ヘルスコーチングとしてのアプローチを分解してみると自己肯定感や自己効力感に関連していることがあります。
今回は、ヘルスコーチングの視点から自己肯定感と自己効力感について、解説してみたいと思います。

特集:ヘルスコーチングの視線編

ヘルスコーチングの可能性を探る:自己肯定感と自己効力感

1、自己肯定感と自己効力感とは

自己肯定感と自己効力感というワードをよく目にしますが、どんなもので、どんな違いがあるのかご存じでしょうか?

まず、「自己肯定感」ですが、自らの在り方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味する言葉であると『ウィキペディア(Wikipedia)』では解説されています。

自己肯定感の言葉の通り、ありのままの自分を肯定し認める感覚になります。

この自己肯定感は、他者と比較することではなく、あくまでも自分自身で現状のありのままの自分を認めることで生まれる感覚であり、物事を取り組む際には重要な視点になってきます。

現状のありのままの自分を認めるということなので、良い面だけではなく、できないことや自身の弱いところまでを認識するということになります。

次に「自己効力感」ですが、『ウィキペディア(Wikipedia)』では、自分がある状況において、必要な行動をうまく遂行できると自分の可能性を認知していることと解説されています。

簡単にいうと、この自己効力感は「自分ならできる」「きっとうまくいく」などといった、いわゆる「自信」みたいなものです。

2、自己肯定感と自己効力感の違い

自己肯定感と自己効力感は、両方とも感覚的に高いことが良いとされており、両方とも高い状態だと、前向きな取り組み、主体性を持った取り組みとして前進していきます。

前向きな取り組み、主体性を持った取り組みに必要な要素である自己肯定感と自己効力感ですが、実は「できない」ことの捉え方に、両者には大きな違いが存在しています。

それは、自己効力感が「できると自分を信じられる力」に視点が当たっているのに対して、自己肯定感では「できてもできなくても、ありのままの自分を受け入れられる力」といった、できてもできていなくても自分を認めるという点で大きく異なっているのです。

「自己効力感」ができていることに目を向けるのに対して、「自己肯定感」ではできていないことにも目が向いているということなのです。

3、健康行動と自己肯定感

ヘルスケアの中で最も重要なポイントである健康行動の取り組みにおける自己肯定感について見ていきたいと思います。

健康行動の取り組みでは、前向きな取り組み、主体性を持った取り組みが重要になってきます。
しかし、自己肯定感として現状のありのままの自分を認め、良い面だけではなく、できないことや自身の弱いところまでを認識しているかどうかで、健康行動への取り組み、向き合い方が大きく変わってきます。

例えば、ダイエットを経験しリバウンドを繰り返している人の場合には、結果だけにフォーカスしていると、自己肯定感があまり高くない状況と言えます。

しかし、このダイエットでのリバウンド経験の中で、自分が継続できない理由や自分に合っていないやり方などをしっかりと認識している場合には、自己肯定感が極端に低い状態ではありません。

また、健康行動を取り組む際には、自分に合った行動と自分に合わない行動、取り組みが明確になってきます。
これは、人それぞれライフスタイルも違えば、取り組み方も違うので、行動が合う、合わないが発生してくるのは当然です。

しかし、多くの人は成功した人の行動を真似てみて、自身が継続できないと、できないこと自体をネガティブに捉えてしまいます。

ここで重要なのは、できないことや自身に合わない行動をしっかりと自身で認識できるかどうかなのです。

他の人が上手くいったのだから私にだってできる、といった他の人と比べてどうにか克服しようという意識になりがちなのですが、健康行動の継続、習慣化していくステップでは、自分にとって合わない行動やできない取り組みを認識すること、そして自身に合っている行動、取り組みを見つけることが大切なのです。

4、自己効力感を高めるためには

自己効力感は、「自分ならできる」「きっとうまくいく」などといった、「自信」みたいなものだと上記で説明しましたが、健康改善や健康に向けた取り組みでは、すぐに結果や変化が表れるものは少なく、やはりある程度の時間、期間が必要になってきます。

ほとんどの人が健康行動に取り組んでいるのに、なかなか結果が表れず、変化が見つけられないことで、継続して取り組んでいても「きっとうまくいく」的な予感や想像ができず、継続していくことへの「自信」が無くなっていくことが、取り組み自体のストップ、断念につながってしまうのです。

