食品を販売していましたが、商品単体での独自化が難しく売上が低迷していました。
2006年頃に電話での無料ヘルスコーチングサービスを開始した所、食品の売上が少しずつ回復していきます。

そしてヘルスコーチングサービスを開始し7年たった2013年、食品の売上は324億円(導入前の8倍)に達します。

この食品会社の名前は

「Medifast」

です。

Medifastは今までも本メルマガでとりあげていますので、ご存じかもしれませんね。

Medifastはヘルスコーチングサービスを開始する際、自社にノウハウがあったとは考えにくく当時存在していた前述の「Totally Coached」といった外部専門企業のサポートを受けながらサービスを構築し、仕組化していったと考えられます。

Medifastの売上の急速な伸びは、その後様々なヘルスケア業界の企業がヘルスコーチングサービスを開始するきっかけになったとみています。

※参考>Medifast
https://medifastinc.com/

※参考>バックナンバー「米国のダイエットサービス代表2社(Medifast含む)の動向」(2022年5月)
https://healthbizwatch.com/column/hbw-990

大手医療保険会社も注目し、今や10社中8社が採用するまでに

2010年頃から大手医療保険会社もヘルスコーチングサービスを開始します。
その背景にMedifastの成功があったといっても過言ではないでしょう。

医療保険会社の課題は、医療費抑制のために会員に健康行動を継続してもらうこと。その手法としてヘルスコーチングに着目したのです。

2010年当時に私が調べたところ、ヘルスコーチングサービスを提供するのは数社でした。しかし2021年では、大手医療保険会社10社中8社がヘルスコーチングサービスを提供するまでになりました。

例えば、大手医療保険会社のUnited Health careは、rallyという企業のヘルスコーチングサービスを採用し、会員に提供しています。
また、コミュニケーション方法は電話だけでなく、モバイルアプリを使ってその経過をヘルスコーチと共有しながら進めるという形に進化しています。

今や医療保険会社にとって、ヘルスコーチングサービスは健康行動継続の切り札になっているといってもよいでしょう。

※参考>United Health careが採用するrallyのヘルスコーチングサービス
https://www.rallyhealth.com/rally-coach

国内でもこのトレンドをチェックすることが、一歩先をつかむことになる

国内では、フィットネスクラブ業界の数社がすでにヘルスコーチングサービスの考え方を応用して成果を上げています。

ただ、ヘルスケア業界全体としてはまだ広がりは見せておらず、これからという段階でしょう。
Medifastが当初外部のヘルスコーチング専門企業から支援を受けたように、最初からすべて自社開発するのではなく、外部専門企業を活用することが有効だと思います。

尚、日本ではヘルスコーチングサービスの体系化がうまくなされていませんでしたが、その体系化を行いサービスの導入支援をしているのが、次週の本メルマガを担当する里見です。

このトレンドをより理解し一歩先をいきたい方は、以下の記事からチェックしてみてはいかがでしょうか。 【脇本和洋

※参考>ヘルスコーチングの視線編(オーサー:里見 将史)
https://healthbizwatch.com/author-cat/satomi

※参考>ヘルスコーチングのノウハウを提供した事例(インタビュー)
お客さまのペインポイントに寄り添い、顧客体験価値を通した新しい生命保険ビジネスモデルの創出への挑戦
https://healthbizwatch.com/interview/neocoach

参考>本編「海外事例にみる継続支援アプローチ編」をお読みの方へ

我々スポルツが今までに調べてきた500超の事例から実績をベースに16事例を選定。米国先進事例の「行動継続を促す工夫」を調査分析したレポートの紹介です。

詳細は以下となります。ぜひ参考にしてください。

●ヘルスビズウォッチ・レポート
継続ドライバ型海外先行デジタルヘルス事例16(2023年版)
ー サービスの継続利用を高めるアイデアを、
チームで精度高く短期間で生み出すための発想素材! ー