「自分ならできる」「きっとうまくいく」などといった感覚は、やはり取り組みの結果としての変化や成果として手に入れることが近道なのです。

しかし、健康の取り組みでは、数値の改善やデータの目に見える変化では、ある程度の期間が必要になりますが、数値の改善やデータの目に見える変化までの道のり、プロセスでは、全く変化や成果が出ていないわけではなく、この途中のプロセスでも変化や成果は出ているものなのです。

この数値の改善やデータの目に見える変化までの道のりの間に存在する変化や成果に気づくことこそが、「自分ならできる」「きっとうまくいく」などといった自信につながり、自己効力感が高まることになっていくのです。

5、ヘルスコーチングにおけるアプローチ

まずは、「自己肯定感」についてのヘルスコーチングのアプローチです。

生活習慣の改善や健康行動の取り組みでは、「我慢」や「無理」で一時的に改善できたとしても、やはり継続する、定着化するのは難しいです。
そのため、できている行動、できる行動にフォーカスしてアプローチすることが重要です。

例えば、現在できている健康行動がある場合には、そのできている健康行動の前後に別の健康行動を組み合わせたほうが健康行動は追加しやすかったりします。
また、できている健康行動をより効果を高めるような変化に目を向けるなど、できている健康行動を起点に行動を追加したり効果を高めたほうが取り入れやすいのです。

ヘルスコーチングでは、具体的な行動に目を向けて継続的にサポートしていきます。
その中で、「できる行動」「できない行動」がハッキリ見えてきます。

通常、できない行動(マイナス)に意識が向かってしまいがちですが、できていること(プラス面)に目を向けて早めに見つけ、そのできている部分をより習慣化、定着化に向けて工夫していくことが大切なのです。

また、「できる行動」と「できない行動」の双方を対比することによって、自身に合った行動と合わない行動が見つけられます。

できないことの中にできるヒントが存在しているのです。
そのため、ヘルスコーチングでは、できないことにも目を向け自身で認識することで、健康行動の継続、習慣化にアプローチしていきます。

次に、「自己効力感」のヘルスコーチングのアプローチです。

ヘルスコーチングでは、行動にフォーカスしゴール、目的に向けて寄り添うコミュニケーションが基本です。
そのゴール、目的に向かう過程では、ゴール、目的に向かって前進している自分を自ら発見することが、自己効力感を高めて行動を加速させることにつながるのです。

また、自らの気づきによって実感できた「できる」という感覚が自信につながり、自己効力感を高めていきます。

ヘルスコーチングでは、例えば以下のようなコミュニケーション手法を使って、「自分ならできる」「きっとうまくいく」などといった、「自信」へのアプローチを行います。

●成功体験、成果、変化へのアプローチ

客観的な指標(データ等)だけでは、なかなか成果、変化を見つけることができません。
しかし、この成果、変化を見つけられないことが、自己効力感が得られない、高められない要因として考えられます。

そのため、主観的部分に目を向けて成果、変化へのアプローチを行ったりします。
また、自身が見えていない部分、視点を変える投げかけをしたりして、イメージしやすくするようにサポートします。

●イメージ化

時制を活用して、過去と現在、現在と未来の自身を比べながら、変化や成果の発見に導いていきます。

●PDCAサイクル

ヘルスコーチングでは、定期的なPDCAサイクルを回していきます。
このPDCAサイクルの中では、結果だけではなくプロセスに目を向ける機会としてアプローチします。
意識的にプロセスに目を向けることで、自己効力感への気づきや発見につながっていきます。

今回お話した「自己肯定感」と「自己効力感」は、誰かに言われて気づくものではなく、やはり自身によって気づく、認識することが大切です。

特に、あらためて自己肯定感や自己効力感にフォーカスして自身で気づける人は限定的であって、多くの人は目の前の取り組みにしか意識が向かわなくなってしまうのです。

だからこそ、ヘルスコーチングのような寄り添いや仕組みによって、対象者への働きかけが必要になるのです。

ヘルスコーチングでは、今回ご紹介した要素を含めたキーワードを毎日メールで解説する「『ヘルスコーチング』早わかりガイド」を準備しております。

この「『ヘルスコーチング』早わかりガイド」は、ヘルスコーチングをみなさまに広く知っていただくため、ヘルスコーチングの特長的なキーワードだけを抽出し、簡単に解説したステップメールです。

もちろん、無料で提供しておりますので、ご興味ある方は以下より「『ヘルスコーチング』早わかりガイド希望」とご連絡ください。

【『ヘルスコーチング』早わかりガイド】
お申込みはこちら
https://healthbizwatch.com/contact

●ヘルスコーチングの実証実験結果はこちら
https://healthbizwatch.com/future-build

健康ビジネスキーワード

「ヘルスケアプロダクトとアプリ」

ヘルスケアプロダクトは顧客の継続利用の先に顧客ベネフィットが存在する。
この領域のプレイヤーの多くは、顧客生涯価値(LTV)の向上に寄与するであろう関係性づくりの手段としてアプリを独自に開発し、運営しようとする。

顧客のセルフケアをサポートすることが顧客価値を創出し、ビジネスとしてスケールする流れにつながるというイメージを持っているのだ。

でも、なかなか簡単にそうはならない。
その理由の全てをここで解説することは不可能なのですが、次に紹介する2つの先行アプリが支持されている理由の本質理解と自社サービス比較で、多くの気づきを得ることにあると思います。

・あすけん
https://www.asken.jp/

・みんチャレ
https://minchalle.com/

今週の注目記事クリップ

[1]AuB、[子どもの腸育に関するモニター調査]子どもの腸育は2歳から!“腸ケア”に粉末食品「kids base」の有用性を確認!
https://aub.co.jp/archives/4845
今回、kids base1日1包を腸活を意識した食生活と共に商品を毎日摂取することで、腸内の「菌の多様性(種類の豊富さ)」と「ビフィズス菌の占有率」が向上することを実証しました。(2023/08/04)

+++★追加解説動画:8分1秒(編集主幹 大川耕平)★+++
新たなマーケットが誕生し育っていくプロセスにはストーリーがある
https://youtu.be/WTGHcjrbIwQ

[2]asken、2023年栄養の日のテーマ『間食』に関する調査を実施しました
https://www.asken.inc/news/2023/8/4/eiyoweek
猛暑の夏!ダイエッターの間食はアイスより果物が人気。1位「すいか」、2位「桃」、3位「アイスクリーム」となり、季節の旬の果物を中心に冷やしても美味しくさっぱりと食べられる食べ物が上位にランクイン。(2023/08/04)

[3]MTG、着て寝るだけで、質の高い疲労回復を実現「SIXPAD Recovery Wear Sleep」新発売
https://www.mtgec.jp/wellness/sixpad/products/recoverywearsleep/
血行を促進し、疲労を回復する一般医療機器のリカバリーウェア。独自の特殊繊維「Mediculation(R)」を採用し、血行を促進。筋肉疲労や筋肉のコリ・ハリにアプローチし、睡眠中に疲労を回復します。(2023/08/04)

[4]ウェルネス総合研究所、あなたは大丈夫?時間・気分・成果からみるトイレパフォーマンス(トイパ)3人に1人が普段の「トイパの悪さ」を自覚(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000079676.html
全国の20-60代男女1,000名に聞いた「トイレ事情に関する実態調査」。トイパが悪いと、時間はかかるのにスッキリしない傾向、など。(2023/08/09)

[5]サイバーエージェント、患者とクリニックをつなぐ パーソナル美肌治療のオンライン診療プラットフォーム「TOIRO美肌院」を開始
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=29208
「TOIRO美肌院」は、患者とクリニックをつなぎ、スマートフォン1台で医師の診察から処方、決済までがオンラインで行えるのはもちろん、治療中の相談まで可能な美肌治療オンライン診療プラットフォームです。(2023/08/10)

[6]パナソニック ホールディングスなど、フィットネスの利用により脳と心の健康が良好に
https://news.panasonic.com/jp/topics/205281
脳の健康に良いとされる運動習慣について実証および調査分析を行いました。フィットネスクラブ利用者の脳と心の状態を調べ、脳の健康状態が平均して4歳分若く、また脳の健康に関わる6つの心理状態が良好でした。(2023/08/10)