健康ビジネスキーワード

「プロダクトは使用価値を伝えるためのメディア」

モノの価値が変化している背景にあるのは、デジタル技術の進化とともに我々の価値観変化があります。
所有価値から使用価値。
つまり、持たずとも良いという考え方とそれを実践するマインドと同時に、それを支援する環境サービスのテクノロジー。

実際にはどのようなプロダクトでも、それはすぐに真似できます。
もはや、どんなに機能追加しても完成形の商品だけでは差別化や魅力化が難しい時代です。
顧客が価値を感じるのは商品に込められたWhyです。

それは、思いやこだわり、そして試行錯誤のストーリーです。
その商品の持つストーリーへの共感が、使用価値を味わう起点となります。
売るべきものがプロセス(使用価値)にシフトしていると言えるのです。

もはや、「商品は使用価値プロセスを体験するためのメディアである」ということです。
さて、貴方はこの流れに乗れていますか?

今週の注目記事クリップ

[1]issin、国内初 自動で体重管理ができる「スマートバスマット」ユーザー数が販売開始から4カ月で10,000人を達成、1カ月で平均0.8kgのダイエットに成功(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000103350.html
ダイエットに成功した利用者へのアンケートによると、成功要因は「日々の体重増減チェック」と「生活習慣への意識変化」が鍵だということが分かっています。(2023/03/10)

+++★追加解説音声:110秒(編集主幹 大川耕平)★+++
無意識体重計測は新しいライフスタイルの一つです!
https://youtu.be/OskOyuJMKWg

[2]キリンビバレッジ、「企業の健康経営と健康支援を受ける従業員」についての意識調査【PDF】
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2023/0308_01.pdf
https://www.kirinholdings.com/jp/
「従業員の健康」への投資は増加。一方企業の約8割は効果的な健康支援に課題感あり。効果検証がより重要になる中、更なる“人材強化”が求められている。(2023/03/08)

[3]ブレインスリープ、2023年版日本の『睡眠偏差値(R)』調査結果報告~生産性、免疫力向上の鍵は睡眠時間ではなく「睡眠の質」と判明~
https://brain-sleep.com/news_corporate/7824/
今回、2023年版の睡眠偏差値の測定を実施し、新たに6つの項目について、日本人の睡眠における特徴を明らかにしました。(2023/03/08)

[4]BHQ、脳の健康状態・個性がわかるBHQドックをバリューHRの福利厚生サービス「バリューカフェテリア(R)」で提供開始
https://www.bhq.co.jp/media/
BHQドックは、MRIで撮像した画像から脳の状態を数値化するBHQ技術を用いて、一人一人の脳の健康状態や個性や強みに関連する脳領域の状態を可視化し、ライフスタイルに役立てたり、健康増進に向けたりするための指標として活用できるサービス。(2023/03/08)

[5]経済産業省、「健康経営銘柄2023」に49社を選定しました!
https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230308003/20230308003.html
東京証券取引所と共同で、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む上場企業を「健康経営銘柄」として選定しています。第9回となる「健康経営銘柄2023」に、31業種から49社を選定しました。(2023/03/08)

[6]nanoni、企業がフェムテックを導入しない理由の1位は「よく知らないから」(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000091427.html
経済産業省フェムテック等サポートサービス実証事業として450社を対象に「フェムテック利用動向調査」を実施。女性の健康課題は経営・人事上の課題に挙がっていない企業が6割超、など。(2023/03/08)

[7]三菱地所プロパティマネジメント、まるのうち保健室 国際女性デーにオンラインイベントを開催(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000115776.html
三菱地所は、国際女性デーに向けたアクションとして、ファムメディコと共催で神奈川県立保健福祉大学の協力のもと、働く女性たちの課題を見える化する産学医連携プロジェクト「働く女性 健康スコア」の発表イベント開催。(2023/03/08)

[8]NTTデータ、600名の健康データを活用して商品・サービス等を検証できる「共創実証ラボ」の開設
https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2023/030901/
ラボ利用企業と健康データの活用に伴うベネフィットを体感・実感できるサービスを共創することで、生活者が健康データを活用して、ウェルビーイングを実現することが当たり前になる未来社会の早期実現を目指します。(2023/03/09)