[7]RIZAP、chocoZAP会員数 日本一達成に関するお知らせ
https://www.rizapgroup.com/news/press-releases/20230815-01/
2023年8月15日21:30時点の会員数は80万名となり、ブランド開始から約1年で、国内フィットネスジムにおいて日本一の会員数を達成いたしました。(2023/08/15)

[8]クラブビジネスジャパン、国際スポーツ&ウェルネスウィークエンド(World Wellness Weekend)世界150ヶ国8,000会場でウェルネス体験イベント同時開催!(PR TIMESより)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000031.000022662.html
世界150ヶ国で、ウェルネス・ウェルビーイングなライフスタイルを啓発する世界最大の健幸祭。2023年9月15-17日、日本でも全国各地300会場で開催のウェルネス体験クラス・イベントが参加無料。(2023/08/16)

[9]第一生命経済研究所、ライフデザインレポート:オーストラリア「デジタルヘルス」の衝撃~健康情報の一元化とデジタルヘルスの可能性~
https://www.dlri.co.jp/report/ld/271216.html
オーストラリアにおけるデジタルヘルスの取り組みは、医療の効率化と質の向上に貢献している。健康情報の一元化や「電子処方箋」「遠隔医療」の導入は、患者と医療提供者双方の利益をもたらしている。(2023/08/17)

[10]日本リカバリー協会など、調査リリース:健康投資意識2023
https://www.recovery.or.jp/recobar-news/3972/
健康に対して「時間」と「お金」両方に投資する人は2,220万人。健康に時間投資意識のある人は、男性は20代、女性は70代が最も多く、健康にお金投資意識のある人は男女とも20代が最も多い。(2023/08/17)

[11]ナイキとアディダス、世界のフィットネス業界に大きく進出(Fitness Businessより)
https://business.fitnessclub.jp/articles/-/1786
多国籍スポーツウェアの最大手2社は、世界中の健康、フィットネス、ウェルネス市場に手を広げるつもりだ。ナイキは、ロサンゼルス、パリ、シンガポール、ソウルなど、主要都市で1,000人以上のトレーナーを雇用する計画を発表した。(2023/08/21)

[12]研究:Google、「もっともらしいウソ」をなくした“信頼できる”AI『CoDoC』を開発
https://mhealthwatch.jp/global/news20230809-2
『CoDoC』(Complementarity-driven Deferral-to-Clinical Workflow)と呼ぶ今回の手法は、医療画像を最も正確に解釈するために、予測AIツールに頼るべきか、医師に委ねるべきかを学習するAIシステムである。(2023/08/09)

[13]Amazon、オンライン診療サービス『Amazon Clinic』を全米に拡大
https://mhealthwatch.jp/global/news20230815-3
軽度の疾患に対してオンラインで応急手当てをするサービス『Amazon Clinic』は、自宅にいながら容易に医療提供者にアクセスできるようにすることを目指している。(2023/08/15)

[14]スマホを聴診器に。FDA認可のAIソフトウェア『Stethophone』
https://mhealthwatch.jp/global/news20230816
スマートフォンにダウンロードして利用可能な『Stethophone』は、高度な音響処理技術により、スマートフォンに高感度な心臓・肺の聴診機能を提供するもの。(2023/08/16)

[15]生成AIを活用した言語療法アシスタント『Jessica』が登場
https://mhealthwatch.jp/global/news20230821
『Jessica』は、AIアルゴリズムを利用し、各患者のニーズに合わせてパーソナライズされた治療を施す。(2023/08/21)

[16]『mHealth Watch』注目ニュース:Peloton、B2Bサービスへの新しいアプローチを開始
https://mhealthwatch.jp/global/news20230828
ヘルスケアビジネスにおいてB2CからB2Bへの展開は、「諸刃の剣」となりかねないので注意が必要です。B2Bという新たな市場を開拓できれば大きな収益につながる可能性はありますが、市場特性を捉えられないと大きな損失にもなります。(2023/08/28)



+++★デジタルヘルス解説動画(オーサー 渡辺武友)★+++

【デジタルヘルス・ビジネスの疑問解消!】
デジタルヘルスのビジネスに関わる人に役立つ情報をお届けします。

第12回 ベンチャー企業成長のための必須条件(7分36秒)
https://youtu.be/5BrsdQsJ3_I

第13回 成立するプラットフォームビジネスとは?(7分37秒)
https://youtu.be/QK3Ez3ybN9g