[9]ヤクルト本社、「肝ファイン」の全国販売を開始【PDF】
https://www.yakult.co.jp/company/news/file.php?type=release&id=167832911577.pdf
https://www.yakult.co.jp/
紫サツマイモ由来アントシアニンにより肝機能に関連する酵素(AST、γ-GTP)値の低下に役立つ機能性表示食品。(2023/03/09)

[10]味の素・SCSK・オムロンなど8社、新しい健康経営(R)の普及と健康保険組合の健全化を目指す「健康経営アライアンス」設立のお知らせ【PDF】
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/presscenter/press/detail/file/2023_03_10_02.pdf
https://www.ajinomoto.co.jp/
本アライアンスでは、「健康経営の型づくりと成果創出のためのソリューションの共創および産業界への実装」を実現します。(2023/03/10)

[11]国立長寿医療研究センター、国立高度専門医療研究センター6機関の連携事業により食品摂取の多様性が将来の認知症発症を予防することを明らかにしました
https://www.ncgg.go.jp/ri/report/20230310.html
今回の研究では、中高年期の女性において多様な種類の食品を摂取することが将来の認知症を予防する可能性と、男性では独居者で同様の結果が示されました。(2023/03/10)

[12]西川、カルビー(株)と国分グループ本社(株)の従業員の方々を対象に「西川とアシックスによるコラボセミナー」を実施しました【PDF】
https://www.nishikawa1566.com/news/news_file/file/20230310144102.pdf
https://www.nishikawa1566.com/
西川の企業向け「快眠セミナー」にアシックス監修の睡眠のためのエクササイズを導入。新開発した「西川とアシックスによるコラボセミナー」は、西川とアシックス双方の知見を織り交ぜて内容を構築しています。(2023/03/10)

[13]グローバルニュートリショングループ、健康と老化に役立つ「長寿のビタミン」エルゴチオネイン、注目を集める可能性、ほか|GNGグローバルニュース2023年3月10日号
https://global-nutrition.co.jp/information/20230310/
今号も、多くの市場調査結果や最新の研究、そして様々な規制の動きなど、海外業界メディアによる最新記事を紹介しています。特に、たんぱく質に関連する記事を数多く取り上げています。是非ご覧ください。(2023/03/10)

[14]森永乳業、春先の心身の不調「春ダル」に要注意
https://www.morinagamilk.co.jp/release/newsentry-4104.html
16歳-65歳までの男女1,000名を対象に「春先の不調に関する実態調査」を実施。6割の人が春先に心身の疲れやダルさ、気分の落ち込みを感じている。さらに、大腸に不調を抱える人ほど「春ダル」を感じる相関関係も明らかに。(2023/03/14)

[15]ベースフード、新機能「栄養ダッシュボード」のお知らせ
https://basefood.co.jp/news/1382
新機能「栄養ダッシュボード」をマイページに追加しました。「栄養ダッシュボード」は、BASE FOOD(R)継続の歩みをレポートする、継続コース会員さま限定の機能です。(2023/03/14)

[16]調査:米国成人の60%がヘルスケアAIに不快感を抱く
https://mhealthwatch.jp/global/news20230308-3
調査対象者の60%は「疾患の診断や治療法の推奨といったことをAIに頼って行う医療機関には違和感を覚える」と回答し、57%が「AIの利用によって医療提供者との関係が悪化する」と回答していた。(2023/03/08)

[17]『mHealth Watch』注目ニュース:順天堂大学、脳の健康度に基づいた『金融商品適合性チェック支援AIアプリ』を開発
https://mhealthwatch.jp/japan/news20230320
今回注目するのは、順天堂大学を中心に開発した脳の認知機能レベルを推定するAIを活用し金融業務に特化したソリューションとしてのアプリに関するニュースです。(2023/03/20)